めんこい通信2022年2月23日号

◉コロナは続く
 オミクロンやらウクライナやらどか雪やら、相変わらず世界は不安定な様相を呈しているように見えますが、皆さまはいかがお過ごしですか。
 もう2年になるというのに、コロナウイルス騒動というのはいつ終わるんですかねえ。
 特にオミクロン株の感染拡大速度は凄まじかったですね。ま、いっときは水際対策として完全鎖国状態にしようなどと言いつつ、その一方で検査も入国チェックも不要で米軍関係者は出入りも行動も自由という矛盾した政府の態度の結果、オミクロン株が街中に「滲み出てきた」(玉城デニー沖縄県知事)ということは十分あり得る話です。
 ともあれ、鈴木昭男さんから送っていただいたコッペちゃんを我々が食べていた12月9日の全国の感染判明者数は154人、西明石の義妹夫婦宅でおせちを食べていた元旦が456人、植松家で麻雀をしていた1月3日が672人、神戸どうぶつ王国を訪れた1月4日が1149人、ワダスの誕生日の1月23日が49,837人、我が家での短足麻雀の1月25日が62,489人、下田雅子+HIROS生誕記念宴会でダラダラ飲み食いしていた1月27日が78,736人、コタツに入って1日中ぼんやりしていた2月8日が101,084人。もっとも、厚労省が発表するこの数字はかなり怪しい。日本では、コロナかもしれないという人を拾い上げ、なんとか検査して判明した感染者数なので、実際にさらにどれだけの人が感染しているかはこの数字からは判断できません。その後、あれほど毎日騒いでいたメディアがパッタリと感染者数を報じなくなった時期がありましたが、もう、数えられない、ということになったんでしょうね。他の国に比べて、遜色ない機材と能力を持つPCRなどの検査数が増えないのは、いわゆる感染症専門家や厚労省医系技官の体面や利害が理由で増やさないのではないか、センモンカに弱い政治家も言いくめられているんじゃないか、などという話がネットから伝わってきますが、真実に近いような気がします。こうした真実がわかっても状況の改善ができずずるずると成り行きに任せて事態はますますひどくなってきたのだとしたら、この国にはコクミンが共有できるような共同社会の概念はなく、危機管理に関して救いようがない社会だということでしょうかね。論理的に考えればどう見ても勝てそうになかったはずの第二次大戦に突入し、結局負けた理由も同じところにあるような気がするのでした。

◉ウクライナとかオリンピックとか
 我が家では新聞を読まなくなって久しく、世界で何が起きているかを知る手段はテレビとネットだけです。ところが最近はどのニュースが信頼できるのか怪しくなっているようです。例えばバイデンが「プーチンはウクライナ侵攻を既に決断している」などといい、そのプーチンは「我々はそんな気はない。アメリカは戦争をヒステリックに煽っている。けしからん」などと対応しているのだとか。ロシアが実際に侵攻したら世界はとんでもないことになるのは明らかで、そうならないように祈るだけです。
 また、NHKは「河瀨直美が見つめた東京五輪」という番組の出鱈目ぶりも話題になっていました。登場する無名のおっさんがそうは言っていないのに「オリンピック反対デモにはゼニもらって行くのだ」みたいな字幕を挿入したとか。フィギアスケートのワリエワ選手のドーピング疑惑やら他の種目の判定とか規則検査とかが変だったやらの北京オリンピックも終わりましたが、去年の東京も含めオリンピックとはなんぞやの議論もぞろぞろ出てきて、なかなかに退屈しのぎのネタには困らない状況です。

