メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

5月6日(月)  前日  翌日
 12時にエリカがやって来た。今日のレッスンは、まずワダスがグーグル翻訳を使って書き、バチェにチェックしてもらったインド音楽の説明文を見てもらう。2つの語尾の間違いを指摘された。が、後は完璧とのこと。それを彼女に読んでもらって録音した。ワダスもつっかえつっかえ読んだ。「そこはグイダじゃなくてギダ、メロディアのとこはメロディーヤ。アクセント記号のとこを強調するの。それ以外はパーフェクト」と褒めてくれた。嬉しいなあ。
 ついで、英語のbe動詞に当たるserとestarという2つの動詞の使い方を習う。serは時間、不変のもの、宗教、関係、国籍、所有の場合などに使う。estarは一過性の物事や感情、場所を表す場合。この部分でテキストは一気に進んでレッスン5の練習になった。
 戻ってレッスン1のおさらいをした。会話文を久代さんと交互に代わって応答する。一応、レッスン1は終わったことになったのかな。宿題は、レッスン1全体を二人でやり取りしながら復習すること、レッスン2以上をどんどん進んで自習すること。
「最初はゆっくりだけど、レッスン2からはだんだんスピードが速くなります」
「コスタリカに持っていく人形づくりがまだ終わっていない。明日メキシコシティへ出発だけど、どうなることか。アリシアは元気よ。彼女は遠くの村々の恵まれない子供達にも教えている。彼女は、その場でお話を作るのがとても得意・・・」
 こんな話をしてエリカは戻っていった。彼女がコスタリカから戻ってくるのは20日。次のレッスンは21日(火)になる。
 さて、レッスンが終わった、何しよう。ちょっとお腹もすいた。彼女が2つのハートマークをつけたケサディーヤを食べにエロンガへ行ってみようということになった。我々の主な関心は食べることなのだ。
 エロンガまでのコンビ(ミニバス)は家の前から乗れることになっている。しかしみな猛烈なスピードで通過していく。フロントガラスの行き先表示の文字が読めない。仕方ないのでノートに「ERONGA」と太字で書いてコンビに向かって振って見せた。中には「行かないよ」と手で答えてくれる運転手もいるが、大抵はビュンビュン通過していく。我が家の前の道路はちょうどスピードが出やすいのでかなり不利なのだ。トペというスピードブレーカーのあるところではどの車も徐行するのでエスタシオン方面にちょっと戻って待った。家を出てからほぼ50分経ったところでようやくコンビを捕まえた。


 小さな集落を経由して20分ほどでエロンガの広場に着いた。料金は二人で38ペソ(228円)。
 ココヤシやハカランダ、シュロなどの背の高い木々のある小さな広場だった。2階建の古びた建物が切れ目なく広場の長方形を囲んでいる。間口の小さな店の上に店名が書いてあるが、パツクアロのセントロのように統一感がない。そのためかとても鄙びた雰囲気だった。大きな物音もなく静かだ。


 とりあえず、エリカの書いてくれた略図を見ながら長方形の広場を一周した。5分もあれば一周できる小さな広場だ。屋根のある通りの天井にパペル・ピカドが揺れていた。広場の周りは小さな店が並んでいる。店頭のかまちに座って話している男や女。広場のベンチに座ってスマホで喋っている女。生活雑貨を広げて売っている老人。ほとんどが原住部族の顔つきに近い。
 コンビの着いた側面の通りに、エリカの言っていたケサディーヤ屋があった。とはいっても2軒続いているのでどちらなのかは不明。テーブルに具材を入れた石の容器の並ぶ店に決めて座った。ビールはないというので隣の店で2本(コロナ・ライト2本で14ペソ)買って席に着く。


