第7回 爪弾き、歌う

●とき/1992年6月28日(日)4:30 pm
●ところ/ジーベックホール(神戸ポートアイランド)
●出演/ハムザ・エル=ディン:ウード、タール、歌、徳久寿清:三線、歌、棚崎富子:踊り、囃し、相方
●主催/ジーベック
●協賛/(株)TOA
●後援/兵庫県、神戸市、神戸市民文化振興財団、神戸国際交流協会
●企画制作/天楽企画

プログラム

■奄美・徳之島 島唄
■ヌビア、アラブの歌

企画主旨

 この度取り上げるのは、奄美大島に伝わる島歌と、アフリカ・ヌビアに育ったハムザ・エル=ディンの歌です。奄美とヌビア、まったく異なった環境で育まれた歌ですが、ともに撥弦楽器を爪弾きながら歌う点で共通しています。
 奄美大島や沖縄を始めとした日本の南諸島では、歌が生活に密接につながり、現在でも数多くの歌が生産されています。そこでは、歌が消費され消えていく、といった現在の内地の音楽状況とは異なり、生活者が同時に歌の生産者であり、歌い手なのです。また、近隣の島々や中国、朝鮮など海を伝わってくるさまざまな民族の文化が混ざり合った独特の「国際性」が、その絶え間ない創造に寄与してきました。
 また、ハムザ・エル=ディンの、ウードを爪弾きながら歌われる歌にも、生きることと密接につながった奥深さと、国際性があります。彼がアラブ世界の人間であることは、アジアの一部である中東から広がった広大な文化圏を感じることができます。しかし何よりも、彼のシンプルな歌い口から感じることのできるものは、生きることが、民族、週間、文化などの違いを越えて普遍的である、というメッセージです。そこには、奄美の島歌とヌビアのそれを隔てるものはありません。
 今回の企画意図は、爪弾き歌う、という共通性だけでなく、上述のような、生活とつながった、歌、音楽をともに聴くことで、人間の生きることの普遍性と、その表現文化による違いを感じとることです。