めんこい通信2011年11月17日号

 ええ、バーンスリーのHIROSです。
 この通信はBCCでお送りしています。皆さまの生活向上にはまず役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでも一読下されば幸いです。
 ふと気がつけば11月も半ば過ぎ。まったく時間の経つのは速いものです。
 節電しないと停電になりますよ、というような電力会社のキャンペーンは、彼らにすればそれなりに切実なものかもしれませんが、停止中の既存原発の再稼働が難しい状況のなか「だから原発は必要なんだ。あんたら分かってるんか」という「脅し」にしか思えない電力会社の傲慢さが際立ち、「やらせ」メール事件の九電は「それのどこが悪い」といわんばかりに強引に玄海原発を再稼働させて既成事実化をはかり、これほどの被害をばらまき犯罪会社といってもいい東電はひたすら事故の過少性を強調しつつ社員にはちゃっかりボーナスを支払い、政治家たちは本当は福島でなにが起きているのかも分からぬまま、冷温停止だ、放射能も大丈夫だからもう家に戻っても問題ないなどといいつつTPPがどうしたなどと震災対策そっちのけで騒ぎ、そうした姿にマスコミはあくまで寛容というかジャーナリストというよりは責任回避と自己保身の鎧を着た単なるサラリーマンだったことがじわじわとあぶり出されるという状況は震災発生以来かわらず今日まで続き、そうした状況に本来はもっともっと怒っていい人々の声はあまりに小さく、そうこうしているうちにギリシアやイタリアなどの経済危機でヨーロッパは変調を来たし、スティーヴ・ジョブズが他界し(アップルにはこれまでずいぶんゼニを貢ぎました)、アメリカは高い失業率による世論の突き上げを自由貿易でなんとかしのごうと外国の市場を強引に広げようとし、あれほど威勢の良かったカダフィが殺され、トルコではまたまた地震がおき、バンコクは水浸しとなり、株価はがんがん下がり、つくづく絶望的な気分になってしまうなどと生半可な情報でぶつくさつぶやき、おいボーマン君、いい加減に去ってくれんかなどといっているうちに、もうじき62歳になる久代さんに久々の仕事が舞い込み、と、将来を考慮にいれなければ中川家は極楽ともいえる日々を送っているのでありますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

これまでの出来事

■8月26日(金)、27日(土)、28日(日)<トルコの音楽3夜連続トーク>/CAP CLUB Q2、神戸/はなし:Abdurrahman Guelbeyaz(アポ)、聞き手:HIROS
 超厳選受講者を相手にアポがトルコ音楽について解説しました。トルコの音楽は国というか地域の歴史と同じように単純に語ることができないということがよく分かります。アポにとっては音楽理論も含めたややこしいことを母語ではない日本語でプレゼンするのは難しかったとはいえ、もうちょっとの工夫でより分かりやすくなったのではと反省しています。
 下記に庭火祭のプログラムに書いたものを掲載しましたので興味のおありの方はどうぞ。
http://sound.jp/tengaku/MusicalEssay/TurkishMusic.html

■9月2日(金)/トルコ音楽アンサンブル・学校訪問/八雲小学校、忌部小学校/松江
■9月3日(土)/第19回庭火祭「トルコ音楽」/トルコ音楽アンサンブル(Turan Vurgun: Oud+Kanun, Tolga UNALDI:Ney, Sefer SIMESEK:Balam+Vocal, Abdurrahman GULBEYAZ:percussion)+石川利光(尺八)/企画制作:天楽企画
 この庭火祭のために招聘予定だったカーヌーン奏者のトゥランが予定便に乗れなかったり、コンサートそのものが台風12号の直撃を受けて取りやめになったりと散々でした。第1回から関わってきた庭火祭がキャンセルになったのは初めてでした。さいわいトゥランは予定日の次の日に来日したので、熊野大社での奉納演奏や打ち上げでの演奏に間近に接することができたスタッフは満足したのではないかと思います。八雲村の実行委員会のホスピタリティーにはいつも大満足です。お世話になりました。

