メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

6月9日(日)  前日  翌日
 今日はちょこっと遠出のサンタ・クララ・デル・コブレ(以下サンタクララ)へ小旅行。コブレとは銅のことだが、その名の通り銅細工で有名な町。ここもパツクアロ同様、メキシコ政府によって「プエブロ・マヒコ(魔法の町)」の指定を受けている。パツクアロからは南に約20kmほどの町だ。
 サンタクララへ行くにはまずパツクアロのバスターミナルまで行き、そこで南方向へ向かうバスに乗る。南東に当たるタカンバロへも途中までは同じルートだ。
 12時半ころ家を出てエスタシオンまで歩き、そこでバスターミナル行きのコンビに乗った。二人で18ペソ。ターミナルで二人分往復のバスチケットを購入。48ペソ(288円)だった。一人片道72円。実に安い。切符には13:20発となっていたが、出発したのは10分遅れの13:30。ターミナルを出た時点では客は数人だけだった。ターミナルを出て5分ほど走ったところで停車し、そこで10分以上待たされた。待たされている間に客が増え、いつの間にか満員になっていた。車窓からは遠くまで広がるトウモロコシ畑が見えた。

 


 30分ほどでサンタ・クララに到着。街に入ると街路の狭い一方通行の道だった。帰るときはどこから乗るのか、下車した段階ではわからなかったが、なんとかなるだろう。町はなだらかな斜面になって展開していた。ゆるい坂道を登ると広場のあるセントロだった。日曜日だったせいか、タコスや物売りの屋台が並び賑やかだった。町の規模としてはタカンバロよりもかなり小さい。セントロを通り越して人通りの少ない街路を歩いた。
 咲子さんには「銅だらけよ」と聞いていたが、それらしい店が1軒あっただけで、店も工場も見当たらない。途中でゆるい坂道を降りると、街道と並行した脇道がテントを連ねた市場になっていた。衣服、靴、電気製品、時計、果物、野菜などなど、細々としたものが所狭しと広げられ、人々が行き交う。市場を通り抜けるとバスを降りた場所に出てきた。近くに広い前庭のある教会があったので中を覗いた。そこから再び広場に出た。街道を挟んだ広場の上側の回廊に行ってみると、今度こそ銅細工だらけだった。鍋、皿などの大小の容器、装飾品、土産用の小物…銅製品の店がずらっと並んでいた。


 と、いきなり女性から名刺のような印刷物をもらった。そして何か喋りつつ手を伸ばして方角を示し、その女性が我々の前を歩いて行くのだった。わからないままについていくと、大きな銅細工の店「El portón」だった。中に若い女性が二人いた。店は奥までぎっしりと製品が並んでいた。写真を撮ろうとしたらダメだと言う。店の奥は工場のようになっていて、壁に薪が積み上げられていた。男が二人、何かの細工をしていた。先ほどの女性は客引きのつもりで案内したんだろうが、こちらは買う気はなくただ漫然と銅製品を眺めるのみだった。「この店は古いんですか」と女性の一人に聞こうとしたが「古い」という形容詞が思い出せず「えー」を連発しているうちに店の看板を見つけた。創業1900年とあった。
 通りにも銅細工屋が軒を連ねていた。まさに銅だらけだった。
 広場に出て、どこで帰りのバスに乗ったらいいかを確かめなければならない。角にバス停のような表示板があったが、広場の道は狭く、ひっきりなしに車が通る。角の小さな店で確かめたら表示板のあたりにバスが来るらしいことが判明した。どこかタコス屋でランチを取ってもよかったが、食べるならパツクアロでということになり、カフェテリアでビールを飲みながらバスを待つことにした。バスが通ればわかる屋外のテーブルに座って広場や人々を眺めた。小さな町の広場は見ていて飽きない。偶然かもしれないが、男女共、背の低い人が多い。
 ビールの勘定50ペソ(300円)を支払ってすぐにプレペチャ・バスが通るのが見えたので急いでバスを止めて乗り込んだ。乗ってすぐに銅の博物館の横を通った。見逃してしまっていたらしい。
 パツクアロのバスターミナルに着いて、徒歩でセントロへ。小広場に出る市場を通り抜け、屋根のある食堂街へ。最初に目についた「うまいゴルディタスとケサディーヤ」の看板のある店で、ケサディーヤを食べた。モレ、チキン、肉とピーマンの3種類。目の前のカウンターに具が並んでいるので注文しやすい。中年の銀髪の女性が注文を取りケサディーヤをその場で作る。横にスペイン人かと思わせる若い女性が何もせずに座っていた。その横には娘らしい女の子。練ったトウモロコシの生地を丸めて型で薄く伸ばし、熱した鉄板に敷く。焼き加減を見て具を入れる。その間、娘らしい女は何気なく前を見ているだけで、手助けするそぶりすらない。だが、出来上がったケサディーヤを皿に乗せ、玉ねぎ、チーズ、レタス、クリームを挟み込み二つに切る、というのがその女性の仕事だった。味は特に美味しいというわけではないが、まあまあだった。チョコレートのように見えるモレそのものの味については「これだ」という確信にまだ至らず。喉が詰まったのでジュースを頼んだ。瓶入りの桃ジュースだった。ビールは許可を取らないと販売できないと銀髪中年女性が言う。一つだけでも結構な量だった。二人で3つも食べたので大満腹だった。勘定は90ペソ(540円)。多分、ケサディーヤが1つ25ペソ、ジュースが15ペソという感じだろうか。


 人でいっぱいの小広場では、ピエロのように鼻を赤く染めた若者がコメディー・ショーのようなことをやっていた。周りには子供達を含め大勢がそれを見ていた。
 コンビに乗って5時半に帰宅。門扉を開けようとしたら、バチェと息子のハイクが出てきた。ハイクは今日、バチェのギャラリー展示の手伝いに来ていて、ちょうど帰るところだったのだ。バチェは「彼が来てくれたので絵はすべて壁にかけ終わった」と言って、ハイクを送り出し門を閉めた。
 ちょっと疲れたので、落語を聴きながらうとうと。というわけで、今日もこうして終わっていく。明日から再びスペイン語のレッスンだ。

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