めんこい通信2014年4月30日号

 ワダスの64回目の誕生日宴会後、にわかに風邪っぽい熱とだるさに襲われ、ものすごく久々に2週間ほど寝込んでしまいました。あんな風に風邪をひいて寝込んだ記憶はここ20年以上なかった。64歳のイニシエーションだったのかもしれません。
 そんな訳で、ほとんど冬眠に近い低活動状態の2月は毎日が滑るように飛んでいったのでした。熱が下がらないのでまともに読書もできず退屈しのぎのネタを待望していると、1月29日にSTAP細胞なるものについての論文がネイチャーに掲載され、それがノーベル賞ものだとか割烹着がどうのといったオボカタ問題がいきなり盛り上がり、そうこうしているうちにサムラゴウチ問題が発生し、オボカタ論文がどうもあやしいのではないかと、にわかにネットやテレビがにぎやかになったのでぼんやりしながら話題を消費する日々。サムラゴウチ問題は、芸術音楽とは何かといった本質的問題をはらみつつ低俗方面に終息したようですが、オボカタ問題はその後も捏造疑惑やら理研の調査委員会やらご本人の会見やらでまだ続きそうです。
 この大騒ぎは何なんだろう、というのがひまーなワダスの印象で、ふと、みんな溜飲を下げたいだけじゃないのかと思ったのでありました。溜飲というのは胃の消化作用が不十分で、胸やけがしたり口にすっぱい液が出たりする症状のことですが、それを早く解消したい、下げたい、と。
 マスコミも含め、騒いでいる人たちは、毎日毎日もう一つすっきりしない大量のニュースを消化できず日常的溜飲下げたい状況にあるといえるかもしれない。世間は原発事故の責任問題やらアベを取り巻くきな臭い状況やらで、どうにもすっきりしない。なにもかもうやむやだ。そこで、割烹着を着た若い女性がノーベル賞級の大発見をしたというニュースはかなりすっきりする。久々の大ヒットだ。よくやったとみんなが喜んだ。ところが、こんどは彼女の論文はインチキなんじゃないかという指摘がほうぼうから出てきた。高額の年収がどうのとか、ブランド品を持っていたとか、「妄想癖のある独りよがりの子」といった高校時代同級生の評価だの、理研幹部研究者から特別な寵愛を受けているだの、がネットに登場してきた。大発見でせっかく溜飲も下がったのに、今度は別の溜飲状況になってしまった。彼女が大嘘つきだとはっきりしたらその溜飲は下がる。こうした世間の溜飲下げ願望の高まりに押されたせいでもないだろうが、にわかに組織された調査委員会が、捏造と不正があったと結論づけた。しかし、まるで彼女一人の無能さと不誠実さだけが問題かのような理研の組織防衛的調査結果に、野次馬はまた別の溜飲状況になる。今度は当のオボカタ氏が二人の弁護士を従えて会見し、わたしは単に未熟だっただけで、捏造とか不正という結論に納得がいかない、と反論。マスコミは彼女の顔のをアップした表情を映し出す。不正や悪や狼狽や悔恨や傲慢の兆候が筋肉のかすかな動きに現れないかと凝視する。目元がかすかに潤んだときのシャッター音が凄まじかった。この問題に関しては、ああやれやれこれで溜飲が下がったという方向にどうも向かう雰囲気ではないし、そうこうしているうちにクリミア問題やら韓国の客船転覆事故やらオバマ来日やらの別の溜飲促進ニュースが次々に押し寄せてきたので、お祭り騒ぎからは遠ざかりつつあるように見えます。
 溜飲よりも慢性的溜便状況を解消したいワダスは、テラトーマがどうのキメラマウスがどうのと配偶者のやたら詳しいオボカタマターや、最近にわかにはまったリーマン予想なんかの話を聞きつつ、とりあえずわが家は平安なんだなと、つぶやくのでありました。とはいえ、この平安がずっと続く保証はありません。世間の溜飲状況が高まると、物事を単純化して手っ取り早く溜飲を下げたいという願望がもたげてくるのではないか。最近耳にするヘイトスピーチとか、妙なナショナリズムの台頭はこうした状況と関係しているのかもしれません。

