メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

8月12日(月) 前日 翌日
 12時半、家を出てセントロまで歩いた。小広場までの上り坂がちょっときつい。標高のせいか呼吸が浅くなる。広場には相変わらず多くの人がたむろしていた。
 バシリカ(大聖堂)まで行き、そこから文化センターへ。道路にプリシリアーノの車が見えた。入り口に彼がいて手を振っている。約束の2時にはまだ10分あった。彼に案内されて右手の奥の部屋へ行くと、廊下にはかつてのプレペチャの木製おもちゃなどの展示物や展示ケースが梱包されて積んであった。これらは多分モレーリアの博物館へ行くのだろう。


 右手の大きな部屋が、プリシリアーノが開店準備中のカフェになるという。右手には小さめの中庭がある。室内にはカウンター、椅子など、カフェに必要な家具や道具がすでに運び込まれていた。奥がキッチン。調理器具やステンレスの調理台、冷蔵庫など雑然と置かれていた。ステンレスの調理台の下でプリシリアーノの3人の子供達(サビーノ9歳、プリシラ7歳、ダニツァ5歳)が保護用の青いビニールを剥がしているところだった。奥さんのテレも動き回って準備に忙しそうだ。他に2人の女性が手伝っていた。彼女らも今日タカンバロから来ていた。プリシリアーノによれば「電気関係をちゃんとしなければならないし、中庭に椅子とテーブル、日覆いも要るのでいつ開店できるかまだ分からない。モレーリアにも店を出そうかと考えている」らしい。
 彼らがまだ作業していたので文化センターの前庭で行われている「民芸品市場」を見に行った。入り口に近い場所に伝統的な焼き物を広げていたお婆さんにカップの値段を聞いた。100ペソとちょっと高かったが一つ買うことにした。記念写真を撮って年齢を聞くと「76歳」と紙に書いてくれた。「名前は?」「カルメン」


 3時にみんなでランチに行くことになった。場所は近くの伝統食堂La Tradicion。我々は何度か来ていたし、どこへ行こうかとなった時はここを推薦するつもりだった。「ティアラ・カリアンテ(暑い土地)の料理なんだ」とプリシリアーノ。
 今回は中庭ではなく、道路に面した部屋のテーブルに全員座った。プリシリアーノ、テレ、3人の子供達、手伝いのエルネスティーナ(36歳)、アンヘリカ(42歳)そして我々の9名。我々は牛のハラミのアラチェラArracheraを頼んだが「今日はない」というので、ワダスは牛の干し肉と卵の煮物アポレアディーヨAporreadillo(80ペソ=480円)、久代さんはエビ団子と食用サボテンのノパルの煮物、煮豆、ご飯のセットTortas de camarón con nopales en chile rojo(70ペソ=420円)を頼んだ。手伝いの女性二人が遠慮がちに注文したのはチキンのスープとケサディーヤだった。サビーノは白身魚のフライを食べ、味付けした赤いご飯を残し「白いご飯が好きなんだ」と英語で言ったのでプリシリアーノが「おお、英語でねえが」と喜ぶ。プリシリアーノはスープとチーズの入った汁物をご飯にぶっかけた料理。チーズが豆腐に見えるので、白飯に味噌汁をぶっかけた感じだ。食べている間にも何度か電話が入っていた。彼は忙しい。


 我々の支払い要求を「ノ」とはねつけたプリシリアーノが全員の分を支払った。
「今からモレーリアに行かなければ。まだここに戻ってくるけど。テレと子供達は残って仕事を続ける予定。エスタシオンを通って行くけど送ってこうか」
 我々は歩いて戻るつもりなので申し出を断り、みんなと別れた。プリシリアーノ家族に会うのもこれが最後だ。
「日本に行く計画はあるんだけど、いつになるかなあ。矢作さんとのコラボだ」。こう言い残してプリシリアーノが車に向かった。
 大広場を歩いているとプリシリアーノの車が通りかかり手を振った。アリシアの友人リナの店「クエCúe」の写真を撮った。リナはいなかったが、店番の若い女性がいた。入り口にリナの元夫マリオの作品が飾ってあった。乾燥した葦を組み合わせたキリンの造形が見事だ。店内にもマリオの大小の作品があった。エリカの作ったバッグも見えた。


 ボデガ・スーパーまで歩き買い物。特売ビール1ダース、洋ナシ、モモで114ペソ(684円)。向かいの銀行へ行こうとしたが、デビット・カードが見当たらないので断念。家に帰ってみたらちゃんとリュックに入っていた。帰りはコンビで帰宅。初めて助手席に乗った。


 夜になって再び激しい雨が降った。雨漏りを心配したが豪雨は長続きせず雨漏りはなかった。
 無実の罪で20年も収監されたが、友人たちの助けで無実が証明され釈放される、という現実にあった事件を元にしたAmazonの映画を見た。最近はインターネット接続が不安定でときどき止まってしまうのが難点だったが、なかなかに楽しめた。
 ベッドに入って物理学者大栗博司氏の講演を聞く。ネット不安定のため切れ切れだったが、興味深い内容だった。

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