メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

6月28日(金)  前日  翌日
 9時頃起床。次第に遅起きになってきた。向かいに新しくできた水屋の音楽がうるさい。
 普段よりも天気が良いが、家の中は寒い。セントロのカフェで日記を書くつもりで門を出るとマルタが車を出すところだった。お手伝いのフアナも一緒だ。マルタが運転席から「おいで、おいで」するので車に乗り込んだ。彼らはギャラリーへ向かうところだった。


 ギャラリーにはバチェと現在展覧しているアイダがすでにいた。86歳にしてはとても元気で、我々にスペイン語で話しかける。我々のスペイン語がおぼつかないのを見てとって英語に切り替える。
「我々の大家さん(バチェ)はとても親切でいい人だ」と言うと、
「あなた方が住んでいるところを半年前に見せてもらったけど、いいところだよね。私の家はものだらけであんな家に住みたいと思ったのよ」と応える。
 マルタと入れ替わりにバチェがセントロへ向かう。我々もマルタと別れ、歩いてセントロへ。
 以前咲子さんと行ったカフェ・スルティドーラSurtidoraへ。小広場から郵便局のある通りをちょっと下ったところにあるカフェだ。真向かいが市役所。WiFiがあるか尋ねると、店主らしい男が入り口付近を指して「あるよ。ただ奥の中庭までは届かないけど」。日光の当たる奥のパティオで日記を書こうと思っていたので店を出た。
 小広場と大広場の間にあるカフェ・グラン・カラベラGran Calaveraに入った。咲子さんの紙芝居の時や、ボクシングの試合を見に行った時に立ち寄ったカフェだ。


 重ねたタイヤの上に板を乗せたテーブル、壁にアンヘルの大きな骸骨の絵、アンヘルの生徒たちの絵が中庭を囲む壁に飾られている。スピーカーからはビートルズやクイーンの音楽が流れ、ぼんやりするのにいい場所だ。インドやネパールによくある、ヒッピー相手の脱力系の雰囲気のあるカフェ。
 ワダスはチャイ、久代さんはビールを頼んで、日の当たる角のテーブルにPCを広げて日記を書いた。ここはWiFiがあるのでネットにつなぐことができる。ここの経営に関わっているフラスンス人のヴィンセントがやってきて日本語と英語で話しかける。彼は昔、渋谷のバーで働いたことがあるのでちょっと日本語ができる。
「元気? 調子どうお。変わったことある?」
「昨日、オポンギヨからキロガへ行ったので、パツクアロ湖を一周したことになった。あとは一昨日サン・フアン・デ・カパクアロへ行ってきた。ウルアパンに近い小さな町。ちょうどサン・フアンのお祭りで興味深かった」
「おおオポンギヨから向こうは雰囲気がいいだろう。好きだなあ。ミチョアカンの小さな町もまだまだ魅力的だ。この間アンヘルが帰るというので一緒にチェランに行った。面白かったなあ。そこもちょうどお祭りだった。人々が木の扮装をして踊るんだ。あなたのライブ? そうね、ずっとスケジュールを考えていたんだ。7月の20日は灯りのついた風船を飛ばす日で混雑するし、そうだねえ、7月の最終金曜日か土曜日かなあ。13日にはここで展覧会のオープニングがあるよ。パーティーかって? そうだよ。ここでは毎日パーティー」
 最初は我々だけだったが、ぼちぼち別の客がやって来た。アジア系に見える男女もいた。電池切れになりつつあったPCの充電をしていた壁に近いテーブルに白人の男がやって来て本を読んでいた。短い髪と髭が真っ白の背の高い男で、メキシコ人には見えない。雨が来そうでヴィンセントがテーブルを片付けていると彼がワダスに話しかけた。
「英語とスペイン語どっちがいい。英語? OK。あなたたちはどこから。おお、日本。行ったことあるよ。僕はカルロス。退職したので仕事はしていない。ほとんど毎日ここに来て本を読んでいるんだ。生まれはバンクーバーだけどここ20年はずっと中南米に住んでいる。スペイン語を習いに来たって? それはすごい」
「ワダスと妻は今69歳だけど」
「僕は73。結婚して何年? 50年と。おめでとう。僕も40年連れ添った妻がいたけど、あいにく亡くした。え? ここでコンサートをするって。絶対来るよ」

ヴィンセントとカルロス


 ワダスは結婚して50年とつい言っちゃったが、久代さんがあとで「50年になってないでしょ」と指摘。確かに、我々が結婚したのは1978年だから、計算すると41年だった。ま、大した違いはないか。
 通常であれば小広場の食堂街で食べるというコースになる。しかし今日はいつになく膨満感が強くて食欲がない。空模様が怪しくなってきたが、歩いて帰ることにした。PCとiPadが入っているのでリュックが重い。
 帰り道でギャラリーを見たが車がなく閉まっていた。バチェたちはランチに行ったのかもしれない。
 途中、ボデガ・スーパーで買い物。ミルク2本、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、魚の切り身、ニンニク、ジャガイモなど全部で147ペソ(882円)。
 結局雨は降らず濡れずに歩くことができた。ドン・チュチョから線路を渡りいつものコースを歩いていると、ブラスバンドの音が聞こえた。イエスの聖心教会Iglesia Del Sagrado Corazón De Jesúsのお祭りだった。通りを遮って臨時の舞台が作られ、その上にブラスバンドが待機していた。教会の中には、伝統衣装をつけた女性たちが固まっていたので写真を撮らせてもらった。


 5時頃、帰宅。相変わらず食欲はないが、久代さんが料理した魚とほうれん草をちょっとつまんだ。久代さんはビールをグビッとしつつしっかりと食べている。


 チワワ・チーズ、ライムをあてにテキーラを飲んで早めにベッドに入ったが、なかなか寝付けなかった。

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