めんこい通信2018年12月25日号

 もくじ
 これまでの出来事
 この間に読んだ本
 これからの出来事

◉もうすぐお正月ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 世界は相変わらず騒がしく、オリンピックだの万博だのと浮かれ騒ぎがある一方、枠組みだけ法律の体裁を整えてあとは役人の裁量に任されるという外国人労働者受け入れ問題とか、玉城デニーさんを知事に選んだ住民の意思を無視した辺野古埋め立てが始まったり、内閣府が雇用する水道ビジネス関係者に民営化法案の調査と提言をさせたりなどなど、どうしてこんなデタラメがまかり通るのか理解しにくい劣化してしまった日本の政治状況とか、ゴーン問題とかそれにまつわる日本のヘンテコな法制度とか、相変わらず推定有罪で騒ぎ立てるマスコミとか、中米貿易戦争がどうのとか、もう考えることすらうんざりするような出来事だらけですが、それらの解決に向けて何かしら行動を起こすとか意見を申し述べて世論に訴えるとかするためのエネルギーと資力もほとんどない我々にとっては、ま、これから何十年も生きるわけではないし、次世代に残すべき技術とか伝統などとも無縁に生きてきたので、とりあえず楽して生き延びることに専念したいと思うこの頃なのでした。

◉さて、この通信の目的の一つは、読者の皆さんに我々がしぶとく生き延びていることを知っていただくということです。知っていただいて愛して欲しい、というわけです。元々は年賀状を出す代わりに我々近辺で起きたことをダラダラとお知らせするというものでした。
 もう一つが、中川家というかワダス自身の外部記憶化です。つまり、忘却力がますますパワフルさを増してきているので、ある程度記録しておかないといずれ何も覚えていない自分を発見することになるかもしれないという恐れからです。ま、ワダスがボケても、あるいはすっとこの世界から消滅しても、世界人類を含め皆さまにとっては、あっそう、でしかありませんが。

◉で、最近はこの通信を書いて送ることもちと億劫というか面倒になっている自分を発見するのでした。たった3ヶ月のことなのに、あの日何をしたかということを思い出すのに頭を使うのが面倒。歳なんでしょうね。発送すると即座に反応してメールを送っていただく人や、たまにお会いする知人などから「通信はまだなの。あれ楽しみにしてるのよね」とか言われることもあるのですが、その人たちにしてもそれぞれ独自の生活があるのでワダスの通信が途絶えたとしてもほぼなんの影響もないことでしょう。というわけで、そのうちこの「めんこい通信」が途絶えることもあり得ることをご了承ください。

◉ところで、99年来ほぼ20年になる大学ヒジョーキンコーシ生活が終わります。週に二日ないし一日京都へ通うという日々がなくなるわけです。若い学生たちとの接触が全くなくなる、低額とはいえ定期的な収入が今後期待できなくなるということはありますが、解放感の方がむしろ強い。これでバリバリと音楽活動に専念できると言いたいところですが、インド音楽の需要は生活を支えるにはあまりに少なく、活動機会がこれから増えることはほとんど期待できませんので、ま、単になあーんもせずにダラダラ生活がこれから死ぬまで続くということです。ワダスの「完全フリーだあ」を聞いた久代さんは、これまで自分のビール代ほどのギャラで細々と続けてきた雑誌の仕事を「あたしも、辞めるって編集部にメールしたのよね」と発泡酒をグビッと煽りつつ申しのべるのでした。生活の上で必要最小限のコミットメントはあるものの、これで社会との繋がりはグッと減少するわけです。いよいよ林住期の先の遊行期に突入しつつあるということでありましょうか。

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===これまでの出来事===

◉9月24日(月)/リトゥウィック・サンニャル・ドゥルパド公演/誓願寺、京都/リトゥウィック・サンニャル:声楽、金子哲也:パカーワジ
 リトゥウィック・サンニャルのコンサートに京都まで行ってきました。リトゥウィックは、ワダスにインド音楽の手ほどきをしてくれた最初の人です。2004年にバナーラスの彼の自宅へ訪問して以来なので、14年ぶりの再会でした。
 2年前のスティーヴ・オダとのライブでお借りしたことのある誓願寺が会場。この日はどういうわけかマスクをしている人だらけ。PA係のシタールの南沢さんが、やはりマスクをつけて「インフルが流行っちゃって。(主催者の)シュリーもダウンして今日来れない」と申し述べ、パカーワジの金子さんもその度にマスクを外してタバコを吸いつつ「みんなやられちゃったみたい。僕は大丈夫なんだけど、一応、予防ということで。サンニャルさんは元気ですけどね」といって、去年のワダスと同じように井上想君の招待で訪れたネパールの話を始めたのでした。

