第4回 雅(みやび)の音楽-日本と印度

●とき/1991年4月6日(土) 7:00 pm
●ところ/ジーベックホール(神戸ポートアイランド)
●出演/アミット・ロイ:シタール、パビットロ・デーブナート:タブラー、ら・む~(雅楽)
●主催/ジーベック
●協賛/(株)TOA
●後援/インド総領事館、兵庫県、神戸市、神戸市民文化振興財団、神戸国際交流協会
●企画制作/天楽企画

プログラム

■ラーガと調子
 雅楽とインド音楽の共通性 志村哲男:解説
 雅楽とタブラー ら・む~+パビットロ・デーブナート
■インド古典音楽
 アミット・ロイ:シタール、パビットロ・デーブナート:タブラー、HIROS:タンブーラー

企画主旨

 今回取り上げます雅楽とインド音楽は、一見まったく異なっているようですが、実際はいろいろな点で共通点があります。
 雅楽は、いわずと知れた日本の古典音楽です。もともと、雅楽は中国や朝鮮から日本に輸入され、宮廷音楽として成立したものです。また、さらに歴史を遡れば、中国の雅楽は、シルクロード諸国や、東南アジア、インドなどのさまざまな民族音楽を取り入れ一定の形式に落ちついたものだといわれています。したがって、楽器や音階、様式など多種類の要素が混じり合い、当時とすればもっとも国際的な音楽だったわけです。
 当然、その中には、仏教のふるさと天竺(インド)音楽の要素も入っていました。例えば、舞楽「蘭陵王」などは、もとは天竺楽(インド音楽)曲と称され、インドにきわめて近い関係にありました。現在では、この曲は一越(いちこつ)調子で奏されますが、以前は沙陀調といわれる音階型で演奏されました。沙陀とは、インド音階の第1番目の音名Sadjaに由来しているといわれています。また、旋律型(音階型)だけでなく、リズム周期の考え方も、インド音楽とが楽には多くの共通点があります。
 一方、現在のインド古典音楽は、古代インドの音楽理論を基礎にしているとはいえ、形式として確立したのはそれほど古いことではありません。15、6世紀のイスラーム王朝、ムガル帝国時代の宮廷音楽として、ペルシアやアラブの要素を加味しながら成立しました。インド古典音楽は、現在では、世界の音楽芸術のなかで、その表現の普遍性によって、一つの確固とした地位を得ています。私たちもこれまで数多く紹介してきました。
 今回の企画の主要な狙いは、雅楽と現代のインド音楽を聴き比べ、古代インドの音楽をオリジナルとした両者の発展形態を辿ることです。また、両者のリズムサイクルの共通性を利用したタブラーと雅楽との共演も、新しい音楽のあり方として提案したいと考えております。