めんこい通信2016年2月29日号

 これまでの出来事
 この間に読んだ本


 前回の通信は11月でしたが、あれやこれやで気がつけばもう2月も終り。甘利(甘い利益)の口利きとか育休議員の不倫とかマイナス金利とか株価暴落とか北朝鮮水爆実験とかミサイル発射実験とか、マスコミがおかしいとか、福島原発事故なんかなかったみたいに各地で原発がじわじわと再稼働しと、世の中は相変わらずいろんなことが起きていますが、こうしたこととワダスおよびワダス周辺の生活にはとりあえず直接関係しないので、あっ、そ、というしかない。
 ところで、最近、読書のスピードにブレーキがかかってきた感じです。
 主な理由は、読み始めて1時間ほどすると目がしょぼしょぼして焦点がぼける、本を持つ手が疲れるということがあります。
 これはもちろん加齢のせいです。本を読むときは裸眼か読書用遠眼鏡なんですが、どちらもかつてのようなクリアさがない。特に寝っ転がって遠眼鏡で読書する場合、時間が経つにつれて白内障手術を受けていない左目の焦点がかなりぼやけてくる。現在の視力に完璧に合わせた遠眼鏡を新たに作ればいいのですが、「現在」の視力は状況や環境によって変化するので常にドンピシャのレンズはありえない。というわけで、このしょぼ眼状況は加齢とともに不可逆的に進行していくであろうから、読書スピードが今後も減速していくことを受け入れざるを得ないのでありましょうか。
 もともとワダスの読書は、ジュギョーの足しになるベンキョー読書を除外すれば知的生産とは関係なくただの時間つぶしであり、読んだ内容についても記憶がこぼれ落ちていくので何かしら勉強しているというものでもなく、時間があり余っているので速読であることが要請されるわけでもなく、本と時間の単なる消費に近いので、読書スピードにブレーキがかかってきても大問題ではありませんが。
 さて、今年度のジュギョーが終わり4月からの次年度のジュギョー開始まで、本来ならば他者や社会との関係でせざるをえない「仕事」から解放され、ぬくぬくとした自閉的生活に突入している時期なのでした。ところが、94歳まであと6日という今月10日未明に久代さんの父親が亡くなり、彼女が長女であることや、比較的近くに住んでいてかつヒマだもんねと自慢していたせいもあり、われわれに家族関係の「仕事」が期待されけっこうに忙しい日々となりました。
 ワダスの両親のときも経験しましたが、年金、相続、各種支払い口座の変更、預金名義の変更やらなんやらと、家族が亡くなると周辺はにわかに忙しくなります。また、一人で住むことになる義母の面倒も見なければならず、まだまだスリリングな日々は続きそうです。

===これまでの出来事=== 

■12月6日(日)3.00pm~6.00pm/国境を超えたラーガ音楽3/KOBE STUDIO Y3、神戸/石濱匡雄:シタール、グレン・ニービス:タブラー、HIROS:バーンスリー
 久しぶりに神戸で演奏しました。シタールとバーンスリーというキーの違う主奏楽器のために2台のタブラーを持参したグレンがこの日は一番の労働量でありました。
 期待以上のお客さんが集まりなかなかのコンサートになりました。大阪に事務所を移した建築家の天藤さんも見え「花見もせえへんので会うのは久しぶりだなあ」と懐かしそうに声をかけてもらいました。
 若いだけに勢いのある石濱君の演奏は迫力がありました。なかなかに素晴らしい演奏家です。
 天竺園での打ち上げの後、三宮駅近くの居酒屋で打ち上げ二次会。高校生時代からシタールを始めた石濱君の「子供のころ父親が急にいなくなっちゃって」とかの家族や修行の話はなかなかに面白かった。最初は一杯だけのつもりだったのですが、大阪方面行き最終電車の時間が迫ってきたころ、さらに話に油が乗ってきて、あるいはアルコール欠乏感がつのってきたのか、グレンが「明日レッスンだったけどなしになったのでもっと飲みたい」と言い出すと「それならオレんとこに泊まればいい」ということになり二人は石濱君の家で朝まで飲んだ、という話を後で聞いたのでした。
 
■12月7日(月)/大谷大学講義-11/京都/中尾幸介宅泊
 久しぶりに宇治のコウスケ君宅に居候でした。大きな平屋の古い日本家屋はさすがに寒く、ちよっと離れたトイレに行くにもいったん外気に触れるのでぶるっときます。アーティスト名和晃平さんの工房でのアルバイトをやめ現在は無職中のコウスケ君としばらく練習した後、同居人のアイコさんも交えて鍋の夕食でした。
 最近いついたという子猫のチャルが可愛い。教えなくともトイレは屋外のどこかですませるというチャルは、丸い結界に入るのが好きという変な猫でありました。

