Acte Kobe Japan通信発刊宣言

 わたしたちが、今年の1月にマルセイユ市で開催された「アクト・コウベ99」に参加したとき、フランスの会員から、アクト・コウベの活動に対する基本的な考え方を表わす、3つのキーワードが提案されました。それは、

 1.フラジリテ・・・壊れやすさ
 2.ソリダリテ・・・連帯
 3.クリアシオン・・・創造

です。これらの言葉には、この活動のきっかけとなった阪神淡路大震災の洗礼を直接受けたわたしたちだけではなく、世界中のあらゆる表現者たちが共有しうる認識の普遍性があると思います。
 いかに厳密で科学的な計算に基づいていようが、わたしたちの都市は壊れやすい。これは大震災がわたしたちに教えてくれました。しかし、壊れやすいのは何も建物やモノだけではありません。人間関係も、社会も、そしてわたしたちの感情や精神的な活動もそうです。表現活動の目的のひとつは、いっけん盤石に見えるわたしたちの社会や個人的生活が、実はあやういバランスの上に成り立っていることを、美という形式で表現することです。表現家は、ともすれば既成の秩序に安住しようとする人の有りようを、創造行為を通して常に覆そうとします。こうした認識は、洋の東西を問わず、表現家たちが共有しているものです。そして、こうした認識を共有することから、連帯が生まれます。
 阪神淡路大震災の直後、被災した神戸の芸術家に対して連帯の意思表示をしたマルセイユやベルンの芸術家たちは、当初は義援金集めの支援イベントを開くことが主目的だったと思います。また、わたしたちと彼らは、その義援金の授受というだけの関係でした。しかし、震災の翌年に、アクト・コウベ・フランス、アクト・コウベ・ジャパンがあいついで設立され、相互の交流に密度が増してきたとき、冒頭のキーワードのもつ重みを互いに認識しあうようになりました。それにつれて、これまで細々と続けられてきた交流活動が、それぞれが直接的に交流し、その輪を広げていくという形に発展しました。それが、今年1月のマルセイユでの「アクト・コウベ99」でした。
 わたしたちは「アクト・コウベ99」で確認しあった共通認識をより深める意味で、2000年3月にアクト・コウベ・ジャパンのメンバーが、再びフランスとスイスの仲間たちに会いに行きます。また2001年夏には、フランスとスイスの仲間たちに神戸に来てもらい、直接交流を行う予定です。
 このアクト・コウベ・ジャパン(AKJ)通信は、AKJ会員だけでなく、わたしたちの活動を物心両面で支援していただく人たちに向けて発行されます。今後、わたしたちの活動内容や会員それぞれの活動、AKJとAJFの交流の記録を掲載していく予定です。この通信を通じ、わたしたちの活動をより深くご理解していただければ幸いです。 アクト・コウベ・ジャパン代表 中川博志