Acte Kobe 2000・・・(三日坊主よれよれ日記)3
3月13日(月)
前日あれほどよれよれだったにもかかわらず、そして、漢方の睡眠薬をのんだのに、正しい睡眠はこの日もやってこない。時差ボケ興奮状態なのか。朝からベツドでぼやーっとしていると、8時ころ、隣に寝ている東野がむずむずと起き出した。「なんや、眠れんかったあ?ぼくなんかぐっすりやでえ」。幸福な人だ。
朝食材料を買いに東野と外出した。ホテル前の坂道を上がりきると、頭頂部だけのムスリム帽のアラブ人たちが路上市場を開いていた。壊れた時計の部品なんかが売られている。地下鉄Jules Guesda駅の近くの食料品店で、パン、マヨネーズ、レタス、洋なし、ピクルス、オリーブ、ミルクを購入。
ホテルに戻り、コーヒーをわかしたり、パンを切ったりしていると、「おはよう。あららあ、買い物いってきはったん。ごめんね、なんもせんと」と進藤が起きた。東野とぼくは彼女の部屋のテーブルに朝食を並べる。大量のコーヒー摂取後、日常業務を無事終える。睡眠不足2日目なので、いよいよ頭脳不稼働状況がひどくなっている。
前日は、地下鉄を乗り換えたが、Jules Guesda駅からだと乗り換えなしでPerier駅まで行けることが判明。集団切符を購入して、11時前にGMEMへ。
AKFのメンバーがすでにメインスペースに集まっていた。入り口付近には、ワインやつまみなども用意され、フランソワ・バスティネリがいそいそと立ち働いている。バールと、会見の進行などを打ち合わせる。大柄な若い女性がやってきて「あなたにインタビューしようと思ったけど、ビデオカメラを持ってきていないのであとでくる」と申し述べる。
ルチア・マルセイユ市姉妹都市担当助役、文化担当助役、兵庫県パリ事務所長の黒井さん、四宮総領事、増田副領事などがやってくる。黒スーツ黒シャツ極細ネクタイ短髪長身痩身の、何人か判明しがたい人が、黒井さんだった。バール、黒井さん、文化担当助役、四宮総領事、ぼくの順で前に並び、それぞれが簡単に挨拶。ちょっと小太りの温厚そうな四宮総領事は、持参したフランス語の原稿を読んだ。黒井さんは原稿なしに流ちょうなフランス語で話す。昨年、アルハンブラ劇場でお会いしているルチア助役に、昨年同様、笹山神戸市長の手紙を手渡す。通訳は、前日に続いて鳥居が行う。
一通り「儀式」がすみ、集まった人たちはワイン片手に談笑。なんといっても印象的だったのは、やはり、黒井さんだ。彼は、23歳から20年以上ずっとフランスに住んでいるという。「僕は、演劇、ダンス、評論、公務員といろいろ違った顔を持っているんですよ」と自己紹介するあたり、ただ者ではない。文化国家フランスというプールを、平泳ぎで泳いでいる雰囲気だ。
ビデオカメラをもってきた女性からインタビューを受ける。頭が朦朧として何をしゃべったか覚えていない。新聞記者も何人か来ていたようだが、接触はなし。
公的関係者が帰ったあと、玄関前の仮設テントでジャガイモがメインのランチ。今回のマカナイ担当のレイモンとクロードが調理したものだ。
食後、2階で、耳ピアス赤顔ラジオ青年マキと、ぼくとのセッション。彼はアコースティック・ギターを弾いた。録音をしていると、ひょうきんチョコマカスキンヘッドのステファノが、中型ベースをもってきて茶々をいれる。どこにでも現れて茶々を入れる奴だ。
われわれが録音している間、メインスペースや1階の部屋では、混沌的セッション、録音が進行している。のたうち系性超越ダンサー、スィルヴィエ・クニエコウのワークショップ、テレビニュース用のセッションなど。
外のテントで、浴衣に着替えた森信子のお茶サービスが始まる。茶道とはいかないが、各種の和菓子、茶を取りそろえ、なかなかに好評だ。川崎、鎌仲がかいがいしくサービスにつとめる。ふざけて和菓子をつまもうとしたら、ときどき切れるフランソワ・ブレが「ふざけないで。今は真面目にやれ」とおしかりを受ける。
