めんこい通信2009年7月12日号

 ええ、バーンスリーのHIROSです。 
 この通信はBCCでお送りしています。こういうものは不要だ、という方はご連絡下さい。この通信は皆様の生活向上にはほとんど役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでもご一読下されば幸いです。いつもいつも長くてスミマセン。 
 蒸し暑くなってきましたが、みなさんいかがお過ごしですか。 
 新型インフルエンザの大騒ぎが一気に収まり、「近い将来」を繰り返すアソー内閣ばかりではなく行政全体が死に体に瀕し、北朝鮮はミサイルをちょこっとぶっ放し、中国のウイグル自治区あたりが混乱し、新聞は未曾有の大不況だ環境だ二酸化炭素だエコだチキュー温暖化だ気候変動だと騒がしくと、世の中を取り巻く状況は相変わらずネタに不足することなく確実に時間が過ぎていきます。

■まずは宣伝 

 この18日(土)に、神戸ポートターミナルにあるCLUB Q2で「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」第2弾があります。今回のゲストは、バリ音楽の小林江美さん。バリの音楽も奥深く、タブラーの田中りこさんと共に一緒にセッションするのが楽しみです。まだまだ席に余裕がありますので、お時間とご意志のおありの方は是非おいで下さい。詳しくは、http://www.cap-kobe.com/club_q2/2009/06/24151301.html

■アリー・アクバル・カーン死去 
 時間が確実に進んでいることを実感するのは、知っている人々のなかからポツリポツリとあちらに逝かれたことを知るときですね。すでにこの通信でも触れた一昨年、去年の山形の父と母、やはり昨年の村田公一さん以外に、最近では、マイケル・ジャクソンはもとより面識もないのであっそうと受け止めましたが、6月19日に享年87歳で亡くなったアリー・アクバル・カーンの死はちょっと感慨深いものがありました。 
 彼はインド音楽界の大御所で知る人ぞ知る存在です。ワダスは彼のすごい生演奏はたびたび聞いたことがあるし、コルカタのご自宅で一度お会いしたこともあります。震災のあった1995年のことです。 
 長男のアーシシに会うためにご自宅のドアを開けると、骨付きチキンをしゃぶった上半身裸、腰巻き姿の御大がいきなり黒光りのする魁偉な顔でワダスを見て「何か用事か」といわれたのを覚えています。アーシシと約束した、というと不機嫌そうな声で「あっそう。奥にいるからここで待ってなさい」といってまたチキンをしゃぶり始めた。リビドーの旺盛な人だったらしくその手の逸話がゴマンとあります。友人のサーランギー奏者ドゥルバ・ゴーシュが話してくれた、その一つ。 
 マスコミのインタビューを受けたとき、聞き手が尋ねた。 
「あなたにはお子さんがたくさんいらっしゃいますが、何人おりますか」 
 彼はぶっきらぼうにこう答えたという。 
「知るか!(Who care!)」 
 墨絵の国廣節夫さんが2007年暮れに亡くなったことを知ったのはつい最近です。久代さんの昔からの知り合いで、また三田で一度ライブを作っていただいたことがありました。他にも、室生の大きな農家を買い取って農業をしたりタブラーを叩く逵さんの奥様、ギャラリー島田の島田誠さんの奥様など。 
 今後もこうした悲報に接することが増えてくるんでしょうね。うーむ、年を取るというのはこうことだったのねと感慨ひとしおであります。

