めんこい通信2017年5月25日号

 もくじ
 CD大好評発売中
 これまでの出来事
 この間に読んだ本
 これからの出来事


 森友だ、籠池だあ、あやしさぷんぷんの加計学園の獣医学部新設とか、アキエがどうしたとか言っている間に、どう見ても、モンサントとかに都合の良いように日本市場を整えるとしか思えない種子法の廃止法案や、倒産されたらきっと困った事態になるような水道事業民営化法案なんかも通過してしまい、法務大臣すら中身を理解していないものすごく長ったらしい名前、かつ提出動機がよくわからなくかつどう見ても論理的とは言えないいいわゆる共謀罪(捜査当局の恣意的な判断で本人の知らない間に犯罪容疑者になりうる)のレベルの低い議論が国会で続いていたと思ったらついに強行採決しやがった。たぶん、人権やらプライバシーやらの障壁のため権力の行使がスムーズにいかないことにイラつく検察や警察官僚たちの願望なんだと思いますが、じわっじわっと我々の自由領域に踏み込んでくる官僚や権力者たちに対抗する方法は選挙以外にあるのだろうか。絶望的な気分になります。
「なに、アサドが化学兵器をまた使ったって。おい、この映像見ろよ。ひでえやつらだ。なっ、イヴァンカよ。あれっ、お前、泣いてんのか。うーん、アメリカ以外のことにゼニは使わんと公約したけど、ここでなんかせんと共和党の奴らに臆病者と言われかねんしなあ」
 表層の反射能力だけが得意のようなトランプが、きっとこんな感じで後先考えずにシリアに59発のミサイルをぶっ放したんでしょうね。そして、金正恩が核実験とかミサイル試射したらトランプは北朝鮮にもぶっ放しかねない、と世界はビビる。どんな大統領になろうが、どんな政策を出そうが、アメリカ政府に無条件反射的に従うことを決心しているように見えるアベちゃん及びその取り巻きは、真っ先に支持を表明しつつもけっこうビビったに違いない。そのトランプが今度は自身も関わっていたかもしれないと疑われているロシア疑惑の捜査の中止を言い出し、FBI長官までクビにしてしまった。

◉ ところで、ゴールデンウィークはほとんど家に閉じこもって読んでいた『サピエンス全史』という本は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』や『文明崩壊』以来久々に考えさせられ楽しめました。
 ホモ族のなかからわれわれサピエンスがこれだけ繁栄してきたのは「認知革命」も大きく寄与しているというのがその主張の一つです。これは、サピエンスが現実にないものを想像する能力をある時期に獲得したことを指しています。現実にないものを記号化し、あたかもあるかのような共同幻想をもち、見ず知らずの人間と共同作業が可能になったと。現実にはないものだから記号化された幻想は無限に拡大できると思い込んでしまう。どう考えても生きているうちには絶対に消費しきれないお金をもっている金持ちたちが投資の名の下にさらなるお金を得ようとするサイクルに上限がないのもこの能力といえます。で、こういう能力を得たおかげで人間は幸福になったのか。
「私たちが直面している真の疑問は、『私たちは何になりたいのか?』ではなく、『私たちは何を望みたいのか?』かもしれない」が著者の最後の問いかけでした。
 遺伝子操作などによって生物の進化に人工的バイアスを加え始め、機械に認知を任せるAIなどによって、われわれを含む地球の生物界はこれまでとはまったく異なった段階に入りつつあるのではないかと不気味な予言の同じ著者の次作『Homo Deus』が話題になっていて、翻訳が待たれます。
 ともあれ、こういう本を読みつつ、世界で起きているいろんな出来事を眺めていると、本当に世界はどうなっていくんだろうかと思ってしまうのでした。

◉再びしぶとくCD販売促進

 新しいCDを作ったことをお知らせしました。おかげさまで在庫は製作枚数500枚のうち残りなんと、わずか、365枚となりました。というわけで、先号のワダスの願望を繰り返したいと思うのでした。
「ま、それなりに好評のようなワダスのCDの購入をみなさまにお願いしたいなあ、と強い願望を持っているわけでありますが、もちろんそう願われる人々にもさまざまな事情があり音楽の好みがあり、必ずしも中川家の生活向上にはご関心があるわけではないということも理解してはいるのですが。はい。ぼやぼやしていると、ひょっとしたら生前のHIROSを偲ぶ唯一の音源が売り切れになるかもしれませんよ」。http://sound.jp/tengaku/CD/ragamusic.html
 1枚2000円で販売しています。ふと思いついたらメールでご連絡ください」
 というわけで、中川家で一定の面積を占めているCDの速やかな退去にご協力ください。