 ちょっと若めの女に、エリカが書いてくれたように注文したが、早口の返答が返ってくる。「具は何にする。チキン、牛肉、なんやらかんやらあるけど。えっ? これは牛肉、ええ、これがチキン、これがなんやら、これがモレ、これがなんやら、これがチョリソー」みたいなことを喋っているはずだが、ほとんど理解できない。鉄板で調理している中年女性と「どないしょ」と顔を見合わせている。
 結局なじみのあるチキンとチョリソーのケサディーヤを頼んだ。テーブルに来る前の段階で女がまた何か質問する。「チーズ要る? これよ。野菜は? 要る、はい。クリームソースは? 要る。OK」と言いつつ出来上がったケサディーヤがようやくテーブルに到着した。1つずつ、薄いビニール袋に包まれたプラスチックの細長い皿に盛ってあった。見た目は良くないが、こうすれば洗う手間が省けるというわけだ。
 ケサディーヤはとても美味しかった。エリカがハートマーク2つつけたモレの入ったケサディーヤではなかったけど、我々もハートマークをつけてもいいほどだった。
 値段を聞くと、なんと2つで30ペソ(180円)。安い。ウルアパンの1つ150円の安さにも感動したけど、ここはなんとたったの90円ではないか。しかも美味い。
 ふう、食った食ったと腰を上げて、ひょいとまた3軒ほど先の店の前で、小さなトルティーヤにソーセージを巻いて揚げたものが目についたのでそれも買って食べた。素朴だけどいい味でした。名前はソルチタコス。ちっちゃな塩味タコスという感じの意味だろうか。これがなんと2つで5ペソ(30円)。


 広場からちょっと離れて街を散歩した。市役所の中庭で、空手着をつけた少年たちがふざけ合っていた。背中にテコンドウと書いてある。人通りのほとんどない坂なりの道を登っていくと小高い丘があった。てっぺんは貯水場のようだった。そこから街全体と、周辺の山々、山の中腹の野焼きの煙、パツクアロ湖、遠目にバツクアロの町も見えた。エロンガはなんとも小さく、鄙びて愛らしい町だ。ネットによれば人口5000人という。


高台からの街の眺め。遠くに湖が見える

 エリカの言っていた壁画もあった。すごいというわけではないが、なかなか味のある絵だ。

壁画があちこちに


 広場からすぐの、町で一番高い教会に行ってみた。門から入ると意外な広さだ。教会の建物そのものはそう大きくはないが、前庭が広々としている。
 入り口におばさんが一人いるだけで中はひっそりしていた。昨日のウエコリオの教会のように、天井から両壁に襞のある布飾りが垂れ下がり、正面のイエスの像に視点がいくようになっている。その飾りはよく見たら布のように彫刻された木製だった。
 入り口のおばさんに「この教会は古いの?」と聞いた。

 


「この辺じゃあ一番古い。フランシスコ会のキロガだかバスコだかの神父が建てたもので、500年は経っている」というようなことを説明してくれた。我々の理解は切れ切れなのではっきりとはわからなかったが。
 再びコンビに乗って帰路についた。エスタシオンの踏切を長い貨物列車が通過した。音だけ聞いていたけど、初めて列車を見た。


  いつも行くスーパーマーケットで降ろしてもらい買い物。6本で50ペソの特売のビールを12本、9個入りのトイレットペーパー、ツナ缶、オイルサーディン、何かの貝の缶詰、日清UFO、パスタ、バター、カラムーチョ風スナック、ミルク、チョコレート菓子、トマト、香菜、ほうれん草で締めて385ペソ(2310円)。大量の買い物を背負って6時頃コンビで帰宅。
 ワダスがこの日記を書いている間、久代さんは、ほうれん草を湯がいて冷凍にしたり、ジャガイモとソーセージの炒め香菜和えとカラムーチョ風スナックをバリバリ食べたりしてビールを飲んでいるのでした。さて、メスカルでも飲んで寝ようかな。

--やれやれ日記
配偶者は「あなたの発音はスーパーフェクトだ」とほめてもらった。だけど長い文章を読むとなるとさすがにつっかえつっかえだ。読み間違いがないか、配偶者を見つめるエリカ先生のまなざしがすごく真剣で一直線だった。

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