インドの国宝、ハリプラサード・チャウラースィヤー日本公演1998

欧米で「フルートのショパン」と称されている世界的音楽家の来日公演
これ以上なくシンプルなインドの竹の横笛、バーンスリーから紬ぎだされる豊饒な音楽世界魔術的テクニックとリリシズムあふれるメロディー
神の楽器による神の贈り物

公演日程、会場

  • 9月23日(水)/グリーンホール相模大野/相模原市
    「音の彫刻シリーズ」/16:00開演/グリーンホール相模大野(240席)/全席自由3800円/問い合わせ:財団法人相模原市民文化財団/担当:中村氏/Tel.0427-49-2200/ Fax.0427-49-2772 or2722/タンブーラー:吉見泉美
  • 9月25日(金)/調布グリーンホール(小ホール300席)(東京都調布市・京王線調布駅南口徒歩1分)/桐朋音楽短大レクチャー・デモ
    18:30開演/一般の人が受講したい場合:入場無料(事前申し込み不要)/問い合わせ:桐朋学園大学短期大学部芸術科音楽専攻研究室/TEL:03-3300-2111(代表) FAX:03-3305-7114(短大教学課)/主催担当教員:野口千代光(ちよこ)専任講師/タンブーラー:吉見泉美
  • 9月26日(日)/水口町立碧水ホール/問い合わせ:Tel.0748-63-2006 Fax.0748-63-0752 takeyama@jungle.or.jp/タンブーラー:寺原太郎
  • 9月29日(火)/ザ・フェニックスホール/大阪
    「世界一周音楽の旅(5)」/19:00開演//全席指定3000円学生指定1000円/といあわせ:ザ・フェニックスホール/担当:赤松/Tel.06-363-0311 Fax.06-363-0550/チケットセンターTel.06-363-7999//タンブーラー:田中理子+寺原太郎
  • 10月1日(木)/高知県立美術館ホール/18:30開演//全席自由、前1600円、当日2000円/問い合わせ:高知県立美術館(財団法人高知県文化財団)/担当:大原氏/Tel.0888-66-8000/台風のためにキャンセル
  • 10月3日(土)/あいあいホール/三重県川越町
    18:00開演/問い合わせ:川越町/担当:諸岡/Tel.0593-64-2500/タンブーラー:寺原太郎
  • 10月4日(日)/ジーベックホール/神戸
    「アジアの音楽シリーズ<アジアのスーパーフルーティスト3>/16:00開演/問い合わせ:ジーベックホール/担当:下田展久/Tel.078-303-5600 Fax.078-303-4632/shimoda@mxr.meshnet.or.jp/他の出演予定者:仙波清彦、山田寛(予定)/タンブーラー:カミニ+寺原太郎

演奏者プロフィール

ハリプラサード・チャウラースィヤー Pt.Hari Prasad Chaurasia】

 元来、民謡などの伴奏楽器として人々に手軽に親しまれてきたバーンスリー(竹の横笛)を、インド古典音楽の主要な楽器の一つとして引上げた偉大な功績者の一人である。故パンナラル・ゴーシュなどによってインドの古典音楽シーンに比較的近代になって登場したバーンスリーは、ハリプラサード・チャウラースィヤーによってさらに確固とした地位を獲得した。今や、彼の名がバーンスリーの代名詞と言えるほどである。真っ直ぐな竹に6穴を穿った単純な楽器も、彼の超絶的技巧と深い音楽性によってインド古典音楽の魅力を紡ぎ出す。タブラー(北インドの代表的打楽器)との巧妙な駆引きとスリルは聴衆の興奮を誘う。現在、最も人気のある音楽家の一人で、インドに限らず世界的に数多くのファンをもっている。アメリカのボルティモア市長は、彼のバーンスリーに魅了され、彼を名誉市民として迎えているほどである。また、パリのオデオン劇場で催された演奏会で、チャウラースィヤーの演奏を聴いた当代一流のフルート奏者、ジャン・ピエール・ランパルは、彼のシンプルな笛から次々と紡ぎ出される音楽とテクニックに驚愕した。レコードなどは、世界中から100枚弱のCDが出ている。日本録音のCDは、『神の笛バーンスリー~ハリプラサド・チョウラシアの芸術』/KICC-5172/キングレコード"World Music Library"シリーズ72として出ている。
 音楽家としては珍しく、アラハバードの武芸の家系に生れたが、幼少の頃より家族に反対されながらも音楽、特に笛の魅力に取りつかれ独学で技術を磨いた。オリッサ州カタックのオール・インディア・ラジオ専属音楽家としてスタートし古典音楽や映画音楽などに活躍したが、ボンベイに移り、有名なラヴィ・シャンカルの前の妻であり、近代インド古典音楽中興の祖、アラーウッディン・カーンの娘であるアンナプールナー・デーヴィーに出会い古典音楽の演奏家として再出発した。師から弟子へ、と伝えられてきたインド音楽の伝統を踏まえつつ、彼は、彼自身のもつ音楽性と聴衆へのアピール度を加味し、インドにおいても限定されかつ比較的狭い古典音楽の聴衆を広げた功績は、大きい。古典音楽ばかりではなく、ジャズ音楽祭への参加と言った、伝統に囚われない音楽の可能性を追求している点でも、ハリプラサード・チャウラースィヤーはインドの新しい形のスターと言える。
 88年4月、日印両政府によって開催された『インド祭』では、開会式の演奏会のために来日した。来日中、皇居内でも演奏した。また、1993年には「東京の夏音楽祭」をはじめ、日本と韓国でコンサートツアーを行い、各地で絶賛を浴びた。ボンベイ在住。1938年生れ。