◉三幸製菓火災
 食品工場火災というのは、普段なら、そうか、火事があったか、大変だな、くらいの感想しか持たないものなのですが、死亡者に関する記述を見て、えっ、と思ったので書いておきます。
 おかきやあられで知られる新潟県村上市の三幸製菓工場の火災が起きたのは、2月11日午後11時50分ごろで、6人が亡くなったと。亡くなったのは20代の従業員2名と、68~73歳の女性4人のアルバイト従業員だったという。女性4人はアルバイトなので通常の消防訓練にも参加していなかったらしい。
 驚いたのは、犠牲者の女性4人がおばあさんたちであったことです。おばあさんたちが深夜に工場の掃除をしていたと。人にはいろんな好き好きがあるので、このおばあさんたちが深夜の清掃の仕事が好きだったということはあり得ますが、彼女らの年齢に近いワダスらがとうに寝ている時間に、喜びに満ちて掃除をしていたとはどうしても考えにくい。それぞれにそうせざるを得ない事情があったはずです。子供たちは独立し家には老夫婦だけ、今よりちょっとマシな生活のためには年金だけでは足りないので少しでも現金収入を得たい、あるいは夫に先立たれ一人暮らしで家にいても退屈だし小銭を稼いで孫に小遣いでもあげれればいいなどなど、いろいろ類推は可能です。彼女たちだけが特殊だったのか、実際の事情はわかりません。しかし、どんな事情があるにせよ、おばあさんたちが真夜中に労働していた、あるいはせざるを得なかった現実があることは間違いない。道路工事などの現場でも歩行者の誘導をする老人を見かけることがよくあリます。こうした現実を目にすると、我々の社会はどこかおかしい方向に進んでいるのではないか。いつからこんな風になってしまったんだろうか。今回の火事で亡くなった彼女らと同世代のワダスと配偶者は、ヒマだなあ、明日は何食うかな、などと言いつつダラダラと生活しながらそんな風に思うのでした。

◉『インド音楽序説』電子版

『インド音楽序説』電子版がAmazonで売られています。一般の人にはほとんど関心のない内容ですが、これをお読みになっている方でインド音楽に関心のありそうな人がいたら「こんなの出てる」と宣伝していただければ幸いです。Amazonへ

 


 

 

 

===これまでの出来事===

◉12月9日(木)/コッペちゃん届く
 京丹後に住む鈴木昭男さんから「久々の冬の便りです」のメッセージと、食べ方の自筆イラスト付きのコッペちゃんが配達されてきたのでした。コッペちゃんというのは「せこがに」ともいう小ぶりの蟹のこと。うれしいなあ。最近はカニなんて滅多に食べないので興奮しつつあっという間に食べ尽くしたことは言うまでもありません。こういう驚きはありがたいことです。

◉12月11日(土)18:00~/ラーガ基礎講座#23 ~カリヤーン・タートのラーガ~ /Musehouse、神戸/ HIROS: プレゼンター
 どんなに参加者が少なくともほぼ月1回催されるこの講座を主催し続ける森すみれさんには感謝です。講座後は久しぶりにとり好しの焼き鳥でした。

◉1月1日(土)/新年宴会/駒井家宅、明石
 昨年に引き続き、甥も姪もその子供たちもいない、義妹夫婦と老夫婦ツーセットのみの宴会でした。

◉1月3日(月)/短足麻雀/植松家、箕面/植松奎二、島末雅邦、中川久代、HIROS
 昨年はコロナでスキップしたので2年ぶりの植松家正月麻雀でした。
 
◉1月4日(火)/神戸どうぶつ王国
 近所にあるのに中に入ったことがなかった「神戸どうぶつ王国」に行ってきました。動物園はそれなりに興味はあるものの、どうしても行きたいというわけでもなく、大人一人1800円という料金にも抵抗がありました。なのでいつもは散歩ついでに外から眺めるだけでした。しかし、割引クーポンなるものを明石の義妹からもらったので、じゃあ、ということになったのでした。我々はこういうのには弱いのです。
 猛烈な新型コロナウイルス感染状況のこの頃と比べ、当日の兵庫県内感染者はたった26人(ちなみに最大は2月10日の6,576人)。とはいえ、子供づれの入園者がうじゃうじゃでちょっと心配になるほどの混み具合でしたが、管理も展示もしっかりしていて好感が持てます。オープンエアで多くの種が混在する鳥、微動だにせずじっとたたずむ不気味な鳥ハシビロウ、獰猛さよりも美しさが印象的なスマトラトラ、などが印象に残りました。最後に見た「フリーフライトバードパフォーマンス〝Wings(ウイングス)〟」がなかなかに楽しめました。イーグルなどの猛禽類の鳥が地面すれすれに飛び、広いオープンエア会場の両端に立つ係員の腕にすっと着地するのがなかなかに爽快。そのまま逃げて行っても良さそうなのにきちんと戻るようになるには相当な訓練が必要だろうなあ。

