めんこい通信2012年4月26日号

  ええ、バーンスリーのHIROSです。
 この通信はBCCでお送りしています。皆さまの生活向上にはまず役に立たないと確信していますが、ふとお時間のあいたときにでもご一読下されば幸いです。あいかわらず長々としていてスミマセン。こういう無益なメールは不要だという方はお知らせ下さい。

 まずは宣伝。

■5月5日(土)/バーンスリーと声楽--インド古典音楽/CAP Club Q2、神戸/井上想:声楽、金子テツヤ:パカーワジ、大橋一慶:タブラー、HIROS:バーンスリー/主催・問い合わせ:CAP

「セエーンセエ、お元気ですか。井上です。えっ、あっ、まだインドです。今、デリーです。今度、4月28日から5月末まで日本に帰国します。で、お願いなんですが、神戸でセンセエと僕のコンサートをしたいんですが。はい、日にちはお任せします。はい、デリーですか。今おふくろと一緒なんですよ。そいで、一緒にネパールのヴィシャルのとこへ寄ってから帰国です。えっ、あ、そうなんです。実は10月にムンバイのわりと大きなフェスティバルに招待されていて、それまではインドにいようと思ってるんです。その後はどうなるのか、分かりません」
 先日、井上想青年からこんな電話がありました。相変わらず大声。ワダスからバーンスリーを習った後インドへ渡り、今年の2月でインド古典声楽修行丸四年になります。
 彼は東京出身なんですが、バーンスリーをどうしても習いたくなって神戸に移り住み、CAP HOUSEの一室で毎日数時間の練習に明け暮れること4年ののち、ワダスの紹介したドゥルパド声楽家のグンデーチャー兄弟の運営する道場に入門し、やはり毎日練習に明け暮れすでに4年経つという、いい加減な音楽訓練しかしてこなかったワダスからみれば恐るべき執念の持ち主です。今では舞台のグルの側で声楽のアカンパニーを勤め、ソリストとしてもインド各地から招待を受けるようになっているといいます。ボーパールでの彼の生活などは以前にもこの通信で触れましたが、田舎道を歩いていると子供たちから「ソー、元気か」と声をかけられたり、修行仲間からは不断のあまりのまじめな練習に「こいつは変わった奴だ」と思われたりしていました。それにしても、もっといろいろあっていい20代のほとんどを一つのことに集中して修行したというのは尋常ではありません。しかも修行してきたのは、インド国内でも衰退しつつある古典声楽ドゥルパドです。彼をさんざんけしかけたワダスがいうのも何ですが。
 ドゥルパドというのは、かつて北インド古典音楽の主流でしたが、今日では演奏者の数が減り、華々しいシタールやタブラーのようにどんどんと若手が育ってきているという状況からはほど遠い地味な音楽スタイルです。とはいえ、その独特の表現のあり方から宇宙的とも表されるインド古典音楽の神髄をこのスタイルがよく保っています。そんな音楽を4年間もずっと修行してきた井上青年の成長ぶりがとても楽しみです。5月5日はゴールデンウィーク真っ盛りでありますが、これは見逃してはいけないという人はもちろん、街にも旅行にも出かける予定がなくなあーんもしていないという人は是非おいで下さい。

