めんこい通信2009年5月21日号

 ええ、バーンスリーのHIROSです。 
 この通信はBCCでお送りしています。こういうものは不要だ、という方はご連絡下さい。この通信は皆様の生活向上にはほとんど役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでもご一読下されば幸いです。いつもいつも長くてスミマセン。 
 みなさんいかがお過ごしですか。 
 世界中で広がりはじめた新型インフルエンザの国内での初感染者はなんと神戸の高校生ということらしい。目に見えないウイルスはいかに厳密にやっても水際で止めることはできないのですね。マスコミの解説を追ってみると、マスクやうがいにはほとんど被感染効果はないとか、いや、あるのだとか、タミフルは効く、いや効かないとか、生物兵器としてどこかがばらまいたのだとか、いろんな人がいろんな意見をいっています。知識をもっていると思われる人々にしても意見はかように一様ではないのでどうしたらいいのか分かりません。権威のある正確な情報に乏しく、専門家らしい人々がマスコミを通じていろんなことをいうものだから人々はそのいちいちに反応してうろたえる。 
 しかもうろたえぶりはヒステリックにすら見えます。他者と比較して初めて自我が安定する国民性といえるかもしれない。あるいはこういう構図にも見えてきます。オカミつまり行政府はそれほど子供に愛情をもたない母親だと。愛情深いポーズで「○○ちゃん。風邪ひかないようにマスクしましょうね」というと、まだまだ社会に無知な子供たちは疑うことなく母親の言うことを聞く。母親が実際に心配しているのは自分自身だけなのに。うがち過ぎかもしれませんが。 
 マスクをせずに神戸の地下鉄に乗りましたが、ワダスを含めマスクをつけていないものが1車両に二人だけでした。これはかなりコワイ風景です。いつか、マスクをつけないで動いていると「ヒコクミン」などと言われそうな気がします。 
 ともあれ、今後どうなっていくのか予測はつきませんが、ま、普通通りに生活することと、大流行にならないことを祈るのみです。日本の場合はこのようにうろたえているとはいえそれなりに衛生や予防は意識されていますが、インドとか東南アジアなんかはどうなんだろう。日本はそっちの方でパンデミックが起こらないようにするにはどうしたらいいのかも考える必要がありますね。なにせ、ウイルスは国境とか民族とか宗教とか音楽を見分けて宿主を探すことはないわけなので。かくいうわれわれも昨日は階下のダイエーで冷凍野菜、米、高野豆腐など比較的大量の備蓄食料を買い込んだりして1ミリほどうろたえてはいるのであります。ライブ予定もひとつキャンセルになってしまいました。早く終息してもらいたいものであります。

■4月1日から11日まで、聲明グループ「七聲会」と一緒にオランダ、ベルギー、オーストリアへ行ってきました。どの会場でも大好評でした。七聲会の聲明は本当に素晴らしいのです。詳しくはまだまだ終わりそうにない「ツアーよれよれ日記」で紹介するつもりです。オランダ人というのはみな恐ろしく背が高く自転車が好きだとか、成田で買っていったお土産の日本酒がセキュリティ・チェックで没収されたとか、オーストリアの白ワインは実においしいとか、ツアーの印象はいろいろとあるのですが、一つだけとても印象に残ったことを書いてみます。 
 それは、音楽の都といわれるウィーンの街には音楽がない、ということです。ここでいう音楽とは、日本だったら当たり前の街中に溢れるBGMです。ウィーンの中心街を歩いて聞こえてくるのは、人々の話し声と車の音だけです。案内してくれた現地の人によれば、ストリート・ミュージシャンにも厳しい制限があるとのこと。それだけに、聖シュテファン大聖堂で鳴り響いていたパイプオルガンの音は実に新鮮でした。アントワープの中央広場でも音楽は聞こえてこない。オランダのユトレヒトの街でもスピーカーを通した音楽はほとんどなく、街頭オルガンの音だけ。ドナウ川沿いの小さな町、クレムスの商店街で聴いた唯一の音楽はハンガリーからきた男二人のジプシーによるギターとバイオリンでした。 
 ヨーロッパへ行くと、日本では少ない生活実質感を感じることがあるのですが、おそらく街にBGMが溢れていないことも原因の一つなのではないかと思います。それにくらべて我が日本はどこへ行っても浮かれているよう感じなのではないでしょうかねえ。

