2018年8月9日(木) メキシコ3週間よれよれ日記  次の日


 5時40分に起きた。三宮の伊丹行きリムジンバス停へ行くと平林(以下沙也加)がボーイフレンドの健ちゃんとやってきた。遅れて下田も合流。おととい実家に引っ越したばかりの森田(以下優希子)に電話したら「今起きた」とのことなので、3人でバスで伊丹空港へ。ほどなく奥さんの車でやってきた角、母の車で到着した優希子、岡山からバスでやってきた象くんが合流し全員揃った。
 11時20分、羽田行き全日空機が離陸。
 隣に座った沙也加に根掘り葉掘り話を聞く。

沙也加の話

 金沢が実家で、父はある会社に属しているがほとんど自営に近く、簡易ガレージなどを販売し作ってもいる。
 現在は、東京浅草の希少な羽子板職人に弟子入りし、5階建ビル1階に寝袋で寝泊まり住み込み修行中。師匠は隅田川花火では歩行者天国になった道路の一部を確保し、知り合いに弁当や飲み物を提供するという太っ腹な江戸っ子だという。

プレミアム・エコノミー

 こんな話を聞いているうちに、12時30分、羽田空港に着いた。急いで12時50分発の成田空港行きのリムジンバスに滑り込む。1人3100円はちと高い。

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 成田のターミナル2に到着すると多くの人でごった返していた。チェックイン・カウンターの係員が「エコノミー席の空席がない。一人だけエコノミーになるが、残る5人はプレミアム・エコノミーになる。プレミアム・エコノミーはエコノミーよりもずっと快適ですよ」と申し述べる。エコノミーには結局象くんが座ることになった。
 16時35分発の予定が1時間ほどずれてメキシコシティー行きNH0180便が離陸。
 プレミアム・エコノミーはビジネスとエコノミーの中間で羽の上にあり、実に快適だった。エコノミーよりも一回り大きな座席、フットレストがついている。完全に足を伸ばせるわけではないので、プレミアムとはいえやはり長時間フライトは辛い。 
 窓の遮光システムが目新しい。遮光板はなく下のボタンでガラスそのものの色が変わる。
 ワダスの隣に座ったのは濃紺の半袖シャツ、ちよっと洒落た帽子、高そうな時計、ジーンズでなかなかにダンディーな60過ぎらしい男性だった。カナダに住む娘と落ち合い1週間のメキシコ観光とのこと。iPad、iPhone2台持って絶えずメールなどをチェックしていた。
 ワイン2杯、カレー機内食の後、映画を見る。ロシアの女スパイ「レッド・スパロー」、途中からかなり筋が見えてきたリーアム・ニーソン主演の「トレイン・ミッション」、冒頭がメキシコシティーの007「スペクター」、オーストラリア・アボリジニーのものなど。
 パン、焼き魚の機内食弁当の朝食後、しばらくしてメキシコ市街が見えてきた。
 なだらかな斜面に建物がぎっしりと広がり、中心部には超高層ビルの塊が数カ所見えた。現地時間の夕方4時頃、機は市街地ギリギリに下降して空港へ滑り降りた。

荷物検査とタバコ持ち込み

 長い待ち時間もなく入国手続きはすんなり進み、両替所で100ユーロを両替。1900ペソだった。
 ところが、バゲージ・クレームで思わぬ時間がかかった。
 荷物はほどなく出てきたが、係員に「あそこでチェックを受けろ」と端っこにあるコーナーを指示される。若い女性の係員たちが乗客のスーツケースの中を開けてチェックしていた。待っている間も他の乗客は出口に向かっているようだが、我々がチェックを受けるよう指示された理由がよくわからない。角のスーツケースから検査が始まった。かなり念入りにひっくり返してチェックする。象くんの隣にいた若い女性係員が日本語で何か話していた。
 下田のリュックにあった2カートンのタバコをみて、うーん、どうしたもんかという表情。上司の男に何かきいて「1カートンまでは無税だが追加の1カートンは課税する」という。そこから出るまでが長かった。
 下田を除いた全員が出口に出ると出迎えの人がぎっしりいた。出迎え人たちのボードを探すが、それらしいものが見当たらない。

出迎え

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プリシリアーノ
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マリナとカルラ

 そのうち人垣の向こうで手を振っていた女性がいた。スカイプで一度顔を見たマリナだった。彼女は「プリシリアーノも向こうにいる」と我々を案内した。黒の長髪ひげのプリシリアーノ、小柄な若い女性カルラ、30代の若者が長さが4mほどの横断幕を持って我々を待っていた。横断幕にはタカンバロ、歓迎、姫路城、スポンサーのロゴマークが並んでいた。姫路城という漢字がちと意味不明だ。  
 下田を待つ間、マリナに案内されて外の喫煙所で一服。彼女は37歳。1日1箱吸うが今は喉を痛めたので吸わないという。今年1月に市役所を辞め、我々の泊まる予定になっているマンション・デ・モリノ(モリノは製粉所の意味。かつて、水車で粉にしていたのでこの名前になった)に併設した40年続くレストランの経営者をしているという。
 1時間ほどして下田がようやく出てきた。聞けば、タバコ1カートンに1万円ほどの税金を取られたとのこと。
 乗り込んだ階からなかなか動かないエレベーターで1階駐車場へ。ミチョアカンと書かれたタカンバロの公用車だというミニバンに荷物を積み込んで出発したのは6時過ぎだった。マリナはドイツから遅れてやってくる夕紀を待つため、一旦別れる。

同行者プリシリアーノとカルラ

 ミニバンの急ごしらえの対面座席に座った。運転助手席にカルラと優希子。後でわかったが、この車は元は救急車だという。そのせいで細長く小さな窓が座席から高い位置にあり、あまり外が見えない。
 4年ぶりに再会したプリシリアーノと下田が車中で話すのを聞く。娘2人、息子1人の父プリシリアーノ(39歳)は、大した中身のない会話の後でも大声で笑う。下田のスペイン語の質問に、あまり得意ではない英語で答えているのが妙な感じだ。

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エミリアーノ

 小柄でクリンとした25歳のカルラはタカンバロ市役所の文化担当責任者だ。マリナが1月には市役所を辞めたといっていたので、彼女の後任ということか。口数は少なく英語はほとんど通じないが、きちんと職務をしているという印象だ。今回のプロジェクトの市側の窓口だった。
 運転手のエミリアーノ・ロドリゲスは、ちょい小太りの山男のような風貌だ。8歳の娘と、もうじき男子が生まれるという。普段は救急車の運転をしているが、300万ペソのムスタングに乗っているといって写真を見せてくれた。51をファイブワンというほど英語はほとんどできない。

長いドライブ

 空港からメキシコシティー市街を抜けるのに2時間以上かかった。どの道もすごい渋滞だった。通勤時間と重なったのが理由だということだが、これが年中続くという。

 11時頃、ドライブインのようなレストランで食事。ワダスは中にほぐしたチキンの入ったコンソメスープ(30ペソ=180円)を頼んだ。他のメンバーはわりとがっつりしたものを食べていた。
 やがてミチョアカン州の州都モレリアの市街地に入った。低い家並みが続き、大きな教会や水道橋のある古い町だった。


 エミリアーノは、曲がりくねった道路を時速100キロ以上でぶっ飛ばす。途中、深夜だというのに銃を持った丸顔の兵士たちの検問を受けた。

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