めんこい通信2024年8月30日号
◉マウスの実験
台風10号が東西の高気圧と偏西風に挟まれてどこに向かうか目的が定まらず戸惑うようにゆっくり日本列島を進みつつあるようですが、皆様はいかがおすごしでしょうか。ワダスと配偶者は遺伝子コピーミスが年々多くなってきているとはいえ、相変わらず、まあまあ、生きてます。とはいえ、ワダスのハラ膨満は年季が入ってき、ほぼ完璧に定着し、その存在感をますます大きくしています。まったく不愉快極まりない日々ですが、付き合うしかないのでした。先日の腹部エコー検査結果を見たかかりつけの上浦医師は「癌とかの病変はないようですが、内臓脂肪がほれこんなに。それと脂肪肝の傾向あり」とか申し述べる。「膨満もだし、最近は便秘傾向でして」と言うと「ダイエットですね」と一言。というわけでワダスは「今日は絶食するのだ」と毎日宣言するのですが、その意欲の軟弱さを見透かした配偶者は「今日はこれ」とか言いつつ皿を並べ、それを眺めるうちについ箸をとってしまう日々なのでした。
さて、ご覧になった人もいらっしゃると思いますが「80億人 人類繁栄の秘密」というドキュメンタリーはなかなかによくできていました。人類が80億まで達した理由は、自己家畜化による友好性、柔軟な環境適応力だったと。一方、この人類繁栄の秘密と同時に取り上げられていた「ユニバース25」という実験がなかなかに興味深いものでした。それは、オス4匹、メス4匹のマウスに十分な餌と快適な環境を与えて飼育すればどこまで数を増やすかという実験です。実験開始から104日でまず子供ができ、その子供たちがまた子供を作る。マウスは「ねずみ算式」にどんどん増えていく。母マウス1匹あたり5〜10匹の子マウスを産む。子マウスは誕生から4週間後に離乳し、8週間後には性的に成熟し孫マウスを産む。
実験がどうなったかというと、315日目に600匹を超え、強弱のグループができた。弱いグループが狭い場所に固まり、強いオスが攻撃的に振る舞うようになった。そして繁殖行動に無関心になったり子育てを放棄する個体が増えた。560日で2200匹の繁栄ピークを迎えた。その後は全く子供が生まれなくなり、高齢化し、1780日で完全絶滅してしまった。この結果は最初の個体の条件によっても違ってくると予想できるので、同じ実験を25回行ったが、絶滅という結果は同じだったと。
これってなんだか、未婚率の増加、晩婚化、特殊出生率の低下、高齢化など昨今の現象や、ナショナリズムの台頭、ウクライナ・パレスチナなどの終わらない戦争を思い起こさせます。
人類の一個体としてのワダスは、残すべき子孫を持たないし次世代のことをあれこれ思うこともなく遅からずこの世界から消え去っていくことは間違いない。しかし、ワダスに近い遺伝子を持つ人たちもそれなりに存在しこれからも存続していくはずなので、人類がこのマウス実験のようにはならないことを願望し、この先どうなるのか、ちと気になるのでした。
◉『インド音楽序説』電子版
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===これまでの出来事===
◉5月29日(水)19:00~/インド音楽講座ZOOM中継/中川家、神戸/藤澤バヤン+HIROS
◉5月31日(金)14:00-18:00/OIAS ART PROJECT “ thinking with the ears "/KIITO、神戸/パフォーマンス&シンポジウム/中川克志:サウンド・アート紹介、Sam Auinger+Katrinem:自作品および神戸での「音を聴く」散歩紹介、鈴木昭男+宮北裕美:パフォーマンス
体育館ほどの広い会場に川崎義博氏、下田夫妻など30名ほどの厳選参加者でした。中川克志さんのサウンド・アートをめぐる話、ドイツ人サウンドアーティストの作品、神戸での音探し散歩などの話が特大スクリーンの映像で紹介されました。通訳を介したということもあるけど、全体に焦点がぼんやりしたせいか、長く感じたのでした。鈴木昭男さんと宮北裕美さんの意表をついたパフォーマンスの後、全員でサウンドに関する話で締めくくり。久しぶりにお会いする昭男さんともっといろいろ話をしたかったのですが残念。昭男さんは昔からロージンの雰囲気だったのでぱっと見には以前とほとんど変わらずの外見で相変わらずお元気でした。
◉6月1日(土)14:00-17:00/中川克志氏からインタビュー/中川家
