2018年8月19日(日) メキシコ3週間よれよれ日記  前の日 次の日


 7時起床。曇り。今日はWSが何もないフリーの日だ。
 予定では、1時くらいまでタカンバロ郊外の自然観光、ホテルに戻って今日開かれる日曜市へ行くことになっている。

郊外の小旅行

 10時、カルラ、アレハンドラと娘ヴァレンティーナ(2歳)、アレハンドラの妹スィタラリ(15歳)、スニコ(日系モリヤ家、20代後半)、ヤルラ(20代中半くらいの小太りの女性)、タデオ青年(29歳、カルラの元彼。イギリスなどでコンピュータ関係の仕事に付いていたのである程度英語ができた)が、トラック2台で迎えにやって来た。スニコが運転するのは後ろに荷台のあるごついトヨタのタコマ、タデオ青年の車もトヨタだが小ぶりで、荷台には鉄のバーが付いていた。
 出かけるところへ、ロシオ母娘と出会ったが、ここのレストランに食事にきたようだった。
 皆で話をするのを遠巻きに見ていたケヴィン少年(10歳)を誘うと、一緒に行きたいという。角、象くん、ワダスがごついトヨタ・タコマ、他のメンバーは小ぶりトヨタの荷台に乗って出発した。
 途中、カルラたちが街角に一旦車を止め、飲み物とタコスを買ってきた。
 角、象くん、ワダスはトヨタの荷台に乗った。風を受けて荷台から街や山々を眺めるのは実に気持ちがいい。とはいえこの荷台乗車で日焼けし、両腕は腕時計の部分だけを残しひどい状況になってしまった。下田も同じように顔がヒリヒリするという日が続いたようだ。

ラ・アルベルカ湖 前列左-ヤルラ、角、象くん、カルラ、タデオ、ヴァレンティーナ、アレハンドラ、スィタラリ、後列左からスニコ、夕紀、ケヴィン、沙也加、下田、優希子 ラ・アルベルカ湖を望むあずまやで


 車はどんどん郊外に向かい、松林の中り、遊歩道やトイレ、東屋などが整えられた自然公園のような場所に着いた。頂上からちょっと下りた場所にある展望台から、ほぼ円形の火山湖ラ・アルベルカが見下ろせた。緑色の水面から一方が切り立った断崖になっていた。湖から目を左に転じると、なだらかな丘陵、集落、山々が見渡せた。
「ここから見える農園は主にベリー園、サトウキビ畑、牧場などが多い。標高が高い北はほとんどアボカド農園」とタデオ。
 タコスでブランチ。アレハンドラの2歳になる娘ヴァレンティーナが可愛らしい。アレヘンドラに「夫は何してるの」と聞くと「夫はいない」という。彼女はシングルマザーなのだ。現在の市長の秘書をしているが、多分新任市長の元でも職員として働けるだろうという。肌色のちょっと濃い妹のスィタラリは15歳の学生。寡黙な少女だ。
 肩から首にかけての後ろ姿が「す」に似たスニコの祖父は、広島出身のモリヤ・タケシという日本人。
 松林、アボカドなどを眺めながらつづら折りの山道を降り、スニコとタデオが上に駐車していた車を回してきたので再びそれに乗り込み、ラ・アルベルカ湖畔へ。
 湖畔には数組の若者や家族がいた。湧き水だけの湖水は透明ではなくちょっと濁っている。水温は生ぬるいので泳ぐには最適だ。実際、木々の多い離れた場所では男たちが水に入って遊んでいた。最初に来た場所の対岸へ回ってみた。細い道を進み、大きな幹の木が湖に向かって生えているところまで行く。幹を伝って湖面を見下ろすところに立ったら、皆が「危ないよお」と声をかける。
 再びトラックに乗り込んだ。タコマの荷台にスィタラリも乗り込んできた。予定ではホテルに戻ってもいい頃だったが、車は一旦街に入り、どういうわけか途中でコロンとした見覚えのある若い女性マリセルを拾った。そして、両側にベリーやアボカド、トマトなどの畑を縫いながらどんどん山道を進む。工事中の道路を迂回したためか、川水の溢れた場所や細い山道を走った。ところどころに人家があった。粗末な煉瓦造りの家なので、インドの田舎の村に来た感じだ。
 乗っている我々は、車がどこへ向かっているかわからない。時計を見るとすでにホテル帰還予定の1時は過ぎていた。後部座席に娘と乗っていたアレハンドラに目的地を聞くと「天国よ」という。
 車を停めたところは、透明で冷たい水の小さな川のある場所だった。一部深くなっていて、若者たちが木に吊るしたロープに乗って揺らしながらジャンプする。彼らの車からは猛烈な音量の音楽が鳴っている。スニコも持って来たボーズのスピーカーから音楽を鳴らす。静かな方がいいのになあ。
 夕紀と遊んでいたケビン少年が服を着たまま川に入った。夕紀も裸足になって水につかる。角は、大きな木の幹に抱きつき瞑想状態。セミになったスミ。
 帰途に着く頃にはすでに予定時間を大幅に過ぎ、4時近くになっていた。帰途の途中に寄ったコンビニにはキッコーマンの醤油の小瓶が31ペソで売られていた。醤油はメキシコでも一般的な調味料のようだ。
 5時にホテルに戻り、案内してくれた人たちと別れた。

