めんこい通信2011年1月18日号

 ええ、バーンスリーのHIROSです。
 この通信はBCCでお送りしています。皆さまの生活向上にはまず役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでも一読下されば幸いです。
 ダラダラと過ごしているうちにいつの間にか2011年になり、もうお正月とはいえない雰囲気になりました。オーストラリアやブラジルでは大洪水、ヨーロッパは大寒波の大雪、なんと島根県の松江市も大雪、北海道ではマイナス23度などという町まで出てきて、今年の冬は、むっちゃ暑かった夏とは一転して寒い日が続いていますが、皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
 年賀状を送っていただいたかたがた、ありがとうございました。年賀状というものを出さないわれわれにも律儀に出していただき恐縮しています。まだ1月中は有効として、ツーゾクテキではありますが、
 新年あけましておめでとうございます。
 正月は例年通り、西明石の配偶者実家でした。元日は、89歳の義父が「心房細動でちょっとしんどい。寝てるわあ」となったり、近所に住む義弟の駒井さんが単独でエベレストのベースキャンプに行っていたので、81歳の義母、配偶者、義妹の駒井恭子さんとワダスの4人でおせちと、静かな宴会でした。毎年恒例の麻雀も、ホストの植松奎二夫妻がドイツで中止。というわけで、お正月気分はほとんどなく、あっさりと16回目の震災記念日が過ぎ去り、今日に至っています。
 まずは宣伝といきたいところですが、例年のようにこの時期はなあーんもありません。
 前回は白内障手術報告でした。眼球をぐりぐりとえぐられる恐るべき手術は痛みもそれほど感じることなくつつがなく終わり、今では、かつて視界が白濁していたことすら思い出せないほどクリアになりました。右目の度数が変化したので、近眼および読書用のメガネも変えました。医療技術の進歩は素晴らしいものです。最近はこの白内障はブームのようで、知り合いの何人かからも報告が届いています。いっぽう、親友のボーマン君はあいかわらず居心地がいいらしく立ち去るそぶりも見せていません。

■再びインド
 さて、この時期はなあーんもないので、1月22日から2月20日までの約1ヶ月間インドへ行ってきます。
 今回はムンバイとプネーでコンサートと日本の伝統音楽についてレクチャーをする予定です。他国の音楽文化にほとんど関心のないインド人音楽家たちははたして聞いてくれるのか、ちと心配です。
 予定は以下です。
 1月22日関空-ムンバイ/23日(HIROS生誕61年記念日でもあります)午前1時半ムンバイ空港着、そのままバスでプネーへ/24日知り合いの結婚式参加/25日プネーからムンバイ移動/26日~28日レッスンなど/29日コンサート/30日レクチャー/31日レッスンなど/2月1日ムンバイからプネー移動/4日音楽祭BaajaaGaajaaのセミナー参加/5日BaajaaGaajaaでレクチャー/7日ホームコンサート/8日プネーからムンバイ移動/9日ムンバイ空港からボーパール、グンデーチャーの道場へ/12日ボーパールからデリーに移動。たぶんその日に友人スニール車で8時間かけてカートゥゴダムへ移動/19日カートゥゴダムからデリー移動。デリー空港から関空へ/20日帰国。
 いっけん移動が多くてせわしく見えますが、暑いインドでかなりだらだらできそうです。

これまでの出来事

■11月13日(土)/「インドと日本の音楽」3/CAP CLUB Q2、神戸/ゲスト:石川利光(尺八)/田中りこ:タブラー、石尾真穂(予定):タンブーラー、HIROS:バーンスリー
 石川さんの虚無僧尺八をじっくりと聴きました。お客さんたちも尺八には興味をもったようで、石川さんの「全部で車が買える」という何本もの尺八を触ったり試奏したりと大人気でした。最後のセッションもかなり面白いものになりました。

■11月14日(日)/インディア・メーラー2010/メリケンパーク、神戸/ムケーシュ・ケマネー:カホン、大橋一慶:タブラー、HIROS:バーンスリー
 神戸在住の関西語丸出しインド人ムケーシュに誘われて出演することにしました。12:20~12:40の出演時間いうことで特設舞台の横のテントの控え室で待っていると、『スラムドッグ$ミリオネア』の原作者でもあるヴィカス・スワラップ総領事が「来日インド人舞踊団をもう一回やってもらうので時間をずらしてほしい」とリクエスト。こんな感じでスケジュールが崩れていくのがインド的です。当日のメリケンパークには、カレー、スパイス、雑貨、占い、観光などを扱うテントが3列に並び、人出もけっこうありました。舞台横のプログラムにはどういうわけか「インド音楽とラテン音楽」などとなっていました。ムケーシュの叩くカホンがラテン楽器だったということか。ともあれ、演奏時間20分ということなので、ベンガルの舟歌のみ演奏しました。タブラーの大橋カズ君もなかなかでした。

■12月18日(土)/「インドと日本の音楽」4/CAP CLUB Q2、神戸/ゲスト:森美和子(篠笛・能管他)/田中りこ:タブラー、石尾真穂:タンブーラー、HIROS:バーンスリー
 シリーズ最後のコンサートでした。1部はしんみりとした篠笛。尺八とは違った情緒です。森さんの、聞かす笛と踊らす笛がある、という話は新鮮でした。ワダスのインド古典の後のセッションは、森さんのオリジナル曲「水々」をベースにしたものでした。これがなかなかにうまくいきました。