===まずは宣伝===

■5月5日(月)午後5時開演/国境を越えたラーガ音楽1/CAP CLUB Q2、神戸/David Trasoff:サロード、中尾幸介:タブラー、HIROS:バーンスリー
 古くからの友人であるアメリカ人サロード奏者のデイヴィッド・トラソフは、北インド古典音楽の世界ではよく知られた演奏家です。1月ころ彼から「日本に行くんだけど演奏会できないかなあ」とメールがあり、ではということで企画したものです。ワダスも演奏する予定です。タブラー奏者は、関西若手の中尾幸介さん。
 デイヴィッドに続いて2月には、やはり古い友人のアメリカ人バーンスリー奏者スティーヴ・ゴーンからも演奏会懇願メール。というわけで、6月1日(日)にもQ2で演奏会をすることにしました。スティーヴは去年わが家に泊まり一緒に練習しました。2001年にわれわれがニューヨークへ行ったとき、彼のアパートに転がり込んだこともありました。
 デイヴィッドもスティーヴも世界各地で活動し、インドでも評価が高い演奏家です。

===これまでの出来事===

■2月8日(土)、9日(日)/練習@宇治+山科
 ぼちぼち風邪も治ってきたので京都への久しぶりの外出でした。8日は、黄檗山万福寺に近い中尾幸介、宮内アイコさんち。カレースパイスをもっていってカレーを作りました。歯切れが良くて気持ちがいいコースケはんのタブラーと練習。なんやかんやと朝の3時くらいまでおしゃべり。サンダルばきでカイラースへ行ってきたなんて、とんでもない人たちなのだ。旧家の広い部屋でちょっと雪の残った庭を見ながら布団に入ったのですが、足先が冷えて寝付けず、早朝の薄明りをみているうちに意識を失ないました。
 起きたのはお昼。乾麺のうどんを納豆ですすってすぐにコースケはんと家を出て、御陵の町内会館へ。すでにタブラーのタイ・バーホー、今回の練習会を仕切ってくれたバヤン、シタールのヨーヘイ君がいた。しばらくしてサーランギーの大久保青年、シタールの大石レディー、ダルブッカのキース・ヒルズも加わる。
 なんとなく始まった練習会は、インド音楽同士の秘密会合のような親密さなのでありました。前に聞いたときよりもぐっと進歩したヨーヘイ君のシタールが素晴らしかった。タイの乗りもいい。ダルブッカが入ってちとトルコっぽくなったりする。アミット・ロイに習っているという大久保青年のサーランギーはまたまだ練習の必要があるけど、いい音でした。彼はなんとハーディー・ガーディーまでもってきていた。大阪の野口さんにシタールを習っているという大石レディーはみんなに気後れしてか結局シータルは弾かず、途中で「デートなんです」と退席。練習は6時過ぎまで続いたのでありました。終わってバヤン君の車でコースケ君とぎょうざの王将でぎょうざを食べ、電源アダプターを忘れたコースケ君ちに戻って彼をおろし、京都駅まで乗せてもらって帰宅。久々に楽しい時間でした。

■2月11日(火)/たまご宴会/酔鯨亭、梅田/参加:中川真、小林江美、HIROS
 飲食内容:生ビール、カツオのたたき、湯豆腐、豆腐サラダ、どろめ、青さ海苔天ぷら、ヒラメと野菜天、うまいものはうまい(焼酎)、漬け物盛り合わせ、土佐天、納豆落とし揚げ、海苔茶漬け
■2月12日(水)、13日(木)/レッスン
■2月15日(土)/短足麻雀
■2月20日(木)/佐藤寛子追悼ミニ宴会/佐藤家、宇治
 20年くらい前によく一緒に遊んだ佐藤寛子さんが1月14日に肝がんで亡くなったと染色家の立石啓子さんからメールがあり、驚きました。寛子さんは日本ではまだまだ珍しかったインドの楽器、サントゥールを弾いていました。ワダスも7年ほど暮らした札幌の出身だったということもあり、北海道なまりでしゃべったのを思い出します。いつも陽気でよく笑う女性でした。われわれと同い年で亡くなるにはまだまだ早いのに残念です。
 先立たれた夫の高さんを、赤芋焼酎、わが家でそのころはやっていたトリチャン、もやし、わかめなどナムルなどの食材を携えて、二人で宇治伊勢田町の自宅を訪ねました。
 仏壇に焼香したあと、他人の慣れない台所で調理した料理で、よく遊んだ頃の昔話や夫婦の出会いなどを話題におしゃべりしつつのミニ宴会でした。わが家のよりもずっと大きなフラットテレビでオリンピックの映像がずっと流れていたのが印象的でした。子供がいないのでたった一人残された若くはない高さん、これからどうなるんだろうなどと話しつつ、自家製干し椎茸をもらって帰ったのでありました。
 このようなことが今後じわじわと増えてくるのは避けがたいとはいえ、淋しいものです。

