めんこい通信2024年2月28日号

◉出来事のコメントもバサッと省略
 1月に入って悲しいニュースが続きました。「短足友の会」として若い頃から一緒に遊んできた仲間が二人すでに亡くなっていたのです。飲み会とか麻雀とかで断続的に付き合ってきた仲間でした。一人は、原田治朗さん。2020年10月に亡くなっていたことが判明。享年73歳でした。もう一人は、インド渡航前、長田の自宅で毎週のように麻雀をした林英雄さん。2023年の9月に亡くなったことを知りました。享年は現在の我々と同じ74歳辺り。阪神淡路大震災で自宅が全壊した後に彼の設計で建てられたマンションにまつわる話を書いた『自立建築のあるまちづくり』の著者でした。
 このニュースで「いよいよ我々もそういう時期に突入したか」と思っていた数日後、今度はインドから声楽家のラシッド・カーンの訃報。享年55歳とのこと。彼はワダスが招聘したインド人演奏家の中で唯一の声楽家で、インドが誇る音楽界の宝の一人でした。来日公演についてはワダスの個人通信に掲載しています。
 さて、我々のような、ほとんど社会との交渉がなく、それなりにほぼ安定した無収入預貯金取り崩し生活には直接の影響はないとはいえ、正月に起きた能登大地震とか、どこに向かうのかますますわからなくなってきたのにまだ続くウクライナ戦争とか、イスラエルのガザ進攻とか、ジャニーズやら松本人志やら旧統一教会問題やら、裏金やら政策活動費やら官房機密費やらで慌てふためていているジミントーとか、無茶苦茶なトランプ支持に盛り上がるアメリカやら、反対勢力を殺しまくっているといわれるプーチンとか、株価が戦後最高の高値とか・・・ぼんやりとニュースを眺めていると世界は相変わらず忙しそうに見えます。
 こんなふうに世界はあまりに忙しい。そして我々はあまりにヒマ。年齢のせいもあるけど、またこれまでもずっとそうだったのかも知れないけど、こういう時は我々のアタマは活動休止状態になるらしく、このような個人通信を書くことすら面倒な気分なので、これまでの出来事のコメントもバサッと省略したのでした。

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===これまでの出来事===
 ますます家にいることが多くなるにしたがい、「出来事」が減少しつつあり、ということは書くことも少なくなり、かつ3ヶ月間とはいえ過去を振り返って文にするのも面倒なので項目だけにしています。


2023年


◉12月8日(金)/CAP STUDY「芸術鑑賞のための講座の実験」シリーズ・音楽/神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸/下田展久+HIROS:対談

◉12月9日(土)/じっくりとラーガを歌ってみる#7/Musehouse, 神戸/ラーガ・ブーパーリー

◉12月14日(木)/配偶者生誕記念ディナー/にしおか、神戸

◉12月16日(土)/CAP STUDY「芸術鑑賞のための講座の実験」シリーズ1・美術/神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸/藤本由紀夫:講師
「現代美術に衝撃を与えたという小便器『泉』デュシャンの企みとは」

◉12月17日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、川辺ゆか+HIROS:ヴォイス

◉12月20日(水)/CAP STUDY「芸術鑑賞のための講座の実験」シリーズ・ダンス /神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸/岡登志子:講師

◉12月23日(土)/短足友の会観劇会「森の中の海賊船(岡田淳原作)」+短足忘年会/兵庫県立芸術文化センター、西宮/宴会参加:植松奎二・渡辺信子、榎忠・俊江、岡田淳・由紀子、幸田庄二・杉岡真紀子、瀬口、曽我了二・弘子、橋本健治・例子、中川博志・久代

2024年


◉1月1日(月)/駒井家新年会/西明石

◉1月3日(水)/植松家麻雀/箕面

◉1月12日(金)CAP STUDY「芸術鑑賞のための講座の実験」シリーズ2・音楽/神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸/下田展久+HIROS:対談

◉1月13日(土)/Musehouseインタビュー/Zoom

◉1月14日(日)/佐久間+ウィヤンタリ来宅

◉1月17日(水)/AKJ披露宴会/紅葉園、神戸サンチカ/参加者:岩淵拓郎、川崎義博、小島剛、下田展久、杉山知子、角正之、HIROS、森信子+ジーベックスタッフ

◉1月20日(土)/じっくりとラーガを歌ってみる#8/Musehouse、神戸/ラーガ・ハンスドワニ

◉1月22日(月)/フーフの会麻雀/中川家

◉1月23日(火)/下田雅子+HIROS生誕記念宴会/おうみや、神戸/参加者:下田展久+雅子、大野裕子、中川博志+久代

1月25日(木)/短足麻雀/植松奎二、塚脇淳/中川家

◉1月28日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、北村千絵+川辺ゆか+HIROS:ヴォイス

◉2月9日(金)CAP STUDY「芸術鑑賞のための講座の実験」シリーズ2・音楽/神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸/下田展久+HIROS:対談

