2017年9月3日(日) ネパール2週間よれよれ日記

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 5時起床。睡眠の質がイマイチだ。布団にダニがいるのか、あちこちが痒い。6時半まで日記を書いた。

部屋から見た早朝の景色


 7時、長野くんとミナ・ディディ茶店へ行き、井上・ヴィシャールと合流して朝食。チャイ、揚げて味付けしたジャガイモ、ゆで卵の定番メニュー。


 部屋に戻ってトイレ、シャワー、洗濯。シャワーの水が冷たい。

エヴァ

 井上くんが一人の西洋人女性を連れてマガル家にやって来た。
 オーストリア人女性のエヴァ(Eva Fleisner)。チロル出身の小柄な青い目の女性だった。現在はウィーン在住という。カトリック系NGO「カリタス」に所属しカトマンズ震災支援プロジェクトの事務をやっていた関係でネパールには何度も来ている。今回が7度目だという。ドゥルパド声楽に惹かれてボーパールのグルクルに行ったこともあるが、グルから井上くんに教わるように言われたという。こうして井上・ビシャールと同一行動をとる人間がまた一人増えた。彼女はワダスの滞在の最後まで同じ行動をとることになるのだが、一貫して控えめで、自ら話を始めることなく、我々の後ろに黙って付き随っていた。
 10時半に井上・ヴィシャール部屋で集合しプラモード・タクシーに乗り込んだ。今度は井上・ヴィシャール、長野、エヴァ、ワダスの6人だ。後部席で3人に挟まれた井上くんは尻を浮かせていた。

Smile幼稚園

創設者のミラと

 着いたのはパタン市内にあるSmile Kindergardenという名の幼稚園。建物の密集した市内の一角の真新しいビルだった。
 3階建ビルの1階が幼稚園になっていた。数人の子供たちが遊んでいたが、井上・ヴィシャールを見つけて近づいて来た。保母らしい若い女性3人が世話をしていた。
 ちょうど11時、ビニタイル張りの上に描かれた楕円形の白い線に沿って2歳から3歳の園児たちが並んだ。音楽の授業開始。長野くん、エヴァも授業を見学した。
 まず、井上くんとヴィシャール二人の歌を聞く。ラーガはジョーグ。ついでヴィシャールの巧みな誘導で子供たちがサレガマパダニサと声を揃えて歌った。中にはただ叫んでいる子もいたが、案外みんな素直に歌っていた。その姿が愛らしい。

 ひととおり子供たちが歌い終わると、ヴィシャールが「グルのバーンスリーを聞きましょう。バーンスリー知ってるよね。クリシュナが吹いているやつだよ」と子供たちに告げた。ワダスはタゴールソング「ボションテ」と小さな笛でバティヤーリーを吹いた。みな熱心にワダスを見て聞いていた。12時、授業が終わった。

長野くんとエヴァ 全員で記念写真


 この幼稚園を創設したのは、ミラという40代のシャカ族の女性だ。気品のある顔で流暢な日本語を話した。阪神淡路大震災の時、横浜国立大に留学していた。彼女は帰国後、カトマンズの日本大使館に11年勤めた後、この幼稚園を始めたという。紅茶とビスケットをいただきながらしばし歓談した。時折りやんちゃな男の子が我々の場所にふざけて近づいて来て戯れる。幼稚園入り口で記念写真の後、街の食堂へ。

タカリ・キッチン

 食堂の名前は「タカリ・キッチン」。タカリというのは西ネパールの部族の名前で、料理が得意とされているそうだ。部族の人口は数万人くらいしかいないが商売上手で金持ちが多い、と井上くん。
 タカリの定食を食べる。これが実にうまい。ダール、マトンの煮付け、ゼンマイ、ほうれん草のような菜っ葉の煮付け、ヨーグルト、ジャガイモなど。おかわり自由で、味付けがいいのでつい食べ過ぎてしまった。
 長野くんが昨日買ったバーンスリーのケース用にと水道パイプ屋に立ち寄った。適当な長さに切ってもらって150ルピー。ヴィシャールの実家は建材屋で材料について詳しい。


 井上・ヴィシャール部屋に戻る。ヴィシャールは、パイプのケースにビニールテープと新聞で両端を包み長野くんのバーンスリーを入れた。長野くんはプラモード・タクシーに荷物を積んで空港へ向かった。
 マガル家の部屋に戻って洗濯物を確認。ほとんど乾いていなかった。途中雨が降ったこともあり、この時期なかなか乾かないようだ。
 隣の部屋で練習するエヴァの声を聞きながらしばし昼寝。

ラメーシュ青年のレッスン

 井上・ヴィシャール部屋でラメーシュ青年のレッスンをした。頭の毛がほとんどないので何歳かわからないが、30代後半かもしれない。彼の話をしばらく聞いた。
 彼は子供たちにバーンスリーを教えて生活しているという。ラメーシュやナゲンドラも含め、ほとんどのネパール人バーンスリー奏者は、カトマンズ大学の教授でもあるジーワンというグルに習っている。しかし、きちんとした古典の基礎を教わるわけではない。長年習っていても、基礎的なことはあまり知らない。常にビブラートをつけたり、目的の音を出すのに下からすくい上げるように吹くといった特有の癖は、グルの影響かもしれない。
 日常練習のための課題、ロング・トーン、順行逆行スケール、アランカールなど。ミナ・ディディ茶店でチャイ休憩の後、アーラープの進め方を教えた。課題を出すと「これはできない。半音がわからない」などと言い訳をする。明日の3時にまた来ることになった。
 井上・ヴィシャール、エヴァの夕食を見ながら雑談。
 9時過ぎ、マガル家の部屋に戻り、10時、就寝。部屋が暗いので本が読めない。

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