◉1月8日(土)18:00~/ラーガ基礎講座#24 ~マールワー・タートのラーガ~ /Musehouse、神戸/ HIROS: プレゼンター

◉1月25日(火)短足麻雀/中川宅/植松奎二、塚脇淳
 箕面に住む植松さんから「そっちまで出かけるから麻雀しよう」ということになり、鉄の彫刻家JUN TAMBAこと塚脇淳さんをお呼びして雀卓を囲んだのでした。今からほぼ半世紀前にはこの二人も含め知り合い同士で頻繁に麻雀をしていましたが、気がつけば70代前後。かつてのような動きのキレも鈍くなりワイングラスをひっくり返すようなこともありましたが、麻雀に向かう精神状態は昔のままで楽しかった。ゲーム後はピエンロー鍋でした。

◉1月27日(木)/下田雅子+HIROS生誕記念宴会/森信子宅/参加:大野裕子、落合治子、下田展久+雅子、中西すみ子、HIROS、森信子

 オミクロン急拡大中(兵庫県の当日の感染判明者数4,293名)をよそに、去年はスキップした雅子さんとワダス(ともに誕生日は1月23日)の合同誕生記念宴会が阪急御影の森信子宅で敢行されたのでした。昼過ぎから夜までダラダラと飲み食いし、鯛鍋を囲んでのおしゃべり。よく知っている人たちと実際に顔を見ながらの宴会はやはり楽しいものです。
 当日の感想を参加者にメールしたのが以下。

「HIROSです。
 手羽元醤油、ごっつうんまかったとです。
 ローストビーフ、上品な味とたたずまいだったとです。
 アボカドサラダ、ちと薄味でしたが、スターターとして秀逸だったとです。
 ニンジンしりしり、ま、あんなもんかでしたが、ニンジン削りは筋肉を使うとです。
 ふわふわたまごトマト炒め、たまごをもう一個加えるべきだったとです。
 カクテキ、絶品でした。自慢じゃないけど。
 おかきをリボン付きでもらったのは初めてだったとです。
 他にも細々とした食物が卓上に並んでいたような気がしますが、忘却したとです。
 雅子様展久様の結婚へ至る道の途上で話が立ち消えてしまったのは残念だったとです。
 大野様、落合様、スー様に久々にお会いして幸福だったとです。
 会場提供及び宴会進行下支えに徹していたかのような森様に感謝とです。
 最後の方はけっこうな酩酊状態だったので、いかにも年寄りっぽく展久さまに吠えてしまったのを反省するのでした。
 それにしてもダラダラと9時間近く宴会が続いたものだ。あのダラダラ感がなんともいえないのでした。雅子様のスイングするような話題転換が長時間宴会持続のポイントだったかなあ。今となってはあんなに長い時間何を喋っていたのだろうかと思うのでした。
 というわけで、久々の誕生宴会、えがったっす。写真を見ると、ワダスはけっこうジジーに見えるのだと改めて実感したのでした。来年もできたらいいね」
 
◉1月30日(日)/S.D.Pillai死去
 ムンバイの友人、タブラー奏者のアニーシュ・プラダーンのFaceBookからピライさんの死去を知らされショックでした。87歳のはずなので大往生に近いのですが、よく知った人が逝くのは寂しいものです。
 ピライさんは全3巻超ヘビー級(6Kg)の『The Oxford Encyclopedia of the Music of India』をほとんど独力で完成させた人です。社会学者として何冊も本を書いています。
 ワダスが『インド音楽序説』の翻訳を始めた頃、南インド語の読みを教えていただいたのが知り合うきっかけでした。その彼を通してサーランギー奏者のドゥルバ・ゴーシュを知り、エイジアン・ファンタジーのメンバーとして彼の兄妹やアニーシュが参加し、ともにアジア各国ツアーにも同行していくことになったのでした。ワダスはムンバイへ行くたびにピライさんお会いし、ドゥルバとともに酒を飲んだりお喋りをしたものです。そのピライさんもドゥルバもこの世から消えたというのは本当に寂しいことです。アニーシュのメッセージには「よくあんたの話をしてたよ」とありました。