 この日、リトウィックが演奏したのはRaga Bihag。後ろに控えた3台のでかいタンブーラーの調弦を神経質そうに調弦し終えたリトウィックの演奏は、線の細い声のせいもあり圧倒的な迫力には欠けていました。
 演奏後、リトウィックはワダスの肩を抱き「最初に教えた日本人だよ」と残った聴衆に嬉しそうな顔で紹介する。聞けば、現在はそこの教授であるバナーラス・ヒンドゥー大学に勤め始めたのが29歳の時で、その時の学生が我々だったという。そして現在は65歳。当時32歳だったワダスは68歳なのでした。月日の経つのは本当に早いものです。
 彼のワークショップを受けたという森すみれさん、ネパールで井上想君と会ってきたという瓜田女史、最近はあまり踊っていないという茶谷さんと近くのたこ焼き屋で一杯。ワシントン大学で民族音楽学の博士号を取ったという瓜田女史のネパールでの話などで盛り上がったのでした。
 
◉9月22日(土)/メキシコ報告会/Y3、神戸/よれよれ日記
 メキシコ渡航組がそれぞれの感想を報告する会。この日はベルリン在住の浅野夕紀さん(その後彼女は結婚し石川夕紀と名前が変わる)、東京で師匠宅に居候する平林沙也加さんも参加し全員集まりました。プロジェクターで映し出される写真が、帰国してまだ1ヶ月も経っていないのに懐かしい。打ち上げは近くの「天竺園」の水餃子。

◉10月5日(金)/ラーガ講座#3/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸/参加者:中村なおみ、山根、平野ゆき、松村ユキコ、森すみれ

◉10月12日(金)/スジャイ組京都来訪
 かつてスイスのベルンにあった自宅を訪ねたり(96年6月)、プネーの彼のアパートでホームコンサート(2005年1月)をしたことのあるバーンスリー奏者のスジャイ・ボバデ(65)から「京都へ観光へ行くのでどこかで会おう」とFacebook経由でメッセージが届き、京都で合いました。スジャイはワダスのバーンスリーの第2師匠である故マルハール・クルカルニの弟子でもあるのでいわば兄弟弟子です。
 同行者は、パートナーのスイス人女性ドリス(55)、フランスのアンジェにある美術館キュレイターのクリスティン・ベッソン(63)、そのパートナーのロラン・ジャンドル(62)の3人。彼らは昔から仲良しで、今回のようなグループ旅行は何度も経験があるという。また、クリスティンとロランは美術関係でこれまで京都に滞在したことがあるとのこと。
 ベジタリアンのドリスがいるのでまず「サイゼリア」でランチのあと、七聲会の南さんに、台風の被害であちこち障子の破れた知恩院を案内してもらいました。「御影堂修理が終わる再来年には天楽西来2みたいなのができたらと考えている」と南さんがおっしゃっていましたが、どうなることか。


「よくここでコーヒーを飲んだの」とクリスティンがいうpooh's cafeで一休み、祇園や錦市場をうろうろして彼らに連れて行かれたmumokutekiという変な名前のレストランでディナーでした。
 彼らと移動しながら色々話を聞きました。グラフィックデザインの仕事をしているひょうきんなロランは「14歳の時にアリー・アクバル・カーンのラーガ・チャンドラナンダンを聴いてインド音楽にはまった。その後インドへ行ってシタール、サロード、ヴァイオリンなど習った。どれも長続きしないけどね。クリスティンと二人でインドに20回以上行ったよ」と話し、二人とも相当なインド音楽好きでした。
「毎日1時間もかけて車で仕事場に通うのはしんどいけど、来年まで勤めると年金がもらえるの。私たちの家は小さいけど天井が高くて音楽には最適よ。スジャイには何度もホームコンサートをしてもらった。あなたも是非いらして演奏して」と4人の中では最も落ち着きのあるクリスティン。
「今はスイスを引き払ってゴアに住んでいる。近所の人にバーンスリーを教えたりたまに演奏もしているが、ま、リタイヤ生活だね。遺伝的糖尿病なので好き勝手できないけど、食うのが好き。君がベルンに来たのは96年だね。あの頃のパートナーとはもう別れた。ああ、プネーのアパートね。あれは2005年だから13年前だね。あっという間だね」というちょい出腹禿頭ちょい強面色黒顔のスジャイの話に控えめなドリスが頷く。2005年にプネーの彼のアパートへ行った時に彼女と会っていたことを思い出しました。
 彼らはこの後、直島、豊島に現代美術を見に行き、広島へ行くとのこと。また京都へ戻った時に会うことにして別れたのでした。