これまでの出来事

 ヨーロッパから帰ってきてすぐにガッコウのジュギョーが始まり週2回拘束状況になりました。ヨーロッパ・ツアーは文化庁の支援をいただいたのでずっと面倒な書類仕事もやらざるを得ない。ジュギョーの準備と紙仕事以外では、マイケル・ムーアの『シッコ』で驚くべきアメリカの医療制度にあきれかえり、同じマンションにときどき住む作家の後藤正治さんを招きうどん打ちに励み、アーティスト集団CAP内に麻雀部を創設して部活をはじめ、ほとんど会ったことのなかった甥の結婚式にネクタイをしめて出席し、関西の尺八界重鎮6名のコンサートに出かけて尺八の表現力に圧倒され、ご機嫌なブラスバンドを率いたダイチャンこと久米大作さんのライブを聞きにいき(久しぶりの大音響バンドで興奮しました)、義弟宅でふたたびうどんを打ち、桂文珍独演会でほほう彼もなかなかだったんだなあと感心し、CAPスタジオQ2でタゴールソングをタダで演奏し、仏教大学でのコンサートのついでに日独シニア女性二人と生まれて初めて嵯峨野と嵐山を観光し、なんとワダスのグルのハリジーと一緒にモロッコで演奏することになったという尺八の倉橋義雄さん(オランダとベルギー公演で一緒にまわりました)と宴会し、とたいしたことはまったくしていません。

この間に読んだ本

 特殊個室滞在時間が相変わらず長いため、この間に眺めた本は以下。『本能はどこまで本能か ヒトと動物の行動の起源』(マーク・S・ブランバーグ/塩原通緒訳、早川書房)、『今世紀で人類は終わる?』(マーティン・リース/堀千恵子訳、草思社)、『荒野へ』(ジョン・クラカワー/佐宗鈴夫訳、集英社文庫/途中リタイヤ)、『聞かせてよ、ファインマンさん』(R.P.ファインマン/大貫昌子・江沢洋訳、岩波現代文庫)、『物理法則はいかにして発券されたか』(R.P.ファインマン/江沢洋訳、岩波現代文庫)、『科学は不確かだ』(R.P.ファインマン/大貫昌子訳、岩波書店)、『東京大学のアルバート・アイラー キーワード編』(菊池成孔+大谷能生/文春文庫/菊池さんというのは本当にすごい人です)、『東京大学のアルバート・アイラー 歴史編』(菊池成孔+大谷能生/メディア総合研究所)、『納棺夫日記』(青木新門/文春文庫/これはツアー中に読んでました。短い作品ですがかなりエッセンスがぎゅっと詰まっている本で読み応えあり)、『パスル・バレス』(ダン・ブラウン/越前敏弥・熊谷千寿訳/角川文庫/映画『悪魔と天使』もつい先日見てしまいました。どうも読んだことがあるなあ思い出すと、実はずっと以前に図書館から借りて読んでいたのでした。最近はこういうのが多い)、『人物ノンフィクション 1960年代の肖像』(後藤正治/岩波現代文庫/ワダスと同時代人の書くものには共感させられます)、『自然界の非対称生』(フランク・クロース/はやしまさる訳/紀伊国屋書店)、『知っておきたい日本の仏教』(武光誠/角川ソフィア文庫)、『シャドウ・ワーク』(I.イリイチ/玉野井芳郎/栗原彬訳、岩波同時代ライブラリー)、『法然を語る』(町田宗鳳/NHK出版)、『文化と抵抗』エドワード・サイード/大橋洋一・大貫隆史・河野真太郎訳、ちくま学芸文庫、/パレスチナ問題に関するサイードの考え方が伝わってきます。こういうのは多くの人に読んでほしいものであります)、『サイード自身が語るサイード』(エドワード・サイード/大橋洋一訳、紀伊国屋書店)、『裁判長!これで執行猶予は甘くないすか』(北尾トロ/文春文庫)、『健腸生活のススメ』(辨野義己、日経新聞/特殊個室でこういう本を読むとはなんとも情けない気分です)。

