第1回 真言密教とインドの音楽

●とき/1989年11月25日(土)7:00 pm~
●ところジーベックホール(神戸ポートアイランド)
●出演/神戸密教研究会(15名)、アミット・ロイ:シタール、山中浩子:タブラー、田中峰彦+松本泉美:タンブーラー、HIROS:バーンスリー
●主催/楽ネットワーク
●共催/ジーベックホール
●協賛/(株)クリエイト・エンタープライズ、ダイシャウツアー
●後援/インド総領事館、神戸国際交流協会、関西日印文化協会、明石インド文化協会、エアインディア、神戸密教研究会
●企画制作/天楽企画

プログラム

■真言聲明 吉慶漢語(きっきょうかんご)+吉慶梵語(きっきょうぼんご)
 神戸密教研究会:聲明、松本泉美+HIROS:タンブーラー
■インド古典音楽
アミット・ロイ:シタール、山中浩子:タブラー、田中峰彦:タンブーラー
■金剛界礼讃+インドの楽器 

企画主旨

 最近、アジアの音楽はよく日本に紹介されるようになってきています。日本を含めた、アジアの国々にも豊かな芸術音楽があり、しっかりとした伝統の中で支えられていることが認識されつつあることは喜ばしいことです。
 その中で、とくにインドの古典音楽は、その長い歴史と緻密な理論体系によって、世界の音楽の中で独特な位置を占めています。インド国内はもちろん、欧米でも演奏会が多数もたれ、世界的に一つの音楽ジャンルとして確立しているといえます。今回来日するアミット・ロイ氏も、シタール奏者として毎年、欧米や日本で演奏活動を行い、インド音楽の豊かな世界を紹介している一人です。
 今回の演奏会では、アミット・ロイ氏のインドの長い伝統に根ざした「銀のように輝く旋律」を、広く市民に親しんでいただこう、というのが第一の主旨です。
 第二の主旨は、アミット・ロイ氏のインド古典音楽と同時に、音楽的にルーツを共有するといわれる真言聲明を聴き、その共通性と違いを認識することです。インド古典音楽は、古代インドのバラモン経典ヴェーダの詠唱から発達したといわれています。インドの古典声楽においては、現在も種々の神々にまつわるテキストが使用されているように、古来、宗教とは切っても切り離せない関係にありました。一方、インドを源流として伝わってきた仏教は、日本の文化に強い影響を与えつつ今日に至っています。とくに日本の歌謡に与えた聲明の影響は大きいといわれています。この、いわゆる節のあるお経、聲明が、上述した古代インドのヴェーダの詠唱にやはりルーツを求めることができます。
 今回、神戸密教研究会の有志によって唱えられる聲明は、「吉慶漢語(きっきょうかんご)」と「吉慶梵語(きっきょうぼんご)」です。この聲明は、斯業と研鑽を積んだ密教の僧が、覚位に登ったとき行われる重要な儀式、伝法潅頂(でんぽうかんじょう)の際、その受者の徳をたたえて唱えられる讃歌で、聲明の中でも特に音楽的なものです。大日経第二具縁品には、この聲明に関して、「意を摂して音楽を奏せよ。吉慶の伽陀等の広多美妙の音なり。是の如くに供養して歓喜を得し巳り、親しく諸の如来に対して而も自ら其の頂に潅げよ」と書かれています。