===これまでの出来事===

◉2月25日(土)/実践的ラーガ音楽講座-ジョール、ジャーラーの展開/インドまるごと総合学校(ODC)、高槻/HIROS:講師
 ジョール、ジャーラーというのは、一定の長さに刻まれたビートにしたがってラーガの表現可能性を即興的に披露する部分を指す言葉です。これらの前に演奏する自由リズムのアーラープもそうですが、どうやって演奏するかを他者に伝えるのは実に難しい。即興といっても頭に浮かんだ旋律を適当に鳴らせば良いというものではない。やはりアーラプ同様、テーマとなる音あるいは小フレーズを拡張しつつ低音域から徐々に高音域に向かうという伝統的な法則性はあるものの、細かな部分は演奏者個人のラーガ解釈、基礎練習の蓄積、それまでのすべての音楽体験がかかわっています。なので、私はこうやっています、ということしか伝えられない。いちおうプリントも配りましたが、参加者はどれだけ理解できたでしょうか。

◉3月4日(土)/実践的ラーガ音楽講座-ラーガの種類と特徴/インドまるごと総合学校(ODC)、高槻/HIROS:講師
 何百もあるラーガの特徴、種類を分類してリスト化するのは、演奏そのものを伝えるよりもずっと楽です。とはいえ単なるトリビアに近いかもしれません。

◉3月11日(土)/実践的ラーガ音楽講座-ターラとは/インドまるごと総合学校(ODC)、高槻/HIROS:講師、藤澤ばやん:お助けタブラー
 南北インド古典音楽のリズムサイクルを中心に話をしました。ばやん君に実際にタブラーを叩いて紹介してもらい、助かりました。

◉3月18日(土)14:00~/中川真最終講義「響く空間 アジアと」/大阪市立大学田中記念館ホール、大阪/登場:中川眞、小田中章浩、上田假奈代、小林江美+ギータ・クンチャナ、岩澤孝子、西純一、Wiyantari、Jaka A. Wibawa、Fiqih Anggun Septianti、Hiros、チュラロンコン大学合奏団、スリヤ・サンキート、マルガサリ、釜ヶ崎芸術大学+釜ガムランOMOIDE、十津川盆踊り研究会、アジア都市文化学専攻生・修了生

ギータクンチャナと
講義をする中川真さん

 中川真さんが定年となり大阪市立大学で最終「講義」がありました。定年とはいっても特任教授としてまだまだ仕事はするようでありますが。
「最終講義はパフォーマンスだらけにすんねん」といっていたように実に盛りだくさんの演し物でした。彼の活動領域の広さを物語るように、ガムランとジャワ舞踊、タイ音楽・舞踊、十津川盆踊り、あいりん地区ガムランなどなど。パフォーマンスの間に挟まれた真さんの講義は、幅広い活動の根底にある考え方が述べられ、最終講義にふさわしいものでありました。
 ワダスは、小林江美さんの主宰するバリ芸能グループ「ギータクンチャナ」にちょこっとくっついて、タゴールソングを演奏しました。江美さんから送られてきたグンデルの音源にぴったりとに合うバーンスリーの選択に戸惑いましたが、本番はなんとかなったかと思います。
 会場は、傾斜の強い客席が三方を囲む舞台のある田中記念館ホールでした。出演者、聴講者には知り合いが多く、ウィヤンタリ、西真奈美さんなどのガムラン関係者はもとより、2008年のジョクジャ以来の田淵ひかりさん、山口からやってきた水谷由美子さん、愛知芸文の藤井明子さん、岩見沢の岩澤さん、大阪市大の研究者の諏訪君、水口町の中村道男さん、五条の冨岡三智さんとかとかとかとか、久しぶりにお会いする人たちだらけでした。