◉2月11日(日)/小出重幸氏来宅

2月17日(土)/HIROSライブ/草志舎、西宮/藤澤バヤン:タブラー、HIROS:バーンスリー/主催: アメニティ2000協会

◉2月18日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/風の舞塾(TonPlacer) 、神戸/パフォーマンス:角正之:ダンス、北村千絵+川辺ゆか+HIROS:ヴォイス

◉2月20日(火)/短足麻雀/植松奎二、塚脇淳、東仲一矩/中川家

◉2月23日(金)/映画「沖縄狂想曲」/kino cinéma神戸国際

◉2月24日(土)/じっくりとラーガを歌ってみる#9/Musehouse、神戸/ラーガ・ハンスドワニ

◉2月26日(月)/フーフの会麻雀/木村家

===この間に読んだ本===
(*読んで損はない、**けっこういけてる、***とてもよい)

◉『絶対貧困』(石井光太、新潮文庫、2009)
 我々は両親も土地も国も選んで生まれてきたわけではないが、たまたま貧困地区に生まれた人々の凄まじい暮らしにショックを受ける。著者自ら世界中のスラムや売春宿に住み込み見聞きした体験ルポは迫力満点。

◉『阿片戦争 上(蒼海編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
◉『阿片戦争 中(風雷編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
◉『阿片戦争 下(天涯編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
 書棚を整理するので、と義弟からもらった分厚い文庫本3冊。黄ばんでいる上に、すぐには読めない漢字が大量に使われているので、必ずしも読みやすくはない。あまり考えたことがなかった阿片戦争がどういうものだったか初めて知った。小説なので実在しない人物も多数登場するが、その誰もが全体の主人公にはなってなく、解説にあるように阿片戦争自体が主人公といったような形になっている。阿片貿易によるインドと宗主国イギリスの関係、インド人も兵士として送られてきていた、世界観や国家観の違いや満洲人と漢族の対立、役人の腐敗やら、ものすごく長い小説です。武器の品質の差によって、人口4億の清の軍が易々とイギリス軍に負けてしまうあたりがなんともいえない。

◉『本心』**(平野敬一郎、文藝春秋、2021)
 AIがますます進行し、ゴーグルモニター越しにバーチャルな体験が一般的になると同時に、社会格差がより大きくなった20年後が舞台の近未来小説。主人公は他者の様々な依頼を仕事とするリアル・アバターという設定。彼は母の死の欠落を補うために、生前の母のあらゆる情報を提供し仮想空間に蘇らせようとする。その過程で、結果的には事故死であった母の「自由死」(その頃には合法化されているという設定)の願望の「本心」を探りつつ出会う人々との交流によって、自己の存在の意味が複雑に揺れ動く。なかなかに哲学的な小説だが、とても読みやすく一気に読めたのでした。

◉『朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉、実業之日本社、2011)
「ホジュン」とか「商道(サンド)」とかの韓国歴史ドラマが面白かったのでその背景を知りたいと思って読んでみましたが、ごく一般的で歴史ドラマ好きを意識した王朝史で、あっそ、という感じでありました。

◉『上海雑談』*(陳舜臣、NHK出版、2000)
『阿片戦争』を読んだこともあってふと手にした陳さんの本。NHKのドキュメンタリー番組関連のインタビューで、写真が多く挿入され、内容的には軽く読める。三国志、チンギス・ハン、耶律楚材、林則徐、孫文など、中国史に登場する人物に対する評価はなかなかに面白い。

◉『キャッチャー・イン・ザ・ライ』***(J.D.サリンジャー/村上春樹訳、白水社、2006)
 何十年も前に読んだはずだけど、読み返してみて改めて名作だと再認識。村上春樹の翻訳も素晴らしい。学校を退学となり、特に目的を持たず冬のニューヨークを彷徨い、自分が関係してきたあらゆる人間の言動、仕草、服装、表情、癖、社会的地位などをくさして落ち込んでいく17歳の少年のほぼ1日が描かれる。実に巧みな構成で彼の思考の流れが続き飽きさせないのがすごい。青春のある時期、知り合いやら両親やら学校やらすべてこの世から消えたらいいと、きっと誰しも経験する鬱屈した心情が蘇ってくる。ああ、ワダスもそうだったなあと思いつつ一気に読んでしまったのでした。最後の方で少年の先生でもあったミスター・アントリーニが主人公に言う言葉は、世界のどこの人にでも当てはまるのではないか。
「(落ち込むという)そういう一連の状況は、人がその人生のある時期において何かを探し求めているにもかかわらず、まわりの環境が彼にそれを提供することができない場合にもたらされる。あるいは、まわりの環境は自分にそれを提供することができないと本人が考えた場合にね。それで人は探し求めることをやめてしまう」)
 また近いページにヴィルヘルム・シュテーケルという精神分析学者が書いたという文が引用されていて、その内容もなかなかです。)
「未成熟なるもののしるしとは、大義のために高貴なる死を求めることだ。その一方で、成熟したもののしるしとは、大義のために卑しく生きることを求めることだ」

