メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

7月23日(火) 前日 翌日
 今日で我々のスペイン語レッスンも最終回となった。これまでに44回のレッスンを受けた。かなりの量の単語や表現法を習ったはずだが、目の荒い我々の脳の網を通り抜けていったものが多い。エリカ先生はこれまでの経験もあるし、英語と対比しながら説明してくれたので理解しやすかった。とはいえ語学習得の方法は個人によって千差万別だ。エリカは、我々のこれまでの経験や性格を把握し、どこまで記憶し、理解し、どこまで応用できるかを見極め、退屈にならないように適宜話題を変えるといった柔軟な方法で辛抱強く取り組んでくれたと思う。しかし、我々は夫婦なので朝から晩まで日本語で会話をしているし、毎日スペイン語で会話せざるを得ない地元の人々の知り合いもいない。いてもパーティーの時などにちょっと話をするだけで、接触する時間は限られている。家を貸してくれた大家さんにしても、スペイン語が母語ではなく英語の方が得意なのでどうしても英語で話してしまう。また、必要に迫られた人々と違って、スペイン語習得の熱意も強いとはいえない。どちらかというと時間つぶしに近いスペイン語学習だった。とはいえ街で買い物や食事をしたり、バスに乗ったりするにはそれほど支障がないレベルにはなったので良しとするか。
 最後のレッスンは、久代さんとワダスが様々な疑問詞を使ってお互いに質問しあう、これまでのテキストの確認とおさらい、エリカの、モレーリアには美味しい中華麺がある、ミチョアカン州の太平洋岸の海岸は、カンクンなどのようにアメリカ人に毒されていなくて物価が安いし海も綺麗だ、そしてイランの音楽は素晴らしい、アフガンもいいよ、トランプも我が首相も似たようなもんだ、などといった雑談で、昨日の宿題には触れなかった。
 お礼の意味も込めてエリカを食事に招待することにした。
「あなたの食べたいもの、行きたいレストラン、どこでもいいよ」
「嬉しい。うーん、セントロかな。とりあえずスルティドーラかな」
「決まった。では歩いてセントロまで行きましょう」
 ということで家を出たが、やはり空模様が怪しい。結局コンビでセントロへ出て「スルティドーラ」に入った。店内はどのテーブルも客で賑わっていた。アルコールを取らないエリカがオレンジジュース、我々はグラスワインを頼んで料理を待つ。その間、エリカと雑談。


「今一番行ってみたい場所は?」
「メキシコにはまだ行っていないところがたくさんある。特に南のチアパスに行ってみたいなあ。もちろん外国にも行きたいけど」
「この間から家にブルース・ハーモニカのミュージシャンが泊まったの。素晴らしい音楽家だけど、この辺りではブルースを聞く人はいないのよね。お婆さんはよくクラシックを聴きながら絵を描いていた。彼女はピアノも弾くので特にショパンやヴィバルディとか。ベートーベン、シューマンなんかも聴いてた。バッハ? もちろん、彼女が最も気に入っていたけどちょっとシリアスなのでモーツァルトをよく聴いてた。・・・カナダにいる頃は、チョコレートとかハンバーガーとかガンガン食べていたので今より20kgも太ってたのよ。今のお母さんのズボンも履けないぐらい・・・」


 満席に近いので遅めに料理がやってきた。エリカが牛のハラミのアラチェラArrachera、我々は二人分セットになったミックスグリルみたいなの。ソーセージ、チキン、アラチェラ、チーズ、食用サボテンのノパル、玉ねぎなどがてんこ盛りの皿だった。肉類が美味しい。もっとも値段も良かった。エリカのアラチェラが195ペソ、我々のが345ペソ。チップを入れて全部で800ペソ(4800円)。


 店を出て、3人で小広場の市場から郵便局や市役所の通りの坂道を歩いた。「昔は危険な地域だったが今は整備されて住みやすくなった。物価も家賃も安い」とエリカが歩きながら言う。
 ボデガに近づいたとき、雨が降り出した。ここから近道で帰ると急ぎ足で家に向かうエリカと別れ、コンビで帰宅。

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