第22回 日本の胡弓、中国の二胡
●とき/2003年9月23日(月)4:00pm
●ところ/ジーベックホール(神戸ポートアイランド)
●出演/福原左和子:胡弓+箏、池上慎悟:胡弓+箏、石川利光:尺八、賈鵬芳:二胡、姜小青:古箏、蒋てい(ジャン・ティン):琵琶
●主催/(株)TOA
●後援/兵庫県、神戸市、神戸市教育委員会、神戸市民文化振興財団
●企画制作/ジーベック、天楽企画
プログラム
■第1部 日本の胡弓
--リハーサル風景
●六段の調べ/胡弓・箏・尺八
近代箏曲の祖といわれる八橋検校により17世紀に作曲されました。曲名は52拍子の段が六つあるところからつけられています。箏のさまざまな技法が織り込まれた幽玄で格調高い調べです。本来は箏だけで演奏されますが、本日は三つの楽器の対比をお楽しみ下さい。
●湖辺の夕/胡弓・箏・尺八/宮城道雄作
「春の海」で有名な宮城道雄により大正14年(1925)に作曲されました。胡弓、箏、尺八という組み合わせは大変珍しく、実験的な音楽を作り続けた宮城の面目躍如たるものがあります。作者が箱根・芦ノ湖に遊んだおり、湖の持つ引き入れられるような静かさに魅せられ、やがては暮れゆく湖畔の様子を描写したものです。
●古伝巣籠/尺八古典本曲/尺八独奏
現在演奏されている尺八のルーツは江戸時代の虚無僧にさかのぼります。虚無僧たちが吹いたとされ、全国各地に伝わる「鶴の巣籠」のなかでも最古の形式がこの曲といわれています。
●鶴の巣籠/胡弓・尺八/作者不詳
親子の鶴の情を描写した「鶴の巣籠」という曲は、胡弓、三味線、尺八のそれぞれの楽器にオリジナル曲として伝承されており、独奏、あるいは同じ楽器同士で演奏されることが一般的です。本日の「鶴の巣籠」は胡弓の原曲に尺八の手を合わせた構成で、現在京都以外ではほとんど演奏される機会がありません。
●夜明け舞/胡弓・箏/池上眞吾作
今回出演の池上慎悟による胡弓と箏の二重奏曲です。それぞれの楽器の特製を知り尽くした作者の意欲的な作品です。多々良香保里氏の委嘱により1998年に作曲されました。--のように、胡弓と箏の二重奏曲の予定でしたが、せっかくなのでということで胡弓の代わりに賈鵬芳さんの二胡で演奏されました。前日に楽譜が届いたというのにあっさりと演奏してしまった賈さんはやはりすごい演奏家です。
■第2部 中国の二胡
--リハーサル風景
●花好月圓/北京民間音楽
北京地方の民間音楽をもとに作られた、お祭り・お正月や、賓客を迎える時など祝賀の席で演奏される華やかな曲。中国北方音楽の明活さがよく表れている。
●漁舟唱晩/二胡・古箏/古曲
湖に漁に出た漁船が日暮れと共にたくさんの魚を乗せて陸へと漕ぎ戻る。漁師の素朴な喜びと美しい夕暮れの風景を描写した中国古代の名曲。
●懐 郷 曲/二胡独奏/王国潼作曲
福建から台湾に移り住んだ人々の故郷に寄せる想いを表現している。憂いに満ちた導入部から、堰を切ったようにあふれ出した望郷の念を表す中間部へと続き、聞いている側にひしひしと悲しみが伝わってくる曲。
●ムカム舞曲/古箏/周吉、李梅、召光陦作曲
中国新疆ウイグル地方の民間曲を元に、ウイグル族の独特な音階を用いて作曲された。人情深くユーモアに溢れた少数民族の人々が歌い踊る風景を彷彿とさせる。
●島唄/合奏/宮沢和史作曲
ロックバンド「TheBOOM」による大ヒット曲。沖縄出身ではない彼らが作ったこの曲は、新しい島唄として沖縄の人々に受け入れられて、根づき始めている。
●歩歩高/合奏/広東民間音楽
広東地方の民間音楽の代表曲の一つである。希望と喜びが溢れるような軽快なメロディーと鮮明なリズムで構成された曲。
●十面埋伏/琵琶独奏/古曲
古くから伝えられてきた琵琶の古典曲。隋の時代にすでに演奏されていたと言われ、紀元前202年、漢の劉邦と楚の項羽との垓下の決戦を、写実的に描いたもので、琵琶の音色や特色を巧みに引き出している代表的な独奏曲の一つである。
●瑶族舞曲/合奏/鉄山、茅源作曲
中国雲南地方に住む少数民族「瑶族」は、歌や踊りを好み、男女の交際にも歌を用いる習慣がある。村の祭には老若男女が歌い踊り、そして一日が暮れていく。このような楽しいお祭りの風景が曲の中に聞こえる。
●おまけ/全員合奏
わたしの特別のリクエストで、最後に全員で演奏してもらいました。曲は「春の海」。中国組は「譜面がなあい」ということで最初は焦っていたようですが、2回ほどリハーサルで通したら実に味わいのある「春の海」になりました。とくに途中に挿入した琵琶と胡弓の即興的合奏があったため、とても面白い日中セッションになりました。
プログラム掲載文
日本の胡弓と中国の二胡。どちらも弓で演奏する擦弦楽器である。「胡」の文字は、中東やペルシアを意味する。このことから両者の起源はそのあたりにあると思われているが、楽器の構造や奏法に違いがある。
日本の胡弓は、安土・桃山時代に原型が渡来したといわれる三味線よりも後になって現れた楽器であるが、いつ、どのようにして生まれたのかははっきりしない。中国渡来と一般に思われているが、西洋の中世の擦弦楽器レベックを元に作られたという説もある。ともあれ、日本の胡弓は17世紀中頃には盛んに演奏されていた。しかし、現代では箏や尺八に比べて相当に地味な存在になっている。しかし、その細く伸びる、切なくはかない音色は、忙しい今の時代にこそもっと注目されていい。
一方の二胡は、今では中国の代表的な伝統楽器のように思われているが、元の時代(13~14世紀)に新彊省地方から伝わったといわれている。日本の胡弓に比べ、力強さのなかに郷愁を誘う甘い響きがある。今、日本でこの二胡がブームである。それは、賈鵬芳さんのようなすぐれた演奏家の存在が大きいのと同時に、人間の声に似たその響きが、ストレスの多いわれわれ現代人の心を癒してくれるからなのだろう。