メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

5月23日(木)  前日  翌日
 今日のレッスンは時間の応答について。数字がスムーズに出てこないので、まるで小学生のようにつっかえる。「今何時ですか」「3時15分です」こんな応答でも「ええ、さ、さん、3時いー、ええと、あれっ、15ってなんだっけ、あっそうそう、キンセ」「時刻の前にlasをつけるのを忘れないで。それとキンセの代わりにy cuarto(1/4)と言うこともできる」このクアルトが数字のクアトロ(4)と混同しやすい。しかもcuartoには「部屋」「4番目」の意味もある。
 大体スペイン語は短い単語で似た形のものが多く、ごっちゃになる。むしろちょっと面倒な長い単語ほど英語から類推できることが多い。
「~時何分前」も当然ながら別の言い方になる。さらに「~時と~時の間」「~時から~時まで」「~時に」という表現を習うと、今度は応用編。「バスは~時に出て~時につきます」とか「銀行は~時に開いて~時に閉めます」とか「コンサートは~時に始まり~時に終わる」と進んでいく。頭ではわかっているつもりでも、いちいちの数字や単語を思い出しながら、冠詞や名詞、形容詞は男性女性単数複数の変化に引っかかりながらなので、口から即座に発声するのがものすごくゆっくりになってしまう。これじゃあ、街での会話はとても覚束ない。会話は何といってもスピードが重要だ。スペイン語ペラペラへの道ははるか彼方である。
 さらに疑問文の練習。ここまでに習ったことを完全に記憶していればかなり話すことができるはずだが、覚える先から記憶が欠落していくのでなかなかだ。慣れるしかない。
 雑談になった。ドン・チュチョでは自前でチーズやヨーグルトを作っていて、ここから40分ほどのイウアツィオIhuatzioに工場がある。ところで、イウアツィオにはプレペチャ寺院遺跡がある。ここから3、4時間で行けて温泉のあるロス・アスフレスLos Azufresは、ミチョワカン唯一の完全自治の町チェランCheranから近いので行ってみてはどうか。太平洋の海岸もいいかも。バスで5、6時間かかるが、とても美しいビーチがあり、サーファーのメッカで欧米からもたくさん人が来ている。こんな風に、パツクアロ周辺にはまだまだ行く価値のある町や遺跡がたくさんあると、エリカの話は続き、今日は終了時間を30分もオーバーしてしまった。
「明日もレッスンよ。では明日」とエリカは帰っていったが、あとで「今日は水曜日だと勘違いしてました。すみません。次のレッスンは来週の月曜日です」とメッセージが届いた。ということで、明日からの週末三日間は自由時間だ。
 日本にいる時よりも出るものはきちんと出ているのに、今日はいつにもまして腹部膨満感が強く、すぐに散歩ランチに出かける気分ではなかった。朝から食べていない久代さんは、茄子とトマト、ソーセージ入りオムレツとビール。彼女の消化器官がどこにいても快調に働いているのが羨ましい。ワダスはオムレツをひとつまみし、半分残っていたスイカを食べた。

我が家から最も近い商店のホルヘ

 とはいえ、寝るまではまだ相当の時間がある。ビールのストックも少ないので、買い物がてら5時に家を出て散歩。まずいつも立ち寄る小商店でタバコ47ペソ(282円)を買った。この店をやっている男はホルヘと名乗った。写真を撮りたいと言うと、慌ててマスクをして出てきた。ついで定例の船着場を経由し人通りの少ない裏道を歩いた。
 メキシコに来てからずっと感じていたのだが、我々の住むバチェ宅に限らず、学校であれ住宅であれ建物の周辺が実に高い頑丈な塀に囲まれている。日本だと高い塀を巡らせるのは大豪邸くらいのものだけど、ここでは小さな家でもがっちりと外からの侵入を防いでいるように見える。頑丈な門と高い塀のコストはバカにならないはずだ。よく吠える犬を飼っている家も多い。


 かつて物騒で家宅侵入者が多かったのか、あるいは今でも多いのだろうか。こうした佇まいが昔からそうなのか、スペイン人の影響なのか、ある時期からそうなったのか分からない。建物がまるで要塞のように外部から隔てられているので、道路から内部の敷地や建物の様子を伺うことができない。いったん門の中に入ると、外からは想像できない緑豊かな素晴らしい前庭があり、中庭がある。道路に面して開口部が少ないので、街全体の眺めにも影響する。タカンバロもそうだったが、道路から見えるのは狭い間口の開口部と壁だけだ。景観としては統一された眺めで、それはそれで独特の雰囲気だが、人々の暮らしの実態が表からはわからない。などと考えながら塀や門の写真を撮った。
 ドン・チュチョ前のテントでタコス屋が開店準備中だった。エスパルタのいう「この界隈一のタコス屋」のはずだ。作業しているオネーチャンに聞くと「15分で開店よ」と言う。すぐ後ろのドン・チュチョでベリー類か何かの自家製ジャム500g(38ペソ=228円)を購入して戻ってみると、すでにテーブル、椅子、焼き場の店ができていた。膨満感の不愉快さはあるが、一番のタコスをここで断念するわけにはいかない。

「界隈一」のタコス屋


 というわけで、牛肉、チョリソーのタコスを2皿と牛肉のケサディーヤを注文。目の前に座った英語を話す青年のケサディーヤを見て「1皿はタコスの代わりにケサディーヤを」と頼んだつもりが「の代わりに」というのが言えなかったせいで両方来てしまった。「週末は必ずここで食べる」と言う向かいに座った青年に限らず、開店早々、次々と客が来て座る。人気があるということだろう。具の塩味がじゃっかん強めだが、どれも美味しいし、何よりも取り放題のサルサ・メヒカーナ、ワカモレ、辛い緑サルサ、ラー油のような茶色いサルサ、ライムがテーブルに大量に並べられているのが嬉しい。勘定は60ペソ(360円)だった。それぞれの皿が20ペソということだ。
 帰り道のホルヘの商店でビール6本90ペソ(540円)を買い、7時に帰宅。一時は絶食を願望したものの欲には勝てずたくさん食べてしまった。苦しみの根源は欲である、欲を滅すれば苦から解放される、と言った仏陀の言葉は正しい。が、欲はなかなか消滅しない。

---やれやれ日記
本日はやけ食いではなく、ただの食べ過ぎ。食欲は消滅しない。ヤレヤレ。

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