◉10月13日(土)/アンナプールナー・デーヴィー死去92歳
 朝のコーヒーを飲みつつFacebookを眺めていたら飛び込んてきた訃報でした。見知った人たちがだんだんとこの世から消えていくのは世の習いとは言え、ちと寂しい。
 アンナプールナー・デーヴィーは、ワダスのグルであるハリプラサード・チャウラースィアーのグルで、ワダスは数回彼女を訪ねたことがありました。今は亡きシタールのラヴィ・シャンカルの最初の妻、やはりもう亡いサロードのアリー・アクバル・カーンの妹、日本公演に招聘したことがあるアーシシ・カーンの叔母、ヒンドゥスターニー音楽中興の祖であるアッラーウッディーン・カーンの娘です。
 20年ほど前、深夜に近い時間に彼女のアパートを訪ねた時のことを思い出します。前夜にハリジーの演奏を聴いたワダスが、彼女に「昨日のマールカウンスは素晴らしかった」と申し述べると「あら、私は彼にマールカウンスなんか教えてないのよ」という言葉が強烈でした。

◉10月19日(金)/打ち合わせ兼飲み会/アビョーン、神戸/東仲一矩、田村珠紀、HIROS、角正之、下田展久、高橋怜子
 実質的には何も打ち合わせらしいことはせず、予想通り単なる飲み会になりました。メキシコで一緒だった角さんが東仲さんとは旧知なのでダンスや関係者の噂話や「まだまだやるぞお」で盛り上がったのでした。

◉10月23日(火)/スジャイ組宿で夕食

 直島、豊島、広島などを旅して京都に戻ってきたスジャイ組と前回と同じ四条大橋の上で再会し、市バスで彼らの宿まで行き夕食をご馳走になりました。場所は、JR丹波口駅に近い町家を改造した2階建のゲストハウス。隣家と密着しているとはいえほぼ一軒家を彼ら4人で借りていました。キッチンも風呂もついて実に快適な宿で、一人当たり1日4000円弱は安いともいえます。
 ドリスが主に調理したパスタ、サラダのディナーをいただいた後、持参したバーンスリーで、ロランが好きだというチャンドラナンダンとバイラヴィをちょこっと吹きました。
 翌日ここを引き払うというので、冷蔵庫に入ったプリンやらチーズやらケーキやらリンゴやらをもらって彼らと別れました。知的で年齢相応の脱力感が好ましい4人組でした。
 
◉11月5日(月)/サロンCACO/岡佳代子宅、須磨・神戸/堀香織:ピアノ、尾形悦子+尾形光雄+太田千恵子:声楽、杉井裕子:歌+大正琴、関谷久之:ギター+歌、崎元蘭奈:チェロ、小中公平+沼田恵:フルート、HIROS:バーンスリー
 ムンバイ在住サントゥール奏者の新井孝弘さんの活動を支援する神田裕子さんに誘われて参加しました。新井さんも前回演奏しています。
 場所は須磨の山手にあるごく普通の住宅でした。3時から演奏会が始まるとのことでしたが、11時頃到着した時すでに多くの人々が集まっていて、お祭りのような雑然とした雰囲気でした。神田さんによれば、結構な資産家である主催者の岡さん(80代の女性)の周辺には面白い人たちが集いある種のコミュニティーのようなものができているとのこと。
 居間と居間に続く部屋をぶち抜いて作られた演奏会場には、舞台に当たる奥の壁に向かってテーブルと椅子がびっしり並べられていました。聞けば30人以上の「客」が来るのだという。
 プログラムには、実にバラエティーに富んだ多くの出演者の名前や曲名が並んでいて、とにかく岡さんの気に入った人を全部集めたという感じでした。西洋クラシック系がほとんどなので、ワダスのインド音楽はかなり異質な印象を受けます。この日は与えられた時間は20分ほどなので、バティヤーリーとタゴールソングを短めに演奏しました。ワダスの前がモンゴル民謡、後がバッハ、最後が全員で「ユーアーマイサンシャイン」合唱といった流れなので、演奏会全体としての雑然感は拭えないものの、こうしたホームコンサートを個人が主催するというあり方は貴重なのかもしれません。