■9月4日(日)19:00~/トルコ音楽コンサート/CAP CLUB Q2、神戸/トルコ音楽アンサンブル+石川利光
 前夜の打ち上げでどろどろのころ、台風の影響で中国縦貫も国道も不通というニュースが入りどうなることかと思われましたが、八雲村から神戸へ無事移動でき、寝不足やら疲労やらのまま神戸でコンサートでした。神戸もやはり雨模様だったせいか、聴衆は50名ほど。演奏がすばらしかっただけにもったいなかった。
 この日から、イスタンブールのネイ奏者トルガは8日まで我が家に滞在しました。トルガというのは、七聲会が昨年イスタンブールに行ったときいろいろと案内してくれたネイ奏者。日本が大好きで、神戸や京都の街に出かけるたびに写真を撮りまくり、七聲会による歓迎宴会の後は涙ぐむほど。

■9月11日(日)<七聲会コンサート>“Colors of Voice, Colors of Wind”/ルールトリエンナーレ/Jahrhunderthalle Bochum、Bochum(ドイツ)/七聲会:聲明、石川利光:尺八
 トルコ人演奏家を送り出した次の日、同じ関空から今度はドイツへ向かいました。ワダスにとっても久しぶりのドイツでした。公演は素晴らしかったしアイスバインもビールもソーセージもおいしかった。
 主催者がエミレーツ航空便をとってくれたのでドバイ経由になりました。ドバイ空港でのてんやわんや、ボーフムに着いてからの顛末、ケルン観光などなど、例によって「よれよれ日記」に詳しく書いています。ご興味と御意思のおありの方はお読み下さい。
http://sound.jp/tengaku/Shichseikai/bochum11/bochum11Diary.html

■9月24日(土)14:00~/レクチャー・コンサート・シリーズ「音楽世界旅」~インド/岸和田自泉会館、大阪/西岡信雄:解説/柳田紀美子(東インド古典舞踊=オリッシィ)、ナリニ・トシニワル(カタック)、田中峰彦(シタール)、田中りこ(タブラー)、HIROS(バーンスリー)
 岸和田にお城があるとは知りませんでした。会場は有名なだんじりのスタート地点に近い洋館でした。
 司会・解説の西岡さんにお会いするのは実に久しぶりでした。相変わらずお洒落でお元気でした。4曲の舞踊伴奏曲のリハーサルに3日も費やしましたが、本番は、ま、なんとかなりました。準備に時間とエネルギーを費やした田中夫妻にも感謝。

■9月25日(日)田中泯による「場踊り」/摩耶山天上寺
 神戸の古くからの仲間たちと摩耶山天上寺での田中泯の「場踊り」を見に行きました。田中泯さんの踊りは2度目です。ずっと昔神戸で見たときはほぼ全裸で床をのたうっていましたが、今回は「たそがれ清兵衛」風の薄汚れた着流し。会場の麻耶山天上寺と涼しい風との組み合わせもよく、力の抜けた踊りが良かった。
 一緒に行ったのは、現代美術の植松奎二夫妻、絵本作家の岡田淳夫妻、建築家の幸田庄二さん、曽我さん(雀鬼)、建築家の橋本健治夫妻、も一人どうしても名前の思い出せない古い知人。三宮往復のバスは意外と時間がかかり、ちょっとしたバス観光旅行という雰囲気だった。打ち上げはガード下の海鮮居酒屋でした。

■10月9日(日)India Mela/ハーバーランド、神戸/大橋一慶:タブラー、Mukesh Khemaney:カホン、HIROS:バーンスリー
 去年に引き続きインディア・メーラーにちょこっと出演しました。去年と同様、カレー粉をまぶしたごった煮状態でありました。

■10月15日(土)/妙心寺・大心院 元気のつどい 第二回/妙心寺塔頭・大心院、京都/HIROS:バーンスリー
 妙心寺には初めて行きました。広い敷地を塀で囲まれた塔頭が高級住宅街のように並び、それをつなぐ石畳の道が美しい。大心院の小さな枯山水の庭も素晴らしい。花園駅で帰りの電車に乗るところでなんと喉歌の等々力さんに会いました。これだから油断ならない。

■10月21日(金)/「30℃~オールナイトパーティ」/CAP CLUB Q2、神戸/HIROS:芋煮調理指導
 今年4月バリ島で亡くなったアニメーション作家、相原信洋さんのオールナイトパーティーでした。ご本人にお会いしたことはありませんが、夜通し上映された作品はなかなかよかった。下田バンドも絶好調でしたね。ワダスは50人分の芋煮を作りましたが完売でした。