■2月21日(金)/中川家ミニうどん宴会
■2月23日(日)/賈鵬芳擦弦トリオコンサート「春よ来い」/ザ・フェニックス・ホール、大阪/賈鵬芳:二胡、恩田直幸:ピアノ、堀沢真己:チェロ、吉野弘志:コントラバス、梯郁夫:パーカッション
 コンサートを企画した亀岡紀子さんのお誘いで、賈さんのコンサートに行ってきました。エイジアン・ファンタジー・オーケストラで一緒だった賈さんや吉野さんに会うのは実に久しぶり。
 比較的高齢女性で占められた客席はほぼ満員でした。ふんわりしたイケメンぶりの魅力がほとんど変わっていない賈さんのそこはかとないユーモアのあるMC、西洋風高級中華料理デザート付きフルコースのような音楽もなかなかに楽しかった。比較的高齢女性たちに人気があるのもうなづけます。

■2月27日(木)/レッスン
■2月28日(金)/ア・ラ・メール/CAP CLUB Q2/参加:角正之、山口、江見、杉山、ナカボン、高橋、HIROS
 月1回恒例のなにげに宴会にダンスの角さんが登場し、参加人数も少なかったせいかいつになく濃い時間になりました。
 角さんとはアクト・コウベや彼のパフォーマンスに参加したりの長いつきあいですが、個人的なことは案外知らないものです。佐賀県の小さな町で生まれたとか、父が炭坑夫とか、7人兄弟とか、東京の中央大学に入ったが勉強よりも演劇に没頭していたとか、花田清輝に出会って衝撃を受けたとか、こちらが根掘り葉掘り訊ねると嫌な顔もせず、ときおりスミッシュ(角さん特有の難解な言い回し)混じりに答えていただいて、参加者も興味津々でした。郷里の町では角一族はそれなりに名門で、親戚には味噌製造会社もあるとのこと。食べてみたい。

■3月5日(水)/Y3/イリーナ
 イリーナというのは、エストニア国籍ロシア系ユダヤ系女性ですが、彼女にお茶しないと誘われ、ポートアイランドからCAP STUDIO Y3まで歩き、鳴海君の入れたうまいコーヒーを飲みつつおしゃべりをしました。彼女とはCAPの新年会で、数少ないスモーカーという縁もあり知り合いになりました。二度目の結婚相手が神戸在住の日本人男性だったため来日したのですが、その40代のご主人に昨年の暮れに先立たれ、今は今年中学生になるイヴァン君と住んでいます。イヴァン君も、現在エストニアのタリンに住む娘さんも最初の夫の画家との間の子供という。サンクト・ペテルブルグの大学で西洋美術史を学んだということです。
 美術はもちろん、音楽、映画、文学、社会などなど、話題の範囲がとても広く、とても楽しい会話でした。彼女の母方の親戚はなんとあのトロツキーだなどとおっしゃる。ワダスは学生時代はトロツキストを自認し、ロシア革命関連のものやトロツキーに関する本をよく読んで親しみがありましたので、ちょっとびっくりしました。ソ連からロシアへの移行、エストニア、両親と住んだリトアニアなどなど、ふだんあまり縁のない土地や文化についてほとんど知らないので、例によって根掘り葉掘り訊ねるとものすごい大量の言葉が返ってくる女性です。