◉11月7日(水)/UnPopJapn〜Johannes S. Sistermanns 来日公演〜/KOBE STUDIO Y3、神戸/Johannes S. Sistermanns:サウンドアート、石上加寿也:コンピュータ音楽/「天竺園」打ち上げ
「客が数人しかいないのよ」という下田さんからの電話の通り、超厳選聴衆でした。
 窓ガラスや壁にもスピーカーを貼り付けたヨハネスのサウンド・アートが猛烈に眠気を誘い、石上さんがどんな音を出しているのかと思ったあたりで目が覚めて約1時間のパフォーマンスが終わっていたのでした。ヨハネスの出した音がそうだったのか、後から加わった石上さんの音がそうだったのか、複合してそうなったのか、じっと座って耳を傾けていたワダスの生化学的アルゴリズムがそうさせたのか判然としませんが、ともあれ普段では経験のできない眠りでした。
「ちょっと用事があって」という石上さんを除いて、スタッフの下田さん、高橋さん、受付担当の永吉さん(神戸大学大学院生)、ヨハネス、ダンサーの角正之さんと「天竺園」で水餃子の打ち上げ。ヨハネスともちょっと喋りました。彼はインドに音楽を習ったこともあるとのことです。

◉11月8日(木)神戸新聞取材/KOBE STUDIO Y3、神戸
◉11月11日(日)/エバーグリーン防災訓練
 大地震発生を想定した初めての訓練でした。マンション住民の専門家が事前にシナリオを作成し、それに沿って分担された役割に応じで住民が行動するというもの。ワダスの役割は火事が発生した場合に現場から集会場の本部へ連絡する伝言係というものでした。実際に起きた場合は訓練のように整然とはいかないでしょうが、こうした訓練はたまにするべきですね。

◉11月12日(月)/神戸大学ゲスト講義
 イラン音楽の谷正人さんに誘われて神戸大で講義でした。
 教室のある発達科学部は阪急六甲からバスでひたすら登って行くのですが、途中でワダスが初めて神戸に住み始めたアパートのあるあたりを通るので懐かしい。最も当時とはすっかり様子が変わっていましたが。
 いかにも音楽関係らしい教室でプロジェクターを使ってインド音楽のラーガについて喋り、ちょこっとバーンスリーを吹きました。参加した学生は30名ほど。皆熱心に聞いているようでしたが、理解できたのかどうかなんともいえません。
 講義の後は谷さんと歩いてJR六甲道近くの中華料理「東亜食堂」で夕食。谷さんのイランでの話などを聞きました。YouTubeでイランで受けた彼のインタビューを見ました。とても流暢なペルシャ語で難しそうなことを答えていたので、現地では相当勉強したんだろうなあと想像できます。
 今度お会いした時はイランでの音楽修行の様子などをもっと詳しくお聞きしたいなあ。

◉11月18日(日)/リハーサル/スタジオ・ソニケテ、芦屋/東仲一矩:フラメンコ、國光秀郎:ギター)グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー
 24日のコンサートのためのリハーサルを東仲さんの芦屋のスタジオで行いました。特にセッション部分は何も決めていなかったので、それぞれ音を出したり東仲さんに実際に踊ってもらってイメージを探りました。グレンが1時間ほどしか時間がなかったので短時間でなんとか形になり、後はぶっつけ本番ということに。東仲さんはじめ、パートナーのタマキさん、國光さんはひっきりなしにタバコを吸う。つられてワダスや下田さんも吸ってしまうので大きくないスタジオは煙だらけなのでした。

◉11月22日(木)/ラーガ講座#3/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸/KEN(メキシコ、タイマッサージ、ヨーガ)、瓜田、山根(作曲、雅楽)、浅野(ドゥルパド、大阪)、森/アビョーン

 この日の参加者は、アーツ・コミュニケーション・ラボの主催者の森すみれさん、メキシコでシャーマンと出会ったタイマッサージ、ヨーガ講師などをする青年KENちゃん、雅楽などの作曲を手がける山根女史、シュリーにドゥルパドを習っている浅野くん(リトウィックのコンサートの時にはタンブーラーを弾いていたのを思い出す)、伊勢を本拠に神道芸能を研究している瓜田女史といった面々。この日は、人気ラーガベストテンを中心に様々なラーガを解説。
 例によって近所の焼き鳥屋「とり好」で打ち上げのあと、その日森すみれさんのスタジオに宿泊という瓜田さんと「アビョーン」へ行き飲みました。瓜田さんの機関銃のようなおしゃべりにたじたじの我々は、なぜ機関銃式になるのか、を巡って盛り上がったのでした。

