メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

5月5日(日)  前日  翌日
 6時半起床。ものすごく寝た感じだ。
 昨日の日記をアップロードした。この家のWifiは母屋からの電波を拾っているのだが、たまに不安定になる。居間では完璧に繋がるが、隣の寝室へ行くと途端に弱くなる。とはいえ、まあまあ快適なネット環境といえる。
 咲子さんからのメッセージ「Urandenで、Feria Alternativaという小さなお祭りがあります。そこでジゲン君の9歳の誕生会をします」というので、お昼過ぎに出かけた。我が家からエスタシオン方向とは逆の方向に歩く。途中、Huecorioという標識のある集落があった。我が家もいちおうウエコリオの一部だが、このあたりが本体のようだ。


 村はずれに小ぶりの教会があった。ウエコリオ・サン・ホセ教会Templo de San José Huecorio。教会を右に見つつしばらく歩くと「ウランデン」の標識。右折し、滅多に車の通らない静かな田舎道を歩く。なんとなくみすぼらしい感じの墓地を見つつしばらく歩くと湖が近くなり、入江の対岸に人が集まっているのが見えた。Feria Alternativaに違いない。
 結構な数の車の駐車場を抜けると、多くの人が集まっていた。テント張りの下で瓶詰めの食品、アクセサリー、手作りのケーキなどが売られていた。


 奥の東屋でも多くの人たちが動き回っている。いわゆる白人の姿も多い。英語を話しているのでアメリカ人かもしれない。東屋の両端と真ん中に店があるので、人の動きが滞りやすい。奥にケサディーヤを売っているのが見えた。おばさんがパリンパリンのトルティーヤに豆類のペースト、チーズを塗りつつ、その横で人の良さそうなおっさんが炭火で肉やチョリソーなどを焼いている。ちょっとうまそうなのでチョリソー付きのを頼んだ。これがまずかった。


  トルティーヤがあまりに硬く、中に挟み込んだチーズに十分に熱が伝わらないので粉のままだ。3センチほどのものが繋がったチョリソー3個は美味しいので実に惜しい。会計担当の若い女性の前のテーブルに並んだ定番の酢漬け玉ねぎ、ピーマン、アボカドのワカモレ、ライム、サルサをぶち込んでも、味の改善は見られない。値段を聞くと、びっくり。75ペソ(450円)もした。おとといウルアパンで食べたケサディーヤは美味しくかつ1つ150円だったので、3倍もの値段だ。3倍まずかったので9倍損した気分だ。Alternativaというくらいなので、きっと材料なども自然食系なんだろうが、少なくとも値段に応じた満足感を与えてほしいなあ。咲子さんによれば、この集まりは月の第一日曜日に開催される「パツクアロのネオヒッピーの月一集会」とのこと。ま、意識高い系の集まりということだろう。咲子さんはここで踊ったりもするとのこと。木の下でパフォーマンスのようなことをしている青年もいた。
 日本でこういう集まりだと、きっとエスニック系プリント柄の薄地の綿のペタペタのズボンやインド式のクルターのような格好で、うしろ髪束ねとかボブ・マーリー風のよじれ髪の男たちや、化粧っ気のない明るい顔の女たちが自作のアクセサリーなんかを売っているような感じか。昔、信州の農村で見かけたことがあるが、ワダスはそういう人たちを「やさしい人たち」と命名したことがあった。みんな優しそうな目で、いかにも屁っぴり腰で畑仕事をしていた。
 咲子さんたちを探したが見当たらないので戻ることにした。
 途中、ウエコリオ・サン・ホセ教会の中に入ってみた。入り口におばさんが一人座っていた。中は誰もいなくガランとしていた。中央の祭壇には冠をかぶったマリアが鎮座していた。比較的高い丸い天井から紅白の幕が左右の壁に垂れ下がり、中央のマリア像に視点が集中するようになっていた。教会の門に「1889」とあった。130年前に建てられたということか。日曜日だというのに誰も人がいない。


 道端の小さな店でビール6本、パパイヤ、洋梨1個102ペソ(612円)を買って歩いていると、見たことのある白くて古い大型のバンが近づいてきた。窓からジゲンが手を振っている。エスパルタがジゲン、ミヤビ、子供たちの友達何人かを乗せてウランデンに向かうところだった。咲子さんと長女のしずちゃんは現地で合流する予定という。「もう一回行かない?」と誘われたが、そのまま帰ることにした。帰り道では、我々のようにただ歩いている人を見かけない。散歩の習慣はやはりないのかなあ。
 かんかん照りの道を往復2時間ほど歩いたので結構くたびれた。部屋でスペイン語の復習もどきをしていたらバチェと背の高い青年がノックしてきた。息子のハイクだという。「え、ハイクですか。あの俳句?」「いやあの俳句じゃなくてアルメニア語で最初の祖先という意味だ」とのこと。

ハイクとバチェ親子


  ウィキペディアにはこうあった。
「ハイク・ナハペト(アルメニア語: Հայկ Նահապետ、Hayk Nahapet)は、アルメニア人の始祖、ハイ族の族長である。ノアの玄孫、ヤペテの曾孫、ゴメルの孫、トガルマの子にあたる。子孫には、アルメニアを興したアルメナケ、伝説的なアルメニアの英雄である美麗王アラが居る」
 なかなかに由緒のある名前だった。 誰かに似ていると思った。堺雅人だ。

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