■3月6日(木)/インド総領事公邸夕食会/神戸
 新任のインド総領事公邸に招待されて行ってきました。場所は白鶴美術館に近い高台の邸宅。阪神間の湾岸を見下ろす絶景地です。
 長身、42歳の新しい総領事、アシーム・マハジャンさんは、以前東京の大使館に勤めていて2回目の日本ということです。シク教家系出身だがベジタリアンだという夫人とちょっと話しました。
「今まで、マレーシアとラオスと住んできましたが、日本が大好きです。日本語もちょっと習っています。2人の息子たちを六甲アイランドのカナディアン・アカデミーに通わせるのに便利なのでわたしがこの家を選んだんです」
 この日招待を受けたのは、ほとんどがインドの文化に関わる人たちでした。なので知り合いが多かった。「宮家と関係しているのよ」と自認するアジア協会副会長小原純子さん、モガリ真奈美さん(バラタナーティアム)、ダヤ登美子さん、桜井暁美さんとご主人、福田麻紀さん(バラタナーティアム)と笠井さん(ムリダンガム)夫妻、村上幸子さん(オリッスィー)、茶谷祐三子さん(オリッスィー)、溝上富雄(ヒンディー語)、徳田一彦さん(神戸ユネスコ協会)、三住さん(もと民音)、山田さん(KPR)などの他、大阪大学法学部の学生たち数人。

■3月8日(土)短足麻雀
■3月23日(日)/パンソリ/タルマジカフェ、大阪/安聖民
 京都教育大の田中多佳子さんのお誘いで大阪まで出かけました。
 会場は韓国伝統茶房「タルマジ・スフェ」。タルマジとはお月見の意味だとか。
 JR環状線桃谷駅から細長く西に伸びる桃谷商店街が終わった突き当たりのソカイ道路をちょっと南に下ったところにあります。生野区のディープなこの辺りに来たのは初めてでした。
 開演の3時の20分ほど前に会場に着きましたが、中はすでにぎっしり人で埋まっていました。40人ほどか。入り口から入った正面が舞台。舞台左手には墨絵の屏風が立てかけてある。
 この日のパンソリの演目は「水宮歌(すぐんが)」と「興甫歌(ふんぼが)」の一部。パンソリは、太鼓(プク)を伴奏に歌と台詞で長い物語を一人で語る韓国の伝統芸能です。19世紀に全盛期だったこの芸能は、20世紀になって衰退し、今では演じる人も少なくなったという。現在まで残っている物語は5話のみという。映像ではほんの一部を見たことはあったが、生で見るのは初めてでした。
「水宮歌(すぐんが)」は動物たちが物語の主役で、中国古代史の有名な人物や故事が次々と現れる、なかなかに滑稽なやりとりもある物語です。「興甫歌」は裕福だが意地悪の兄と貧乏で正直者の弟の話。
 プロジェクターで表示された日本語字幕つきなので話もよく理解できました。長い物語を感情たっぷりに語り歌う安聖民(アン・ソンミン)の芸には驚歎しました。あれほどの語り手は韓国にもそんなにいないのではないか。
 公演後は、会場の片付けがあったりでなんとなくせわしなく、そのまま帰りました。打ち上げに参加して話できたらよかったと、後で安さんからいっていただいたので、ちよっと我慢して待っていれば良かったと悔やまれるのでありました。

■3月25日(火)/花会式/薬師寺、奈良
 元大阪芸大の中山一郎さんのご案内があったので一人で出かけることにしていたのですが、Facebookのチャットに「今日行くのだ」と書いたら「わたしも連れてって」ということになり、イリーナと息子イヴァンも一緒に行くことになりました。
 神戸から近鉄「西ノ京」駅までは長い。ひたすらゲーム機をにらむイヴァン君を横目に電車中ずっとイリーナとおしゃべりでした。彼女は実によくしゃべる。
 花会式(はなえしき)の開始までは時間があったので、門前の居酒屋でちょっとビールを飲む。今度中学生になるイヴァン君は唐揚げをつまみ、レーザーラモンが大好きなのよねといいつつ、ひたすらゲームに没頭する。
 薬師寺最大の行事である花会式を見るのは初めてでした。修二会というのは、東大寺のお水取りが有名で、ワダスも何度か見に行ったことがありますが、この花会式も修二会の別称だと知りました。
 金堂のご本尊を拝む正面の奥行きが意外と狭く、観客席は2列ほどしかない。ほとんどの観客は本尊を横から見る位置に用意された床几に座ってみることになります。われわれが座ったのも真横の椅子で、ワダスの前には太い柱が邪魔になり儀式の進行を見ることはほとんどできませんでした。イリーナとイヴァンは、約2時間の儀式を神妙な顔で見ていましたが、退屈だったかもしれません。
 10数人ほどの僧侶の聲明、周回のときの下駄の音、ときおり打たれる大音響の梵鐘、太鼓、ホラ貝の音。東大寺のお水取りとはかなり違う雰囲気です。
 CDで聞いた、全員が音痴なのではないかというぐらい不揃いの聲明もありましたが、ぴったりと音程の合ったものもありました。ということは、ひょっとするとあの不揃いさ加減というのは意図されたものかもしれません。一人一人が意識的に微妙に音程をずらして歌うというのは相当難しいはずですが、どうなんだろう。
 