◉11月23日(金)/TonPlacer1周年記念「音と動きのDance Out Body」/TonPlacer、神戸/大谷安宏:ラップトップ+ギター、角正之:ダンス
「来てよお」という角さんのスタジオTonPlacerでのダンスを見に出かけました。スタジオ1周年記念の三日間のイベントの初日で、ギターとラップトップの大谷安宏さんの音に合わせた角さんのソロダンス。大谷さんの音はずっと昔、ジーベックで聞いたような気がします。天井から吊るした振り子を揺らしその周辺で体を動かす角さんは相変わらず美しい。
 超厳選観客は、CAPの下田さん、ジーベック時代からの付き合いであるデザイナーの和田忠さん、頻繁に海外でライブを続けるHACOと角さんの女性弟子、照明係を兼ねた角さんの奥様、敦子さんとワダス。敦子さんが作ったいなり寿司が美味しかったっす。

◉11月24日(土)/国境を超えたラーガ音楽 フラメンコはインドからだった/KOBE STUDIO Y3、神戸/東仲一矩:フラメンコ、國光秀郎:ギター、二宮光彦:カンテ、グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー

 このシリーズは今年の1月に津軽三味線との共演をやっていますので、10ヶ月ぶりでした。
 何かの用事で東仲さんに電話をした時「なんか一緒にやりましょうか」と話したら「そうやね。やろや」となり、いきなり具体化したのが今回のコンサートです。フラメンコの東仲さんとは、ほぼ40年になる短足友の会仲間としてこれまで何度も麻雀をしたり宴会をしたりしてきたのですが、お互いの本業で何かを一緒にしたことがほとんどなかったのです。六甲での宴会の時、それぞれ即興の余興をしたことは一度だけあったのですが。
 短足の幸田さん、杉岡さん、曽我夫妻、岡田淳さんや、「結構忙しいのよね」という建築家の天藤さん、サロンCACOでお世話になった神田裕子さんなど、見知った顔もたくさん見え、期待以上の90人近いお客さんで会場はいっぱいでした。ちょっと意外だったのはワダスと同じマンションの住人で前期まで管理組合理事長だった長江さんでした。

 第1部がワダスとグレンによるラーガ音楽で約50分の演奏。ラーガ・ヴァーチャスパティを演奏しました。第2部がフラメンコの部。スペインの田舎オッサン風に大阪を混ぜたような雰囲気の國光秀郎さんのフラメンコ・ギターソロがとても良かった。そして東仲さんのフラメンコ。人生というのは激しく孤独なものだと叫ぶようなキリッとした動きが素晴らしい。このダンスの時は当初の予定にはなかった二宮さんカンテが入りました。へええ、こういう歌を歌う日本人もいるんだと感心しました。実は二宮さんは、大阪でフラメンコの店を経営しそこでも歌っているということですが、何とグレンからタブラーも習っているという。
 第3部が全員のセッション。前半がギター、タブラー、バーンスリーだけの器楽、後半に東仲さんの即興舞踊が加わるという構成。全てがほぼぶっつけ即興な割にはなかなかバランスのとれたパフォーマンスになったのではないかと思います。
 終わって控え室に戻ると東仲さんが疲労しきった表情で休んでいました。何と言っても72歳、決して若くはないのでフラメンコのような激しい踊りは相当にこたえるはずです。
 この日は打ち上げもなく、タクシー同乗のグレン、奥さんのノリナ、息子の海くんと三ノ宮駅で別れそのまま帰宅でした。

◉12月3日(月)/国境を超えたラーガ音楽打ち上げ/アビョーン、神戸/参加者/下田展久、高橋怜子、東仲一矩、HIROS
 24日の打ち上げの代わりにアビョーンで飲み会。下田さん、高橋さんの「大好評でした」の言葉に押されてまたやろうということになりました。東仲さんの初リサイタルの時のパフォーマンスと舞台が印象的だった、などという話から、じゃあ、そん時の植松さんにも何かやってもらおうというような流れになり、ワダスは酔っ払って彫刻家の植松奎二さんに電話。本人から「ええよ」との快諾をもらったので、次回のコンサートは今回以上におもろくなりそうです。後の打ち合わせで、コンサートは4月6日(土)と決まりました。

◉12月6日(木)~9日(日)/Danny Tam夫妻来宅

 ダニー(67歳)とハーリー(66歳)夫妻が3日間我が家に滞在でした。
 ダニーと知り合いになったのは今から45年も前のことです。肩まで髪を伸ばし痩せた22歳のワダスがユーラシアをぐるっと旅した時に香港で居候をしたのがダニーの家族の住む狭いアパートでした。旅行前に東京の電気工事現場でアルバイトをしているときに知り合った現場監督に「香港へ行くことがあったらこういう男がいるから訪ねては」と住所を書いた紙切れを渡されたのがダニーの家だったのです。その時の写真を見ましたが、現在からはとても想像できない佇まいです。