◉1月31日(月)/第3回目ワクチン接種/神戸ポートアイランド病院
 接種券が送られてきてすぐに予約をし第3回目のワクチンを打ってきました。配偶者ともども副反応はなし。イスラエルの例では3回接種でもコロナに感染するということらしいですが、ちょっとは防御できたかもしれません。

◉2月12日(土)18:00~/ラーガ基礎講座#25 ~プールヴィー・タートのラーガ~ /Musehouse、神戸/ HIROS: プレゼンター

 楽しみにしていた講座後の焼き鳥は、マンボーのためテイクアウトでいただきました。

◉2月22日(火)/ナカボンよりニシンの麹漬け届く
 かつてはCAP HOUSEでよく一緒に遊んだアーティスト、ナカボンから思いがけずニシンの麹漬けが送られてきたのでした。ナカボンは今や立派な2児の母です。なぜニシンの麹漬けなのかというと、彼女のお父さんが大量につけたのでそのお裾分けだと。お父さんというのが実はワダスの卒業した大学の同窓生なので気にかけていただいたのでした。札幌の学生時代以来の、つまり50年ぶりのニシンの麹漬けは、プロ並みの美味しさ。口に入れた途端、50年前の味覚の記憶が蘇りました。

===この間に見た映画===

◉「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」
 アン・ハサウェイ、マーク・ラファロが出演した社会派映画。フライパンのテフロン加工で使われるフッ素化合物のPTFE (ポリテトラフルオロエチレン)とかPFOA (パーフルオロオクタン酸)は自然界には存在しない物質。これらの化学物質を製造していたデュポンの工場従業員や周辺住民、家畜に様々な病気が発生しその毒性が判明する。既に毒性を認識していた会社の隠蔽やおざなりの対応に、かつてのデュポンの弁護士である主人公が住民と共に立ち上がる。その存在によって雇用を生み出す企業城下町の悩ましい状況は、水俣のチッソを思い出させます。
 我が家のフライパンも焦げ付かないテフロン加工です。これがどうやらかなり危険らしい。ま、この年になればそんなに心配してもしょうがないともいえますが、妊娠中の女性や若い人々には気をつけるべきかもしれません。
 http://www.無添加レシピ.com/cookware/ptfe-pfoa/
 この映画はアメリカの小さな町の話ですが、実は日本でも問題になりつつあるのです。エアコンで有名なダイキン工業は日本に3社あるPFOAメーカーの一つで、その工場のある摂津市の地下水が汚染され、住民の体内には他の地域では見られないほどのPFOAが蓄積していると。また、この薬剤を使って消化訓練がたびたび行われている米軍基地周辺の地下水も汚染されているらしい。まだ見ていない人はぜひ見てほしい。けっこう怖い。
https://eiga.com/movie/92287/

◉Marksman
 ワダスは、最強のオヤジと言われるリーアム・ニーソンがわりと好きなので見に行きました。ストーリーは次に見た「クライ・マッチョ」とよく似ています。それだけに描写の深さで勝るイーストウッドの「クライ・マッチョ」と比べられるとちと弱い。
 https://eiga.com/movie/94673/

◉「Cry Macho」
 91歳のクリント・イーストウッドの監督主演作品。「元ロデオスターの老人を主人公に、メキシコに住む少年を父親に引き合わせるためにアメリカに向かう物語」(wikipedia)。メキシコシティーの生意気な少年が、老人と共にアメリカへ向かう途上で次第に成長していく様子が淡々と描写される。途中によったメキシコの小さな町の食堂の女将、マルタが印象的でした。大推薦とまではいえないが、暇つぶしにはまあまあの作品でした。
 https://eiga.com/movie/94456/

◉House of Gucci
「エイリアン」「ブレードランナー」「テルマ&ルイーズ」「グラディエーター」などを監督したリドリー・スコットによる最新作。創業者から世代を経るに従い巨大化し一流ブランドになる過程での家族間の相続問題や、特にレディー・ガガ演じたパトリツィア・レッジャーニが、巧みに近づいて結婚に成功し創業者一族のマウリツィオ・グッチを殺し屋を使って最終的に殺害するという物語は3時間弱という長さを感じさせない。アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズなど渋い俳優もなかなかに存在感を出していた。で、最終的にグッチというブランドの会社は今はグッチ家とは離れてしまったと。レディー・ガガという女性を初めてまともに見ました。彼女の歌は知りませんが、なかなかにいい味を出す女優でありました。これも見て損はしない映画でした。
 https://eiga.com/movie/95776/

