メキシコよれよれ日記 (2019年4月12日〜9月10日)

7月24日(水) 前日 翌日
 スペイン語のレッスンがなくなってみると、解放感と同時に生活から心棒が抜けたような気分だ。これまで月曜日から木曜日は、正午からの2時間のレッスンを中心に回っていた。日記書きや練習は午前中の定番作業でこれからも変化はないものの、レッスン中はエリカの地元やメキシコ全般に関する雑談からいろんな情報を得ていた。そうした情報がある程度、我々の午後や週末の行動の一つの動機になっていた。それがなくなって、大げさにいえばメキシコ社会との一つの接点が途切れることになる。またエリカは英語の先生でもあったので、彼女の英語の説明によるレッスンは我々の英語の訓練にもなっていた。8月の移動まで、レッスンのない週日の過ごし方は当たり前だけど自分たちで考えなければならない。
 今借りている家の家賃は8月15日まで前払いしているので、16日にここを出る予定にしている。今のところざっと計画しているのは、16日〜19日メキシコシティ、19日〜25日?トペステランと多分プエブラ、26日〜30日ベラクルス、30日〜9月5日ハラパ、9月5日〜9日メキシコシティ、9月9日の朝LA経由で帰国、という段取り。
 パツクアロ市街や日帰りできる周辺の村や町をある程度歩き回ったので、特にどうしても行きたい場所は思いつかない。近辺で味わえる料理もある程度想像がつくようになったので、どうしても食べてみたいものも特にない。地元の博物館や遺跡にもちょっと触れたし、たまにやっている音楽ライブなどのイベントもあるがそれほど興味は湧かない。メキシコシティのような大都会であればまだ触れていないものや食べ物もまだまだ探索可能のように思えるが、ここパツクアロはあまりに田舎で刺激に乏しいことに気がつく。しかも雨季ということで、散歩に出るにも常に空模様を気にしなければならない。メキシコの田舎でスペイン語を学ぶという当初の滞在目標はクリアしたけど、他にはこれといってやることがないのだ。
 とりあえず飯しか思いつかない。通奏低音のように居座る膨満感はあるものの、久代さんの「ツルムタロへの手前に食べ放題の食堂がある。そこへ行くのだ」の提案で散歩がてら出かけることにした。
 玄関を出ると、我が家の平屋根の上から3匹の猫がじっと我々を見ていた。屋根に置かれた猫小屋に飼われているのは白黒のメス猫だけだが、いつしか茶色の猫と真っ黒な猫も加わり、屋根伝いに高所を動き回るようになった。


 まず船着場に行ってみた。夏休みに入ったせいでハニツィオ島へ渡る人たちが桟橋で列を作って待っていた。土産物屋や食堂にも多く人がたむろしていて賑わっていた。土産物屋にも人が群がっていたが、サングラスだらけの店が目立った。


 エスタシオンから線路沿いに40分ほど歩き、モレーリア街道のエプロン食堂El Mandil(mandilはエプロンの意味)へ。交通量の多い街道沿いの食堂だ。周辺に建物はあまりなく、店の前にかなり広い駐車スペースがある。車でやってくる客がほとんどなのだろう。徒歩で来た客は我々くらいだ。


 倉庫のような大きなトタン屋根の店内はかなり広い。ここはブッフェの店で、客が自由に料理を選べる店内屋台の島が4箇所にあった。スープとサルサ類、肉や野菜の料理の入った大皿、メロン、スイカのあるデザート、コーヒー、ジュース類のある飲み物。客はそこから好きなものを皿に盛って食べる。入り口には一人110ペソとあった。
 ネットでこの店を見つけて食欲を育てていた「放題」好き久代さんは料理をてんこ盛りにした皿を前にしてビールをグビリ。羨ましい。それに刺激されたワダスは膨満感の不愉快さを無視して料理を口にした。味は取り立てて良いというわけではないが、それなりに美味しい。食べ放題はどうしても食べすぎる。苦しいほど食べた。勘定は定額の220ペソとビール代50ペソで270ペソ。チップ込みで300ペソ(1800円)だった。


 最初はがらんとしていた店内はスタッフと我々と他に1組の客だけだったが、家族づれの客が増え、テーブル6セットが埋まった。食べ終わった頃、激しい雨が降ってきた。空全体が暗く当分雨が止みそうにない感じだ。雨の中、新たな客もやってきた。入り口には駐車する車が雨に打たれて並んでいるのが見える。
 食べ放題にかも関わらず、他の客を見ると案外少量で済ませている。
 しばらくして小雨になってきた。5時過ぎだった。やって来たコンビでボテガ・スーパーまで行った。ビール、菓子パン、タバコ、ライターを購入しコンビで帰宅。
 帰宅すると、バチェの息子ハイクが来ていた。バチェがノックしてきて言う。「ハイクの犬フローを裏庭に放してある。フローはメスで10歳。吠えたり噛んだりはしないけど、一応伝えておくね」。

前日  翌日