「2時間ほどお付き合いください」と克志さんから依頼されたインタビューは、途中でカレーなんかを食べていただいたので3時間になりました。飲めない克志さんは、かつてのジーベックの活動やら、サウンド・アートを研究する動機なんかの話を、ワインをぐびぐび飲んで答えるワダスを相手にインタビューしたのでした。
◉6月7日(金)/+駒井カレー宴会/中川家
◉6月8日(土)/インド音楽講座 音楽と感情 インド音楽の美学、ラサについて」/Musehouse、神戸
◉6月15日(土)/ミニ同窓会/虎連坊、ヒルトンプラザウエスト、大阪梅田/安藤朝広、奥山隆生、矢尾、HIROS、湊隆
◉6月17日(月)/大塚氏野菜差し入れ
◉6月18日(火)/短足麻雀/中川家/植松奎二、塚脇淳、東仲一矩
◉6月23日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、川辺ゆか+HIROS:ヴォイス
◉6月28日(金)/アナログ・シンセ x プログレまつり2024 in 神戸/チキンジョージ、神戸/久米大作+イワノフ+グレゴリー鈴木:Key、仙波清彦:Per、高橋香織:Vln、濱田遼太朗:Ds、鬼怒無月:G、メッケン:B、小峰公子+ゴンザレス棚村:Vo
旧知の仙波さんから「例のプログレまつり、7年ぶりにまたやるよお。招待するからおいでよ」とお誘いを受け、久しぶりにチキンジョージに出かけたのでした。久米さん、高橋さんとも7年ぶりに再会できてなかなかに喜ばしい夜でした。この年になってみれば7年なんてあっという間で、再会した友人の外見もあまり変わっていないように見えました。7年前の記事がこれ。
みな結構な年齢の40人ほどの聴衆に、これでもかというほど持ち込まれた大量のビンテージ・シンセサイザーと10人のミュージシャン。すごい贅沢。「プログレまつり」というタイトル通り、いわゆるプログレの名曲を大音量で聴き、ソロが前提のインド音楽演奏をやっているワダスからすれば、ああ、バンドは楽しそうだなあ、あんなややこしそうな曲をたった1回のリハーサルでバッチリ合わせるのはすごいなあ、みんなすごいミュージシャンだなあ、などと感心して久しぶりに興奮したのでした。
打ち上げでは久米さんや仙波さん、チキンジョージのオーナー児島氏やインド大好きとおっしゃる津軽三味線のまさこさんらとお喋りを楽しみました。
◉7月4日(水)19:00~/インド音楽講座ZOOM中継 /中川家、神戸/中川家
◉7月7日(日)14:00~/インド音楽講座 ラーガ・バーゲーシュリーとラーゲーシュリー/中川家、神戸
全てオンライン受講者だったので森さんに我が家に来ていただいて講座をしました。
講座終了後、森さんが「画像データからテキストデータに取り込むのはiPhoneを使えば簡単にできる」とおっしゃる。で、翻訳中の『HINDUSTANI MUSIC THIRTEENTH TO TWENTIETH CENTURIES』の参考文献リスト(かなり多い)をいちいちキーボードから入力していたのですが、森さんのiPhoneで撮影してもらいパソコンに取り込むことができたのでした。また、まれに登場する特殊文字T̤、Z̤、S̤、Ẓをどうやって表示させるかわからないと悶々としていましたが、「Unicode16進数入力」を発見し無事解決。英字の斜体が特定のフォントでしか使えないとか、普段使っているDeepLはかなり流暢な日本語にしてくれるが勝手に省略してしまうことがある、なんてこともだんだんわかってきて翻訳作業もなんとか最終段階に来ています。今は、訳語の読み直しと訂正、ヒンディー語やペルシャ語のカタカナ表記の統一をやっています。ここまでに2年半かかってます。ま、そのうち終わるはずですが、どこか出版してくれる会社はないかなあ。こんな超オタクな本を出版してくれるところなんてないだろうなあと思いつつ、密かに願望しているこの頃なのでした。
◉7月11日(木)/忠チャン傘寿お祝パーティー/金盃森井商店、神戸/参加:榎忠+俊江、「アビョーン」の大川マスター+西村房子、植松奎二+渡辺信子、岡田淳+由紀子、光玄、杉岡真紀子、瀬口、曽我了二+弘子、東仲一矩+田村珠紀、塚脇淳、中川博志+久代
我らがエノチューこと榎忠さんの80歳を祝う宴会でした。盛り上がりましたが、肝心の言い出しっぺの幸田庄二さんと橋本健治さんがコロナに罹患。欠席でした。最近だとCAPの下田氏もかかっていて、コロナはしぶとく生き残っています。気をつけなきゃ。