◉3月25日(土)/実践的ラーガ音楽講座-実演によるラーガ音楽演奏の構造/インドまるごと総合学校(ODC)、高槻/中山智絵:シタール、藤澤ばやん:タブラー、バーンスリー:HIROS
 この日が6回連続講座の最終日でした。
 ワダスがヤマン、智絵さんがバーゲーシュリーを演奏しました。正確な音程の智絵さんのシタールはアタックが強くなればもっともっと魅力的になると思います。それにしても、30ちょい過ぎの女性がきちんとラーガ音楽を演奏していることに、同じ年頃には全くの初心者だったワダス自身にとっては驚きで、なんとも隔世の感があります。
 中川真最終講義でギータクンチャナのメンバーとして一緒に演奏した山海さんも見えました。
 終わった後、総持寺駅近くのネパール人経営のインドカレー屋で打ち上げ。参加したのは主催者の佐藤高さん、一人旅の好きな北原青年、中山智絵さん、ODCオーナーの村上幸子さん、タブラーの藤澤ばやん君とワダス。

◉3月26日(日)王子動物園散歩
 だらだらと家にいるだけでは運動不足になるというわけで、久しぶりに王子動物園まで散歩しました。80分ほどの距離です。桜はまだつぼみ状態。
 ずっと昔一度来ただけの動物園は、子供づれの家族など混み合っていました。なんとなく見学コースに従って動物たちを眺めていると、だんだんと動物たちが気の毒に思えて来ます。狭い居住スペースで仲間を見ることもなくただただ与えられる餌を食べ寝っ転がっている生活。もっとも、外敵からしっかり防護され死ぬまで食事の心配のない身分で、次々に現れる人間の反応を眺めるというのは別の意味で極楽的ともいえますか?

◉4月1日(土)/エバーさくら祭り
 エバーというのは、我々が住む約700世帯のマンション「エバーグリーン」のこと。桜はまだ開花していなかったのですが。
 いつの間にかスタッフになっていて、この日はフーフで朝から専用のTシャツを着て子供向けアトラクションの手伝いでした。久代さんはおもちゃクジ、ワダスはミニゴルフの担当。ワダスと同じ担当だったのは、82歳のMさん。子供よりも圧倒的に高齢者が多いマンションで、ミニゴルフゲームに来る子供も少なく、ほとんどMさんの話を聞いて過ごすことになったのでした。
 職業軍人の父の関係で呉に生まれ、高校卒業と同時に住友銀行就職。4年で退職し1年後に早稲田大学経済学部へ、昨年78歳のガンだった妻と死別、妻は最後まで自分を「なおちゃん」と呼んでいたなどなど、聞き手を手放すまいという勢いの話で、年を取るということは、彼のように自分のことをひたすら聞いてくれる人に話すということなのか。似たような我々の両親のことなどを思い浮かべ、やがて自分たちもそうなっていくのかとちと不安を覚えるのでした。
 自治会会議室で打ち上げ。スタッフは平均年齢のかなり高く、我々はむしろ若手です。
 これまでほとんど関わりのなかったマンションの住民たちとじわじわと親しくなっていくことは好ましいことではあります。とはいえ、生来のナマケモノである我々フーフは、管理組合の仕事なんかが来たらちと面倒だなと思っているのですが、打ち上げに加わったスタッフたちは様々なマンション管理活動の役割の人たちがほとんどで、なんだか彼らの「仲間入り」した感じで、実はあまり落ち着かないのでした。
 参加者には結構意外な人もいました。話を伺ってびっくりしたのは、長年おおたか静流さんの追っかけで、ワダスのことも知っているという自治会長のNさん(66歳)でした。これだから油断がならない。また、ワダスが山形出身だと知った別の人が「私も山形です」と名乗ったNさん(72歳)。最近になってよく参加するようになった麻雀会の「ご老人」たちもそうですが、このマンションには実に多彩な人が住んでいます。
 建築年数によって資産価値が上がっていくというドイツと比べ、日本は一般に古くなると価値が下がる傾向が強いというのをあるテレビ番組で知りました。原因の一つは住民の意識だとされますが、そうした価値の低下を防ぐには住民の管理が欠かせません。おそらく終の住処になる我がマンションの修理、管理、様々な活動にも徐々に関わっていかざるを得ないと思うようになりました。