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 現在の民主党政権はどうしても原発を再稼働したくてたまらないようです。主な理由は、この夏の電力不足であると。センゴクなる人は「原発動かさないと日本は集団自殺」「脱原発依存が実現するまで、真っ暗な中で生活する訳にはいかない」などと言ったらしい。電力不足に陥ればどうなるか。停電です。停電になれば電力に頼る生産活動が停止すると。停止すれば製品の売り上げはなくなり、余裕のない企業は倒産するかもしれない、と。倒産したら失業者が増え、自殺者も出るかもしれない。一家離散なんてこともあるかもしれない。収入がなくなるわけだから食うこともできなくなる。餓死する人間も出るかもしれない。仙石さんの憂える状況だ。そんなこんなは大飯原発を再稼働すれば当座はしのげるのだ。ひょっとしたら福島第一並みの事故は起こるかもしれないが、あれと同じような被害を及ぼす事故は十分な対策を施してあるはずだから(と専門家もいってるし)、たぶん、ないに違いない。というかあってほしくない。というか、オレがいうんだから、ない、絶対に安全なのだ、と。したがって再稼働反対なんていってる奴らは自殺願望者なんだと。で、来年どうするか、10年後のエネルギーをどう確保するのか、使用済み核燃料処理問題をどうするのか、なんてことを考えるのはとりあえずおいといて、再稼働しなければ明らかにやってくる日本集団自殺状況を避けるためには、サイカドウしかねえだろう。
 現政権の、というか仙石日本集団自殺説によればこんな論理になるのでありましょうか。こう思っている人たちも多いんでしょうね。しかし、福島第一事故で明らかになったのは「オレがいうんだから、ない、絶対に安全なのだ」が実際にはそうではなくて、そうありたいという願望の別の表現だったことです。すでに保安院や原子力委員会ですら「福島で反省しました。はい、もう絶対に安全とはいえません。後は再稼働するかどうかは政治の問題なので僕たちは知らないもんね」と下駄をあずけちゃった。もし、万が一、再稼働した大飯原発が事故を起こし関西圏にも多大な被害を与えるとすれば、きっと仙石さんは「あのときの電力状況を考えた場合、ああいう判断をせざるを得なかったのだから責任うんぬん言われても困る」などとふてぶてしくいうんでしょうね。いいかえれば日本集団自殺状況を避けるためには放射能による日本集団他殺状況が生じたとしてもやむを得ないのだと。放射能による日本集団他殺状況とか、ことは日本だけにとどまらなくなるはずの地球規模の被害よりは、まだ自ら選べる自殺のほうがましなような気がしますが。
 いずれにせよ、われわれ日本人は、足尾銅山公害からも、関東大震災からも、第二次世界大戦からも、水俣病公害からも、阪神淡路大震災からも、東日本大震災からも、福島第一原発事故からも、ほとんど何も学ぶことなく、なにがしかの方針のもとに行動を決定することもなく、ひたすら問題の先送りをして結局は最悪の決断をせざるを得ない状況が明白であるにもかかわらず、目先の必要性というか利益を優先するという決断だけは遅滞なく、しかもその決断プロセスはたいてい党利党略の政局に矮小化され、決断に関わらなかった人々が被害を被る、という、なんかあんまり外国人には誇れない伝統をもっているようです。
 まるで最近の状況を描いているような寺田寅彦の『天災と国防』を読むとその感をますます強くします。今から80年以上前に書かれたとはとても思えません。
 どうやったら変えられるのかとぼんやり考えつつ、やはりだらだらと日々を過ごすのでありました。

===これまでの出来事===

■3月18日(日)〜25日(日)シャルダー夫妻中川家滞在
 30年来のインド人の友人夫妻が久しぶりに来日し我が家に滞在しました。2日間は製薬原料を供給する飛騨高山の製薬会社訪問でしたが、ほとんど毎日彼らにつきあいました。夫は糖尿食、妻はにんにく、タマネギすら食べない完全ベジタリアン。もてなす方は大変です。観光はほとんどなく三宮、梅田の商店街をぶらぶらし買い物に明け暮れました。ユニクロとダイソーに感動してました。

■4月7日(土)、8日(日)/イオンワールドフェスタ2012 トルコフェア/越谷レイクタウン、埼玉/アポ:トルコ打楽器、セファ:歌+サズ、トゥラン:カーヌーン、HIROS:バーンスリー
 2月、3月はほとんど家でだらだらしていました。あまりにヒマなので、かねてから終わらせようと考えていたラーガに関するケンキューをしたり、横になって本を読んだりの、ま、通常の、ノーテンキ生活でありましたが、2月のある日、トルコ人の友人アポから電話。「埼玉でトルコ音楽の依頼がある。HIROSもにわかバンドのメンバーで参加せよ」。埼玉のどこか、時間は、どんな舞台なのか、何回公演なのかという基本情報はまったくない。数日して、9拍子やら10拍子やらの変拍子だらけの楽譜がばさっと送られてきた。バンドには、去年ビザ問題ですったもんだのあったハンブルグ在住のカーヌーン奏者のトゥランも加わった。会場のチラシには「全員トルコ生まれのミュージシャンによるバンド」とありました。ワダスはいつのまにかトルコ生まれということになっていました。山形なのに。
 というわけで、越谷レイクタウンという巨大なショッピングモールをあちこち移動しながら2日間演奏してきました。くたびれましたがなかなかの体験でした。それにしても、イオンが運営するレイクタウンというのはものすごいでかいショッピングモールでした。そしてものすごい数の買い物客でした。日本は不況だといわれていますが、モールを満たす買い物客の熱気はただ事ではありません。恐るべし埼玉なのでありました。