日曜市場ケルメス

 全員、広場で開かれている日曜市場ケルメスへ。広場の一部にテントが張られ、タコス、アイスクリーム、地元の民芸品、衣服、装飾品、雑貨などの店が並んでいた。我々が通ると人々が呼びかける。見知った顔も多い。アイスクリーム屋では、昨日のWSに参加していたメガネの太った中年女性が、色々な種類のアイスクリームを味見させてくれた。注文してお金を払おうとすると「ここでのあなた方の飲食は全部タダよ」と言う。
 マリアンが「あっちに両親がいるの」と手を引っ張る。離婚したと言っていたが、夫のセルヒヨだと背の高い優しそうな男を紹介された。

左-コリブリ・デル・ラド・イスケルダの演奏

 

上-タカンバロ・テレビのマリオ(左)と夕紀


 昨日WSに参加して最後まで作業していたプレペチャ夫人の店では刺繍のあるランチョンマットを一枚もらった。特徴のある地元デザインのシャツを買おうと思ったが、3000円近いので断念。
 フロイラン、ヴァレンティーナも店を開いていた。店の前には、自宅の玄関で見かけたドクロ彫刻作品が置いてあった。自作デザインのマグカップ、息子エリの絵、ドクロ人形などなど。ヴァレンティーナがタカンバロの街の絵のあるしおりをくれた。ここでTシャツを一枚購入。150ペソ。
 隣には、濃いヒゲを生やした男のイヤリング店。ドリームキャッチャー、鳥の羽などを飾ったイヤリングが開いた箱にぶら下がっていた。そこにいたタカンバロ・テレビのマリオが「プレゼントするよ」と言う。そばにいた優希子が青い輪のついたものを1つもらった。
 長いテント張りの中央の舞台で、コリブリ・デル・ラド・イスケルダ(左のハチドリ)の演奏が始まった。下田にギターを貸してくれたガブリエルのバンドだ。音楽が鳴ると小さなスペースで人々が踊りだす。囲んで見ていた我々も誘われてダンスの輪に入る。角のソロダンスもあり、終わると人々が拍手ではやし立てた。角は本当に元気だ。
 優希子が空腹だといってタコスを注文していた。テントからは離れたベンチでワダスもつまみ食いしながらおしゃべり。
 下田、優希子とタクシーでホテルへ戻る。角がパティオでiPadを眺めていた。一人で歩いて帰ってきたという。
 象くんと夕紀は、プレペチャ夫人宅で日本料理を作るという予定だったのでいない。

キンタ・サウス

フェルナンドとトーニャ

 8時、2人の男が迎えに来た。キンタ・サウス(Quinta Sauz)というリゾート施設のマネージャー、30代後半らしい新しいシャツを着たフェルナンド・ファーラ、野球帽に紺のジャージを着た長身の経理担当トーニャ。2人はルームメイトと紹介。今夜のディナーの招待を受けていたのだ。
 2台のフォルクスワーゲン乗用車でキンタ・サウスへ。優希子と同乗した車を運転するフェルナンドは、元は北メキシコ出身でタカンバロに来て3年になるという。息子と妻はモレリアにいて単身赴任。以前はモレリアで仕事をしていた。英語がちょっと話せる。
 ほどなく着いたキンタ・サウスは広大な(24エーカーと言っていた)敷地に、アボカド農園、大農園アシエンダの建物、馬などの家畜小屋、ホテル、浴場、レストランなどがある大規模なリゾート施設だった。ゆったりとした通路を歩くと照明された美しい現代的な建物が立ち並んでいた。
 奥のレストランに案内される。今日は休日なので他の客はいず、我々だけのためにレストランを開いていてくれた。真ん中に鉄板焼きのコーナーがある広い食堂にすでに我々のテーブルが用意されていた。出されたメキシコ産赤ワインがなかなかにいい。下田、角、優希子はここで作ったというメスカルをもらう。


 チョコレート・ソースのかかったサラダ、アボカドペーストのワカモレの乗った大きくて丸いカナッペ、チーズたっぷりの短く切ったパスタ。しばらくしてマリナ、マリナの子供時代からの友人で祖母が韓国人というアメリカ人女性ジュディー(38歳)、ルビが合流。色黒だがどこか東洋系の顔つきのジュディーは、二十歳近い息子がいて、サンディエゴ近くの心臓外科病院の管理の仕事をしている。マリナとは小学生の時から友達だという。韓国系だと知った隣の角が彼女にくっつき話し始めた。
 フェルナンドが施設について説明した。ここのオーナーはかつてタカンバロ市長も務めた人で、ここを国際的な観光客の滞在施設として作った。日本人も来るとのことだ。アボカドはDoleのブランドで海外に輸出されている。
 外では激しい雷が光り、轟音が響く。外でタバコを吸いつつマリナ、下田とおしゃべり。マリナは来年日本に来たいという。桜の季節を勧めた。

 ホテルに戻ると、象くんと夕紀がレセプション横のソファに座り、キューリの皿を前にしてビールを飲んでいた。聞けば、約束時間にプレペチャ夫人の自宅へ行ったのだがドアは鍵がかかっていた。広場の店にいるかと探したが見つからず、結局料理は断念して帰って来たという。肉じゃがを作る予定だったので、醤油、牛肉、ジャガイモを買って行ったのに、と悔しがる。コミュニケーションがうまくいかなかったようだ。
 激しい雷雨が屋根を叩く音を聞きつつ12時過ぎ、ベッドに入る。

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