◉4月9日(日)メキシコ打ち合わせ/角、Hiros、石上和也(音楽家、ラップトップやシンセ)、森田優希子(美術家、パンの照明オブジェ)、平林沙也加(美術家、飾り羽子板/押絵羽子板)、淺野夕記(美術家、ドローイングやインスタレーション/在ベルリン)、下田展久(C.A.P./制作担当します)
 2年前にやって来たメキシコ人アーティストの一人プリシリアーノからCAPにメキシコの小さな町タカンバロ芸術祭参加を呼びかける招待状が届きました。招待状を受け取った下田さんが、参加者を募ってにわかに編成されたのが、ドローイングやインスタレーションの淺野夕記さん、押絵羽子板制作の平林沙也加さん、パンの照明オブジェなどを作っている森田優希子さん、ダンスの角正之さん、ノイズ音楽の石上和也さん、バーンスリーのワダス、ベースの下田展久(兼お世話ががり)さんの7名。ベルリン在住の淺野さん、都合のつかない石上君をのぞいたメンバーで、メキシコで何をするべきかを話し合ったのでした。招待とはいえ、渡航費は出ないので助成金頼みです。
 彼らが神戸にやって来た時、Q2で死者のオブジェを作ったということから、じゃあ我々は盆踊りでもしようかということになりましたが、どんなものになるか、中身はもちろん何も決まっていません。その後、日程的に無理という石上君に代わってパーカッションの岩本象一君が参加メンバーなりました。時期は来年の8月になりそうですが、どうなることか。
 というようなことがあったので、ワダスは一念発起してスペイン語を勉強しようとテキストと辞書を購入しましたが、いかんせん、やっぱり、新しいことを勉強するには年齢からくるのか集中できなく、投資が無駄になるかならないかの瀬戸際にあるのでした。

◉4月10日(月)/大谷大学前期講義開始/佐藤高宅泊/サントゥール調弦

 新学期が始まったので例年のような居候生活です。第1弾は、2月、3月の講座を主催してくれた宇治の佐藤高さん宅。彼は、一昨年亡くなった奥さんの寛子さんが残したサントゥールをなんとかものにしてヒンドゥスターニー音楽を演奏したいという願望を持っているのですが、いかんせんまだ楽器のチューニングもおぼつかないのでした。ということで、ワインを飲みながらむちゃくちゃに狂っていたサントゥールを調弦しました。
 それにしても100本近い弦のサントゥールという楽器のチューニングは面倒です。ワダスはこんな面倒な楽器をやる人の気が知れないなどと呟きつつ、涼しい音色の美しさにうっとりするのでした。
 佐藤宅の前庭の大きな桜の木の満開の花は照明を当てられて豪華でした。
 その佐藤宅で知人のブラジル人ジョゼ・ピネイロが昨年ガンで亡くなったことを知りました。60歳だったそうです。数年前に奥様のユミさんとスイスで太極拳道場をやっていた男を連れて我が家を訪れたのを思い出します。スイス在住の男が、実は1971年にワダスと一緒にイラン、アブカニスタン、パキスタン、インド、ネパールを旅した北村忠さんだと判明して本当にびっくりしたものでした。
 ジョゼたちと初めて会ったのは、1983年、ダライラマの本拠地であるインドのダラムサラでした。ユミさんはまだ神戸に住んでいるはずですが、連絡が取れていません。

◉4月17日(月)/大谷大学/奥山宅泊
 2年ぶりに山科の奥山家で居候でした。夕食は石狩鍋。
 お隣に住んでいた奥様の雅子さんのお母さんが亡くなり、今はご夫婦で2軒の家に住んでいます。雅子さんはお母さんの死後、1年ほど体調を崩していたという。老人介護というのはなかなかにくたびれるんですね。隆生さんは相変わらずほぼ毎日映画館に通う日々ということです。
 
◉4月18日(火)/金子飛鳥来宅宿泊
 数日前に「関西に行くんだけど泊めてくれる?」というメールをもらったバイオリン奏者の金子飛鳥さんが宿泊。金曜日に神戸居留地にあるビルで、ピアノの金谷こうすけさん、バイオリンのゆうまさんとのトリオのライブがあるとのことでした。
 だらだらとワインを飲みながら遅くまでおしゃべりでした。アメリカのニューオーリンズの彼女の生活もなかなかにスリリングのようです。
 次の日は自身も音楽で参加したドキュメント映画「天のしずく~辰巳芳子 “いのちのスープ”」(監督:河邑厚徳)上映の前に京都の堺町画廊で演奏とのこと。旧知の堺町画廊なのでまったく世界は狭い。