===この間に読んだ本===
(*読んで損はない、**けっこういけてる、***とてもよい)

◉『スリーピング・ドール』**上下(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文春文庫、2011)
◉『バーニング・ワイヤー』**(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2012)
◉『シャドウ・ストーカー』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2013)
◉『ゴースト・スナイパー』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2014)
◉『限界点』*(ジェフリー・ディーヴァー/土谷晃訳、文藝春秋、2015)
◉『扇動者』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2016)
◉『テスィール・キス』**(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2017)
◉『ブラック・スクリーム』(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2018)
◉『ミッドナイト・ライン』上下(リー・チャイルド/青木創訳、講談社文庫、2019)
---ジェフリー・ディーヴァーをなんと11冊も続けて読んでしまった。それぞれはなかなかに面白く読み応えがありましたが、流石にこれだけ続けて読むとちょっと飽きが来てしまう。ワダスには微細証拠分析で犯人を特定していくリンカーン・ライムよりも、体や表情の動きから嘘を見破っていくキネシクスの達人キャサリン・ダンスのシリーズが好ましく感じられます。関係ないけど、けっこうな面白い小説を書き続けるジェフリー・ディーヴァーはワダスと同い年だったのね。

◉『おひとりさまの最後』**(上野千鶴子、朝日新聞出版、2015)
---70歳を超えてくると、あまり考えたことがなかった問題が現実的になりつつあることを感じるようになります。つまりどういう形で死ぬのか。しぶとく生き抜いて二人とも90代なんてことになった場合はどうなるのか。ゼニはどうなるのか。一人が認知症になる、または両方ともなったらどうなるのか。我々には子供はいないので、当然、老老介護になるのであろう。断片的なテレビの映像を見ると、どう考えても老人施設に入っている自分は想像できないが、そういうケースもありうるのか。施設や病院ではなく今の住まいで死ぬとしたらどういうことを準備しておくべきか。自分が先に死ぬ場合はいいけど、配偶者が先になった場合はどうなるのか。などなど起こりうるケースが多いので、結局はその時にならないとわからないと思考停止状態になるわけですが、ちょっとは考えておかないとも思うケーススタディとして参考になる本でした。

◉『須賀敦子の本棚』**(池澤夏樹他、河出書房新社、2018)
---須賀敦子の文や生き方についてのエッセイなどがまとめられたムック。彼女の未発表の短文や翻訳も掲載されている。彼女の作品とキリスト教信仰と関係についての興味深い評論もあった。須賀敦子ファンへのプレゼントとしては秀逸でした。

◉『ネット階級社会』**(アンドリュー・キーン/中島由華訳、早川書房、2019)
---「既存産業の破壊、個人情報流出、格差拡大といった問題が多発している。ユーザーはサービスの代価として問題を受け入れるしかないのか。一握りの企業が主導する流れは不可避なのか。これからのインターネットと社会のあり方を探る、メディアとIT業界で議論を呼んだ警告の書」(「BOOK」データベースより)
 インターネットがなかなかに悩ましい問題を抱えていることを思い知らされます。

◉『日本列島の下では何が起きているのか』(中島淳一、講談社ブルーバックス、2018)
---気象庁の最新報告によると、南海トラフ沿いの大規模地震は今後30年以内に発生する確率が70〜80%あるとのこと。人工島に住む我々にはけっこう怖い話です。この本では、日本列島の地下で起きていることを科学的に解説しているけど、話題があまりに集中しすぎて読み物としての喜びに乏しいものでした。

◉『左足をとりもどすまで』***(オリバー・サックス/金沢泰子訳、晶文社、1994)
---これまで著者の書いた『レナードの朝』『妻を帽子とまちがえた男』『色のない島へ』『音楽嗜好症』なんかをとても面白く読みました。この本は神経科医である著者が、ノルウェーの山中での大怪我から左足のイメージ喪失、回復するまでの患者として考えたことを書いています。医療現場での患者に対する医師は絶対権力者であり、患者は聞き分けの良い幼児のような態度を強いられるといった感想など、医師と患者のあり方の考察が興味深い。

