メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

4月27日(土)  前日  翌日
 7時起床。9時頃、水売りが門の外から声をかけてきた。
「アグア〜」
 道路には20リットル入りボトルが詰め込まれたトラックが停まっていた。ボトルを2個購入し、水屋に180ペソ支払った。その後バチェが「君たちに140ペソ借りてる。20リッターの水の値段は20ペソなんだ」と140ペソ差し出した。というわけで我々が支払ったのは40ペソだ。180ペソというのはかなり高いと思ったが、ボトル4個分で、かつボトル代コミの値段だったようだ。


 練習の後「いつも何度も」を復習しているうちに、咲子さんたちとの約束の1時になったので門の外で待った。15分ほど遅れて彼らがやってきた。エスパルタの運転する大きな青いバンには、シズ、ジゲン、ミヤビ、咲子さんが乗っていた。後ろの荷物室には自転車もあった。紙芝居で使うのだという。今日は咲子さんの紙芝居、みちこさんの着物の着付け、ワダスの演奏があるのだ。


 車は高速に入り、猛スピードで今日の公演会場があるモレリアへ向かう。車中は子供達がはしゃぎ、なかなかに賑やかだ。ミヤビが意味不明の言葉(多分スペイン語)で何か話しかけてきたり、シズちゃんとジゲンにスペイン語の単語を聞いたりした。
「道路ってなんていうの」「カレテラ」「うんこは?」「カカ。ガカル」「ポポ。おしっこがピピ」
 排気ガスの匂いが強くなり、モレリア市街のバイパスに入ると渋滞になった。遠くにカテドラルの高い尖塔が見えた。道路沿いには、大きなショッピングモールなどが軒を並べていた。ウォールマートやカジノ、ピザ屋など。ガソリンスタンドで小休憩のあと会場に向かうが、エスパルタは道に自信がないらしく、行き過ぎて戻ったり、人に尋ねたりしてようやく会場に着いた。3時半過ぎだった。位置的には、パツクアロからモレリア市街を通り越して東へ向かったはずれだった。


 会場は、ミチョアカンお祭り広場と訳すべきかCentro de Espectaculos de la Expo Fiesta Michoacán。市街地から離れた丘陵地に忽然と現れる広大なテーマパークだ。だだっ広い駐車場からモダンなデザインの大きな病院の建物が見えた。
 地酒のメスカル、コーヒー、ジュース、衣類、民芸品などの地元産物品の並ぶ大きな建物、テント張りの飲食店、観覧車などが中央の噴水を囲んでいた。土曜日だからか、家族づれなど入場者の数が多く、込み合っていた。館内放送や店から流れる音楽が混じり合い騒然としていた。
 スタッフに案内された我々のパフォーマンス会場は、入り口に近く、幅、奥行きともに5メートルほどの、白い半円形の空気チューブでできた小さなものだった。その半円形の舞台に向かって折りたたみ椅子が並べられていた。舞台のテント地の床が汚れているので、エスパルタが汚れを落としていた。真ん中に自転車、荷台に紙芝居の演台を作る。


 程なく、着物姿のミチコさん、小林さんが合流した。彼らのいるウルアパンからここまでは約1時間だという。
 公演時間の6時半まではたっぷり時間があるので店を見に行った。メスカルやアロエの苦いジュースを試飲し、飲食物店をひやかし、コーヒー(500gで80ペソ)を買った。周辺には、タコスやクレープ、綿菓子、トウモロコシ、ジュースなどの屋台が並ぶ。
 半円舞台に近いレストランでビール。お腹が空いていたので何か食べようと思ったが、どれも値段が高い。そこでは何も食べず、小さな屋台で肉入りタコス18ペソを食べる。


 我々のいる場所から近い太い木の柱が立っていた。赤い衣装の青年が一人ずつ頂上の木枠にロープで引き上げられる。その頂上からロープで足首をつなぎ逆さまになった4人の男が回転しながら降りてくるパフォーマンスがスリリングだった。


 公演時間が近づき、場内アナウンスで我々のパフォーマンスの告知があった。子供づれの人たちが客席に座り出す。
 咲子さんの合図でまずワダスが小さな笛で祭囃子もどきを吹き始める。そこへ咲子さんが客席後ろから登場し舞台に立ち、紙芝居「大きくなあれ」を始めた。最前席の親に抱きかかえられた子供達が、咲子さんのナレーションに反応し手を振ったり声を出す。舞台に呼ばれた小さな女の子が、絵に描かれたケーキを客席に放る。和んだところで紙芝居の説明。大人たちも熱心に聞いている。ついで「ごきげんのわるいコックさん」と続く。


 ミチコさんとワダスが紹介され着付けショーが始まった。ミチコさんが咲子さんに着物を着付けていくのを観客が興味深そうに見守る。特に若い女性たちがじっと見ていた。ワダスはBGMとして「秋田長持唄」を吹いたり歌ったり、「祖谷の民謡」を吹いた。着付けられた着物姿のまま咲子さんが「雪女」と顔面紙芝居「頭山」を演じた。「頭山」では皆の笑いをとっていた。最後はワダスの「いつも何度も」。昨日練習したのに曲の細部を忘れてしまったが、何とか終える。
 1時間ほどのパフォーマンスが終わると記念写真をせがまれた。程なく、小林さんとミチコさんが帰っていった。彼らからウルアパンの着物展示をぜひ見て欲しいと言われた。
 エスパルタと子供達が遊んでいる間、咲子さんと我々は近くのレストランでビールを飲んだ。音楽がうるさくて会話も難しいほどだ。


 子どたちと合流し帰途につく。途中、来るときに入ったOXXOに立ち寄るエスパルタ。実は来るときにクレジットカードで支払ったのだが、そのカードを取り忘れてしまったのだという。カードは無事戻ってきて一安心。彼は訪日して間もなかった頃、東京の電車内にバックパックを忘れたことがあったと、咲子さん。その時はパスポートも含め戻ってこなかったという。「ビールも買ってくる」と行っていたが「忘れた」とエスパルタ。で、途中のOXXOでコロナ・ライトのロング缶を2ダース買った。170ペソ(1020円)。
 帰宅したのは10時すぎだった。母屋は真っ暗だった。
 久代さんがチョリソーを食べつつビール。ワダスはチーズとメスカルを飲み、12時頃ベッドに入る。

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