2018年8月13日(月) メキシコ3週間よれよれ日記  前の日 次の日


 雨。8時半、坂をおりてサント・ニーニョ広場にある「ドーニャ・マルセ」で朝食だった。この小さな広場にはミチョアカン州出身の大統領ラサロ・カルデナス(1895-1970)の銅像が噴水の側に立っている。

横尾一家、左から咲子さん、シズ、エスパルタコス、ミヤビ、ジゲン

 重湯のようなトウモロコシの粉を溶いた飲み物、チラキレス、コーヒーの朝食をとっていると、横尾家族がやって来た。昨晩はプリシリアーノの家に泊まって、朝帰ることにしていたが、車の調子が悪く修理中だという。
 マリナもやってきて合流。彼女の話が興味深かった。
 メキシコの教師の待遇があまりにひどく、教師は政府に反抗している。この1週間は学校へ行かず休暇を取っているという。いわばストライキだ。新任教師の月給がおよそ3万円とはいかにも安い。今回のプロジェクトのメンバーの一人であるベロニカ女史も教師で、その運動を利用して参加したという。
 雨がひどくなってきた。本来なら9時にカフェ・アシエンダへいき、プリシリアーノのアボカド農園訪問の予定だが雨なので取りやめになった。そのプリシリアーノも我々にに加わりしばらく歓談。
 カフェ・ハシエンダにコーヒーを買いに行く下田を除き、全員一旦ホテルに戻る。

パペル・ピカドWS

 11時45分、マルコス・ヒメーネス文化館へ。12時からフロイランによるパペル・ピカドのワークショップなのだ。広場に面した回廊の会場では机や椅子の設営中だった。奥さんのヴァレンティーナ、息子のエリ、大学で地理を教えるエドゥの姿も見え、家族ぐるみ態勢だ。
 ぼちぼちと席が埋まりWSが始まった。ごく薄い正方形のパペル・チノを4つに折りたたみハサミを入れていく。切り絵細工の要領だが、これがなかなかに難しい。ハサミを入れる際に最終形を想像する必要があるのだ。次第に皆熱中していく。死者の日のドクロの製作になる頃は全員子供のように熱中していた。フロイランの進め方も淀みなくとても良かった。
 沙也加は細かな複雑な模様を作って先生に褒められた。褒めてもらうと皆嬉しいのだ。というわけで、「褒めて欲しい!」ってスペイン語でどういうのと聞くと、マリナは、うーん、どういうかしら、と考え込んでいる。あまり使わない言い方なんだろう。エドゥも一緒になって考えていた。しばらくして「フェリシタ・メかな」という。この「フェリシタ・メ」は参加者が皆言いたがり、盛り上がった。自作の切り絵を手に持って全員で記念撮影。

山の中のレストランでランチ

 2時、迎えにきたエミリアーノの救急車改造ミニバンに乗って招待されたレストランに向かった。
 歓迎宴会で会ったエドガー青年の経営するレストラン「ラ・ハヴィオタ(カモメ)」は市街から20分ほど山に入ったところにあった。周辺はアボカド、チリ、ズッキーニなどが栽培され、ニジマス養殖の池などがあった。
 広い食堂は簡単な作りで、窓際の席からは下の池が見えた。

カルラとマウリシオ・アコスタ市長 市長と。右端が招待者エドガー


 タカンバロ市長マウリシオ・アコスタ氏(年齢を聞いたが忘れた、確か40代前半)、秘書のアレハンドラ(23歳、まだ学生だが、有給の秘書)、我々を担当しているカルラ・ゴンザレスもやってきた。マウリシオ市長は文化には縁のなさそうな横幅の広い男だった。レスリングをやってそうな体型だが、腹が結構出ている。8月末でちょうど丸3年の任期を迎えるという。英語は片言程度だが、若い秘書のアレハンドラが流暢な英語で通訳した。歯列矯正中のアレハンドラはまだ22歳の学生だが、市長秘書として仕事をしているのだという。
 ランチは、まずセヴィチェデ・ペスカードで食べるトトポス(三角形にあげたトルティーヤ)。セヴィチェデ・ペスカードは2種類。アボカドのサルサのワカモレ、マス、玉ねぎ、キューリなどの酸味のあるソース。これがうまい。次にニジマスのアルミフォイル蒸しポテトフライ添え。汁気に浸った白身のマスはなかなかに美味しかった。
 市長が1瓶のメスカルを提供し「これを飲みきるのが君たちの仕事だ」といって秘書とともに早めに帰って行った。
 我々はエドガーに案内されて、周辺のアボカド農園や叔父がやっているという別のレストラン、マスを養殖した大小の池などを散策。あひるや七面鳥などが遊びまわっている。食べるのかと聞いたら、食べないという。レストランの大きな建物や池、小さな木の橋でつながるバーのある広い東屋などは全て叔父の手作りだとエドガー。
 レストランを出た時はすでに5時になっていた。

ウアルクアWS

 火の玉ホッケーWSの会場であるはずの、昨日の特設舞台のところに行ったが、講師のプリシリアーノの姿が見えない。6時開始の予定なのでいるはずなのだ。仕方がないので彼のカフェ・アシエンダまで行ってみた。すると奥さんのアンが「あれっ、いないの。そのうち戻るかもしれないからここでコーヒーでも飲んで待って」と言う。
 優希子と夕紀の日常などをあれこれ聞く。
 角に「丈夫で長持ち」とか「社長!」と揶揄された神戸在住の優希子は、パンの外皮を樹脂で表面処理し中に電球を入れて照明用にしたパンプシェードを製作販売している。「パンプシェードを作っていると時間も忘れるほど熱中するんです」。今回のメキシコ旅行から帰るとすぐに商談のためパリに飛ぶという、ちょっとしたビジネスウーマンなのだ。寝るのが好きというように、今回の滞在でもよく寝ていたようだ。

左から沙也加、夕紀、優希子

 ベルリン在住の小柄でタフな夕紀は、日本料理店に勤める長身の日本人男性と同居しているという。ラーメン屋でバイトしていたが、ぼちぼち自分の創作活動を始めたいとのこと。ずっと昔のことだが、ワダスも半年ほどミュンヘンに住んだことがあるので、ドイツのビールの話などになった。ドイツビールは美味しいのよね。
 などと話しているうちにプリシリアーノが会場で待っているという連絡が入り、舞台のあった場所に戻ったが見当たらない。英語を話す腹の出た警官に「プリシリアーノを探している」というと「あの辺にいるはずだ」と舞台の方向を指すがいない。優希子と近くのコンビニ「オクソ」へ行き、使い捨てライターを購入した。
 そのうち夕紀が「マルコス・ヒメーネス文化館で待ってる」という。行くと彼が息子のサビノとともにスティックやボールを用意して待っていた。
 ウアルクアの基本をまず教わる。スティックの持ち方、ボールとスティックの正しい位置、試合開始の攻守のルールなど。


 場所を移動してボールには火をつけずに試合形式で行った。場所は昨晩ゲームをやっていたところ。実際に火の玉を使うのは特別の場合だけらしい。
 象くんが素晴らしい動きだ。下田、角、夕紀、優希子も熱中している。ワダスは足がガクガクで途中棄権。マリナ、カルラも見物にやって来た。
 ベニートの店のディナーへ向かう下田、象、夕紀、沙也加と別れ、ホテルへ戻る。ディナーをパスしたのはワダスと角、優希子。
 ホテルに戻り日記を書く。屋根のついた中庭はかなり寒い。虫の鳴き声が聞こえる。電気を消して寝ようとした12時前、下田がディナーから帰ってきた。下田の昔の話を聞いて寝たのは2時。

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