メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

8月27日(火) 前日 翌日
 下痢だった。

 練習後、外に出る。快晴で日差しが強くうんざりする暑さだ。スペイン人の要塞跡や人通りのない寂れた街路を歩く。パッと見は日本の田舎町のような雰囲気でもある。学生たちの集団がコロニアル風の2階建の堂々とした建物の入り口に固まっていた。学校だろうか。海軍博物館の中庭に、小型飛行機、ヘリコプター、大砲、戦艦の円材部分、六分儀の大きな鉄のオブジェが見えた。


 日記を書くにはホテルの部屋は暗すぎる。近くのイタリアン・カフェに入って日記を書いた。冷房が効きすぎて寒い。久代さんが鼻をグスグスし始めた。温度差による鼻炎だ。1時間ほどいてホテルに戻り、日記の続きを書いたが、下痢と膨満感が治らないのでベッドで横になる。


 5時頃、再びセントロへ。久代さんは、広場に面したOXXOでビールと、隣のパン屋でミートパイのようなパンを買ってきた。広場のベンチに座って何気なくぼんやり辺りを眺めていると、市役所らしい建物から椅子が運ばれ並べられているのが見えた。真ん中に一定のスペースを置いて両側に白いプラスチックの椅子が並べられた。何かの儀式が始まるのか。そのうち楽器と譜面台を持った男たちが椅子に座り、小太りの中年の男が指揮をとって演奏を始めた。最初の曲は「ゴッド・ファーザー」だった。そのうち、バンドの対面に座っていた老人のカップルが手を取り合って踊り始めた。


 トマトや玉ねぎを細かく刻んだものに酢漬けの魚が入った「セビチェを食べたい」と久代さんが言うのでレストランRegisのテーブルについた。ブラスバンドや踊っている人たちがよく見える席だ。


 隣には昨日の食堂La fonda de las Gordasで笑いを取っていた4人の男たちが座っていた。ワダスの横に座っていた男が「どこから?」と英語で聞いてきた。日本からだと答えると「俺たちはウクライナだ。6000トンのコンテナを運ぶ船に乗っている。今日がメキシコ最後の夜なんだ。モロッコ経由でアメリカから来たが、明日は再びアメリカに向けて出航し、その後は日本に寄る予定だ。どこの港? 分からない。アメリカの積荷によるからね」。彼らのところに頻繁に物売りが近づいてくる。偽物のブランド時計、葉巻、サングラス、飾り物、ピーナツ売り、寄付金集めなどなど、次から次にやって来る。ついでに我々の席にも来るが、買う気がないと分かると立ち去った。時計屋があまりにうるさいので「ワダスのはめている時計と交換しよう」と言うと、ワダスの時計をじっと見て首を横に振る。ダイソーで買った安物の時計だと見破られたようだ。
 出てきた料理をつまみながら、あまり上手ではないブラスバンドの演奏に合わせて踊る数組の老人たちを眺めた。「ベラクルスはどこもかしこも音楽だらけだ」とエリカが言っていたのを思い出した。確かにブラスバンドの演奏はあるものの、どこもかしこも、という感じではない。どこかそういう場所があるのだろうか。チキンサラダもセビチェもなかなかに美味しかったが、値段もいい。ビール、チップ込み285ペソだった。
 10時前にホテルに戻りベッドに横になる。

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