◉『評決の代償』(グレアム・ムーア/吉野弘人訳、早川書房、2021)
◉『職業政治家小沢一郎』未読了(佐藤章、朝日新聞出版、2020)

◉『ノルウェイの森』**上下(村上春樹、講談社、1987)
---NHKBSの「アナザーストーリーズ『ノルウェイの森』 “世界のハルキ”はこうして生まれた」と言う番組を見て、言わずと知れた大ベストセラー小説を初めて読みました。ワダスはベストセラーと騒がれている時の本は読まないことにしていますが、番組を見て、へええと思ったことと、もう35年も経ったからいいかと図書館から借りて読んだのでした。
 ワダスと著者は全く同じ年(1968年)に大学に入り、似たような状況を共有していたはずですが、ワダスと彼の学生生活はものすごく違っていたように思えます。似たような音楽を聞いたり小説を読んだり映画を見たけど、小説の主人公ワタナベ君のようにやたら女にもてることもなく、社会や世界について何もわかっていないにもかかわらず「帝大解体、安保粉砕」などと叫んでいた無知で幼稚な一介の学生でしかなかったことを思い出します。小説に出てくる音楽や文学などが欧米のものだけというのは当時のワダスの気分と似ていました。こういう「気分は西洋人」的気分というのは同世代の大学生の特徴なのかもしれない。ワダスが意識的に日本やアジアの文化を「発見」しようとしたのはかなり後のことなのです。
 小説は最後まで一気に読ませる力がありました。しかし番組に登場した女性編集者の「原稿を読み終えたとき涙が出た」ほどの感動はワダスには感じられませんでした。

◉『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』**(ジーナ・キィーティング/牧野洋訳、新潮社、2019)
--原著は2012年に出版された本なので現在のNETFLIXをめぐる状況とはかなり違っていると思います。創業から動画配信の覇者になるまでの過程の詳細が語られ、凄まじい競争の中でのアメリカの起業のあり方が想像できる本。これを読むと、デジタル技術やその考え方に関して、いかに日本が周回遅れなのかを思い知らされます。ま、デジタル化に限らず、もはや時代に適合しなくなった既得権益の利害調整にしか思考が向かわない今日の日本のダメ状況もつくづく考えさせられます。ちなみに我が家では、登録すればテレビ漬けになることは間違い無いと思われるのでNETFLIXには加入していません。

◉『耳と音から考える』未読了(細川周平編、アルテスパブリッシング、2021)

==これからの出来事==

 我々の絶対ヒマ状況は、コロナとは無関係に維持されそうです。

◉3月5日(土)18:00~/ラーガ基礎講座#26 ~トーディー・タートのラーガ~ /Musehouse、神戸/ HIROS: プレゼンター/ご予約・お問い合わせ:info@musehouse.net

◉3月20日(日)11:00~12:30/アクト・コウベトークセッション/神戸国際コミュニケーションセンター交流スペース(神戸市長田区腕塚町5丁目5-1アスタくにづか1階)/出席者:岩淵拓郎、下田展久、ジュール・イルマン(在京都フランス総領事、オンライン参加)、角正之、中島康治、バール・フィリップス(アメリカからオンライン参加)、HIROS、森信子/進行:中川真/参加費無料、定員20名/主催:神戸市国際課、C.A.P.(芸術と計画会議)/問合せ:神戸市国際課078-322-5254<kokusai@office.city.kobe.lg.jp>
 チラシのリードコピー。
「1995年の阪神・淡路大震災発生直後、 仏マルセイユ市を拠点に活動していた 音楽家バール・フィリップスが中心となり、 神戸の芸術家を支援するイベント『アクト・コウベ』が行われた。これがきっかけで、 神戸とマルセイユのアーティストを中心とした 交流プロジェクト『アクト・コウベ』が誕生した。キーワードはFragilité Créativité Solidarité
「壊れやすさ」「創造性」「連帯」。 活動は2005年まで続いた。神戸市とマルセイユ市の姉妹都市提携60周年を記念し、 アクト・コウベに参加したメンバーとともに、 活動がもたらしたものについて考える」。