バールが、メインスペースにフランス人アーテイストを集めて、即興とは何か、のようなテーマでミーティングをしていた。みな、真剣にバールの話を聞いている。その間、表のテントで、まかないが一段落したクロード、ボニとでジョークセッション。古代ローマ人好青年のようなクロードのジョークに対する反応が素早い。ダーティージョーク(ここではとても紹介できない)を、大げさな身振りと口振りで速射砲のように次々と繰り出す。それにレイモンが大きな馬鹿笑いで応じる。そばで社会学者パスカルがにやにや笑って聞いている。後で、絶望的楽天主義者アランPがこんな風に言っていた。「あれは、まったく、今回のテーマのフラジリテだった。一方でバールたちの深刻なトークセッション、もう一方でそれを揺るがす馬鹿笑い、すごく好対照だった。いや、これはジョークじゃなくて真面目に言ってるんだぜ。あれは最高だった」。きっと、ぼくらの大笑いはバールたちには迷惑だったのかも知れない。ただ、ぼくとしては、本来はとても優れたミュージシャンなのに黙々とわれわれの食事の調理をやっていたレイモンとクロードと感謝の気持ちを伝えたかったのだ。
4時ころ、東野が、日本から持参した50メーターの和紙をスペースいっぱいに広げ、中央に墨の線を引き出した。これは、それぞれが好きなだけ切り取り、そこに絵を描いてもらい、来年の神戸で再びつないで長大な作品に仕上げる、というもの。墨が乾くまでの間、例によって大音響の紙芝居が始まる。どこでもいつでも始めることができるのがすごい。
マガリ・ラティの、五線譜に描いたカリグラフィーをもとに、ダンスと音の即興セッションのためのワークショップがそれに続く。ダンスの角、クニエコウ、ヨガ教師風ドミニク・ペリエール、貧的大道芸人ロラン・シャネル、ミュージシャンで、パーカッションの沈着職人風ジャンピエール・ジュリアン、フレッド・マドゥーが参加。スペース中央には、彼女の製作した段ボールのうずまきオブジェがおかれている。
一方、 2Fでは、石上、マキ(ギター)、稲見(ギター)、フェルディナン・リシャール(コントラバス)、パスカル・ドゥローム(ギター)らのセッションが、また、1F奥の小部屋では、小島、突然レコードスクラッチに目覚めたアレクサンドラ・ディオらによる、作品づくり。小島はコントラバスメンバー全員の音を、ひとりひとり録音している模様。こうしたことが同時多発ゲリラ的に進行している。
7時半に、AKFメンバーの車に分乗して、日本総領事公邸へ向かう。バールの車にぼくとアラン・ディオが乗った。
日本総領事公邸は、小高い丘の上に立つプール付きの平屋の豪邸だった。昨年、天野総領事のときは、この公邸が修繕中で、仮住まいのアパートの広いフラットが公邸だった。広い前庭から玄関にはいると、すでにテーブルに豪華料理がセットされていた。
招待を受けたのは、AKJ、AKFともそれぞれ15名。AKFからは、地味ドンファン風コントラバス奏者リシャール・レアンドル、スィルヴィエ・クニエコウ、ヤシャ・アジンスキー、美形若年コントラバス奏者バスティアン・ボニ、マガリ・ラティ、アランD、ジャンピエール・ジュリアン、アランP、フランソワ・バスティネリ、マキ、ドミニク・ペリエール、丸刈りころころ女性写真家ラポラテ・コリーヌ、バール・フィリップス、フランソワ・ブレが参加。招待人数のバランスをとっている。招待に漏れてしまったフランス側メンバーにはちょっと気の毒だ。
ちょっとした舞踏会もできそうな広い居間には、円形のテーブルが用意してあった。「重要」な招待客用テーブルがあった。ルチア夫人、四宮総領事、マルセイユ市文化担当女性助役、兵庫県パリ事務所副所長の黒井氏、フランソワ・ブレ(AKFの女性代表ということか?)、バール・フィリップス、四宮夫人、ルチア・マルセイユ市助役、杉山知子そしてぼくがそのテーブルを囲む。
食事は、ビュッヘスタイル。招待客はお皿を抱えて、食べ物のあるテーブルに列をなす。この日のメニュー。ボイルした伊勢エビ、カニ、ムール貝に野菜を添えたもの、子牛のパイ包み焼き、船盛り白身魚の姿作りオリーブ添え、エビののったラザニア、白いクリームソースの上に細いピーマンをあしらった肉の煮込み、巻きずし、にぎり寿司、野菜サラダ、デザートに、イチゴのクリームケーキ、チョコレートケーキ、メロン、イチゴ、リンゴ、パイナップルなどのフルーツ、と盛りだくさん。そして上等のワイン。GMEMのテントに常に用意してある蛇口付きプラスチック容器のワインとはかなり違って、口当たりがよい。
