1950年代から今日までのディスコグラフィーおよび文献情報からみたヒンドゥスターニー音楽のラーガの実態
16.まとめ
調査資料としては万全ではないかもしれないが、ディスコグラフィーと文献によって下記のようなラーガの実態がある程度判明したといえる。
・1950年から1984年までのディスコグラフィーに記載されたラーガ数は419であった。
・2004年時点でのCDに記載されたラーガ数は460であった。
・両ディスコグラフィーの重複を除いた合計ラーガ数は626であった。
・文献記載のラーガ総数は、671であった。
・ディスコグラフィーおよび文献記載の重複を除いた合計ラーガ総数は986であった。
・音階の構造がある程度確定できたラーガ数は581であった。
・両ディスコグラフィーに現れるラーガ記載頻度によってどのラーガがよく聴かれるかのある程度の目安が得られた。いっぽう、1度しか録音されないラーガが半数以上あった。
・元になるラーガから派生したラーガは相当数ある。
・器楽のみ、声楽のみ、両者共通で演奏されるラーガ数はほぼ1:1:1の割合であった。
・夜のラーガが比較的多かったが、演奏時間帯によるラーガの分布に大きな偏りはなかった。
- 7音を使うラーガは全体の約6割、5音と6音がそれぞれ約2割ずつである。
・主要音(ヴァーディー)がSa、Ma、Paであるラーガは全体の6割を超える。
・主要音(ヴァーディー)-副主要音(サンバーディー)の組み合わせはMa-Sa、Pa-Sa、Sa-Pa、Ri-Pa、Ga-Ni、dha-gaが全体の7割以上を占める。
ヒンドゥスターニー音楽の実演者にとっては一つ一つのラーガの表現が目的なので、これらの結果は実演上の意味はないかもしれない。また、音楽の深い理解や楽しみにも直接関係しない。しかし、ヒンドゥスターニー音楽をラーガを中心としたシステムとして理解する上では、これまでこの種の研究はなかっただけに、ある程度参考になるのではないか。