◉4月21日(金)/WaHaHaライブ/100ban Theater、神戸/金谷こうすけ:ピアノ、金子飛鳥+ゆうま:ヴァイオリン

 旧居留地の高砂ビルには杉山知子さん、藤本由紀夫さんらのスタジオがありなんども入ったことはあったのですが「100ban Theater」というホールがあることを初めて知りました。
 この組み合わせの演奏は、去年の5月に今は無くなってしまった芦屋の山村サロンで聞きました。飛鳥さんの深みと貫禄のある演奏はもとより、去年から比べると一段と自由になったゆうまさんのヴァイオリンが光っていました。
 打ち上げは1階のBAR Request。みな空腹だったはずでしたが、食べ物はほとんどないのでした。
 一緒に帰宅した飛鳥さんとそばの夜食。次の日、彼女は関空から江戸へ向かうのでした。彼女はワダスと比べてまったく忙しいミュージシャンなのです。

◉5月14日(日)/邦楽とJAZZが出会ったら/comm cafe、箕面市立多文化交流センター/ジェシー逅盟:尺八、林栄一:アルトサックス、大塚ひろこ:ヴォーカル、上村美智子:ピアノ、中村仁美:コントラバス
 この日は向日町のグレン宅ホームコンサートへ行く予定でした。サントゥールの新井孝弘さんとグレンの演奏。ところが前日になって急にキャンセルとなったのでした。折からワークショップや講演のために来日していたシヴ・クマール・シャルマー氏(79歳)が体調を崩し、弟子である新井さんがそのお世話で時間が取れなくなったというのが理由。
 それを埋めるように、知り合いの野崎ターラさんからお誘いがあり箕面に出かけたというわけです。「ひろっさんにも将来なにかやってほしいのでぜひ」と、館長の岩城あすかさんにも紹介してもらいました。なにかできたらいいのですが。
 野崎ターラさんというのは、ワダスが遊学していたインドのバナーラス・ヒンドゥー大学(BHU)創立者のひ孫にあたる女性です。前に彼女に膨満感解消のための鍼治療をしてもらったことがあることはこの通信でも触れました。
 会場の場所が実に分かりにくい。北千里からバスで小野原南で下車。散歩していた年配の男性に聞いた方向へ歩き始めたのですが、念のため途中のコンビニのレジのおばさんに尋ねると「まったく逆です。今来た道をずっと戻ってください」と言われてしまった。
 コンサートそのものは、ある程度予測のつく内容でした。みなプロのミュージシャンで安定感のある「フツー」の演奏でした。ジャズでもとんがった音楽の好きなワダスにはちょっと冒険してもらえばなと思ったのでした。とはいえ林栄一さんのサックスはなかなかでした。スイス生まれ京都在住の女性尺八奏者ジェシー逅盟さんは、合気道とか空手の有段者とのこと。羽織袴のスイス人尺八奏者に日本人ジャズ奏者がからむ構図というのは不思議な雰囲気でした。
 公演後、ジェシーさんの先生の茅原さん、スイスから旅行でやって来たジェシーの友人と一緒にターラさんの車で北千里まで送ってもらいました。みちみち茅原さんから都山流と琴古流の違いなどについていろいろ教えてもらい勉強になりました。琴古流は外国人の学習者が多いが日本国内の演奏者は少ない、いっぽう都山流は外国には広がっていないが国内では圧倒的に多いという。

