めんこい通信2010年5月3日号

 ええ、バーンスリーのHIROSです。
 この通信はBCCでお送りしています。皆さまの生活向上にはほとんど役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでもご一読下されば幸いです。

 寒い春もようやく峠をこえた感じです。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
 例年のように、4月からガッコーのジュギョーが始まりました。二十歳前後の若い学生を相手にしゃべるのはなかなかに楽しいのでありますが、2つのガッコーで600人を超えると、レポートを読んだり採点するのが難儀です。おそらく簡単に単位が取れるというイメージからか、受講生がいつも多いのです。
 京都のガッコウの喫煙所に小柄で痩せた男子学生がいました。なんとなく脱力していて、目に精気がない。ゲゲゲの鬼太郎のような髪はひさしく洗っていないためか、艶がない。去年も教室で見たように思ったので話しかけました。
「あれ、君、覚えてる。去年も受けてたよね?」
「はい」
「単位、落としたの?」
「はい。途中から授業を受けれなくなっちゃって」
「えっ、なんで」
「夜、眠れないので、日中ずっと寝ちゃうんです。で、起きた頃にはジュギョーが終わってるんです。これじゃあまずいと思って、今日は徹夜して出てきました」
 4回生の彼はすでに2年も留年して卒業できずにいるという。
「いちおう12時ころ布団に入るんですが、もんもんとして結局、寝るのが朝方になります。で、起きてみると夕方、みたいな。仕送りしてもらっている親からは早く卒業しろっていわれてて、僕もそうしたいんですけど」
「そりゃそうだね。学費は安くはないんだから、親も大変だよ。なんか、精神的な病気ということもあるかも。医者には行ってないの」
「その時間がとれないんです。寝てますから。それと、精神病とか診断されると卒業はますますできなくなるし」
「うーん。友だちに起こしてもらうとかしたら」
「友だちはいないです。ずっとこういう感じなんで」
「そうか。ま、せいぜい頑張って学校に来るしかないなあ」
「はい。来年こそは卒業しないとやばいですからね」
 こういう感じの学生はたいてい毎年いるのですが、ヒジョーシキ・コーシのワダスにはどうしようもありません。どうしたらいいんでしょうかねえ。

■「1000人で音楽する日。」
 前回の通信で触れましたが、10月23日(土)に「1000人で音楽する日。」というイベントを計画しています。会場は、万博公園の太陽の塔の真後ろのお祭り広場。月に1回のワークショップを重ねて最終的には1000人の演奏者を集めたいと考えています。
 演奏するのは、フィリピンの作曲家ホセ・マセダの「ウドロ・ウドロ」という作品。拍子木、簡単な竹の打楽器や笛、声を使った曲で、音楽家でなくとも誰でも演奏できます。「30人から数千人にいたる演奏者のための音楽」と作曲家が付記しているように、この曲は専門的な音楽訓練のない人々でも演奏に参加することを当初から想定して作られたものです。このとんでもない作品は、実は20年ほど前に京都の仁和寺境内で演奏されていて、ワダスも参加しています。そのときの参加者は約800人ほどでした。われわれが一般に考える音楽とは違っていますが、音の雲のようなものが仁和寺を包み、不思議な体験でした。
 以下が今後の予定です。興味がある、ぜひ参加したいという人はご一報下さい。大歓迎です。
5月15日(土)「10人で練習をする日。」
6月12日(土)「30人で練習をする日。」
7月11日(日)「50人で練習をする日。」
8月22日(日)「100人で練習をする日。」
9月11日(土)「300人で練習をする日。」
10月11日(月・祝)「もうすぐ1000人で音楽をする日。」
時間:14:00~16:00
場所:国立民族学博物館特別展示室地階
  http://www.minpaku.ac.jp/museum/information/access.html
参加費:無料(自然文化園入場料が必要です)
 本番は10月23日(土)午後1時からです。
 もうすぐ、専用のウェブサイトも作りますので見てみて下さい。
  http://www.1000ongaku.com/

■七聲会イスタンブール公演
 この23日(日)、イスタンブールのトプカピ宮殿のなかにあるAya iriniで、七聲会が演奏することになりました。去年のオランダ・ベルギー・オーストリアに続く海外公演です。今年は海外公演はないだろうと思っていたので、びっくりです。
 昨年11月、あるアメリカ人から来た「ウェブサイトを見た。来年のイスタンブールで行われるInternational Mystic Art Festivalに出てほしいので資料を送って欲しい」というメールが発端でした。ふつう海外ツアーは1年以上前から準備に入るのですが、すいすいと具体化して実現となりました。
 フェスティバルは20日から25日の5日間。七聲会のメンバー5名とワダスは22日(土)夜の便で関空を発ち、23日(日)早朝5時半にイスタンブールに到着し、その日の夜に公演です。頭がよれよれになっていないか、ちょっと心配ではあります。
 http://www.en.istanbul2010.org/HABER/GP_670024
 初めてイスタンブールを訪ねたのは1972年。実に38年前のことです。ドイツで仕入れたポルノ雑誌を、バザールで毛皮のチョッキと交換したことを思い出しました。