◉7月16日(火)/短足麻雀/中川家/植松奎二、塚脇淳、東仲一矩
久々の中川家の勝利でした。ディナーは、植松さん持参の焼豚と餃子、冷やし中華でした。
◉7月28日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、川辺ゆか+HIROS:ヴォイス
◉8月2日(金)19:30~/インド音楽講座ZOOM中継/中川家、神戸
◉8月4日(日)14:00~/インド音楽講座 2つのラーガ/マールカウンスとチャンドラカウンス」/Musehouse、神戸
◉8月8日(木)/短足麻雀/中川家
===この間に読んだ本===
(*読んで損はない、**けっこういけてる、***とてもよい)
◉『「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた』***(グレゴリー・J・グバー/水谷淳訳、ダイヤモンド社、2022)
科学書らしくない表紙とタイトルであまり期待しないで手に取ってみたが、読み進めるうちにハマってしまった。「ネコひねり問題」というのは、ネコは落下しても空中で姿勢を変えて必ず足から着地する仕組みのこと。この現象は昔から科学者や哲学者の興味をひいてきたらしい。デカルトは動物が恐怖心を抱くかどうか知るためにネコを2階から放り投げてみたとか、電磁気の理論的統一を成し遂げたマスクウェルがこの「ネコ宙返り」に興味を示して実験をしたとか、ニュートン力学ではうまく説明できないので悩んだ科学者とか、写真が発明されついには自由落下中のネコの高速度撮影に成功したが更なる疑問が生まれたとか、地球の自転との関連とか、アインシュタインの相対性理論が登場しても厳密な説明が難しいことがわかったとか、無重力状態の宇宙飛行士の姿勢転換に寄与したとか、宙返りのネコロボットはいまだに作られないとか、量子論まで登場し猫にまつわる様々な科学的取り組みと逸話が紹介される。著者のユーモアを交えた文章もなかなかで、久々に面白い科学本の読書体験ができたのでした。
◉『効かない健康食品危ない自然・天然』**(松永和紀、光文社新書、2017)
◉『サプリメントの正体』**(田村忠司、東洋経済新報社、2013)
紅麹サプリ問題に絡んだビデオニュース・ドット・コムの番組に登場した著者二人の本を立て続けに読んだ。テレビやネットでうんざりするほど宣伝されるサプリメントや「健康」食品がいかにインチキなのか思い知らされる。すべてではないけど、タブレット1粒の99パーセントは糖類がほとんどの添加物(目的の物質があまりに微量なので飲みやすい大きさにするためや、味を出すため)だとか、口から取り込んでも胃腸で分解されてしまうとか、効果があったかどうかの試験や治験をしたという論文が実際には全く信頼性がないとか、あの手この手で「効果」が誇大に強調されるとか、そのインチキ性が暴かれる。えっ嘘だろ、と思ったのは、巷で多く宣伝されているサプリメントの売り上げの6割がテレビ局、3割がCM制作会社に行き、メーカーには1割しか入らないとのこと。
ふと、今は亡きワダスの母を思い出した。彼女も「みのもんた症候群」の一人でした。片付けに行った実家の未使用のあやしい「健康」食品の山は、テレビからの情報に全く疑いを持たなかった純朴な母がいかにCMに騙されていたかを物語っていた。ますます宣伝が多くなってきた最近の状況を見ると、母のようにダマされる人がものすごくたくさんい続けているということだろう。裏金やらトーイツキョウカイやらで明らかになった腐敗しきったジミントーに投票する人たちも似ているような気がする。
◉『原子力は誰のものか』(ロバート・オッペンハイマー/美作太郎+矢島啓二訳、中公文庫、2002)
原爆開発を主導した著者が、広島への原爆投下には反対しなかった。しかし原子力兵器の恐るべき破壊力とそれを所有することによって世界秩序を維持するという発想には根本的な疑いを持ち、こうした状況に対抗するには科学者はどういう立場にならなければならないのかを吐露した講演集。文章は簡単だが、いろんな方面に対する影響を忖度した結果、表現が複雑になり全体にぼんやりとしていて読んですぐ理解できるという形にはなっていない。映画と合わせて読んでみるとなかなかに興味深いと思う。
◉『サウンド・アートとは何か』*(中川克志、ナカニシヤ出版、2023)