◉『妖怪少年の日々/アラマタ自伝』**(荒俣宏、角川書店、2021)
  少年時代に芽生えた魚類やら妖怪やら読書やらといった好奇心をそのまま持ち続けて結果的に膨大な知識を持つに至ったプロセスが面白い。学生時代から読んでいた「遊」という雑誌によく登場していたので気になっていたけど、改めて、ああこういう人だったのかと分かったのでした。著者はワダスとほぼ同世代。彼の成長プロセスとその結果が山形の田舎で育ったワダスとはまったく異なることは当然ですが、ニッチな世界にはまり込んだという意味ではどこか共通点があるような気がする。ベストセラーだったので敬遠していたけど『帝都物語』も読んでみようかな。

『AI親友論』*(出口康夫、徳間書店、2023)
 きちんとした定義すら定まっていない今流行のAIと人間の関係について考察したものだが、著者の人間観や社会観を「わたし」から「われわれ」に転換すべきだという主張が主な内容になっている。使われている言葉はいわゆる哲学者っぽくはないものの、著者の使う簡単な言葉の定義をしっかり理解しないと簡単なのにちんぷんかんぷんという読後感に陥りやすいかもしれない。著者のいう「WEターン」という概念はなかなかに新鮮に思えたのでした。

◉『索引の歴史』未読了(デニス・ダンカン/小野木明恵訳、光文社、2023)
 ある程度アカデミックな本には索引というものが付いている。この索引がいつどこでなぜ始まったのかについて書かれている。もともとはある単語や語句が聖書のどこにどのように書かれているかを示すためだったという。また、索引を専門に扱うインデクサーという職業もあるのだという。知らなかったなあ。膨大な量の見慣れない固有名詞に、読書というよりも資料を相手にしている感じになって、断念。久代さんは読み切って「面白かった」と申し述べたのでしたが。

◉『古書街を歩く』(紀田順一郎、徳間文庫、1992)
 読んでいると、モノとしての本が古書として流通していた時代が懐かしく感じられる。紙からデジタル化という流れの中で本を取り巻く状況は大きく変わってきているけどこれからどうなっていくんだろうか。

◉『実験音楽』*(マイケル・ナイマン/椎名亮輔訳、水声社、1992)
 ミニマル・ミュージックの代表のようなテリー・ライリー、ラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒなど、アメリカの実験音楽を推進した作曲家たちが実はインド音楽をはじめとした非西洋音楽に影響を受けていたというようなテーマで開いたCAPの講座で、対談相手の下田展久氏が持ってきていたのを借りて読んだのでした。訳者は知り合いの音楽学者、椎名亮輔氏。和声を基本としたいわゆる西洋古典音楽が行き詰まりそれに代わる方法を模索した音楽家たちの作品について語られる。音楽家やその作品が数多く登場し、読み物としてよりもある種のデータを眺めるような感じでした。

◉『海の都の物語』*1、2、3(塩野七生、新潮文庫、1980)
 ローマ帝国ものなど多くの作品が出ていて人気がありそうなのでこれまで避けてきた塩野七生の本を初めて読んだのでした。先日我が家を訪ねてきた学生時代からの友人の小出重幸氏の話がきっかけでした。ベネツィアに関するドキュメントのような物語で、この都市国家の成立からその社会的仕組みや興亡は知らないことが実に多い、というかほとんど知らなかったことに気が付く。また同時に、作者がこの都市国家のあり方を好意的に描写していることに、歴史というのは史実の積み重ねというよりも書いた人間の物語的想像力によるものだとつくづく思うのでした。

◉映画「沖縄狂想曲」(監督・構成/太田隆文、2024)
 2時間弱の映画で、数多くの関係者へのインタビュー証言によって、沖縄を巡る様々な矛盾、問題、日米政府によるインチキなどが見えてくる。

==これからの出来事==
 相変わらずヒマですが、たまにちょこっちょこっと何かがあります。

◉3月2日(土)/CAP STUDYパーティー/神戸市立海外移住と文化の交流センター、神戸

◉3月9日(土)19:00~/インド音楽講座ZOOMインタビュー/中川家、神戸

◉3月16日(土)/じっくりとラーガを歌ってみる#10/Musehouse、神戸

◉3月19日(水)短足麻雀/中川家、神戸

◉3月20日(水)高濱浩子個展「めぶきのまつり」/井上想ライブ/ギャラリー島田、神戸

◉3月24日(日)/動態即興「愚者の秤/ぐしゃのはかり」シリーズ/源光寺 、尼崎/角正之:ダンス、川辺ゆか+北村千絵+HIROS:ヴォイス

◉4月4日(木)/HIROSライブ/サクリエブ、芦屋/ディネーシュ・チャンドラ・ディヨンディ:タブラー、HIROS:バーンスリー他