1973
1992


 その後、1992年にインドから帰国の途中、ハーリーと結婚したダニーと再会し、アバディーンの彼らの高層マンションに夫婦で泊めてもらいました。その時はダニーの母親や10歳の娘ダフネと水上に浮かぶ大きな船上レストラン「ジャンボ」で飲茶をご馳走になった。当時ダニーは、香港海洋公園(オーシャンパーク)でイルカの調教師として働いていました。その後彼らは97年の香港返還直前にバンクーバーへ移住しカナダ人となり、ダニーはカジノ・ディーラーの監督、ハーリーはHSBC銀行職員として働いています。
 彼らに直接会うのはその92年以来なので実に26年ぶりということになります。
 6日のお昼前、有馬温泉一泊後にバスでやってきた彼らを三宮でピックアップし我が家に案内。ハーリーの顔つきは26年前とそれほど変わりなかったのですが、ダニーはかなり変わっていました。頭髪はほとんどなく小太りの丸い体形で笑顔ではない時の目つきにちょっとその筋の人を思わせるものがありました。その日は、ダラダラと飲んだり食ったりしながら昔の写真などを見せ合い旧交を温めたのでありました。
 7日、ハーリーのリクエストでレンタカーで須磨にある「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」へ。初めて行きました。ブランド品アウトレットだらけのテーマパークで、思った以上に大きい。店内に入るとハーリーの視線はすでに商品群に引き寄せられていました。

 当初は彼らに自由に見物してもらっている間どこかで彼らを待つことにしようとしていましたが、店内をぶらついているうちに消費欲が頭をもたげ、結局、今どうしても必要というわけではないジーンズを買ってしまいました。
 食堂街にあった中華料理屋でフォーなどを食べ、彼らを北野町でおろしてレンタカーを返却するためにポートアイランドに戻りました。待ち合わせの三宮駅で合流したあと、「もりもり寿し 三宮OPA2店」へ行くと、近くで会議のあった義弟がすでに待っていました。彼も広州へ行った時、香港でダニーに会っているのです。
 たらふく寿司を食べた後、二組の夫婦は今日が初日のルミナリエ見物。ダニーもハーリーも、大混雑の人混みの中もスマホカメラを手放さず興奮していました。


 8日、再びレンタカーを借りて、赤穂市坂越まで行きました。牡蠣を食べるためです。
 ついていたカーナビの設定がうまくいかなかったり、そのカーナビがダッシュボードについた吸盤から転げ落ちてきちんと固定されなかった事があり、運転するワダスはなんとなくイラついていました。高速入り口でカーナビを調整しようと停車し、バックで駐車場へ向かおうとしたら、いきなりごつんと何かにぶつかりました。低いガードレールに気づかなかったのです。修理代を請求されるかもしれないと思いつつそのまま車を走らせる。途中のパーキング・エリアに止まって外へ出ようとしたら今度は、ドアポケットに入れたはずの鍵が見つからない。鍵がないとエンジン再始動ができない。うわあー、どうしたらいいのんだろう。そのうちダニーが運転席の下にあるのを見つけてくれたのでホッとしましたが、運転の自信を失いかけました。


 今年2月にも食べにきた「海鮮問屋 城」でたらふく牡蠣を食べた後、姫路城へ。昔一度天守閣まで登った事があります。姫路城は改修して美しくなっていました。見学するという二人を送り出した配偶者とワダスは、「秘密の県民SHOW」で見たヤマサ蒲鉾の「ちいかまどっく」(味はいまいち)をちょっとかじり車に戻り彼らの帰りを待つのでした。
「今日はここで神戸ビーフをご馳走するのだ」とダニーに言われて予約したつもりの店が満席だという事で、我々はそのままポートアイランドに戻りレンタカーを返却。車の後ろのぶつけた部分の修理代は請求されなかったが、修理のあいだ使えない営業保証代2万円を取られてしまいました。
 神戸ビーフご馳走想念に満ちたダニーに、近所にある焼肉店「牛太郎」で牛肉をたらふくご馳走になりました。ダニーは外食のたびに支払い意欲を見せるのです。我々がよほどゼニに困っていると見えたのか、あるいは今回の旅行予算をたっぷりとってきたのか、結構な金持ちだったのか、その理由はわかりません。
 翌日の9日朝、彼らはその日泊まる予定の大阪へ。彼らは、大阪、奈良を見物した後、まだ母親や妹などの親戚がいる香港へしばらく滞在して帰国する予定。今頃は帰宅してやれやれ感に浸っていると思われます。
 