これまでの出来事

 前回のめんこい通信からほぼ1ヶ月しか経っていないので報告するほどの出来事はあまりありません。とはいえ、七聲会公演や来年の渡印やジュギョーの準備、秋までの企画など、なんやかんやとありました。
 毎月曜日に京都のガッコウでジュギョー、そのまま山科の先輩宅に居候、翌日の火曜日に瀬田(滋賀県)のガッコウでジュギョー、という例年パターンです。

■4月10日(土)「ウドロ・ウドロ」ワークショップ/国立民族学博物館地階
 10月23日に「1000人で音楽する日。」を企画していたら、なんと作曲家ホセ・マセダの教え子であるアルセニオ・ニコラス氏が、民博の研究員として関西に滞在中だと中川真さんに教えてもらいました。そこで、自身もマニラの高校で「ウドロ・ウドロ」を制作したニコラス氏にワークショップをしてもらおうということにしました。当日は、京都仁和寺公演の仕掛人であった中川真さん、岩淵拓郎さん、佐久間新さん、小島剛さんとワダスの共同制作グループ「ウドロ組」およびその家族、知り合いの他、主催者の千里文化財団、民博友の会の会員など30名が参加でした。スキンヘッドのニコラス氏は音楽考古学者ということですが、ジョークの通じる気のいいオッサンでありました。

この間に読んだ本

 横になったり狭小個室でだらだらと読んだ本は以下。あいかわらずラインナップにはまったく統一がありません。
『はるかな記憶』(下/カール・セーガン+アン・ドルーヤン/柏原精一+佐々木敏裕+三浦賢一訳、朝日新聞社、1994)・・・これを読むと、ヒトの活動がチンパンジーとほとんど変わらないように思えてきます。
『マジック・サークル』(上下/キャサリン・ネヴィル/大瀧啓裕訳、学習研究社、1998)
『お坊さんが隠すお寺の話』(村井幸三、新潮新書、2010)・・・高い戒名料の理由もそうですが、お寺経営というのもなかなか大変なのだということが分かります。
『母親幻想』(岸田秀、新書館、1995)・・・自ら意見をいわずすべてを受け入れる天皇は母系社会の象徴であったのか。
『サイバービア』(ジェイムス・ハーキン/吉田晋治訳、NHK出版、2009)・・・ロンドンを襲うドイツ軍機に高射砲がなかなか当たらない。どうすればよいか。サイバネティックスという概念はそこから生まれたと。知らなかった。
『葬式は要らない』(島田裕巳、幻冬社新書、2010)・・・日本の既成仏教教団の将来、危うしです。
『貧困大国アメリカⅡ』(堤未果、岩波新書、2010)・・・アメリカの格差の大きさと大企業の冷酷さにたじろぎます。
『また会う日まで』(上下/ジョン・アーヴィング/小川高義訳、新潮社、2007)・・・ものすごく長い。読破するのに1ヶ月かかりましたが、なかなかに充実していました。
『冬の兵士』(アーロン・グランツ/TUP訳、岩波書店、2009)・・・イラク、アフガニスタンに派遣された米軍兵士たちの証言集です。「テロリスト」と住民の区別なく続く残忍で無意味な殺戮、派遣された多くの兵士たちの帰国後の病気や自殺、軍幹部の情報隠蔽、汚職。アメリカは相当に狂っているとしか思えません。こういう狂った軍隊が日本の防衛に本当に必要なのだろうか。彼らにフテンマやナハやミサワやイワクニやヨコスカやサセボにどうしてもいてもらいたいと思っている人は、イラクやアフガンで現在進行中のとんでもない事実を知っているのだろうか。

これからの出来事(2010年5月5日~)

 7月までの毎週月曜日、火曜日のジュギョー以外の出来事は以下です。かなりヒマです。そうそう、6月から神戸新聞夕刊の「随想」に7回、連載寄稿することになっています。掲載は月に2回。神戸新聞をとっておられる方はのぞいてみて下さい。ま、たいしたことは書かれないでしょうが。

■「1000人で音楽する日。」のためのピクニック
 繰り返しになりますが、以下が「1000人で音楽する日。」のためのピクニック日程です。興味のある方はふるっとご参加を。
5月15日(土)「10人で練習をする日。」
6月12日(土)「30人で練習をする日。」
7月11日(日)「50人で練習をする日。」
8月22日(日)「100人で練習をする日。」
9月11日(土)「300人で練習をする日。」
10月11日(月・祝)「もうすぐ1000人で音楽をする日。」
時間:14:00~16:00
場所:国立民族学博物館特別展示室地階
  http://www.minpaku.ac.jp/museum/information/access.html
参加費:無料(自然文化園入場料が必要です)