■宣伝 
 わが聲明グループ<七聲会>の第2弾CD『天下和順』が発売中です。ヨーロッパではバカ売れでした。皆様もぜひご一聴を。一般のCDショップには出荷せず通販のみで2,500円+送料で販売します。このメールの読者のなかでご希望の方には送料なしでお送りさせていただきますのでご連絡下さい。

これからの出来事(5月23~)

 月曜日が京都、火曜日が瀬田(滋賀県大津市)と週2回のジュギョーはずっと続きますが、その他の出来事です。

■5月23日(土)19:00-/演奏とはなし「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」/STUDIO Q2、神戸/ゲスト:森美和子(篠笛)、田中りこ:タブラー、HIROS:バーンスリー/問い合わせ:CAP<http://www.cap-kobe.com/q2/> 
 この企画は2ヶ月に1度くらいのシリーズになる予定です。第1回目のゲストは、篠笛、龍笛奏者の森美和子さん。すばらしい演奏家で、かつ十津川盆踊り常連組です。「和」の笛とインドの笛の違いなどについての話を交えながらそれぞれ演奏します。篠笛とタブラーのセッションなんてのもある予定です。コンサートがどんどんキャンセルされるなか、主催者のCAPの下田さんは「なんとしても、やる」と宣言していました。まあ、集客力のないワダスであることと昨今の騒がしい情況からいってどれほどのお客さんにおいでいただけるかちと不安ではありますが、いらっしゃったらむちゃくちゃ歓迎しますので是非おいで下さい。考えてみれば、もう明後日です。

■5月31日(日)昼の部14:00~/夜の部16:00~/ダヤ・トミコスタジオ公演『50人劇場』/どこで/DAYA TOMIKO’S STUDIO(京都市上京区御前通り一条上る東竪町113-7)/ゲスト:HIROS/問い合わせ:075-464-1728 
http: //www7a.biglobe.ne.jp/~daya-idance/ 
 ダヤさんは京都を本拠に活躍するバラタ・ナーティヤムの素晴らしい舞踊家です。ずっと以前に彼女の創作舞踊のお手伝いをしましたが、今回はその一部を再演する予定です。ワダスのソロもあります。ぜひ。

■6月27日(土)17:30開演/shin-bi、京都/野中ミキ:オリッスィー、田中りこ:タブラー、HIROS:バーンスリー/料金/予約:2500円 当日3000円(定員50名)/お問い合わせ・ご予約/shin-bi、Tel/Fax :075-352-0844、E-mail :info@shin-bi.jp、URL : http://www.shin-bi.jp 
 インド舞踊オリッスィーの野中さんが主催するイベントです。野中さんも京都を中心に活躍するオリッスィーの素晴らしい舞踊家。ジャワやバリ舞踊とも共演したりと新しい表現方法にどん欲に取り組んでいます。今回は、田中りこさんのタブラーとワダスとで即興舞踊もある予定。京都方面の方はぜひ。

■7月11日(土)20:00?~)/山形からインド経由トルコへ/トルコ料理、サクリエブ/アポ:トルコ打楽器、Sefer Simsek(セファ・シムシェイク):サズ、HIROS:バーンスリー 
http://www.sakliev.com/ 
 仏教大学でのコンサートで偶然一緒になったトルコ人演奏家アポと、ひょんなことからライブしようぜ、てなことになりました。まだ先のはなしですが、ご近所の方でご興味がおありでしたら是非おいで下さい。山形の民謡がいつしかインド音楽に変わり気がつけばトルコ音楽だった、みたいな演奏にしたいと企んでいます。