日仏メンバーが適当にばらけたテーブルからは、ときおり大きな笑い声が聞こえるが、われわれのいわゆるVIP席は、なんとなくかしこまった雰囲気だ。杉山とぼく意外は全員フランス語なので、黒井氏や四宮総領事がたまに通訳してくれるのを待つしかコミュニケーションがとれず、ワインだけがどんどん進む。右隣のルチア夫人が「わたしたち5ヶ月になる赤ちゃんがいるの」というのにちょっとびっくり。医師であるルチア助役も夫人も40代後半に見えるのに、生産性の高い人たちだ。「今回のActe Kobe2000の助成金はわたしが賛成したの」という文化担当助役もよくしゃべる。隣の黒井さんともずっと何かはなしているが内容が分からない。パーティーの好きそうな四宮夫人は、招待客にまんべんなく会話をまわし、外交官夫人ホステス役としては年季が入っている。あまりにそつがないので、彼女自身の考えを読むことができないほどだ。途中、下々の席に遊びに行くと、小島がマガリに言い寄り、そのアプローチのふがいなさを鎌仲が機関銃攻撃をしていた。こっちの方がVIP席より面白かったに違いない。
全員の摂食スピードが鈍化したところで、去年のようにAKによるパフォーマンスが始まった。まず、バールと僕のセッション。僕の最上川舟歌ベースの即興にバールがコントラバスでからんでくる。終わったところでバールは「ま、こんなもんだ」と自嘲気味に僕にささやく。ついで、ジャンピエール・ジュリアンの伴奏に、角、黒井氏、クニエコウが即興のダンスを披露。いちおうお役人である黒井氏がこういう席でも踊るというのもなかなかだ。根は目立ちたがりなのかもしれない。「ちょっと酔っぱらっちゃったのでずっと瞑想のポーズをとってしまった」という佐久間とウィヤンタリが短い踊りを披露。本来はこんな風な「宴会芸」ではない伝統舞踊をやっている二人にとっては、ま、いいか、という感じだったに違いない。それでも、二人の時は座がさっとしまった。最後は、東野の神戸弁による紙芝居。定番の「狼の魂」と「世界の始まり」。終わった後に、ちょっと小太り眼鏡の増田是人文化担当領事が、フランス人たちに解説をする。絵を指さしながらの解説の間の取り方が、真面目なだけに絶妙のおかしさ。総領事も大笑いだった。
前日あれほどよれよれだったにもかかわらず、そして、漢方の睡眠薬をのんだのに、正しい睡眠はこの日もやってこない。時差ボケ興奮状態なのか。朝からベツドでぼやーっとしていると、8時ころ、隣に寝ている東野がむずむずと起き出した。「なんや、眠れんかったあ?ぼくなんかぐっすりやでえ」。幸福な人だ。
朝食材料を買いに東野と外出した。ホテル前の坂道を上がりきると、頭頂部だけのムスリム帽のアラブ人たちが路上市場を開いていた。壊れた時計の部品なんかが売られている。地下鉄Jules Guesda駅の近くの食料品店で、パン、マヨネーズ、レタス、洋なし、ピクルス、オリーブ、ミルクを購入。
ホテルに戻り、コーヒーをわかしたり、パンを切ったりしていると、「おはよう。あららあ、買い物いってきはったん。ごめんね、なんもせんと」と進藤が起きた。東野とぼくは彼女の部屋のテーブルに朝食を並べる。大量のコーヒー摂取後、日常業務を無事終える。睡眠不足2日目なので、いよいよ頭脳不稼働状況がひどくなっている。
前日は、地下鉄を乗り換えたが、Jules Guesda駅からだと乗り換えなしでPerier駅まで行けることが判明。集団切符を購入して、11時前にGMEMへ。
AKFのメンバーがすでにメインスペースに集まっていた。入り口付近には、ワインやつまみなども用意され、フランソワ・バスティネリがいそいそと立ち働いている。バールと、会見の進行などを打ち合わせる。大柄な若い女性がやってきて「あなたにインタビューしようと思ったけど、ビデオカメラを持ってきていないのであとでくる」と申し述べる。
ルチア・マルセイユ市姉妹都市担当助役、文化担当助役、兵庫県パリ事務所長の黒井さん、四宮総領事、増田副領事などがやってくる。黒スーツ黒シャツ極細ネクタイ短髪長身痩身の、何人か判明しがたい人が、黒井さんだった。バール、黒井さん、文化担当助役、四宮総領事、ぼくの順で前に並び、それぞれが簡単に挨拶。ちょっと小太りの温厚そうな四宮総領事は、持参したフランス語の原稿を読んだ。黒井さんは原稿なしに流ちょうなフランス語で話す。昨年、アルハンブラ劇場でお会いしているルチア助役に、昨年同様、笹山神戸市長の手紙を手渡す。通訳は、前日に続いて鳥居が行う。