ワダスへのインタビューの時に著者からいただいた本。読了するのに1週間以上かかってしまったほど、固有名詞が盛り沢山の濃い内容でした。ジーベック時代の下田展久氏や中川真氏を通してワダスもなんとなく接していたいわゆる「サウンド・アート」と呼ばれる「芸術」ですが、その全体像をはっきりさせる意味で力作だと思います。サウンド・アートという言葉を、視覚美術、音楽、音響再生産技術、サウンド・インスレーションという4つの流れから整理しようというのが主旨。とはいえ、ほとんどが欧米と日本のことなので、それ以外の地域を除外してある種の「普遍的」な文化現象を語るということにはちと不満が残る。インドにしばらく住んでいたワダスは、インド古典舞踊の一つであるバラタナーティアムでは身体の動きの結節点を音階になぞらえ実際の音響を伴わない音楽を体の動きで表すとか、16世紀頃に建造されたインド・ハンピのヴィッタラ寺院の石柱はそれぞれ異なった音が鳴り響くように調律されているというようなことを聞いたことがあったが、そうしたものもサウンド・アートに入るのかなあとぼんやりと思ったのだった。
◉『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』*(吉川浩満、河出書房新社、2018)
人間を含めたあらゆる生物はそれぞれの遺伝子を存続させるためのロボットであるとは、有名なリチャード・ドーキンスの『利己的遺伝子』に書かれていることですが、このような進化生物学から見た場合の人間観、社会観、哲学とはどうなるのか。様々な思想家や科学者の紹介を通してこれからの人間観を考える、みたいな本。雑誌連載のエッセイや対談、書評など、構成として全体がまとまっているとはいえない。これから人類は一体どうなっていくのか考える必要はないのかもしれないけど、トピックとしてとても大きく、読解するのもちと面倒だけど、ま、暇つぶしにはいいかも。
◉『猫を棄てる』***(村上春樹、文藝春秋、2020)
ところどころ台湾のイラストレーター高研氏の絵が入る小さな本。疎遠な存在だったという父親との思い出から、父の過去やその家族のことを調べ直し、作家としての現在の著者のあり方との関係を素直に綴ったなかなかにいい本でした。独特の短い文章も読みやすい。読みながら、自分と両親のことなどを考えさせられた。
「いずれにせよ、僕がこの個人的な文章においていちばん語りたかったのは、ただひとつのことでしかない。ただひとつの当たり前の事実だ。
それは、この僕はひとりの平凡な人間の、ひとりの平凡な息子にすぎないという事実だ。・・・我々は結局のところ、偶然がたまたま生んだひとつの事実を、唯一無二の事実とみなして生きているだけなのではあるまいか」
この最後の方の言葉には、そうだなあ、と肯いてしまう。
◉『帝国の慰安婦』***(朴裕河、朝日新聞出版、2014)
日韓関係で話題になるいわゆる「慰安婦」問題が双方の偏見や一面的理解によって歪められている現実を、事実を丹念に追いその解決の方向を示すことで日韓双方に波紋を投げかけた本。少女たちが軍によって強制連行され慰安婦にされたという理解も、ほとんどの場合は軍の直接関与によるというよりも、少女たちを騙して集め、慰安所を運営する「業者」の介在抜きには成立しえなかったこと、またその集め方も様々であったこと、当時の日韓に支配的な男性を中心の家父長制などが背景にあったことなど、当事者たちへの丹念な取材や記録を読み解くことで明らかにしている。そして「慰安婦」問題の根本的な原因は何よりも「帝国」であったと述べられる。自身や政党の影響力の拡大しか考えない日韓の政治家たちやその取り巻き連中の不誠実さも浮かび上がる。
◉『日本の建築』**(隈研吾、岩波新書、2023)
建築に対する考え方とその結果としての建築物が、日本という限定した地域で歴史的にどう変わってきたかを概観しようという試み。このような試みはいろんな人がいろんな形でやっているが、著者は建築を「強い」「弱い」「大きい」「小さい」という二項対立的形容詞で述べていく。「強い」建築とは自然や環境と対立した自立したもので、そのために石やコンクリートやガラスを基本材料として使った傲慢な存在であり西洋がその中心、一方「弱い」は木や紙や土でできた「日本」的建築といった発想が根底にある。でその「強い」「弱い」「大きい」「小さい」は必ずしも西洋対日本といった対立構図ばかりではなく、日本の中にも西洋の中にもあり、相互に影響し合ってきたという。「強い」「大きい」モダニズム建築が実は「弱い」「小さい」日本建築から大きな影響を受けているとか、関東の粋がった鋭さと関西の小ささという東西の確執とか、「弱い」「小さい」が「強く」「大きい」モダニズムの建築によって世界がつまらなくなったなどという洞察はなかなかに面白い。