■10月23日(日)/今西玲子・岡野勇仁結婚式/大阪倶楽部
 昨年の「1000人で音楽する日。」のスタッフだった筝演奏家、今西玲子の結婚式でした。お相手はピアニストの岡野勇仁さん。二人の出会いがなんと「1000人で音楽する日。」の打ち上げだったということもあり、ワダスは花嫁側来賓代表てなことになっちゃっていました。笛と歌で「秋田長持歌」を披露しました。二次会は小島剛さんらの司会でライブ宴会になり、楽しかった。

■11月12日(土)/大谷大学課外教育行事「インド舞踊と音楽」/野中ミキ+ジョバ・ラニ:オリッスィー舞踊、岩下洋平:シタール、藤沢バヤン:タブラー、HIROS:バーンスリー
 京都在住の若手インド音楽演奏者たちと演奏しました。オリッスィー舞踊の伴奏もなかなかに楽しいものでした。

この間に読んだ本

 8月以降に読んだ本は以下。なんだかざわざわした状況のせいなのか、それなりに「重い」本が多かったような気がします。とくに重かったのは『慈しみの女神たち』でした。それぞれ厚さ4cm、2段組み、ほとんど改行なしの上下巻でおよそ1000ページです。スターリングラード戦やユダヤ人虐殺を通して進行するドイツ軍や個人の精神崩壊の変化をナチス親衛隊将校の独白という形で描いた小説です。主題のナチスによるユダヤ人絶滅の思想も恐るべしだが、より普遍的な問題を考えさせる記述が随所にあり傑作といっていいと思います。印象的なのは、当時のドイツの官僚機構。国家的「悪」の組織化と個人の問題は、原発推進や事故後の隠蔽とリンクして読んでいました。フランスでは100万部を超えるベストセラーだったらしいが、どれだけの日本人が読んだでしょうか。ものすごく時間とエネルギーを要する小説ですが、おすすめです。
 もう一冊は『脳のなかの幽霊』。事故で肘から下のない患者が、ないはずの手の痛みに苦しむのはなぜか。自分の両親や自分の身体の一部さえ偽物と思ってしまうカプグラ・シンドロームなんて病気があるなんて初めて知りました。自己とは脳が作り上げた幻想なのだという。一度読んだだけではとても全容を理解できないので、これから何度か読むことになる本です。著者はインド系アメリカ人の精神神経学者です。すごい人がいるものです。
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『ゴールド 金と人間の文明史』(ピーター・バーンスタイン/鈴木主税訳、日本経済新聞社、2001)
『「おじさん」的思考』(内田樹、角川文庫、2011)
『決定版 原発大論争』(宝島編集部編、宝島SUGOI文庫、1999)
『隠される原子力・核の真実』(小出浩章、創史社、2010)
『帝国の落日・下』(ジャン・モリス/池央耿+椋田直子訳、2010)
『放射能汚染の現実を超えて』(小出浩章、河出書房新社、2011)
『音楽史を変えた五つの発明』(ハワード・グッドール/松村哲哉訳、白水社、2011)
『官僚の責任』(古賀茂明、PHP新書、2011)
『生命の秘密』(柳澤桂子、岩波書店、2003)
『われわれはなぜ死ぬのか』(柳澤桂子、草思社、1997)
『響きの科楽』(ジョン・パウエル/小野木明恵訳、早川書房、2011)
『音楽の話をしよう』(寺内大輔、ふくろう出版、2011)
『100年の難問はなぜ解けたのか』(春日真人、新潮文庫、2011)
『宇宙は何でできているのか』(村山斉、幻冬社新書、2010)
『脳のなかの幽霊』(V.S.ラマチャンドラン+サンドラ・ブレイクスリー/山下篤子訳、角川文庫、2011)
『慈しみの女神たち』上下(ジョナサン・リテル/菅野昭正、星埜守之, 篠田勝英, 有田英也訳、綜合社、2011)
『大国の興亡』上下(ポール・ケネディ/鈴木主悦訳、草思社、1988)

これからの出来事

 週一のジュギョーをのぞけば、ほとんどローゴ的リタイア生活です。見事になあーんも予定がありません。散歩、読書、練習、ときどき老両親付き合いの日々が続きます。ここ2年はインドへ行ってましたが、毎回参加していたプネーの音楽祭がなくなってしまったこともあり、今シーズンは神戸でじっとしている予定です。遊んでください。

■11月23日(水)10;30~16;30/てあての学校・秋/京都市生涯学習センター山科・和室/HIROS:バーンスリー/主催・問い合わせ:気功協会