■3月26日(水)〜30日/レッスン/小鯖青年
 ワダスが紹介したコルカタのテージェーンドラにサロードを習ってきた小鯖青年が、音楽的なことはほとんど習っていないので声楽を習いたいということで東京からやってきました。1日3時間のレッスンを4日間連続で受けるという意欲はすごい。

■4月7日(月)/大谷大学前期スタート
 例年のガッコのジュギョーが開始。7月まで、毎週月曜日に山科の奥山家に居候をするという日々が続きます。大谷大学の受講生は相変わらず100人以上とやはり多い。

■4月26日(土)/塚脇作品「KOBE RING」鑑賞ミニツアー/小野市/参加:短足友の会(榎忠、幸田庄二、杉岡真紀子、曽我了二、塚脇淳、橋本健治+例子、林英雄、東仲一矩、HIROS)
 短足友の会の一人、塚脇淳さんが2009年の神戸ビエンナーレに出品した鉄の作品「KOBE RING」が田んぼや里山に囲まれた場所に設置されたのを機に、短足友の会メンバー揃ってミニツアーを敢行しました。ニューヨークに出かけているという植松奎二夫妻、旅行中の岡田淳夫妻は残念ながら不参加。
 まず向かったのが、浄土寺。方形の屋根が美しい浄土堂の中央に安置された5.3Mの快慶作阿弥陀如来像、観音および勢至菩薩象がなかなかの迫力でした。浄土堂、阿弥陀如来像という連想から浄土教系の寺と思いましたが、真言宗のお寺でした。
 KOBE RINGが設置されているのは、マルニ製油小野研究所敷地内でした。高さ6Mほどの湾曲した無垢の鉄板を組み合わせた作品は、周辺の緑と広い空に解け合い美しい。
 短足だけのごく内輪のお披露目という予想と違い、この日集まったのは、比較的高齢の現地の人々やマルニ製油関係者など60名近い。酒類やおかずが置かれたテント、簡単な野外スピーカー、ベンチなどが用意されていました。社長や企画者である幸田さんの挨拶、エノチューの乾杯音頭と、なんとなく「正式」なお披露目式に近い。しばらくして作品の中央に置かれた小さな仮設舞台でさまざまなパフォーマンス。最初がワダスのパフォーマンスでした。短時間でかつ野外なのでインド音楽などはとてもできないので、頭上の作品カーブをイメージして即興で短く演奏したのを皮切りに、増田律夢さんのダンス、橋本健治さんの「まともに音が出なかったらごめんなさい」という尺八、数年来練習に励んできた橋本例子さんのフルスの後、地元民謡愛好会のじぎく会による民謡。これが意外に長かったなあ。最後がトンチャンこと東仲一矩さんのフラメンコ。これがなかなかに素晴らしかった。ワダスの感想としては、この催しではトンチャンのフラメンコだけで良かったのではないかと思いました。
 余韻を楽しむ風ではなく後片付けが始まり、なんとなく不燃焼感を抱きつつ帰路につきました。
 橋本夫妻に「わしらこれから行くとこあるんやけど、行かへんか」といわれたので神戸駅で降りて一緒に「市場ギャラリー」へ。実はこの日は橋本夫妻が定期的に参加している、詩の朗読や演奏などの集まりがあったのでした。で、結局、持っていた笛でちょっと演奏することになったのでありました。

