めんこい通信2019年3月31日号

◉桜の季節となりましたが皆様いかがお過ごしですか。
 前回の通信でもお知らせしたように、今年1月の試験、採点報告をもって、ほぼ20年になる大学のジュギョーから解放されました。これで社会とのしがらみがなくなり、完全なフリーのミュージシャンとなったわけです。とはいえ、ミュージシャンと称するには演奏活動はほとんどしていなく、かつ反社会的活動もしていないので、ま、無職無害無扶養者無介護老人です。わずかだったとはいえ定収入もこれでなくなり、ほんのわずかな二人の年金と、これも多いとはいえないタクワエでこれから死ぬまで生活することになるわけです。何時に寝ても何時に起きてもいいし、朝風呂に入ってもいいし、昼に焼酎飲んでもいいし、寝っ転がって本を読んだりぼんやりとテレビ見たりしてもいいし、変な時間に散歩してもいい、という徹底して社会貢献とは無縁な生活です。問題はどうやって退屈しのぎをするかです。

◉まず、宣伝
4月6日(土)15:00~/国境を超えたラーガ音楽 フラメンコはインドからだった2/STUDIO Y3、神戸/東仲一矩:フラメンコ、國光秀郎:ギター、グレン・ニービス:タブラー、二宮光彦:カンテ、HIROS:バーンスリー、特別ゲスト:植松奎二(現代美術)/予約&問い合わせ:C.A.P.
info@cap-kobe.com 電話078-222-1003(10:00〜19:00/月曜休館)
 これは、昨年11月24日に行ったものの第2弾です。多くの人々においでいただいたのでまたやろうということになったのでした。で、今回は特別ゲストに友人の彫刻家、植松奎二をお招きしてパフォーマンスをやってもらうことになりました。彼のパフォーマンスとフラメンコとラーガ音楽は何の関係もありませんが、打ち上げの飲み屋でいきなりこうなったのでした。お時間と御意思のおありの方はぜひいらしてください。

◉中川家の変化
 官僚たちの矜持が崩壊しアベの主張に都合の良いように作り変えられたいい加減な統計だとか、スガに叱られてますますなよなよしつつあるように見えるマスメディアとか、辺野古反対の住民投票なんて無視するもんね的政府の対応とか、いよいよグジュグジュのイギリスのEU離脱問題とか、かつての顧問弁護士に背中から刺されたトランプと金正恩の会談の不調とか、ファーウェイがどうした5Gがどうしたとか、日韓関係悪化だとか、ゴーン釈放とか、児童虐待死とか、アポ電強盗やら、暴言明石市長再選やら、大阪府市のたすき掛け選挙やら、平成時代が終わるやら、相変わらず世間は賑やかですが、こうしたあらゆる物事とはますます乖離しつつあるわが中川家の日常は大きな変化もなく続くかのように見えて実はある変化を迎えつつあることを報告します。
 4月12日から9月10日までの5か月間、日本を離れます。これといって目的はありませんが、メキシコでダラダラと過ごすことにしたのです。パツクアロという小さな町に住む舞踊家横尾咲子さんに、なんとなく、メキシコに行こかな、とメールしたら、東根出身という同じ山形県人としての偏愛からか、じゃあ、アパート探すね、スペイン語の個人教師も手配しておきますね、ついでにワークショップとかコンサートもできるか当たってみますね、などといきなり具体化方面に走り出し、なんとなくではない状況になったのでした。ということで、住む場所もスペイン語の先生も、なんとワダスのコンサート(8月30日モレリア大学)も決まっちゃったようです。おそるべし山形県人パワーだす。皆さんからお手紙をいただくことはないと思いますが、住所は以下です。多分、来訪されたら泊まれると思いますので念のため。
 Calle Francisco J Música 60, localidad Huecorio, Patzcuaro, Michoacán.
 C.P.61914, MEXICO

