2011年9月9日(金)

 昨日(8日)夕方、イスタンブールのネイ奏者トルガ青年を、神戸空港発のベイシャトルに乗り込むところまで見送った。カーヌーン奏者トゥランのビザ問題やら、台風12号による庭火祭コンサートのキャンセルなど、いつになく波乱にとんだトルコ・シリーズは昨日で終った。久しぶりにたっぷりと寝た。
 メールのチェック、トルコ・シリーズの残務整理、寝転び読書、練習といった通常のだらけた時間を過ごしているうちに暗くなっていた。

関空

 午後8時10分、家を出た。神戸空港のベイシャトル待合室に尺八奏者の石川利光さんの姿が見えた。リムジンバスの予定だったが変更したという。9時40分、国際線出発ロビー着。

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 橋本、池上、和田、八尾、お坊さんたちはすでに待っていた。オッサンだけのドイツ旅行団の全員がこれで揃った。
 南は黒の半袖ポロシャツに白のチノパン、ベージュのソフト帽。焦げ茶のボーダーリボンがちょっと洒落た帽子だ。ポシェットを左肩から斜にかけた姿はまさにオッサン旅行者ではあったが。白地に黒い文字の入ったTシャツ、灰色のジーンズ、同系色の運動靴、黒いジャケットという出で立ちの大柄な河合。腰の黒い小さなウェスト・ポーチがこれから海外へ向かうサインだ。灰白黒横ストライプの長袖にブルージーンズ、茶のバックスキン靴の橋本は、その口調と同様、いかにも軽装だ。ていねいに剃られたスキンヘッドが清々しい。黒い小さめのホイールつきキャリングケースを指差し、荷物の小ささを自慢する。茶の入ったグレーの半ズボン、黒の無地のTシャツ、真っ青な靴ひもが目立つ白いスニーカーの池上も軽装だ。イスタンブールのときは黒いサンダル履きだった。ちょっとその辺まで、を強調している。和田は、薄手の綿の黒い上下、襟首の灰白黒のマフラーが小粋だ。大きなスーツケースとえんじ色の頭陀袋はいつものスタイル。ベージュのチノパン、黒のTシャツの上から黒のジャッケットという八尾は紺のベレー帽がアクセント。こころなしかなよっとして平安貴族風に見える。石川は白いワイシャツに黒のジーンズ。最も地味だがどことなく洒落ている。口数が少なく毅然として、武士のような雰囲気だ。ワダスは黒のジーンズ、白い無地のTシャツの上に真っ黄色のフード付きジャケット、ブルージーンズのキャップという普段と変わりない格好だった。持ち物は背中のリッュク一つ。今回も荷物の量は誰よりも少なかった。
 七聲会のメンバーに海外旅行の緊張感はなく、ちょっとした温泉旅行団体のようにも見える。
 セキュリティーチェック後、免税店で腕時計の景品つきタバコを購入。2500円。南が約2万円ほどするヘネシーXOを買おうとしたが、河合に止められる。
「ドバイ空港で没収されるかもしれませんよ」
 一昨年、アムステルダム空港で日本酒を没収されたことを思い出した。最近は機内に液体を持ち込むのが難しくなっているのだ。

エミレーツ便

 われわれのドバイ行きエミレーツ便は予定通り11時35分に離陸した。ドバイ到着予定時間は午前5時5分。ドバイとは5時間の時差があるので、正味のフライト時間は10時間半ということになる。ヨーロッパ直行便であればどの都市にも到達できる時間である。主催者にはルフトハンザのフランクフルト直行便を手配するよう頼んだのだが、最終的には数時間も余分にかかるエミレーツ航空便になっていた。おそらくもっとも運賃が安かったんだろう。
 機内は真新しく清潔だった。しかし、座席と座席の間が狭い。あまりに窮屈なので機内食の摂食には慎重さが必要だ。食べ始めようと大小のカバーやセロファンを取り外しトレイの空きスペースに詰め込む。客室乗務員から手渡されたときの秩序は無惨に崩れ、ゴミと食べ物が混在する。もし手が滑って何かを床に落としたら食事が済むまで回収できない。隣席のトレイの隙間に腕を通すことはできてもかがんで拾うことができないのだ。こういう条件下での食事はどうしても浅ましく映る。食物の落下を防ぐためには口をトレイに近づけなければならない。エレガントに見えない理由だ。エコノミークラスの機内食を優雅に品よく食べる方法はないものか。
 エミレーツの女性乗務員の制服は、赤い帽子の右の付け根から首に伸びる白いスカーフ、あまりぱっとしない明るい縞模様のスーツだった。白いスカーフは怪我した耳を覆う包帯のように見えなくもない。
 各座席のAVモニター類も最先端だった。古いものから最新のものまで200以上ラインナップされている映画も充実している。どんな映画もいつでも最初から見ることができる。もっとも前席の背中に張り付いた小さなモニターで見るのはつらい。「サンクタム」を見たがやはり大画面で見るべきだ。