■12月10日(木)~13日(日)/Fantasy Kids December Activisties."Open children's international viewpoint"/台中市、台湾/招聘参加者/白井廣美:パフォーマンス、角正之:ダンス、東野健一:インド紙芝居、HIROS:バーンスリー他いろいろ
 指名招待を受けて3人で台湾へ行ってきました。3泊4日とあわただしい滞在でしたが、久しぶりの台中を楽しみました。下記のよれよれ日記で詳しく書いていますので、興味と意志のおありの方はお読みください。全部で17,112文字なのでけっこう長いですけど。
http://sound.jp/tengaku/Essay/2015taichung/taichungindex.html
「胃がんが見つかって帰国したらすぐ胃の全摘手術やねん」という東野さんは、以前よりもちょっと痩せて見えましたが、紙芝居や即興パフォーマンスは相変わらず力強く人を惹きつけます。久しく膝を壊していたという角さんも、初日のパフォーマンスを終えるとパワー全開になりました。1年前に農業を営む男性と結婚したという白井さんは、以前よりずっとしとやかで落ち着いていましたが、どこか根源的におかしみのある存在感は変わっていません。
 で、手術予定だった東野さんは帰国後に医師から「胃の周辺だけじゃなくてリンパ節まで転移しているので手術はできない。転移した部分をやっつけてから手術ということになるが、それでも予後1年。なにもしなければ半年」と宣告されたという。かなりショックではありますが、われわれにはどうすることもできません。

■12月16日(水)/たまご宴会/麦とろ自然生物語、梅田/小林江美、中川真、HIROS+中川久代
 盆暮れの定期的たまご宴会。「ビール飲み放題でっせえ」と聞いた配偶者が珍しく参加表明。場所はJR大阪駅ビル16階にある麦とろ自然生物語でありました。

■12月21日(月)/大谷大学講義-13/京都/グレン宅泊
 練習を兼ねたグレン宅居候でした。このころは、グレン配偶者ののりなさんには忙しい日々のようでした。お父様が亡くなったり、ご両親が営んでいた弁護士事務所をたたむ後片付けなど。
 翌日ガッコへ出かけるのと入れ替わりに練習にやってきた池田君と一瞬遭遇。

■1月3日(日)/短足正月麻雀/植松奎二宅、箕面市/参加者:植松奎二、榎忠、島末雅邦、HIROS、宮垣晋作

 めったにないことでしたが、勝ちました。早めに終わった対戦後の寿司宴会では、鹿児島の霧島アートの森の学芸員である植松家の次男アツシ君が地元出身の女性と職場結婚するとか、植松さんが最近一軒家の倉庫を借りたとか、「東京の電車に座っていると、男女の喘ぎ声が聞こえるのだ」という最近江戸進出で忙しい宮垣さんの話とか、チューさんの高野山の展覧会の顛末とか、完全リタイヤ生活の島末さんの「最近ようけ映画みよるんよ」とかの話で時間は過ぎていくのでありました。

■1月5日(火)/岡田淳神戸市文化賞受賞記念短足新年会/びーあん、六甲/参加者:植松奎二+渡辺信子、榎忠、岡田淳+由紀子、小川和夫、幸田庄二、杉岡真紀子、瀬口、曽我了二、塚脇淳、中川博志+久代、西村房子、橋本健治+例子、原田治朗、東仲一矩
 植松さんの「淳ちゃんが賞もろたんでお祝い宴会しよや」ということで、短足友の会ほぼ全員集合の宴会でした。みなけっこうな年齢ですが、新しく喜ばしい関係ができていたという話題で盛り上がりました。
 我が家の月1麻雀にやってくる幸田さんがなんと杉岡真紀子さんと同居、70歳の曽我さんがけっこう年下の女性と再婚予定が発覚、などなど岡田さんのお祝いもそっちのけの話題で盛り上がったのでした。
 植松さんのリクエストでこの日は、演芸披露もありました。橋本さんの尺八、例子さんのフルス、そしてワダスのバーンスリー。予定になかった東仲さんの即興フラメンコにワダスもからんでパフォーマンスを披露しました。
 
■1月15日(金)/短足2麻雀
■1月16日(土)19:00~/SPEAKING ABOUT「インド音楽鑑賞超入門!」/KOBE STUDIO Y3、神戸/だらだら語り:HIROS
「超わかりやすいインド音楽入門を、僕が質問してだらっとした感じで答えるというのはどうお」というCAPの下田さんのリクエスト。大谷大の講義を終えた京都から直行でCAPへ行き、まさにまとまりがなくだらっとした感じでしゃべったのでした。聴衆は見知った顔を含めて10人くらいでした。しゃべりながら思ったのは、音楽を言葉で説明することの難しさでした。
 