◉家のモノの整理
 われわれが留守の間の我が家は無人となる予定でした。しかし、CAPの下田さんの依頼で、レジデンス・アーティストたちに部屋を提供することになりました。5月にフィンランド人2名、7月にはドイツ人2名が滞在することになっています。ドイツ人女性の面識はありますが、他は全く知らない人たちです。そんなこともあり、家の中のものをかなり整理しました。95年の阪神淡路大震災の時に処分したのである程度整理されていたのですが、あれから24年、当然ながらじわじわとモノが増えていたのでした。居間にあったガラス扉のついた大きなスライド式本棚、ビデオテープ、カセット、DAT、不要な衣類なども大処分したので、かなりスッキリしました。また、乾麺、パスタなど保存食も残せないのでせっせと食べつくました。金麦のおまけのチキンラーメンがけっこうあったなあ。

===これまでの出来事===

 いちいち書けないのでほぼ項目だけです。(敬称略)

◉12月26日(水)/打ち合わせ/英國屋、梅田/秋田光軌さん、早瀬英史さん、HIROS

◉12月29日(土)/野中久行さん逝去(69歳11ヶ月半)

在りし日の久行さん(2017)

 月火と京都の大学でジュギョーしていた頃は何度も居候をさせていただいた八瀬の野中久行さんが、4ヶ月の入院の末ついに力尽きました。大腸ガンでした。いつ何があってもおかしくない年齢に近づきつつあったとはいえ、ワダスとは一つ違いの70前というのはちょっと早い死でした。6月か7月に大腸検査をしたら既にかなり進行した状態だったようで、言葉数の少ない人でしたが、数学者の岡潔、松岡正剛、インド音楽や舞踊、仏教などワダスと共通する話題についての的確で短い応答や、担当だという朝食の心のこもった細やかな盛り付けなど印象に残っています。

◉1月1日(火)/駒井家お正月

◉1月3日(木)/短足麻雀/植松家、箕面/植松奎二、榎忠、島末雅邦、中川久代、HIROS

◉1月10日(木)/ラーガ講座#5「リズム」/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸/参加者:馬越玲子、北尾真理子、森すみれ、波部容子、長谷川二朗、倉本弘、瓜田理子、茶谷祐三子、山根明季子

◉1月19日(土)17:30~/南無阿弥 Da Session/浄土宗應典院本堂、大阪/秋田光軌(読経)、HIROS(バーンスリー)、岩本象一(パーカッション)
 我々の出番の後に何と知人の作曲家、上田益さんも登場でした。

◉1月27日(日)/ボディーフォーカシングWS/Ton Placer Kazemai Theater、神戸/ダンス指導:角正之、音楽:HIROS

◉1月29日(火)/佛教大学講義-15/龍谷大学講義-後期試験/深草、京都
   この日がガッコへ行く最後の日になりました。

◉1月31日(木)/非常勤講師リタイヤ記念宴会/泳ぎイカ宮崎うまか、大阪/参加:小林江美、佐藤高仁、山崎晃男、HIROS

 クロアチアでスリに2回あったという山崎さん、中国の寧波行きでチェックイン荷物に他人のタグをつけられてしまった田中峰彦さん、なんていう話で盛り上がったのでした。

◉2月7日(木)/ラーガ講座#6「ヒンドゥスターニー音楽の演奏の構造」/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸/浅野、倉本

◉2月7日(木)/アラン・パパローン逝去(66歳)
 アランは、アクト・コウベを通して知り合ったフラン人です。常に人恋しく常に世を拗ねる愛すべき知的画家でした。我が家にしばらく居候した時置いていった、背中で手を組んだ女性を後ろから描いた彼の油絵作品が彼を偲ぶ唯一のものとなりました。

◉2月11日(月)/河崎晃一氏逝去(67歳)

2月12日(火)/坂越牡蠣三昧小旅行/城、坂越/参加:碧山とをこ、海野、柴山水咲、下田展久・雅子、高澤ナホ、高橋怜子、冨久明俊、中川博志・久代、林資頴

 一昨年去年に引き続き今年も牡蠣を食べに坂越に出かけました。ワダスもそれなりに食べたのでしたが、帰途、下痢症状。どうやら当たったようですが、無類の牡蠣好きである久代さん含め同行メンバーは何ともなかったらしい。ワダスは牡蠣嫌いになりつつあるのでした。