■記憶欠落やばいジケン連発

 
 年齢が関係すると思いたくない記憶欠落やばいジケンも頻発してくると、なんとなく上記の加齢印象が強まるような気がします。 
 6月27日の京都でのライブでは冷や汗の出たジケンがありました。会場である四条烏丸のshin-biに着いたとき、ふと肩に軽さを感じた。商売道具である楽器がない。こんなことは初めてでした。ライブまでには無事戻ってきたので事なきを得ましたが、考えるだにぞっとする記憶欠落でした。 
 気がついたときワダスの脳は0.1秒ほど回転が停止し、ついで記憶検索と対策思考が猛スピードで始まる。置き忘れたのは地下鉄車内か。いや、それはない。JR車内か、ホームのうどん屋か。車内であれば相当に幸運でないかぎり間に合わない。できるかぎり速くJRとうどん屋に訊かないと、とあせりつつ周囲を見回す。電話番号を調べられそうな退屈そうな喫茶店が見当たらない。2階の、客のまばらな家具屋を遊弋していた女性店員に電話帳の有無を尋ねると「ありませんけど、どこの番号を調べたいのですか」といってくれた。しっかりした表情の30代くらいの女性だった。「JRとうどん屋です」「分かりました。ここでお待ち下さい」。ワダスは売り物のキッチンテーブルセットのイスに座って待つ。その間、自宅にある代わりの楽器を配偶者に運んでもらうことも考えて電話してみた。ところが延々と話し中が続いている。いても立ってもいられない状況なので座ったり立ったりを繰り返す。 
 しばらくして女性が戻ってきた。「うどん屋さんは何軒もありましたがホームのかどうか分かりません。JRはこれです」と番号の書かれたポストイットをテーブルに並べた。まずJRに電話。到着時間、ホーム、車両、発見された場合の連絡先を申し述べ、ついでうどん屋の電話番号を聞く。うどん屋につながった。40代半ばと思われる女性は、ほつれ毛を耳にかけ直しつつ(たぶん)こういった。「ありますよ。とり置いておきます」。 
 このジケンは商売に支障を来す危険性をはらんでいて、コワイ。後で配偶者に話すと「緊張感が足りないからだ。なに? i Podで落語を聞きながらカレーうどんを食ってた? 演奏する日に落語なんか聞くからそうなるのだ」とあきれられたことはいうまでもない。彼女の「キンチョー感が足りない」というのはきっとごく一般的で正しい指摘だろう。でも、じゃあ、キンチョー感向上のためにはどうすればいいのだろうか。JRの運転手がやっているみたいに、いちいちの行動を指差し確認するという手しか思いつかない。電車内で、これ、よし、あれ、よし、とやるのもなあ。 
 で、その後もこの手の記憶欠落というか思い違いは続いています。先日は大阪の友人宅を訪ねる目的で二人で電車に乗ったのですが、途中で約束の日が1週間ずれているのではないかと不安を覚えた。大阪駅で下車し念のために電話で確認すると案の定約束は1週間後の日曜日。駅構内のバーでビールを飲んでそのまま三宮に戻りました。 
 こんなふうなジケンが続いたので、最近は記憶欠落と勘違いに怯える日々なのでした。幸いなのは、二人ともあまりにヒマなので、他人にご迷惑をかけることが少ないことです。

■五十肩 
 ここ2ヶ月ほど、まず右腕を上げると激痛が走り、そのうち左腕を変にねじっても痛みを覚えるようになりました。もうすぐロクジューだというのにゴジューカタというものらしい。練習後も肩はどんよりと痛むし、なによりも寝る姿勢の自由度が制限されのがつらいです。そのうち治るというのが通説ですが、そうとうに憂鬱。腹部ボーマン感といい、ゴジューカタといい、記憶欠落といい、なんだか心身方面のオトモダチが増えつつあるようです。「肩が痛い」というと、配偶者は第3のビールをぐびっと飲みつつ「あら、わたしはなんともないわよ」と即座に会話の土俵を自分方面に引き寄せて応答するのでした。 
 

これまでの出来事

■前回の通信のすぐあと、インフルエンザ騒ぎのなかポートターミナルのQ2で行われた森美和子さんの篠笛とのライブはとてもおもしろかった。なんとなく馴染みのあるつもりの篠笛ですが、意外と知らないことに気付かされました。31日は京都でダヤ・トミコさんの公演に参加。年齢はワダスとそう変わらないダヤさんのシャープで隙のない踊りは際立っていました。2回公演とも満席でした。6月のジュギョー以外の出来事はあまりありませんが、タブラーのブーシャンとカズクンには龍大のジュギョーのゲストに来てもらいました。料理の実際を見るためにインドへ行くのでアドバイスをという雑誌記者、バーンスリーレッスンの奥野青年、1年ぶりにインド留学から帰った高濱さんらが来宅。高濱さんからはシャンティニケタンの生活や鋭いナイフのような雰囲気になっている井上想君の話などを聞きつつ手打ちうどん。その合間に山形の高校の同級生高橋敏幸さんから極め付きの極上さくらんぼが届き、二人であさましく食べつくしました。で、記憶欠落ジケンの起きた野中ミキさんとの共演も無事終わり、打ち上げ後は立ちっぱなしの阪急線で三浦寛子さんのおしゃべりを聞きながら深夜に帰宅。その次の日は大阪の萬福寺の石田住職のお誘いで「マサ送別会」。マサさんというのはタブラーを演奏する女性で、フランス人の夫とともにリヨンに移住するとのこと。楽器をもっていったので、住職のコントラバス、ギター、ピアノ、タブラーでにわかセッションもしましたが、全体にはだらだらとした宴会でありました。オリッスィー舞踊の野中さんにうどんの自慢をしたら「我が家でぜひ」ということになり、京都の八瀬のご自宅でうどんを打ち、そのまま泊めていただきました。舞踊の弟子の美人針灸師村本さんのマッサージは極楽でした。で、11日は18日のコンサートの宣伝でCAPの下田さんと一緒に鷹取の「FMわいわい」へ出かけて収録。