一通り「儀式」がすみ、集まった人たちはワイン片手に談笑。なんといっても印象的だったのは、やはり、黒井さんだ。彼は、23歳から20年以上ずっとフランスに住んでいるという。「僕は、演劇、ダンス、評論、公務員といろいろ違った顔を持っているんですよ」と自己紹介するあたり、ただ者ではない。文化国家フランスというプールを、平泳ぎで泳いでいる雰囲気だ。
ビデオカメラをもってきた女性からインタビューを受ける。頭が朦朧として何をしゃべったか覚えていない。新聞記者も何人か来ていたようだが、接触はなし。
公的関係者が帰ったあと、玄関前の仮設テントでジャガイモがメインのランチ。今回のマカナイ担当のレイモンとクロードが調理したものだ。
食後、2階で、耳ピアス赤顔ラジオ青年マキと、ぼくとのセッション。彼はアコースティック・ギターを弾いた。録音をしていると、ひょうきんチョコマカスキンヘッドのステファノが、中型ベースをもってきて茶々をいれる。どこにでも現れて茶々を入れる奴だ。
われわれが録音している間、メインスペースや1階の部屋では、混沌的セッション、録音が進行している。のたうち系性超越ダンサー、スィルヴィエ・クニエコウのワークショップ、テレビニュース用のセッションなど。
外のテントで、浴衣に着替えた森信子のお茶サービスが始まる。茶道とはいかないが、各種の和菓子、茶を取りそろえ、なかなかに好評だ。川崎、鎌仲がかいがいしくサービスにつとめる。ふざけて和菓子をつまもうとしたら、ときどき切れるフランソワ・ブレが「ふざけないで。今は真面目にやれ」とおしかりを受ける。
バールが、メインスペースにフランス人アーテイストを集めて、即興とは何か、のようなテーマでミーティングをしていた。みな、真剣にバールの話を聞いている。その間、表のテントで、まかないが一段落したクロード、ボニとでジョークセッション。古代ローマ人好青年のようなクロードのジョークに対する反応が素早い。ダーティージョーク(ここではとても紹介できない)を、大げさな身振りと口振りで速射砲のように次々と繰り出す。それにレイモンが大きな馬鹿笑いで応じる。そばで社会学者パスカルがにやにや笑って聞いている。後で、絶望的楽天主義者アランPがこんな風に言っていた。「あれは、まったく、今回のテーマのフラジリテだった。一方でバールたちの深刻なトークセッション、もう一方でそれを揺るがす馬鹿笑い、すごく好対照だった。いや、これはジョークじゃなくて真面目に言ってるんだぜ。あれは最高だった」。きっと、ぼくらの大笑いはバールたちには迷惑だったのかも知れない。ただ、ぼくとしては、本来はとても優れたミュージシャンなのに黙々とわれわれの食事の調理をやっていたレイモンとクロードと感謝の気持ちを伝えたかったのだ。
4時ころ、東野が、日本から持参した50メーターの和紙をスペースいっぱいに広げ、中央に墨の線を引き出した。これは、それぞれが好きなだけ切り取り、そこに絵を描いてもらい、来年の神戸で再びつないで長大な作品に仕上げる、というもの。墨が乾くまでの間、例によって大音響の紙芝居が始まる。どこでもいつでも始めることができるのがすごい。
マガリ・ラティの、五線譜に描いたカリグラフィーをもとに、ダンスと音の即興セッションのためのワークショップがそれに続く。ダンスの角、クニエコウ、ヨガ教師風ドミニク・ペリエール、貧的大道芸人ロラン・シャネル、ミュージシャンで、パーカッションの沈着職人風ジャンピエール・ジュリアン、フレッド・マドゥーが参加。スペース中央には、彼女の製作した段ボールのうずまきオブジェがおかれている。
一方、 2Fでは、石上、マキ(ギター)、稲見(ギター)、フェルディナン・リシャール(コントラバス)、パスカル・ドゥローム(ギター)らのセッションが、また、1F奥の小部屋では、小島、突然レコードスクラッチに目覚めたアレクサンドラ・ディオらによる、作品づくり。小島はコントラバスメンバー全員の音を、ひとりひとり録音している模様。こうしたことが同時多発ゲリラ的に進行している。
7時半に、AKFメンバーの車に分乗して、日本総領事公邸へ向かう。バールの車にぼくとアラン・ディオが乗った。
