メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

8月16日(金) 前日 翌日
 家の中の整理も旅荷物も全て準備が終わったところでマルタがやってきた。
「今日はギャラリーに客があるので、あなたがたを見送りできない。ごめんね。ここでお別れ。あなたたちがいてくれてとても楽しかった」とハグ。
 10時40分、バチェが車でバスターミナルまで送ってくれ、そこでハグして別れた。
「僕はマルタと出会ったおかげで結局ここに落ち着いたけど、政治やマフィアなどメキシコのいろんな悪い面も見てきた。息子のハイクがカナダへ移り住みたいというのも分かる。アルメニア人の僕がなんでこんなところにいるのかと時々不思議に思うけど、ま、ある土地に住むかどうかは愛だな」と車中のバチェが話した。
 バチェもマルタもとてもいい人たちで、彼らが大家で本当に良かった。彼らを紹介してくれた咲子さんにも感謝。その咲子さんたちも明日メキシコシティに引っ越す(予定)。ということはパツクアロから一気に日本人が一人もいなくなる。ここに滞在中、咲子さん以外の日本人を見かけたことがない。観光地としてはそこそこ有名なのだが果たしてこれから誰かやってくるのか。


 メキシコシティ行豪華バスは11時15分発の予定だったが、15分遅れで出発した。2階の最前列を予約したので眺めは最高だった。目の前には飛行機の座席のように小さなディスプレイがあり、乗客には一人一人にイヤフォンが手渡されるが、高い場所からの広い視界のおかげで必要ない。
 バスはモレーリアのターミナルで止まり新たな乗客が乗り込んできた。1階にこれも航空機内にあるようなトイレがあり、途中休憩なしに一気にメキシコシティへ向かう。道中の景色が素晴らしい。程なく左手に大湿地帯が現れ、去年、交通事故の渋滞で1時間ほど止まったことを思い出した。象君と夕紀が事故現場まで歩いて見に行ったのだ。


 バスは次第に谷間を見下ろす道に入りシティが近づいてきた。噴火しているはずのポポカテペトル山を探したが、雲の下にあるのか見えなかった。
 5時すぎ、オブセルバトリオ西方面バスターミナルに到着。ターミナルのプリペイド・タクシーのカウンターでホテルまでのタクシーを呼んでもらおうとしたが「1時間はかかるわよ」と言われたのでタクシーは断念。地下鉄で行くことにした。手元にはメトロバスのカードがあったのでそれを使った。地下鉄は初めて乗るのでカードで2人乗るのにどうしたらいいか戸惑っていると係員らしいおっさんが手伝ってくれて無事乗れた。ここからホテルまでは地下鉄を乗り換える必要がない。車内は猛烈に混んでいた。メキシコシティの地下鉄はスリが多いと聞いていたのでちょっと緊張はしたが、なんの問題もなかった。1号線の11番目の駅「Pino Suarez」で降りる。階段を上ると広場になっていて物売りなどが多かった。


 さて降りたはいいが、ホテルの方向がわからない。地図で見れば駅から歩いてすぐのはずだった。青年にホテルのある通りを尋ねると、たちどころに「あっちだ」と教えてくれた。信号を渡って「あっち」へ歩くとすぐにホテルが見えた。
 ホテル界隈は商店が多い。特に靴屋が目立つ。歩道を歩く人も交通量も多い。大都会だ。
 パスポート提示も不要で簡単にチェックインし部屋に案内された。なんとエレベーターがある。508号室。3人は寝れるベッド、テレビ、清潔なバストイレが気持ちいい。料金は1泊700ペソ(4200円)と安くはないが、以前に泊まった安いホステルでヒーヒー言いながら最上階まで上ったことを考えると雲泥の差だ。
 荷物をほどき外に出て近くのタコス屋を探した。Youtubeで見た海鮮タコス屋が近所にあるはずだ。そのあたりに行って見たらあるにはあったがシャッターが閉まっていた。また我々のジンクスか。行こうとする目的の店を思って現地に行くと閉まっている、というジンクス。というわけでホテル近くの客があまりいない店でブリトー40ペソを分けて食べた。ブリトーというとパツクアロのアサデロ食堂の巨大なものを思い浮かべていたが、出されたものは案外小さい。


 さらに追いタコスを求めて街を歩いた。道の両側にテント張りの店が並ぶ通りは薄暗く、道路にゴミが散乱する通りに入った。「ここは気持ち悪い」と久代さん。なんとなくソカロ方面へ歩いたつもりだったが、警官に道を尋ねると方角違いだった。
 ソカロの大聖堂が下からの照明で夜空に浮かび上がっていた。大広場は大テントで埋められていた。何かの大きな催し物なんだろう。広場を取り巻く国立宮殿やホテルのライトアップが美しい。数人の若者が太鼓に合わせて踊っていた。ソカロをぐるっと回ってホテルのあるPino Suarez通りで見つけたタコス屋に入る。細長い店内は客で埋まっていた。我々は奥のテーブルに座った。ここにはビールもあった。パストール・タコス5個で42ペソ。パストールというのは味付けした薄い豚肉を何枚も重ねて円筒状にし、それを外からの火で焼き上げたスタイルの料理で、中東でよく見るカバブのことだ。レバノン移民から教わり定着したという。勘定は122ペソ。えっ、と思ったが、ビールが1本40ペソもしていたので納得。


 近所のセブンイレブンで、ミルク、ドーナツ、ビールを購入して10時頃ホテルへ戻った。

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