メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

8月13日(火) 前日 翌日
 ちょうど12時にエリカがやって来た。我々のパツクアロ生活も残すところあと3日。彼女に借りていた「スペイン語の教科書や絵本、マグなど借りていたものを返したいのだが」と前日連絡すると「ウエコリオの鉄道沿いにマジック・マッシュルームがあると聞いた。一緒に探しに行きませんか」とお誘いが返ってきた。
 幸い晴れていて、直射日光を浴びると暑いほどの日和。彼女とウエコリオ方面へ歩いた。途中から農園や牧場のある側道に入る。周囲の山々や農場の緑が鮮やかで実に気持ちがいい。


 途中に原住民のための大学の表示があった。そのうちこの辺りにキャンパスができるらしい。エリカの知り合いに出会い挨拶。普通の農民のように見えるおばさんだが、実は現代舞踊をやる人らしい。鉄道沿いに歩いて例のマッシュルームを探すが、キノコが生えているような感じではない。珍しく蝶が紫の花に止まっていた。
「どういうとこに生えているの?」
「んー、牛糞の後によく生えているの」
「牛の姿がないからなあ。で、そのキノコはどうやって食べるの? で、食べるとどうなるの?」
「大抵生で食べる。私が最初に食べたのは6本だったけど、何も感じなかった。友達に言うと10本以上食べないと、と言われた。で16本食べたら、見えるものがくっきりしてきてハッピーになった。蜘蛛の巣を見てたら巣の中でバイオリンを弾く人が見えた」


 そのうち牛が広い牧場にいたので近づく。ロープに繋がれていたので写真を撮るためにグッと近づくと、牛もこっちを見ながら向かってきた。あっちでは数頭の馬がまるで何かの会議をしているように畑の真ん中に集まっていた。牧場は柔らかい草で覆われていたが、地面は濡れていて気をつけないと履物が濡れそうだ。放し飼いのニワトリや白鷺もいた。
 鉄道沿いの茂みの木の実を見て「これはテホコテ。熟すと黄色になる。パンチの味付けに使う」と説明した。
 2時間近く歩いて、マッシュルームは諦めて街道に戻った。さて、これからどうしよう。
「右に行けばこのまま家へ。左へ行けばエロンガだけど。エロンガにケサディーヤを食べに行くというのもありだね」
「いいわねえ。そうしましょう」
 ということで、やって来たコンビに乗ってエロンガへ向かった。コンビ代は1人19ペソ。
 エロンガの広場は実に平和な雰囲気だ。ブラスバンドの演奏が聞こえてきた。エリカによれば明日、新しい市長のお披露目で広場で無料の食事会があるらしい。ブラスバンドの演奏はその告知のためだと。周囲には移動遊園地の乗り物もあった。


 3軒並んだケサディーヤ店の真ん中が一番だと言う。すでにテーブルは満席だった。1人でケサディーヤを食べていた地元のおばあさんに断って同じテーブルに座った。おばあさんは「コーラの蓋が開けられない」とワダスに瓶を差し出す。蓋が固いのだ。
 エリカに相談しながら注文したのは、チキンのモレソース付きのものと、チキンとかぼちゃの花の入ったケサディーヤ。それぞれ半分にしてもらって久代さんと分けて食べた。チキンとかぼちゃの花がよかった。


 水色の日覆いの下のトスターダ屋が見えた。「セベチェが美味しいのよ」とエリカ。セベチェとは白身魚などをライムで酢漬けみたいにしたもの。「試してみます?」と言うエリカに従って広場のベンチに座って待つ。我々は1つだけもらった。パリパリのトスターダの上にセベチェが山盛りだ。その上からサルサとライムをさらに絞ってふりかけて口に入れる。ワダスはこのパリパリのトスターダは苦手だが、乗っかった具はなかなかに美味い。


 さらにエリカが「あそこのアボカドのパレタ(アイスキャンデー)も人気よ」と言うので角の店に寄った。我々が買ったのが最後のアボカド・パレタだった。「ラッキー!」
 エロンガでランチという目的だけでやって来たのであとはやることがない。コンビに乗って帰路につく。エリカが助手席に乗ったが途中から後ろに移ってきた。


 コンビを降りたのはボデガ・スーパーの横。コンビ代は一人19ペソなので57ペソを支払った。
 家が近いエリカとそこで別れ、銀行へ。ATMで現金を下ろした。今回はスムーズにできた。
 スーパーには寄らず、途中でホルヘの店でタバコを買って徒歩で帰宅。5時すぎだった。
 帰ってみるとキッチン、トイレともに水が出ない。庭の散水用の蛇口から水を出し、20lのポリタンクにためてトイレ用にした。しばらくするとバチェとマルタが帰ってきた。「水が」と言うと早速バチェが点検。我が家の貯水タンクは散水用蛇口の横にあるコックをひねって上に上がるようになっていると言う。バチェがコックをひねるとしばらくしてタンクから溢れた水が天井から落ちてきた。ところが、キッチンの水は出ない。
「この間きた雨漏り修理の職人がタンクのコックを閉めて帰ったみたいだ。まったく、どうしようもない職人たちだ。どうだ? これで出るはずだが」
 果たして水が出た。
「こんな問題はずっとなかったんだがな」とバチェ。
 メスカルを飲みつつ、Youtubeの「メキシコ路上食べ物屋巡り」みたいな番組を見た。中国系アメリカ人らしい男がいろんなタコス屋を食べ歩くというもの。メキシコ料理は奥が深いなあ。

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