【アヌラーダー・パールAnuradha Pal】

 世界的タブラー奏者のウスタード・アッラー・ラカーとザキール・フセインに師事。豊かな創造力と高度なテクニック、即興演奏での独自の柔軟性をもつ彼女は、インド国内唯一の女性プロ・タブラー奏者として、ソロと伴奏の両方で高い評価を確立している。
 オール・インディア・ラジオ専属Aクラス音楽家であるアヌラーダー・パールは、11歳から演奏活動を開始している。これまで、アムジャド・アリー・カーン(サロード)、ハリプラサード・チャウラースィヤー(バーンスリー)、スルターン・カーン(サーランギー)、ヴィーナー・サハースラブッデー(声楽)、ヴィシュワ・モーハン・バット(ギター)、シャヒード・パルヴェーズ(シタール)、ブリジ・ナーラーヤン、ラリト・ラーオ、などの伴奏およびカタック舞踊の伴奏を数多く行っている。また、師のアッラー・ラカーのソロ公演に伴奏者として共演するというきわめて希な名誉も得ている。
 1991年にはBBC国際ラジオ放送において、インドにおける5人の卓越した女性音楽家の一人として取り上げられた。また、BBC国際放送テレビ、STAR TV、PLUS CHANNEL、MUSIC ASIA、ドゥール・ダルシャン(インド国営テレビ放送)などのメディアに数多く出演している。
 I.C.C.R.(インド政府文化関係局)公認アーティストとして、サンギート・リサーチ・アカデミー(カルカッタ)をはじめ、サンギート・ナータク・アカデミーの北部、南部、東部センター、マディア・プラデーシュ州音楽祭、ヴィシュヌ・ディガンバル・生誕記念音楽祭、スピリッツ・オブ・ユニティ・コンサート、バーラト・バーワン、スピック・マケイなどが主催する国内の主要なコンサートで演奏活動を行っている。
 96年にインドで初の女性のみによるフュージョン・パーカッション・アンサンブル「ストリート・シャクティ」を結成する。「ストリート・シャクティ」は、伝統的に男性中心だったヒンドゥスターニー音楽(北インド古典音楽)とカルナータカ音楽(南インド古典音楽)の打楽器奏法を融合させ、高度なテクニックと音楽性の豊かな表現で高い評価を得ている。
 こうしたインド国内での活動の他、ハーバード大学、ジョンズ・ホプキンズ大学、カーネギー・メロン大学などのアメリカの大学で、著名な声楽家パンディット・ジャスラージの伴奏者としてだけではなく、一人の器楽奏者としてレクチャー・デモンストレーションを行っている。また、ヨーロッパ各国、香港でも演奏活動を行った。とくに、ヴォイス・オヴ・ザ・ワールド・イン・デンマーク・ヨーロッパでの声楽家ヴィーナー・サハースラブッデーの伴奏では多くの聴衆と当地の音楽家たちからも絶賛を博した。
 アヌラーダー・パールは、タブラーソロのカセットテープやCDの他に、スルターン・カーン、ヴィシュヴァ・モーハン・バット、タルン・バッターチャールヤ(サントゥール)などの伴奏者として数々の録音にも参加している。
 最近では、ロンドンで行われた有名な国際音楽祭「グリニッジ・ドックランズ国際音楽祭」に参加し、ソロやデュオ演奏を披露した。