日本総領事公邸は、小高い丘の上に立つプール付きの平屋の豪邸だった。昨年、天野総領事のときは、この公邸が修繕中で、仮住まいのアパートの広いフラットが公邸だった。広い前庭から玄関にはいると、すでにテーブルに豪華料理がセットされていた。
招待を受けたのは、AKJ、AKFともそれぞれ15名。AKFからは、地味ドンファン風コントラバス奏者リシャール・レアンドル、スィルヴィエ・クニエコウ、ヤシャ・アジンスキー、美形若年コントラバス奏者バスティアン・ボニ、マガリ・ラティ、アランD、ジャンピエール・ジュリアン、アランP、フランソワ・バスティネリ、マキ、ドミニク・ペリエール、丸刈りころころ女性写真家ラポラテ・コリーヌ、バール・フィリップス、フランソワ・ブレが参加。招待人数のバランスをとっている。招待に漏れてしまったフランス側メンバーにはちょっと気の毒だ。
ちょっとした舞踏会もできそうな広い居間には、円形のテーブルが用意してあった。「重要」な招待客用テーブルがあった。ルチア夫人、四宮総領事、マルセイユ市文化担当女性助役、兵庫県パリ事務所副所長の黒井氏、フランソワ・ブレ(AKFの女性代表ということか?)、バール・フィリップス、四宮夫人、ルチア・マルセイユ市助役、杉山知子そしてぼくがそのテーブルを囲む。
食事は、ビュッヘスタイル。招待客はお皿を抱えて、食べ物のあるテーブルに列をなす。この日のメニュー。ボイルした伊勢エビ、カニ、ムール貝に野菜を添えたもの、子牛のパイ包み焼き、船盛り白身魚の姿作りオリーブ添え、エビののったラザニア、白いクリームソースの上に細いピーマンをあしらった肉の煮込み、巻きずし、にぎり寿司、野菜サラダ、デザートに、イチゴのクリームケーキ、チョコレートケーキ、メロン、イチゴ、リンゴ、パイナップルなどのフルーツ、と盛りだくさん。そして上等のワイン。GMEMのテントに常に用意してある蛇口付きプラスチック容器のワインとはかなり違って、口当たりがよい。
日仏メンバーが適当にばらけたテーブルからは、ときおり大きな笑い声が聞こえるが、われわれのいわゆるVIP席は、なんとなくかしこまった雰囲気だ。杉山とぼく意外は全員フランス語なので、黒井氏や四宮総領事がたまに通訳してくれるのを待つしかコミュニケーションがとれず、ワインだけがどんどん進む。右隣のルチア夫人が「わたしたち5ヶ月になる赤ちゃんがいるの」というのにちょっとびっくり。医師であるルチア助役も夫人も40代後半に見えるのに、生産性の高い人たちだ。「今回のActe Kobe2000の助成金はわたしが賛成したの」という文化担当助役もよくしゃべる。隣の黒井さんともずっと何かはなしているが内容が分からない。パーティーの好きそうな四宮夫人は、招待客にまんべんなく会話をまわし、外交官夫人ホステス役としては年季が入っている。あまりにそつがないので、彼女自身の考えを読むことができないほどだ。途中、下々の席に遊びに行くと、小島がマガリに言い寄り、そのアプローチのふがいなさを鎌仲が機関銃攻撃をしていた。こっちの方がVIP席より面白かったに違いない。
全員の摂食スピードが鈍化したところで、去年のようにAKによるパフォーマンスが始まった。まず、バールと僕のセッション。僕の最上川舟歌ベースの即興にバールがコントラバスでからんでくる。終わったところでバールは「ま、こんなもんだ」と自嘲気味に僕にささやく。ついで、ジャンピエール・ジュリアンの伴奏に、角、黒井氏、クニエコウが即興のダンスを披露。いちおうお役人である黒井氏がこういう席でも踊るというのもなかなかだ。根は目立ちたがりなのかもしれない。「ちょっと酔っぱらっちゃったのでずっと瞑想のポーズをとってしまった」という佐久間とウィヤンタリが短い踊りを披露。本来はこんな風な「宴会芸」ではない伝統舞踊をやっている二人にとっては、ま、いいか、という感じだったに違いない。それでも、二人の時は座がさっとしまった。最後は、東野の神戸弁による紙芝居。定番の「狼の魂」と「世界の始まり」。終わった後に、ちょっと小太り眼鏡の増田是人文化担当領事が、フランス人たちに解説をする。絵を指さしながらの解説の間の取り方が、真面目なだけに絶妙のおかしさ。総領事も大笑いだった。