2月16日(土)/短足麻雀/Tamba、曽我了二

2月17日(日)/ダンス公演「だんだんたんぼに夜明かしカエル」 /ジーベックホール、神戸/演出・振付:佐久間 新/企画:一般財団法人たんぽぽの家/出演: 中川雅仁/水田篤紀/山口広子(たんぽぽの家アートセンターHANAメンバー)是永ゆうこ/佐久間 新/佐藤拓道/古川友紀/音楽:野村誠/ほんまなほ/ゲスト出演:たんぽぽの家アートセンターHANAメンバー(兵庫公演)だじゃれ音楽研究会(東京公演)ほか/音楽:野村 誠 /照明:岩村原太/川島玲子/美術:池上恵一/IoT監修:筧 康明/衣装:清川敦子/音響:sonihouse/舞台監督:浜村修司/アドバイザー:砂連尾 理/制作進行:那木萌美
 これはいい公演でした。久しぶりにお会いした野村さんやびっくり変化の本間さんの音楽もとてもよかったし、佐久間君の関係者へのまなざしが実に優しい舞台でした。

2月23日(土)/カサグロリア10周年特別企画「インド音楽入門講座&ライブ」/カサグロリア、大阪/二宮光彦:タブラー、HIROS:講師、バーンスリー
 超厳選者対象ワークショップの後の、二宮さんを中心としたフラメンコに熱い人たちの集いがなかなかに楽しかったなあ。ああいう共同で楽しむ集いというのがラーガ音楽にはないなあと思うのでした。

3月2日(土)/薫り立つインド宮廷の華-弦楽器サロードの至芸-/ホテル阪急エキスポパーク、大阪/イルファーン・ムハンマド・ハーン:サロード、スジット・ブラーマチャーリ:タブラー、田森雅一:解説

 持参するはずの演奏者が忘れたとのことで主催者の民博の寺田さんに頼まれた電気タンブーラーを担いで出かけました。イルファーンの演奏は派手さはなくとても品行方正で鄙びた雰囲気でした。
 久々にお会いしたのは、寺田さんはじめ、江戸の小日向君(バナーラス時代の同窓生)や沖縄の岡田恵美さん、田中多佳子さん、司会の田森さんなど。その小日向、田中さんと千里中央の超高層ビル最上階の居酒屋でミニ宴会。

◉3月19日(火)/超ミニ同窓会宴会/レスト、京都/奥山隆生・雅子夫妻+中川博志・久代夫妻

3月21日(木)/圓龍寺公演/朝来市和田山町 圓龍寺 本堂/グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー
 圓龍寺は、フラメンコの東仲さんのパートナーである田村珠紀さんの実家のお寺です。その田村さんから依頼されての演奏でした。28代続く由緒のある浄土宗のお寺。弟さんの善隆さんが住職です。


 相当にひなびた感じの和田山駅前に、何と6日のコンサートで一緒になる植松奎二さんの作品が鎮座していました。
 奥様のノリナと、この4月に中学生になる息子の海君と一緒に車でやってきたグレンと合流し、20人ほどの檀家の人々が座る本堂で30分ほど演奏しました。帰りは珠紀さんと特急「はまかぜ」で神戸に戻り、お土産にいただいた高級但馬牛で夕食。んまかったあ。