■5月21日(金)/インド音楽修行コンサート/CAP CLUB Q2、神戸/18:00~修行トーク/19:00~コンサート/井上想:インド古典声楽、中川祐児:サーランギー、松本晃祐:タブラー、HIROS:ナビゲーター
 インドで音楽修行中の井上想君と中川祐児君が、修行中間報告を兼ねてコンサートをします。どういう修行なのか、生活なのかなどの話もしてもらおうと思っています。今年インドへ行ったときに二人に会いましたが、半端じゃない修行の日々でした。楽しみです。ワダスはカレー製作と聞き役です。
 http://www.cap-kobe.com/club_q2/

■5月22日(土)/ガムランエイド・マンディ・サマサマ/アート・セント、大阪/北区天神橋7-13-14「天神橋温泉」/UDLOT-UDLOTワークショップ他
 マンディ・サマサマというのは「一緒にお風呂に入ろう」という意味のインドネシア語で、これまで神戸で2回行いましたが、今度は大阪です。場所は、廃業した銭湯の建物である「アート・セント」。これで文字通りのマンディ・サマサマです。ワダスは、このイベントが終わったらそのまま関空へ向かい、10時半の便でイスタンブールに飛びます。

■5月23日(日)International Mystic Art Festival/ Aya Irini Museum、Istanbul/七聲会:聲明、HIROS:マネジメント/5月27日帰国

■6月28日(月)/京町家セッション/堺町画廊/福原左和子:筝、田中りこ:タブラー、HIROS:バーンスリー/問い合わせ:堺町画廊
 ひさびさの堺町画廊ライブです。今回のゲストは美しい筝奏者の福原左和子さん。福原さんと何かしよう、となったのはある「事件」がきっかけでした。4月の中頃、グルのハリジーから「5月3日、香港でフュージョン・コンサートがある。筝の演奏家を紹介せよ」といきなりメールがきたので、福原さんを紹介しました。通訳としてHIROSも来い、と連絡があり、わーい、香港だあ、と喜んでいたのでしたが、ほどなく再びグルから短文のメール。「あれはなくなった。許せ」。グルには逆らえない。
 そんなことがあって、じゃあ、京都でなにかしましょうよ、ということになったのです。
 堺町画廊→ http://www.h2.dion.ne.jp/%7Egarow/schedule.html#ThisMonth
 福原左和子→http://homepage3.nifty.com/fukuhara-sawako/

■7月17日(土)/「インドと日本の音楽」1/CAP CLUB Q2、神戸/ゲスト:榮百々代(奄美島唄)/田中りこ:タブラー、石尾真穂:タンブーラー、HIROS:バーンスリー/主催:C.A.P.
 今年も去年に引き続きCAP CLUB Q2で4回シリーズのコンサートを行います。上記はその第1回目です。きっと当日は暑くなっているでしょうね。汗をかきながら奄美の島唄を聴くのもいいですよ。若く可愛い榮百々代さんと演奏するのが楽しみです。
 ちょっともったいぶった企画主旨が以下。
-----昨年の「インド音楽のレンズを通して見えてくるアジア的音楽の可能性」シリーズ・コンサートの続編として、今回はとくに日本の音楽を取り上げる。インドのラーガ(音階)を基礎とした即興性の強い音楽と、さまざまな日本の伝統的音楽との間にはとくに強いつながりはない。しかし、意識的なハーモニーをもたない、一定の拍節をもたない自由リズムのメロディーが多い、という点では同じアジアの音楽として共通する点も多い。今回は、奄美島唄、筝、尺八、篠笛の優れた演奏家をゲストに招き、その共通点を聴き比べ、日本とインドの音楽の奥深さと西洋音楽的手法とは異なるパフォーミング・アーツを味わっていただくことを目的とした。----
 第1回目・・・7月17日(土)19:00-2100
 ゲスト:栄百代(さかえももよ、奄美島唄)
 第2回目・・・9月18日(土)19:00-2100
 ゲスト:福原左和子(ふくはらさわこ、筝)
 第3回目・・・11月13日(土)19:00-2100
 ゲスト:石川利光(いしかわとしみつ、尺八)
 第4回目・・・12月18日(土)19:00-2100
 ゲスト:森美和子(もりみわこ、篠笛)
 レギュラー・ミュージシャン
 田中りこ:タブラー、石尾真穂:タンブーラー、HIROS:ナビゲーター+バーンスリー