この間に読んだ本 

 特殊個室滞在時間が相変わらず長いため、この間に眺めた本は以下。『人間の大地』(上下、プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1986) 
『すべての民族の子』(プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1988)。インドネシアにはすごい作家がいたんですね。3冊とも大長編の一部でまだ続きがある、と貸しくれた佐久間さん。続きを早く読みたい。『誇りと復讐』(上下、シェフリー・アーチャー/永井淳訳/新潮文庫、2009)。なかなかによくできた話でしたが、もはや話のディテール記憶は希薄です。『ぼくと1ルピーの神様』(ヴィカス・スワラップ/子安亜弥訳/ランダムハウス講談社、2009)。映画よりも面白い。この作家がこんど在大阪インド総領事となって赴任すると聞きました。『大聖堂 果てしなき世界』(上中下、ケン・フォレット/戸田裕之訳/ソフトバンク文庫、2009)。イギリスの中世を舞台にした小説世界を堪能しました。『寺よ、変われ』(高橋卓志/岩波新書、2009)。『生きる意味』(上田紀行/岩波新書、2005)。この2作はわが坊主バンドの人たちにもぜひ読んでほしいものです。『ロハスの思考』(福岡伸一/ソトコト新書、2006)、『異文化理解』(青木保/岩波新書、2001)、『悪について』(中島義道/岩波新書、2005)、『南極料理人』(西村淳/新潮文庫、2001)、『後藤正治ノンフィクション集第1巻』(後藤正治/ブレーンセンター、2009) 。ご本人からいただいた後藤さんの初期の臓器移植をテーマにした作品。普遍的な問題で、今読んでも興味深いです。

■宣伝 
 わが聲明グループ<七聲会>の第2弾CD『天下和順』が発売中です。ヨーロッパではバカ売れでした。皆様もぜひご一聴を。一般のCDショップには出荷せず通販のみで2,500円+送料で販売します。このメールの読者のなかでご希望の方には送料なしでお送りさせていただきますのでご連絡下さい。

これからの出来事(5月23日~)

 月曜日が京都、火曜日が瀬田(滋賀県大津市)と週2回のジュギョーもあと2回。600枚くらいのレポートを読んで採点するという義務がちと憂鬱にさせます。さらに、8月1日、2日と神戸ポートターミナルのQ2で行う予定の「~マンディ・サマサマ 09「シェア!」~ジャワ震災から3年、アートで大混浴 !?」の準備や来日するインドネシア人オンさんが我が家に宿泊することになったので、レポート採点が間に合うかどうか、かなり心配です。

■7月18日(土)/演奏とはなし「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」/CAP CLUB Q2、神戸/ゲスト:小林江美(バリ音楽)、田中りこ:タブラー、HIROS:バーンスリー/前売予約¥2,000(membership¥1,600) 当日¥2,500円/問い合わせ:CAP

■8月1日(土)/「~マンディ・サマサマ 09「シェア!」~ジャワ震災から3年、アートで大混浴 !?」/CAP CLUB Q2、神戸/ジョクジャカルタ活動報告+「グンパ」演奏/2日-マルガサリ(ガムラン)、ダルマブダヤ(ガムラン)他/入場無料 
 詳しくは、http://gamelanaid.web.fc2.com/MandiSamsama3/tamagomessage.html

■8月2日(日)11:00-17:00/マンディ・サマサマ3/CAP CLUB Q2、神戸/マルガサリ(ガムラン)、ダルマブダヤ(ガムラン)、東野健一(紙芝居)、岡林立哉(ホーミー)、黒拍子(和太鼓)他/主催:<ガムランを救えプロジェクト>/-前売:2000円/当日:2500円(ジャワのキーホルダー付き) 
 詳しくは、http://gamelanaid.web.fc2.com/MandiSamsama3/tamagomessage.html 
 出演者、関係者だけで数十名の丸一日音楽温泉です。入場ご希望の方はinfo@cap-kobe.comかワダスまでご連絡下さい。

■8月3日(月)、7日(金)、12日(水)/淡路夢舞台奇跡の星の植物館での夏祭り「バリ祭り」/ザ・バリンドバンド(バリ音楽:小林江美、HIROS:バーンスリー) 
 バリ音楽のエミーこと小林江美さんと出たとこ勝負のにわかセッションです。

■9月12日(土)19:00~/山形からインド経由トルコへ/トルコ料理、サクリエブ/アポ:トルコ打楽器、Sefer Simsek(セファ・シムシェイク):サズ、田中りこ:タブラー(未定)、HIROS:バーンスリー 
 トルコ人演奏家アポとのライブは、7月に予定されていたのですが、互いの勘違いで9月に延期しました。山形の民謡がいつしかインド音楽に変わり気がつけばトルコ音楽だった、みたいな演奏にしたいと企んでいます。