■1月17日(日)/宇頂天果無ポトゥアの宴/KOBE STUDIO Y3、神戸/東野健一:ポトゥア、高濱浩子:タゴールダンス、下田展久+Q2ペリカンズ、はくさんまさたか:
ディジュリドゥ、HIROS:バーンスリー
 前月に一緒に台湾へ行った東野さんの長時間ワンマンショーでした。彼はこのイベントのチラシにこう書いてます。
「ポトゥアの東野です。昨年12月、胃ガンの手術のため入院した時には、ほんとうにお世話になりました。私も元気に退院でることと思っていましたが、結果としては残りの時間は6ヶ月という診断になりそれはそれでスッキリしたのですが、みなさまには完全復帰を願っていただいたのですが!! 人生最速のコースになってしまいました。今回の『宇頂天果無ポトゥアの宴』は東野の企画する最後のイベントになると思います。ポトゥアの東野を支えていただいたみなさまと『ワァー』とにぎやかな宴を開きたく計画しました。何とぞお誘い合わせのうえお越しください。面白きこの世をもっと面白く 住みなすものは心なりけり 高杉晋作のパクリ」
 ワダスを含むゲストのパフォーマンスを挟んで進行と紙芝居を切れ目なく行った東野さんは、医師に「半年」と宣告されたとはとても思えない元気さでした。延べで1000人を超える人々が200人も入ればいっぱいになる講堂に押しかけ会場は異様な熱気でありました。CAP、アクト・コウベ、インド関係など、東野さんの活動はワダスとも重なるので、詰めかけた人々には、ここにはとても書ききれないほど見知った人が多かった。
 なんども見ている東野さんの紙芝居ですが、この日の出来は生涯最高だったのではないかと思います。最前列に座った子供たちとの絶妙なやりとりに会場は笑いに包まれるのでした。その後も東野さんとは電話やメールのやりとりをしていますが、その対応はほとんど変わらずむっちゃ元気そうで、本当にあと半年の余命なんだろうかといまだに思っています。

■1月23日(土)/神戸学校/朝日ホール、神戸/ゲスト:榎忠
 エノチューが自身や作品について語る、というので配偶者とともに会場の朝日ホールへ。神戸学校というのは、フェリシモという通販会社が主催するもので、これまで多くの著名人が登場しています。
 結論から言えば未消化感の残るものでした。ほぼ40年来の知り合いであるエノチューについてはよく知っているせいもあったのですが、司会の若い女性が現代美術やパフォーマンスについてあまりに勉強不足で、チューサンの活動の本質的な部分は最後まで引き出すことができないのでした。もったいない。残響が大きすぎてステージ上の会話が聞き取りにくかったのも不満の一つです。とはいえ、チューサンの飾らず熱い美術への思い、ステージに据え付けられた大砲による号砲、商品としての美術製作ではない態度は、相変わらず魅力に溢れているのでありました。
 この日はワダスの66回目の生誕記念日ということで、三宮地下街の「宝田水産」で寿司を食べました。函館が本社だというので期待したのでしたが、スタッフはみな神戸出身だし、けっこうな値段の割にはそれほどの感動もありませんでした。 
 
■1月27日(水)/江見山荘耐寒宴会/江見山荘、神戸/江見+杉山知子、マキコムズ、芝ちゃん、竹ちゃん、加藤元、安達、青木、柴山各氏
「ちょっと寒いけど、牡蠣だらけの宴会、どない」と杉山さんに誘われ、急な坂道をあえぎながら登って、生、焼き、アヒージョスタイルの牡蠣をたっぷりと堪能しました。当日は曇り、最高が10℃、最低が4.2℃。耐寒宴会とはいっても凍えるほどではなかったのでした。かつて神戸港の屋形船で働いていたというバーベキュー助っ人の芝ちゃん、竹ちゃんは、黙々と焼きの世話に忙しい。シリアやウクライナやアフガニスタンやらリビアやらで続く血なまぐさい争いとはまったく無縁な平和な神戸で牡蠣を食べるという幸福。