■4月15日(日)14:00~/京町家で楽しむインド古典音楽の世界/四条京町家、京都/岩下洋平:シタール、藤澤バヤン:タブラー、HIROS:バーンスリー
 音響機器をまったく使わず生音のライブでした。お客さんの数も超厳選。お母さんがワダスと同い年だという藤澤さんも、バイト先の深夜コンビニで練習するという洋平さんら、若い演奏家が育ってきているんですねえ。

■4月21日(土)/世界遺産でヨーガを!!/仁和寺、京都/藤澤バヤン:タブラー、HIROS:バーンスリー
 91年のウドゥロ・ウドゥロ以来なので、実に20年以上ぶりの仁和寺で話と演奏でした。日本ヨーガ禅道院が主催する合宿のイベントでした。92歳という院長の石田さんが若々しくてびっくり。ヨーガも恐るべし。

===この間に読んだ本===
『父のトランク』(オルハン・パムク/和久井路子訳、藤原書店、2007)
『無垢の博物館』上下(オルハン・パムク/宮下遼訳、早川書房、2010)
『新しい人生』(オルハン・パムク/安達智英子訳、藤原書店、2010)
・・・『イスタンブール』を読んでかなり感動したので続けてオルハン・パムクを読みました。トルコにはすごい作家がいるんですね。
『動的平衡2』(福岡伸一、木楽舎、2011)
『πの歴史』(ペートル・ベックマン/田尾陽一訳、ちくま学芸文庫、2006)
『超越意識の探求』(コリン・ウィルソン/松田和也訳、学習研究社、2007)
『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』各上下全6冊(スティーグ・ラーソン、ハヤカワ文庫、2011)
・・・本屋に平積みになっていてちょっとは気になっていたのですが、話題になっている、というふれこみなので敬遠していました。読み始めたら途中で止められなくなりほぼ3日間ぶっ通しで読みました。こういう小説は日本人作家に書けるかなあ。
『ファインマンさんの愉快な人生』上下(ジェームズ・グリック/大貫昌子訳、岩波書店、1995)
・・・最も優秀な物理学者を一カ所に集めた原爆開発の熱狂、若くして病没した奥様、量子電磁力学などなどを知ると、ファインマンさんというのはとてつもない人だったようです。
『ジェノサイド』(高野和明、角川書店、2011)
・・・現在のホモサピエンスから進化した超人類という設定、現在の人類が食欲と性欲のために互いに殺し合ってきたこと、現場から最も遠い人間が実は最も残虐なことなど。残念ながら単行本1冊では短すぎました。
『宇宙をかき乱すべきか』上下/再再読(フリーマン・ダイソン/鎮目恭夫訳、ちくま学芸文庫、2006)
・・・ファインマンさんとの関連で再再読。
『福島第一原発-真相と展望』(アーニー・ガンダーセン/岡崎玲子訳、集英社新書、2012)
・・・政府と東電が実際に起きたことをまともに知らせることをしなかったか、知ろうとしなかったがよく分かります。震災前にも指摘されていたマーク1型原子炉の構造的欠陥をゼニ惜しさに無視した結果、とんでもないことが起きてしまった。
『<物質>という神話』(ポール・デイビス+ジョン・グリビン/松浦俊輔訳、青土社、1993)
・・・うーむ、相当に難しかった。
『神が作った究極の素粒子』上(レオン・レーダーマン/高橋健次訳、草思社、1997)
・・・物理学の歴史がとても分かりやすく書かれています。とはいえ、磁石に砂鉄がくっつく原理が未だにちゃんと理解できない。人間がこの世界について知っていることなんて実に少ないんだなあとつくづく思います。

『天才の栄光と挫折』(藤原正彦、新潮選書、2002)
・・・9人の数学者の評伝。藤原正彦の「品格」以降の作品にはちょっと頭をかしげてしまいますが、このような評伝は文章が素晴らしい。

===これからの出来事===

 月火のジュギー以外はこれといって予定もなく、だらだら度がますます加速する生活が続きそうです。ある意味ではリソー的生活ではありますが、シューニュー方面ではちとさみしいものもあるのでありました。

■5月5日(土)/バーンスリーと声楽-インド古典音楽/CAP Club Q2、神戸/井上想:声楽、金子テツヤ:パカーワジ、大橋一慶:タブラー、HIROS:バーンスリー/主催・問い合わせ:CAP

■6月8日(金)11:00-12:00/HIROSソロライブ/フラワー市民センター、三田

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