◉『ものの大きさ』*(須藤靖、東京大学出版会、2006)
◉『不自然な宇宙』**(須藤靖、講談社ブルーバックス、2019)
◉『宇宙は数式でできている』**(須藤靖、朝日新聞出版、2022)
YouTubeでたまたま見つけた須藤靖東大教授による学術俯瞰講義の宇宙論解説動画がとても分かりやすく面白かったので何度も見てしまった。専門の宇宙論も面白いが、科学や学問のあり方、科学者のものの考え方など、考えさせられることが多い。というわけで図書館からまとめて借りてきたのが上の3冊。『ものの大きさ』は量子論から天文学までを網羅する具体的な数字とそれが導き出された数式が紹介されているけど、数式は全くちんぷんかんぷんなので流し読み。『不自然な宇宙』と『宇宙は数式でできているは読み物として分かりやすい。
◉『先生、シロアリが空に向かってトンネルを作っています!』(小林朋道、築地書館、2024)
身近にある生物を観察しちょっとすっとぼけた文体で紹介するシリーズの最新版。これまでも何冊か読んでいる。今回も、なかなかに読みやすく、生物やヒトの生態について考えさせられる。筆者の考案したミニ地球がなかなかに秀逸。100円ショップなんかで買える半球状の透明プラスチックに部品を詰め込みそれをもう一つの半球で被せると一つの球体が出来上がる。部品とは太陽エネルギーと土壌の無機物から有機物を生産する「生産者」(つまり植物)、その植物を直接・間接に食べて生きる「消費者」、消費者の体を作っている有機物を無機物に分解して「生産者」に取り込ませる「分解者」。地球はこの3者の循環で成り立っていることをこのおもちゃのような簡単な仕掛けで理解させるという試みは素晴らしい。
◉『科学を語るとはどういうことか』*(須藤靖+伊勢田哲治、河出書房新社、2013)
須藤靖の宇宙論にはまっていたらこんな本を見つけた。内容は科学者(物理学者)と科学哲学者との論争ですが、科学哲学というものに、科学者と同じような違和感を感じ、よく分からない部分が多いことに気づく。哲学者の思考法や語彙の使い方と科学者のそれとのズレが大きい。読んでいても一体どこが対立点なのかを把握するのが難しかった。かつては「科学」が「哲学」の一分野のように扱われていたが、この200年の科学の大きな発展によって、両者とも「科学」という名前が使われていてもその思考法がかなり違ってきていることがわかる。結局最後まで議論は平行線を辿るが、両者の言葉の定義のズレによる論争はなかなかに面白い。
◉『82年生まれ、キム・ジョン』***(チョ・ナムジュ/斎藤真理子訳、ちくま文庫、2023)
韓国で100万部以上売れたという小説。一人の平凡な名前を持つ女性が体験する「平凡」な生き方や葛藤が、大きな事件もなくドキュメンタリー風に淡々とつづられる。そこから、男性優位、家父長制、女性蔑視といった現代の韓国社会のありようがじわりと浮かび上がってくると同時に、そうしたありようが必ずしも韓国だけではなく日本を含めた現代社会に普遍的に存在していることを想像させる。
◉『青い壺』(有吉佐和子、文春文庫、2011)
名前は知っていてもこれまで全く手に取る気分にすらならなかった作家の小説。次々と人手に渡っていくある陶芸家の作った青い壺をめぐる12の物語。てだれの文章はさすがに読みやすく、あっという間に読み終えたけど、ふーん、というくらいしか印象に残らなかった。
◉『「音」の秘密』(スティーヴ・マーシャル/山崎正浩訳、創元社、2024)
まるで板のような硬く堅牢な表裏紙に4ミリほどの薄い本文が挟まれた体裁だけでなく、これを本と言っていいのかと思うほど通俗的な内容で批評の対象にもならない。なんでこんなのが市立図書館にあるのか。
◉『B級グルメで世界一周』*(東海林さだお、ちくま文化、2021)
どうでもいいような食い物のディテールを針小棒大に拡張する著者のスタイルに、昔は腹を抱えて笑ったけど、もうこの年になってくると、まだやってんのか、まったくもってくだらないなあ、と思いつつ、有り余る時間を持て余しているので結局最後まで読んでしまった。特におかしかったのは、スペイン料理店でフラメンコ舞踊が登場してくる場面。