■2月6日(土)/北2ふれあい・いきいきサロン/馬見北二丁目集会所二階和室、奈良広陵町/話とバーンスリー:HIROS
「ノーギャラだけど、てっちり、てっさ食べ放題、酒飲み放題」という広陵町に住む大学の同級生の安藤朝広さんに頼まれ、町内会の催しでおしゃべりと演奏をしてきました。
 会場は、一戸建ての住宅が並ぶ典型的な郊外の住宅地の町内会集会所。インド音楽とかバーンスリーなんて誰も知らないだろうからお客さんはいないんじゃないか、と思って出かけたら会場いっぱいに約40人ほど人たちが集まっていました。直前までなにを話すか決めていなかったのですが、尺八をやっていたり、クラシックのコンサートにたまに出掛ける、ピアノを弾くといった年配の人たちもいたので、ワダスのインド生活や音楽修行、われわれ日本人は音楽的には気分は西洋人であることなどをだらだらとしゃべったりバーンスリーを演奏しました。数本持っていったバーンスリーに口をつけたり、いろいろな質問がくるなど、好奇心の衰えない年配者たちなのでした。ともあれ、あれだけの人を集めた奥様の三恵子さんの頑張りはすごい。
 会場から歩いて3分の安藤さんちでは、お誘いの言葉通り、てっちり、てっさ、酒が待っていました。ものすごく久しぶりのふぐ尽くしと焼酎で深夜までだらだら宴会でした。

■2月10日(水)未明/井上峰久逝去(享年93歳)
■2月11日通夜、12日(金)葬式/和坂大和会館

■2月19日(金)/SPEAKING ABOUT「1990年代のXEBEC」
 アーティストの池内美絵さんが90年代にジーベックホールで行われた催しのほとんどのチラシをもっていると聞いたかつてのジーベックのプロデューサー下田さんがそのころについていろいろしゃべる、という趣旨のイベントでした。
 今でも我が家から見えるジーベックホールは、ワダスも「アジアの音楽シリーズ」という名前で20数回のコンサートを企画制作したり、ワークショップをしたりしました。ジーベックがなければ今のワダスもないほど重要なホールです。現在ももちろんあるのですが、親会社の方針転換もあり、かつてほどの賑わいはなくひっそりとしています。
 音響機器メーカーであるTOAが自社ビルに付属する形で建築されたジーベックホールは、マスコミにはほとんど登場してこない内外の現代音楽、コンピュータ音楽、サウンド・アート、ワークショップ、現代舞踊、現代美術と音楽のはざまにある表現、いわゆるワールドミュージックなどを紹介し、世界でもユニークな知る人ぞ知る存在でした。
 設立当時の廣田社長、音響を担当していた工藤聡氏と設立から関係した奥様のエッチャンやミュージシャンのハコ、ほとんどの印刷物のデザインを担当した和田忠氏や英文翻訳のクリストファー、パーソナル・ミュージック・パーティー常連の幸田氏、当時のスタッフの森信子さん、写真記録の高嶋氏など、なつかしい面々を前にしてしゃべる下田さんの記憶力がすごい。
 同窓会のような感じでなつかしい話で盛り上がりましたが、過去の記憶だけで終わるにはもったいないので誰かまとめる人は出てこないだろうかと思います。

===この間に読んだ本===

『お坊さんのための「仏教入門」』(正木晃、春秋社、2013)
『トイレの話をしよう』(ローズ・ジョージ/大沢章子訳、NHK出版、2009)
『あなたの人生の科学』上下(デイヴィッド・ブルックス/夏目大訳/ハヤカワ文庫、2015)
『男色の日本史』(ゲイリー・P・リュープ/藤田真利子訳、作品社、2014)
『バウドリーノ』上下(ウンベルト・エーコ/堤保徳訳、岩波書店、2010)
『レコードは風景をだいなしにする』(デイヴィッド・グラブス/若尾裕+柳沢英輔訳、フィルムアート社、2015)
『史的幻想論で読む世界史』(岸田秀、講談社学術文庫、2016)
『入門 哲学としての仏教』(竹村牧男、講談社現代新書、2009)
『宇宙が始まる前には何があったのか』再読(ローレンス・クラウス/青木薫訳、文芸春秋、2013)
『京都ぎらい』(井上章一、朝日新書、2015)
『炭水化物が人類を滅ぼす』(夏井睦、光文社新書、2013)
『レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集』(菊地成孔、亜紀書房、2015)
『ぼくの血となり肉となった五○○冊そして血にも肉にもならなかった一○○冊』(立花隆、文芸春秋、2007)
『若い読者のための 第三のチンパンジー』(ジャレド・ダイアモンド+レベッカ・ステフオフ編著/秋山勝訳、草思社、2015)
『カレル橋の1ユーロ』(広瀬隆、恒文社21、2001)

===これからの出来事===

 春休みのこのヒマな時期にレコーディングをしようと考えていました。そのための練習やスタジオとの連絡なども始めていたのでしたが、義父の逝去ですべて吹き飛んでしまいました。例年のように4月からのガッコのジュギョー開始までは何もやることがありませんが、配偶者実家の明石に行ったり来たりするので、完全ヒマとはいえない状況がしばらく続きそうです。