3月22日(金)/ラーガ講座#7「インド人演奏家が聞く日本音楽 〜日本音楽の中のラーガを探す〜」/アーツ・コミュニケーション・ラボ、神戸

3月28日(木)/新神戸駅でチンクーと会う

 チンクーというのはワダスのグルであるハリジーの息子ラジーヴ・チャウラースィアのことです。チンクーとはワダスがハリジーの家に通っていた90年代はじめに初めて知り合ったので、かれこれ30年の付き合いです。最後にあったのが2011年でしたので8年ぶりということになります。彼に「今年で50歳だ」と聞き、はじめは驚いたものの、考えてみれば当たり前です。テレビの旅番組などのプロデューサーが本業だが、最近、バーンスリーを始めたといってました。今回は、奥様のプシュパンジュリー、16歳の娘ライナと一緒に来日し、東京、京都、奈良、広島を大忙しで動いたとのこと。彼は大の日本好きで、4年前には札幌雪まつりにも来ているのでした。


 広島への日帰り旅行で京都のホテルへ戻る途中、駅構内で彼らと会いました。彼には、自身が監督したハリジーのドキュメント映画をデータでもらいました。見たい人がいれば連絡ください。

===この間に読んだ本===

『抵抗の拠点から』(青木理、講談社、2014)
『アーサー・C・クラーク自伝』**(アーサー・C・クラーク/山高昭訳、早川書房、1990)
『金子みすゞ み仏への祈り』*(詩と詩論研究会編、勉誠出版、2011)
*1『土と内臓』**(デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー/片岡夏実訳、築地書館、2016)
『神道と神社の秘密』(神道と神社の歴史研究会編、彩図社、2017)
『寺田寅彦全集』(290作品、Kindle版)
『人工知能VS人間は、将棋でも日常生活でも?AIが問い直す、人間が生きる意味』(羽生善治+酒井邦嘉、Kindle版、中央公論社、2017)
『堕落論』(坂口安吾、Kindle版)
『続堕落論』(坂口安吾、Kindle版)
『病床六尺』(正岡子規、Kindle版)
『科学者とあたま』(寺田寅彦、Kindle版)
『数学と語学』(寺田寅彦、Kindle版)
『コーヒー哲学序説』(寺田寅彦、Kindle版)
『人柱の話』(南方熊楠、Kindle版)
『芸術を創る脳』(酒井邦嘉編、東京大学出版会、2013)
『脳を創る読書』(酒井邦嘉、実業之日本社、2017)
『言語の脳科学』**(酒井邦嘉、中公新書、2002)
『神は数学者か?』**(マリオ・リヴィオ/千葉敏生訳、ハヤカワ文庫、2017)
『AI VS. 教科書が読めない子供たち』**(新井紀子、東洋経済新報社、2018)
『暴力の人類史』上(スティーブン・ピンカー/幾島幸子+塩原通緒訳、青土社、2015)/未読了
『錯覚の科学』**(クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ/木村博江訳、文藝春秋、2011)
『ミレニアム5-復讐の炎を吐く女』***上下(ダヴィド・ラーゲルクランツ/ヘレンハルメ美穂+久山葉子訳、ハヤカワ文庫、2018)
『ラテンアメリカ文化史 : 二つの世界の融合』未読了(マリアーノ・ピコン=サラス/村江四郎訳、サイマル出版会、1991)
『ホーネット、飛翔せよ』**上下(ケン・フォレット/戸田裕之訳、ヴィレッジブックス、2004)
*2『なぜ世界は存在しないのか』***(マルクス・ガブリエル/清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018)
『スプーンと元素周期表』**(サム・キーン/松井信彦訳、ハヤカワ文庫、2015)

*1・・・この本は、土の中に住む生物の驚くべく多様性と、彼らが相互にバランスを取れながら我々よりもずっとずっと長い間生き延びてきた絶妙な相互関係について仔細に描かれ、生物とは何か、進化とは何かについて再考させられます。

*2・・・久しぶりの哲学書。世界は存在せず、存在するのはそれ以外の全てのものであり、存在とは意味の場に現象することだ。などなど、新存在論と言われる著者の論考はなかなかに刺激的でした。

===これからの出来事===

 というわけで、これからの出来事は、冒頭で宣伝した4月6日の演奏会以外はありません。あとはメキシコ生活の報告ですが、怠ける可能性は大きいと申し述べざるをえません。期待しないでください。