◉『私が見た、「韓国歴史ドラマ」の舞台と今』(蓮池薫、講談社、2009)
著者は言わずと知れた拉致被害者として北朝鮮で長く暮らした人。ワダスも結構ハマっていた韓国歴史ドラマの中でまだ見ていない「大王四神記」と「朱蒙」を取り上げていたので内容にはイマイチ共感できなかったけど、これまで考えたことがなかった古朝鮮の歴史や北朝鮮と韓国の歴史観の違いなどについてある程度知ることができたので、それなりに面白く読んだのでした。
◉『生き物の死にざま』**(稲垣栄洋、草思社、2019)
食うか食われるかが日々の生存のあり方はある程度人間も同じと言えるけど、とてもはかなく生まれて死んでいく生き物に人間的な感情を移入して考えてみると、自然というのは実に残酷で冷酷に見えてくる。メスに食べられながらも必死に交尾を続けるオスカマキリとか、生殖を前提とせずにひたすら外敵に立ち向かうように生まれて死ぬ兵隊アブラムシとか、多くの生き物の生き死が紹介される。リチャード・ドーキンスは『利己的遺伝子』であらゆる生き物は遺伝子存続のためのロボットだと主張して人間の思考に衝撃を与えた。とすれば、この本に登場する生き物の死を観察することも、人間の遺伝子存続のためだということなんだろうなあ、などとぼんやりと考えたのでありました。
◉『認知症世界の歩き方』*(筧祐介、ライツ社、2021)
◉『認知症世界の歩き方 実践編』(筧祐介、issue+design、2023)
◉『人口減少×デザイン』(筧祐介、英治出版、2015)
ビデオニュース・ドット・コムの番組での著者の話が興味深く、紹介されていた著書も面白そうだったので早速図書館で借りてきて読んだのでした。『認知症世界の歩き方』2冊は読み物というよりも絵本に近く、分厚い割に読書をしたという感じがしない。確かに認知症というものが一般に言われているよりも単純なものでないことは理解できました。『人口減少×デザイン』の方はデータというかグラフが半分でこちらも読書というよりも眺めるというイメージの体験でした。
==これからの出来事==
相変わらずヒマですが、たまにちょこっちょこっと何かがあります。
◉9月5日(木)19:30~/インド音楽講座ZOOMインタビュー中継/中川家、神戸
◉9月8日(日)14:00~/インド音楽講座 2つのラーガ/ヤマンとマールー・ビハーグ」/Musehouse、神戸
◉9月29日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、川辺ゆか+HIROS:ヴォイス
◉10月18(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」1/アーバンピクニック、神戸/高橋怜子+HIROS:講師
◉10月20(日)CAPSTUDY講座「アジアの音楽」関連ライブ1/ペルシャンサントゥール/谷正人:サントール、Yazdanmehr Razi:トンパク
◉11月15(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」2/アーバンピクニック、神戸/下田展久:聞き手、HIROS:講師
◉12月20(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」3/アーバンピクニック、神戸/下田展久:聞き手、HIROS:講師
2025年
◉1月17(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」4/アーバンピクニック、神戸/下田展久:聞き手、HIROS:講師
◉1月18(土)/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」関連ライブ2/インド古典音楽/中川祐児:サーランギー、Leo Hayashi:タブラー
◉2月21(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」5/アーバンピクニック、神戸/下田展久:聞き手、HIROS:講師
◉3月21(金)19:00~/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」6/アーバンピクニック、神戸/下田展久:聞き手、HIROS:講師
◉3月23(日)/CAPSTUDY講座「アジアの音楽」関連ライブ3/尺八古典本曲/石川利光:尺八