■年末疾走宴会
 2010年最後のジュギョー後の奥山家「ふぐ宴会」、クリスマス・レッスン宴会、ムケーシュ宅乱入セッション宴会、などなどデッド・エンドに向かって宴会は続くのでありました。

この間に読んだ本

 横になったり狭小個室でだらだらと読んだ本は以下。
○『必生 闘う仏教』(佐々井秀嶺、集英社新書、2010)
・・・インド国籍となった日本人仏教者の本。この人に関しては、ご本人の書いたものよりも山際素男の『破天』がよく分かる気がします。
○『ネクタイと江戸前』(日本エッセイスト・クラブ編、文春文庫、2010)
・・・モノレール駅の本棚にあったもの。ま、あっ、そう、という感じのエッセイ集。
○『あのころの未来』(最相葉月、新潮社、2003)
・・・星新一の評伝のようなものかと思ったら違った。著者の、科学についてこう思うのよね式エッセイ。かなり期待はずれでした。
○『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル/鬼澤忍訳、早川書房、2010)
・・・ベストセラーになった本。ベストセラーというだけで読むことはほとんどしないけど、図書館にたまたまあったので読んでみました。これがなかなか。サンデルはんは結局、現代は考え方もなんだかんだと複雑でこれが正解みたいなものはないが、考え続けることが大事なのよね、ということを主張しているのだと理解しました。
○『甘い薬害』上下(ジョン・グリシャム/天馬龍行訳、アカデミー出版、2008)
・・・集団訴訟でえぐく一儲けしてしまった若い弁護士が、実は最初から巨大企業にはめられたことに気がつき、弁護士の仕事ってこんなんやってたらあかんなあと、最後は田舎にもどって父の事務所で地味な仕事をする。グリシャムはけっこう好きなんだけど、高速読書のみに特化した超訳というのはな。
○『法然の涙』(町田宗鳳、講談社、2010)
・・・仏教研究者による小説。まあまあ、さっと読めますが、話の進行がいかにも「まじめ」でした。同じ著者のNHK教育テレビ用解説『法然を語る』を小説にしたということか。
○『宇宙に隣人はいるのか』(ポール・デイヴィス/青木薫訳、草思社、1997)
『タイムマシンをつくろう!』(ポール・デイヴィス/林一訳、草思社、2003)
『宇宙 最後の3分間』(ポール・デイヴィス/出口修至訳、草思社、1995)
『宇宙を支配する6つの数』(マーティン・リース/林一訳、草思社、2001)
・・・同じ出版社の同じシリーズの本で、すべて図書館から借りて読みました。どの本もちよっと難しいけど読むのは楽しかった。今まで物理学、天文学関係の本はかなり読みましたが、有名らしいポール・デイヴィスは恥ずかしながら初めてでした。全部読み終わって思ったのは、この種の、宇宙規模的人類的視野で書く日本人は少ないということ。どうしてなんだろう。単にワダスが知らないだけなのかもしれませんが。
○『梅原猛の授業 仏教』(梅原猛、朝日新聞社、2002)
○『アジアのポピュラー音楽』(井上貴子編著、勁草書房、2010)
・・・編者の井上さんから送られてきました。アジアのポピュラー音楽状況を知ると、現代のグローバリズムと地域性、トランスナショナルなどについて考えさせられる。特に印象的だったのは、松村洋と井上さんのNRIの論文。世界は恐ろしい勢いで変化しつつあると実感。
○『困ります、ファインマンさん』再読(R.P.ファインマン/大貫昌子訳、岩波現代文庫、2001)
『聞かせてよ、ファインマンさん』再読(R.P.ファインマン/大貫昌子・江沢洋訳、岩波現代文庫、2009)
・・・いいなあ、やはり。で、彼の本はすべて他者に語ったものか講演したものだけど、語り口が実に心地よい。スペース・シャトル事故調査の顛末が小気味いい。翻訳もいいんだろうなあ。
○『海馬』(池谷裕二・糸井重里、新潮文庫、2002)
・・・対談なので軽く読めましたが、あっ、そうレベル。物忘れは老化のせいではないらしい。
『拡散する音楽文化をどうとらえるか』(東谷護編著、勁草書房、2008)
・・・メディアが大きく変化しつつあることもあり、音楽文化を総体でとらえることがますます難しくなっていることがよく分かります。
○『CIA秘録』上下(ティム・ワイナー/藤田博司・山田侑平・佐藤信行訳、文芸春秋、2008)
・・・その失敗の多さ、失敗を隠すための欺瞞、秘密工作相手地域への無知、ものすごい資金と武器と人命の無駄遣い、無邪気で恐ろしいパワーゲームなどに呆然としてしまいます。安保条約締結を強引にすすめた岸信介がCIAと関係が深かったことをあらためて知りました。
○『地球生命は自滅するのか?』(ピーター・D・ウォード/長野敬+赤松眞紀訳、青土社、2010)
・・・ちと難しいが、かつて流行ったガイヤ仮説というのもかなりあやしいことが分かる。自然を尊重する人たちというのは相当ナイーブなのかもしれない。自分が生まれたときの世界人口は20億人。現在は65億。人間という種だけが激増する地球。
○『遥かなる未踏峰』上下(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2011)
・・・「そこに山があるから」という有名な言葉を残したイギリスの登山家ジョージ・マロリーを主人公にした長編小説。新しい小説ですがスタイルが古典的。丸二日は楽しめます。