■4月29日(火)/ジュディス宅ディナー/京都
 大谷大学のビジョーシキコーシ仲間のジュディス・クランシーさんのお招きで、現代風に改装され雑誌にも紹介され事のある西陣の町家のご自宅でディナーをごちそうになりました。
 この日は瀬田で2コマのジュギョーがありくたくたでかつ雨模様かつご自宅の場所がもう一つはっきり分からないというけっこうよれよれ状態でした。京都市内のバス交通網は充実していることは分かっているのですが、きっちりと頭に入っていないのでバス停からのルートを教えてもらってもなかなかうまく到達できません。結局、地下鉄今出川駅から雨の中を徒歩でお宅へ行きました。

 左前足が悪くてスムーズに歩けないイザベラ、先天的消化器疾患のゲンジという2匹の猫があちこち移動するのを眺めつつジュディスと、音楽、文化、文学、日本の大学などについておしゃべり。彼女はフィラデルフィア出身ですが、京都を知り尽くしていて、京都案内に関する本も出しています。

===この間に読んだ本===

『マリス博士の奇想天外な人生』(キャリー・マリス/福岡伸一訳、ハヤカワ文庫、2004)
『音楽起源論』(黒沢隆朝、音楽之友社、1978)
『「標準模型」の宇宙』(ブルース・シューム/森弘之訳、日経BP社、2009)
『がんばれカミナリ竜』上下(スティーヴン・ジェイ・グールド/廣野喜幸+石橋百枝+松本文雄訳、早川書房、1995)
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』上下(アンドリュー・ロス・ソーキン/加賀山卓朗訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2014)
『小暮写真館』(宮部みゆき、講談社、2010)
『ダイイング・アイ』(東野圭吾、光文社、2007)
『途上国の人々との話し方』(和田信明+中川豊一、みずのわ出版、2010)
『ノモンハンの夏』(半藤一利、文春文庫、2001)
『007白紙委任状』(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2011)
『ハンナ・アーレント』(矢野久美子、中公新書、2014)
『ブコウスキーの3ダース』(チャールズ・ブコウスキー/山西治男訳、1998、新宿書房)
『イタリアの幸せなキッチン』(宮本美智子、草思社、1995)
『江戸の食生活』(原田信男、岩波現代文庫、2009)
『凍てつく世界』1~3(ケン・フォレット/戸田裕之訳、SB文庫、2014)
『もの食う人びと』再読(辺見庸、角川文庫、1994)
『音楽への憎しみ』再読(パスカル・キニャール/高橋啓訳、青土社、1997)

===これからの出来事===
 新学期が始まったとはいえ、レギュラーである月火のジュギョー、レッスン以外はこれといった仕事もないので、相変わらずホボジョブレスミュージシャン状況に変化はありません。

■5月5日(月)/国境を越えたラーガ音楽1/CAP CLUB Q2、神戸/David Trasoff:サロード、中尾幸介:タブラー、HIROS:バーンスリー

■6月1日(日)/国境を越えたラーガ音楽2/CAP CLUB Q2、神戸/Steve Gorn:バーンスリー、Ty Burhoe:タブラー、HIROS:バーンスリー

■6月14日(土)/CAP音楽祭「CAPおんせん(音泉)」/CAP CLUB Q2、神戸/出演者:今西玲子(箏)、岩本象一(パーカッション)、大橋一慶(タブラー)、金子鉄心(イーリアンパイプス、ティンホイッスル)、児嶋佐織(テルミン)、小島剛(ラップトップ)、シモダノブヒサ(ギター、Eベース)、中尾幸介(タブラー)、中村好伸(ギター)、祝丸(和太鼓)、HACO(電子楽器、声)、HIROS(全体構成、バーンスリー、 藤澤バヤン(タブラー)、松本こうすけ(タブラー)、宮本玲(バイオリン)、丁友美子(クラリネット)
 昨年、出演者がみな「楽しかったあ」という「CAPおんせん(音泉)」第2弾です。今回は前回とは違った構成で楽しんでいただきたいと思っています。ぜひ、音の温泉に浸かりにいらっしゃいませんか。

■7月5日(土)/インド音楽レクチャー&コンサート/浜松市楽器博物館/中尾幸介:タブラー、HIROS:レクチャーとバーンスリー