2005年1月21日 (金)-帰国
7時30分に目が覚めたとたん、ルーマ-がノックして顔を出していった。
「コーヒー飲むがっす」
まったく、彼女は人の都合なんかおかまいなしだ。
「後で」
といいつつトイレに駆け込んだ。下痢だった。前日沈黙していた給湯器のスイッチを入れると熱いお湯がちょろちょろと出てきた。いそいで裸になり体中泡だらけにしたところで再び給湯器が沈黙してしまった。昨日に続いて震えながら水のシャワーを浴びた。
練習しているとユミが顔を見せ、
「アジャンター旅行は止めました。やっぱり時間的に難しいようなので」
といった。
「じゃあ、ここの家族も入れてみんなで記念撮影しようか。シャイアンにもいってよ」
練習を中断し、ダイニングテーブルでチャーイを飲んでいたナーギー夫人、ルーマーに声をかけた。ナーギー夫人はパッと顔を明るくして応えた。
「んだが。そんじゃあ、ましな服に着替えねえどな。ほれ、ルーマーも着替えで来い」
それを聞いたスィン氏が、
「なに、写真が。んだが」
と、それまで見ていたシク教専用チャンネルから目を外して立ち上がった。
シャイアンたちに自分たちの寝室まで貸したしまったので、家主一家は居間に布団を敷いて寝ていたが、どこで着替えるんだろう。家主の3人は揃って玄関から外へ出て行き、ほどなく戻ってきた。上下階に住む親戚の家で着替えしてきたようだ。
居間で全員の記念撮影。写真には、円満そうな家主家族とイギリス人、日本人の下宿人が収まった。撮影が終わってナーギー夫人が尋ねた。
「オレだは、家族写真なて撮ってねえなよす。今の写真はもらえんなだがす」
それを聞いたスィン氏もいった。
「写真けろ」
「いや、これはデズタルだがら無理だっす」
「えっ、なしてや。何枚か焼き増ししてけろず」
「これはよ、コンピュータですか見らんにぇなよす。ほら、こうしてすか見らんにぇなよ」
とディスプレイを二人に見せた。
「んだが」
悲しそうにナーギー夫人がつぶやいた。
頼んでいた洗濯物を取りに行った。すぐに戻ってパッキング。ユミはヨーガを習いにサンタクルスに出かけ、シャイアンは部屋で練習していた。
5時半、すべての荷物をオートリキシャに積み込んで、家主家族とシャイアンに別れを告げた。
6時すぎに空港に着きすぐにチェックイン。予定通り、8時25分発エア・インディア314便で帰国の途に着いた。