忘れられない夏 Acte Kobe Project 2001 

 フランス、スイスから22名、また台湾から9名のアーティストを迎えて、この夏、1か月にわたって行われたアクト・コウベ・プロジェクト2001が無事終了しました。このプロジェクトは1997年以来の交流活動、とくに99年、昨年と連続してフランス、スイスで行われたアーティスト交流の総集編ともいうべきものでした。日本側は多くの協力も含め、50名以上もの参加者になりました。
 今回のプロジェクトを通してわたしたちが獲得したものは少なくありません。
 まず、阪神淡路大震災を契機に知り合うことになった海外のアーティストたちの創造動機、手法、作品の一端に濃密に触れ、互いの共通性や異質性をより深く理解することができました。
 つぎに1か月の間、ほぼ毎日、彼らと顔を合わせ、話し、行動した結果、アーティストとして以上に人間としての彼らと改めて知り合うことができました。これだけの長期間、日常的な、密度の濃い接触をもつことができ、芸術という共通の土台に立つ人間どうしであるぶんいっそう、言語の壁をこえて深いコミュニケーションが成立しえたことは、素晴らしい体験であり、大きな成果でした。
 芸術活動は、表現者それぞれが固有の表現動機と手法をもつ、基本的にきわめて個人的で孤独な活動です。わたしたちはアクト・コウベというこの運動の当初から、こうした個人的活動としての制作を尊重しつつ、同時に表現者それぞれの活動をつなぐ試みをも模索し、実現してきました。アーティストどうしの共同作業の過程も芸術活動であると考えるからです。今回のソニックホールの舞台やロビーでのパフォーマンスはその一つです。パフォーマンスのテーマでもあったFra-Cre-Sol、つまり壊れやすさ、創造、連帯というわたしたちの活動のコンセプトは伝わったと確信しています。最終日のシンポジウムにおいては、容易ではないこうした個人的活動をつなぐことの意義を確認しあいました。
 さらに今回は、神戸小学校、神戸六甲アイランド高校、神戸電子専門学校、神戸山手女子短大といった教育の場や、CAP HOUSEでの公開ワークショップで、フランスの芸術家の活動を紹介する機会を得、現場での確かな反応をともに感じたことは、文化交流のあり方や、今後のわたしたちの活動を考える上で大きな示唆を与えてくれました。
 今回のプロジェクトは、神戸市とマルセイユ市の姉妹都市提携40周年という節目において実現した市民主導の活動です。また「神戸21世紀復興記念事業」の国際文化交流助成事業として認定された事業でもありました。一般に国際交流というと、「国」を代表する文化を一方的に紹介したりされたりするイベントを想像しがちですが、アクト・コウベの活動はあくまでアーティスト個人どうしの交流を基本としています。その意味でわたしたちの今回のプロジェクトはこれまでにない新しい「国際交流」の形を示し得たのではないかと思います。
 それにしても例年になく暑く蒸し暑い夏でした。プロジェクトの中心地であったCAP HOUSE(旧ブラジル移民センター)には空調設備がなかったので、来神アーティストにとっても厳しい活動環境でした。しかしわたしたちはこの強烈な暑気と湿気のおかけで忘れられない夏を共有できました。
 このプロジェクトは多くの団体、個人の物心両面のご協力なしには成立しませんでした。この小文で協力団体、個人名のすべてをご紹介することはできませんが、ここで深く感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。

中川博志(アクト・コウベ・ジャパン代表)