◉5月20日/北インド古典音楽を楽しむ~新井隆弘コンサート/インド・クラブ、神戸/新井孝弘:サントゥール、中尾幸介:タブラー

 新井さんと主催する神田裕子さんから招待されて久しぶりに北野町のインド・クラブへ出かけました。以前は全体に古びていて暗い雰囲気でしたが、改装して明るくなってました。
 ムンバイに住んでインド国内でも旺盛な演奏活動を行なっている新井さんの演奏は迫力が増し、貫禄すら感じられます。彼はインド国内でも有数の音楽祭に招かれて演奏しているのでこれからも大活躍していくはずです。
 サントゥールはインド音楽特有のポルタメントや修飾技法には不向きな楽器といえますが、グルであるシヴ・クマール・シャルマーによって演奏法が確立され今では古典楽器として人気が高い。そのグルを彷彿とさせる新井さんはグルに続く後継者の一人になりつつあるようです。
 中尾幸介君のタブラーもとてもよかった。彼の音色やリズムのバリエーションは年々成長しているように見えます。彼らのような若手演奏家がもっともっと育てば、日本でも聴衆の幅が広がっていくと思います。
 宝石を扱う主催者の神田裕子さんの関係からか、当日の聴衆はふだんのインド音楽コンサートとはかなり趣が違いました。昨年に続き新井さんの公演をいくつも企画した神田さんはものすごく元気で積極的なかわいい女性です。こんな素晴らしい応援者をもった新井さんは実にラッキーです。
 丸テーブルが並べられた会場はいっけん結婚式場のような雰囲気。なんだか新郎側家族席に座ったような気分でした。同席したのはひそかにバーンスリーを習っているという田村さんご夫妻、シマムラに務めるというサラリーマン、そして揃いの衣装で創作舞踊を踊った美形インド人女性たちでした。この日はインド総領事も見え、最後に日印文化交流についての短いスピーチを披露。
 ビュッフェ方式のベジタリアンディナー後、偶然聞きに来ていた金沢のユリアさん(昨年高野山で一緒でした)と飲み屋「アビヨーン」に寄って一杯。そこへ田村珠紀さんが現れ、ポートアイランドのワダスの住むマンションでよく見かけた画家の八木さんと一緒に帰宅しました。

◉5月22日(月)/大谷大学講義/野中家宅泊
 久しぶりに八瀬の野中家宅に居候でした。
 染色家の久行さんは最近、黄斑変性症の手術を受け、最近までずっと下を見続けるという苦行だったと。骨つき鳥モモ肉のトマト煮込みとワインで、ミキさんのイギリス、インド旅行のことや、新調になったお風呂、洗面、トイレのことなど、だらだらとおしゃべり。八瀬の新緑も美しかった。

===この間に読んだ本===

*そこそこ**なかなか***読んで損しない*****絶対おすすめ

『聖地巡礼』(内田樹+釈徹宗、東京書籍、2016)
『正義から享楽へ』(宮台真司、blueprint、2017)
『インド鍵盤楽器考』**(岡田恵美、渓水社、2016)
『仏教思想のゼロポイント』**(魚川祐司、新潮社、2015)
『ゲンロン2』*(株式会社ゲンロン、2016)
『哲学で何をするのか』**(貫成人、筑摩書房、2012)
『読書の愉しみ』(中村稔、青土社、2016)
『打ちのめされるようなすごい本』***(米原万里、文藝春秋、2006)
『フォン・ノイマンの生涯』***(ノーマン・マクレイ/渡辺正+芦田みどり訳、朝日選書、1998)
『オトコの進化論』***(山極寿一、ちくま新書、2003)
『麻雀の誕生』(大谷通順、大修館書店、2016)
『雨の自然誌』***(シンシア・バーネット/東郷えりか訳、河出書房新社、2016)
『イモータル』*(萩耿介、中公文庫、2014)
『世界の名作を読む』(工藤庸子・池内紀・柴田元幸・沼野充義、角川文庫、2016)
『戦争の世界史』***上下(ウィリアム・H・マクニール/高橋均訳、中公新書、2014)
『サピエンス全史』*****上下(ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳、河出書房新社、2016)
『シンメトリーの地図帳』***(マーカス・デュ・ソートイ/冨永星訳、新潮文庫、2014)
『響きの科学』**(ジョン・パウエル/小野木明恵訳、ハヤカワ文庫NF、2016)

===これからの予定===

 月火のガッコ以外は基本的にヒマ状態ではありますが、マンションの麻雀会とか、たまに江戸からやってくる青年のレッスンとか、ただの宴会とか、死にそうなほどヒマというわけではありません。とはいえ、近々の予定としては以下。

◉7月22日(土)/サンギート・ミシュラ来日ライブ/キトゥン・カンパニー、京都/サンギート・ミシュラ:サーランギー、グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー

◉9月23日(土)/Autumn Equinox 〜Kenny Endoと仲間たち〜公演/西宮市プレラホール/大町たけし:チェロ、久保比呂志:津軽三味線、ケイコ・フジイ:ダンス、ケニー・遠藤:和太鼓、HIROS:バーンスリー