ちょっと気になる神戸の学校

 神戸市内の小中学校はどうなっているのだろうか。
 こう思ったのは、わたしが1999年から企画している「世界の民族楽器紹介ワークショップ」に、神戸市内の小中学校からほとんど参加申し込みがないからだ。西宮、宝塚、芦屋、淡路の小学校がこれまで熱心に参加しているのと対照的である。
 この企画は、子供たちと先生が優秀な演奏家の演奏や解説を見聞きする機会を無償で提供しようと、スポンサー企業であるTOA株式会社が自社の持つジーベックホールで進めている企業メセナ活動の一環である。これまで、次のようなワークショップを行ってきた。
 インドの打楽器タブラー、和太鼓、アフリカの打楽器ジャンベ、インドネシアのガムラン、フィリピンのカリンガ族の竹楽器、津軽三味線、雅楽、尺八、能の囃子、箏、筑前琵琶、トゥバの喉歌フーメイ、義太夫三味線、狂言、中国の二胡、古箏、琵琶。これらのワークショップは、一流の演奏家を講師に招き、音響機器メーカーTOAの機材が完備するジーベックホールで行われてきた。学年単位やクラス単位の参加がほとんどなので、多いときには一時に200人ほどの小学生が参加している。
 これまで参加した小学校の先生たちは、こんなチャンスはめったにないのでどんなやりくりをしてでも参加したい、と声を揃えていってくれた。また、このワークショップは、2002年から施行された学習指導要領に適う内容なのでとても貴重でありがたいという声もいただいた。参加した子供たちも、珍しい民族楽器を手にとったり、すばらしい演奏を聴いて目を輝かせた。
 参加した学校の教師に聞くと、子供たちをこうした学校外の催しに参加させるのは調整がかなり大変だという。それでも、これまで多くの小学生たちが参加してきているということは、担当する先生たちの熱意と学校の理解があるからだろう。わたしたちは、できるだけ多くの学校にも参加してほしいと、各市の教育委員会などを通じて広報を行ってきた。神戸市内の学校にも当然告知している。ところが、市内外の学校事情はそう変わらないはずなのに、参加申し込みをしてきたのは、先に触れたように神戸市外の学校がほとんどなのである。スポンサーとしてみれば、神戸に本社のある私企業が無償で提供するこうした機会にほとんど反応してこない神戸市内の学校の事情を理解できず対応に苦慮しているのが現状である。
 わたしたちのやっているささやかなワークシッョプに、神戸市内の小学校からなんらかの反応や参加申し込みが少ないのは、いろいろな事情があるのだろう。しかし、わたしたちがちょっと気になるのは、先生たちの熱意や学校の管理がどうなっているのかということだ。
 2001年に、日仏芸術家交流団体、アクト・コウベの活動の一環として招待したフランス人アーティストに神戸市内の小中学校でワークショップをやってもらうという企画をしたことがあった。そのときもいろいろな学校に呼びかけたが、やはり反応は鈍かった。また、知り合いの神戸文化ホールの担当者から「こっちから、例えばホールの楽屋裏ツアーなどいろんな企画を学校に提案しているが、ほとんど申し込みがない」という話も最近聞いた。だから、ことはどうもわたしたちのワークショップだけのことではないようである。
 今、神戸市内の小学校や中学校はどうしてそうなっているのか、杞憂かもしれないが、ちょっと気がかりである。 

メールマガジン『論々神戸』2004年3月号掲載