◉12月13日(木)/健康診断がん検診/健康ライフプラザ、神戸/
 神戸市から格安でがん検診が受けられるという案内が来たので、しばらくしていなかった健康診断へ行ってきました。ほぼ同い年の京都の友人が大腸ガンで入院していることもあり、ひょっとするとガンが見つかるかもしれないという心配と、常時腹部膨満感にずっと苦しんできたので、何かしら解決策があるかもしれないという思いで検診を受けました。血糖値が高く脂肪肝なので糖尿病一歩手前だと脅かされましが、とりあえず緊急を要する問題はなさそうなので一安心でした。がん検診結果はまだですが。

◉12月14日(金)/久代69回目生誕記念日/佐藤高来宅
 

宇治の佐藤高が例によってちょっと高価なシャンパンやワイン、花束を持って来訪。ダラダラと飲んで食って結局4本飲みかなり酔っ払ったのでした。

◉12月16日(日)/石尾真穂来宅
 久しく音信不通だった石尾真穂さんから「CD欲しい」とメールが来てちょっとびっくりでした。彼女は、ワダスと同じ大学、しかも同じ学部の卒業生で、2009年に札幌から神戸に移り住み1年ほどワダスのレッスンを受けていた生徒でした。
 CDを受け取るために松葉杖姿で現れた彼女は、神戸を離れた後、新潟の胎内市で地域おこし協力隊として活動しているとのこと。登山中の滑落事故で大腿骨を骨折し、神戸大学で手術を受けなんと長田の病院に入院中でした。

◉12月19日(水)/打ち合わせ/HIROS宅、神戸
 4月6日の「国境を超えたラーガ音楽 フラメンコはインドからだった2」の打ち合わせのため、CAPの下田さんと高橋怜子さんが来宅。打ち合わせはあっという間に終わり、扁炉鍋を囲んだミニ宴会になりました。白菜、干し椎茸、トリ、ブタ、ビーフンのみというシンプルな扁炉鍋はいつ食べても美味しい。
レシピは、

===この間に読んだ本===

『新・平家物語』全16巻合本版読了(吉川英治、電子版)
*1『ホモ・デウス』下***(ユヴァル・ノア・ハラリ、柴田裕之訳、河出書房新社、2018)
『怨霊と鎮魂の日本芸能史』(井沢元彦、檜書店、2008)
*2『60歳からの外国語修行 メキシコに学ぶ』***(青山南、岩波新書、2017)
『翻訳家という楽天家たち』**(青山南、ちくま文庫、1998)
『世界を変えた6つの飲み物』*(トム・スタンデージ/新井崇嗣訳、インターシフト、2007)
『銀翼のイカロス』*(池井戸潤、ダイヤモンド社、2014)
*3『収奪された大地』**(エドゥアルド・ガレアーノ/大久保光夫訳、新評論、1986)
*4『孤独の迷宮』**(オクタビオ・パス/高山智博・熊谷明子訳、法政大学出版局、1982)
*5『ディエゴとフリーダ』***(ル・クレジオ/望月芳郎訳、新潮社、1997)
『ザ・サークル』上(デイヴ・エガーズ/吉田恭子訳、ハヤカワ文庫、2017)
『ザ・サークル』下(デイヴ・エガーズ/吉田恭子訳、ハヤカワ文庫、2017)
『植物はそこまで知っている』*(ダニエル・チャモヴィッツ/矢野真千子訳、河出文庫、2017)
『最澄と空海』再再読(梅原猛、小学館文庫、2005)
『西洋住居史』(後藤久、彰国社、2005)
『そば学大全』(俣野敏子、平凡社新書、2002)
『「戦後」の墓碑銘』*(白井聡、角川ソフィア文庫、2018)

