メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

7月21日(日) 前日 翌日

 この日記を書いている時に、こちらよりも1日早い日本で行われた参院選挙の結果が出ていた。れいわ新選組の2議席獲得はちょっとフレッシュだったが、結果は案の定、自民が過半数を占め暗澹たる気分になる。ノーテンキにメキシコでだらだら生活をしている我々には日本の政治状況から直接影響を受けることはないが、ものすごく内向きで目の前1mmの利害判断しかできない選挙民の判断結果には愕然とくる。ま、昔からそうだったと言えるが。
 さて一昨日、昨日と街に出かけたり、パーティやパフォーマンスがあったりしたので今日はゆっくりしたかった。ということで先週行って感動したツルムタロのおばさん食堂へ行った。幸い出かける頃は雨が降ってなく、雲の隙間からのぞく強い陽光で汗ばむほどだった。湖の方角にはいつも見る高い山と農地や住宅が見えた。


 ツルムタロまでは主に鉄道の上を歩いた。やがて後方から汽笛が聞こえ、長い車両が通過していった。ジーゼル機関車の腹にはKansas City Southern Railway Mexicoと書いてあった。メキシコの鉄道のほとんどが今やアメリカに買われてしまった証拠だ。さらに歩いていると今度は向かいからも列車がやって来た。ここは単線で先ほどとは逆行きなので、どこかこの近辺にすれ違い用の複線区間があるのだろう。日中は滅多に列車は通らないが、どういうわけかこの日はそれほど時間をおかずに両方から通ったことになる。箱型の背の高い貨物列車は82両あったと、数えた久代さんが申し述べる。「機関車を入れて83。素数でよかった」。街道の横の坂に1頭の馬が草を食べていた。撮影しようと近づくと動いたが、ロープでつながれていてすぐに引き戻されていた。


 相変わらず人っ気の少ないツルムタロの街を歩いた。歩道の上に住宅まで上がる階段が後から加えられていて歩きにくい。歩道は公共物のはずだが、一部私物と化している。メキシコの魅力はこのようなアナーキーな大らかさにあるのかもしれない。日本だと即座に撤去を命じられるだろう。
 教会のある中央広場に出た。ここでもほとんど人を見かけない。広場に面した食堂の入り口に番犬のような犬が横になって日向ぼっこしていた。犬をまたいで中に入ろうとしたら木枠の扉が閉まっていた。奥のキッチンからは煙が上がっていて、女性たちが調理していたのが見えたので扉を開けて中庭のテーブルに座った。先週も見かけたかつての咲子さんの料理の先生ドーニャ・ミレジャさんと若い女性たちは準備に忙しそうだ。ミレジャさんは「ちょっと待ってね。今やってるから」と我々に告げる。
 我々はビールを飲んで調理の様子や中庭の木々などを眺めながら待った。そのうち親子連れがやって来たが「あと30分よ」と言われて「じゃその辺を歩いてくる」と出ていった。入れ替わりのように次々に客がやって来てキッチンを見に行く。10セットあるテーブルセットのうち6セットは客で埋まった。車でやって来るくらいだから皆そこそこの金持ちに違いない。数人のグループがキッチンから料理をもらって運んだのを見て、我々も注文しに行った。


 頼んだのは、チキンのコンソメスープ1皿、豚肉の緑サルサ煮、煮豆、チレが1皿。透明なスープには鳥の足、ズッキーニ、人参が沈んでいる。薄い塩味でなかなかに上品な味だ。先週感動した豚肉がやはりうまい。中にチーズなどが詰められたチレもうまかった。ビールは結局3本飲んだ。ここは何を頼んでも1皿70ペソみたいだ。ビール1本が20ペソで3本頼んだので勘定は全部で200ペソ(1200円)。


 先週と同じコースを歩いてアイスクリーム屋へ行き、ピスタチオとメスカル味のアイスクリームを食べた。うまいなあ。メキシコはアイスクリームが結構いけてるかもしれない。値段も安い。22ペソ(144円)のカップでも量はかなりあった。表の日覆いの下で食べていたら雨が降り出してきた。空は暗く、雨の勢いが増してきた。店の横でトラックの荷台に乗せた果物を売っていた男が慌ててカバーをかけていた。


 路肩でセントロ行きのコンビを待つがなかなか来ない。線路を超えた交差点まで行き、食堂の屋根の下でしばらく待ち、ようやくやって来たので飛び乗った。満員だった。ワダスは立っていたのでどこを走っているか分からないが、渋滞の中をゆるゆると走った。モレーリアとパツクアロを結ぶ街道は往復とも車で埋まりスムーズに走れない。
 ボデガ・スーパーでコンビ(20ペソ)を降り、スーパーへ。ビール12本、ミルク、いちご、玉ねぎ、洋梨、菓子パン2つ、ソーセージ、伝統菓子、インスタント・コーヒー、タバコ(49ペソ)。全部で331ペソ(1986円)。
 両替も兼ねて向かいの薬屋でビタミンBコンプレックスがあるか尋ねたが、男の店員が持って来たケースにはビタミンとは書いていない。ビタミンBと言ったけど、通じてなかったようだ。
 再びコンビに乗って帰宅。5時だった。
 菓子パン、ソーセージなんかを食べつつ、一昨日と昨日の日記を書き終えて2日分を一気にアップロードした。久代さんはひとりで宿題。彼女の読み上げるスペイン語を聴きながらこの日記を書いているうちに8時近くなった。こうして今日もつつがなく過ごすのであった。

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