メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

7月4日(木) 前日 翌日
 陽が出ていたので久代さんが「ラッキー、洗濯だあ」と喜ぶ。最近は雨続きで洗濯するチャンスがなかなかないのだ。
 宿題の答え合わせと比較級のレッスンの続き。男性女性単数複数の語尾変化が悩ましい。スペイン語の作文をしてみるといかにまだまだかが分かる。新しい単語もどんどん増えてきてとても覚えきれない。エリカの進め方が次第にスピードアップしてきた。「全部覚えようとしなくとも、そのうち、ああ、そういう表現があったと思い出すだけでいいのよ」と言ってはくれるものの、実際に会話をするときは、一つの単語を思い出せなくて文が完結しないことがしょっちゅうだ。
 3日分の大量の宿題を課してレッスン終了。今までのテキストの残りがわずかになったので次から新しいテキストになると言っていたが、はたしてついていけるか。
 エリカが帰ったあと、昨日買った牛肉をモレソースで食べる。ボデガ・スーパーで買ってきた出来合いのモレソースを取り出すのが面倒だった。液状ではなく半固体でパックからひっぺがすのに手がベタベタになる。鍋にあけたが火を通すとすぐに焦げ付きそうになる。水を加えて液状にしたが、どれくらいとろとろにすべきかの判断が難しい。どんどん水を加えていったらモレソースが一回では食べきれないほど増えてしまった。


 ミラネセと書かれた牛肉はカツ用の薄い肉なのですぐに火が通る。別に玉ねぎ、マッシュルーム、庭の菜っ葉を炒めて付け合わせにした。やはりまだ「これぞモレソース」という味がわからない。「あーあ、あのどろっとした黒いソースね」と形状についてはイメージできるが「あーあ、あんな味ね」と言えるほど明確な特徴があるわけではない。今回のものはちょっと甘めで複雑な味だった。モレはメキシコ人の好物だというが、人々の基準はこのソースのどの点なのか。


 食事をしているとバチェが鮮やかな色の果物を持ってきた。「庭でなってたものだ。美味しいと思うよ」外皮が緑と赤のこぶし大の果物はドラゴン・フルーツだった。スペイン語ではピタヤというらしい。皮は簡単に剥ける。合成着色したような赤紫の果実に黒い点々の種がある。甘さは控えめだが水分がたっぷりあり、見た目よりもずっと爽やかな果物だ。果実が白いものと今回食べたような赤紫のものがあるらしい。
 雨は大丈夫そうなのでランチ後、船着場へ散歩。ホルヘの店でタバコを購入。48ペソ(288円)。雲のせいで船着場は薄暗いが、それなりに人出もあった。青年が縦長の瓶を並べて何か飲み物を売っていた。小さなカップを差し出して味見をしろと言う。一口飲んだ。甘いジュースだった。パイナップル味のジュースはなかなかに美味い。青年の親しそうな笑顔に負け、1瓶買ってしまった。50ペソ(300円)だった。発泡スチロールの栓の上にアルミフォイルが巻いてあったので、工場で作られたものではなさそうだった。衛生的なのかどうかなんとも言えないが、普通の人も買って行くなら問題ないだろう。


 帰宅して件のジュースにメスカルを入れて飲んだ。うーん、メスカルはストレートがいいなあ。

---やれやれ日記
今日は洗濯。一昨日は部屋の掃除をした。うちは基本、土足ではないので、そんなには汚れない。憎きホコリも日本ほど出ないように思う。床は石のタイルなので、毎日出るコーヒーかすをためておいて、それを床にばらまいて、ゴミと一緒にはき出す。昔、電気掃除機などない時代、ある程度乾燥させた茶殻を畳に撒いて箒で掃除していた、あのやり方を真似た。箒は特大のブラシのような形をしている。掃除しているといろんな虫と出会う。丸まっちいの、細長いの、多足のもの…。虫は苦手。なるべく外に出ていってほしいが、そんな輩たちではない。クモも含め、見ないふりをしている。ただハエは許さない。部屋にはハエたたきが用意されているので、日に何匹かはやっつけている。私でもたたけるくらいだから、あまり人馴れしていないのかと思うと多少哀れであるが、何しろどこからか次々と侵入してくるものだから非情の私は放っておけないのであった。

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