*1...著者の前作『サピエンス全史』も相当すごい本でしたが、この『ホモ・デウス』ではこの先人類はどうなるのか、どこへ向かうのかを考えさせられます。脳科学やAIといった最先端科学の進歩によって歴史、文化、生物学、社会学などが生化学的アルゴリズムで説明される日が来るのか、来ないのか。明日のおかずを何にするか、どこへ旅行に行くか、4Kテレビを買うべきかとかの超短期的思考に忙しい我々も、ときにはこうしたぐっと長いスパンで物事を考えてみる必要があるのではないかと思います。
*2...現代アメリカ文学の紹介者、翻訳者として知られる著者が、60歳を過ぎてからスペイン語を習うためにメキシコへ行き、各地のスペイン語学校で短期入学した経験を面白く綴った本。メキシコの大抵のスペイン語学校は入学期間の滞在先までケアしてくれるとのことで、8月の旅行でぐっと親近感の湧いたメキシコへスペイン語を習いに行くのも悪くないと思うようになりました。
*3...大地の豊かさゆえに貧しくなったラテンアメリカの欧米からの搾取の構造をうんざりするほど多くの情報で解き明かした本で、読了するのにかなり時間がかかりました。
*4...1990年にノーベル文学賞を受賞したメキシコ人作家オクタビオ・パスの代表作。アステカ、マヤといった先スペイン期に対する憧憬と疚しさ、スペイン人による植民地化とキリスト教布教、メキシコ生まれのスペイン人たちを中心とした独立運動、混血したメスティーソの台頭などの歴史的考察から「メキシコ人性とは何か」を探った本ですが、読んでいるうちに「日本人性とは何か」を考えさせられるのでした。彼は駐インドメキシコ大使で、『インドの薄明』という著作もあるとのこと。読むべき本がまた増えました。
*5...天才画家ディエゴ・リヴェラのパリ修行時代、帰国後の壁画制作や天才性と共産主義運動、ひどい交通事故によって一生痛みと付き合いつつシュルレアリスム的自画像などを描き続けたフリーダとの出会いと結婚、結婚後も終わらない女漁りの果てにフリーダの妹とまで関係してしまうディエゴの性的無軌道ぶりなどなど逸話が二人への愛情をもって語られています。現在は美術館になっているフリーダのかつての家「カサ・アスール(青の家)」を8月に見てきたワダスには、フリーダの生活がぐっと身近に感じられました。
 作者のル・クレジオはまだ存命のノーベル賞作家。8月に訪れたパツクアロに家をもっていると書いてありました。

===これからの出来事===

 いよいよヒジョーシキコーシ生活から解放される来年は、週1回通勤もなくなり徹底的にヒマになりそうです。今ぼんやり考えているのは、久しぶりの無目的長期旅行です。どこへ行くともまだ決めていません。1月末の採点終了と同時に、と思っていましたが、3月と4月に演奏が入ったので、旅行は少なくとも、予定表が真っ白な4月以降になりそうです。

◉1月3日(木)/短足麻雀/植松奎二宅、箕面市
◉1月8日(火)/佛教大学講義-12/龍谷大学講義-後14/深草、京都
1月10日(木)/ラーガ講座#5「リズム」/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸
 今回のテーマは、ラーガ音楽のリズムサイクルであるターラの考え方です。ご興味おありの方はぜひ。講座の後は新年会を兼ねた宴会とのこと。https://www.facebook.com/events/926439717546610/

◉1月15日(火)/佛教大学講義-13/龍谷大学講義-後15/深草、京都

◉1月19日(土)17:30~/南無阿弥 Da Session/浄土宗應典院本堂、大阪/秋田光軌(読経)、HIROS(バーンスリー)岩本象一(パーカッション)/チケット:1800円/https://www.outenin.com/article/cf2019p/
 應典院を会場として1月17日開始の「コモンズフェスタ」という4日間のアートフェスティバルのプログラムの一つとして、聲明、バーンスリー、パーカッションによる即興セッションがあります。後半では「たんぽぽの家アートセンター」の舞踊が加わる予定です。

◉1月22日(火)/佛教大学講義-14
◉1月27日(日)/ボディーフォーカシングWS/Ton Placer Kazemai Theater、神戸/ダンス指導:角正之、音楽:HIROS
 今年になってほぼ隔月に開催されてきたシリーズのパフォーマンス。72歳とはいえ、ますます元気な角正之さんの企画です。

◉1月29日(火)/佛教大学講義-15/龍谷大学講義-後期試験/深草、京都
◉2月12日(火)/牡蠣小旅行/坂越、赤穂市
◉3月21日(木)/圓龍寺公演/朝来市和田山町 圓龍寺 本堂/グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー
 フラメンコの東仲さんのパートナー、田村珠紀さんの依頼です。彼女の実家の浄土宗のお寺「圓龍寺」で演奏することになりました。お寺は、天空の城として有名な竹田城趾の和田山町にあります。

◉4月6日(土)/国境を超えたラーガ音楽 フラメンコはインドからだった2/STUDIO Y3、神戸/東仲一矩:フラメンコ、國光秀郎:ギター、グレン・ニービス:タブラー、二宮光彦:カンテ、HIROS:バーンスリー、特別ゲスト:植松奎二(彫刻家)
 フラメンコとのセッションシリーズ第2弾です。先にちょっと触れましたが、国際的に活躍する彫刻家、植松奎二さんの「まだ分からんけど、なんかやろか」があります。かなり楽しみです。