だらだらと読んだ本  *読んで損はない、**けっこういけてる、***とてもよい

2024年

2024年2月28日(水)

◉『絶対貧困』(石井光太、新潮文庫、2009)
 我々は両親も土地も国も選んで生まれてきたわけではないが、たまたま貧困地区に生まれた人々の凄まじい暮らしにショックを受ける。著者自ら世界中のスラムや売春宿に住み込み見聞きした体験ルポは迫力満点。

◉『阿片戦争 上(蒼海編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
◉『阿片戦争 中(風雷編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
◉『阿片戦争 下(天涯編)』**(陳舜臣、講談社文庫、1973)
 書棚を整理するので、と義弟からもらった分厚い文庫本3冊。黄ばんでいる上に、すぐには読めない漢字が大量に使われているので、必ずしも読みやすくはない。あまり考えたことがなかった阿片戦争がどういうものだったか初めて知った。小説なので実在しない人物も多数登場するが、その誰もが全体の主人公にはなってなく、解説にあるように阿片戦争自体が主人公といったような形になっている。阿片貿易によるインドと宗主国イギリスの関係、インド人も兵士として送られてきていた、世界観や国家観の違いや満洲人と漢族の対立、役人の腐敗やら、ものすごく長い小説です。武器の品質の差によって、人口4億の清の軍が易々とイギリス軍に負けてしまうあたりがなんともいえない。

◉『本心』**(平野敬一郎、文藝春秋、2021)
 AIがますます進行し、ゴーグルモニター越しにバーチャルな体験が一般的になると同時に、社会格差がより大きくなった20年後が舞台の近未来小説。主人公は他者の様々な依頼を仕事とするリアル・アバターという設定。彼は母の死の欠落を補うために、生前の母のあらゆる情報を提供し仮想空間に蘇らせようとする。その過程で、結果的には事故死であった母の「自由死」(その頃には合法化されているという設定)の願望の「本心」を探りつつ出会う人々との交流によって、自己の存在の意味が複雑に揺れ動く。なかなかに哲学的な小説だが、とても読みやすく一気に読めたのでした。

◉『朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉、実業之日本社、2011)
「ホジュン」とか「商道(サンド)」とかの韓国歴史ドラマが面白かったのでその背景を知りたいと思って読んでみましたが、ごく一般的で歴史ドラマ好きを意識した王朝史で、あっそ、という感じでありました。

◉『上海雑談』*(陳舜臣、NHK出版、2000)
『阿片戦争』を読んだこともあってふと手にした陳さんの本。NHKのドキュメンタリー番組関連のインタビューで、写真が多く挿入され、内容的には軽く読める。三国志、チンギス・ハン、耶律楚材、林則徐、孫文など、中国史に登場する人物に対する評価はなかなかに面白い。

◉『キャッチャー・イン・ザ・ライ』***(J.D.サリンジャー/村上春樹訳、白水社、2006)
 何十年も前に読んだはずだけど、読み返してみて改めて名作だと再認識。村上春樹の翻訳も素晴らしい。学校を退学となり、特に目的を持たず冬のニューヨークを彷徨い、自分が関係してきたあらゆる人間の言動、仕草、服装、表情、癖、社会的地位などをくさして落ち込んでいく17歳の少年のほぼ1日が描かれる。実に巧みな構成で彼の思考の流れが続き飽きさせないのがすごい。青春のある時期、知り合いやら両親やら学校やらすべてこの世から消えたらいいと、きっと誰しも経験する鬱屈した心情が蘇ってくる。ああ、ワダスもそうだったなあと思いつつ一気に読んでしまったのでした。最後の方で少年の先生でもあったミスター・アントリーニが主人公に言う言葉は、世界のどこの人にでも当てはまるのではないか。
「(落ち込むという)そういう一連の状況は、人がその人生のある時期において何かを探し求めているにもかかわらず、まわりの環境が彼にそれを提供することができない場合にもたらされる。あるいは、まわりの環境は自分にそれを提供することができないと本人が考えた場合にね。それで人は探し求めることをやめてしまう」)
 また近いページにヴィルヘルム・シュテーケルという精神分析学者が書いたという文が引用されていて、その内容もなかなかです。)
「未成熟なるもののしるしとは、大義のために高貴なる死を求めることだ。その一方で、成熟したもののしるしとは、大義のために卑しく生きることを求めることだ」

◉『妖怪少年の日々/アラマタ自伝』**(荒俣宏、角川書店、2021)
  少年時代に芽生えた魚類やら妖怪やら読書やらといった好奇心をそのまま持ち続けて結果的に膨大な知識を持つに至ったプロセスが面白い。学生時代から読んでいた「遊」という雑誌によく登場していたので気になっていたけど、改めて、ああこういう人だったのかと分かったのでした。著者はワダスとほぼ同世代。彼の成長プロセスとその結果が山形の田舎で育ったワダスとはまったく異なることは当然ですが、ニッチな世界にはまり込んだという意味ではどこか共通点があるような気がする。ベストセラーだったので敬遠していたけど『帝都物語』も読んでみようかな。

『AI親友論』*(出口康夫、徳間書店、2023)
 きちんとした定義すら定まっていない今流行のAIと人間の関係について考察したものだが、著者の人間観や社会観を「わたし」から「われわれ」に転換すべきだという主張が主な内容になっている。使われている言葉はいわゆる哲学者っぽくはないものの、著者の使う簡単な言葉の定義をしっかり理解しないと簡単なのにちんぷんかんぷんという読後感に陥りやすいかもしれない。著者のいう「WEターン」という概念はなかなかに新鮮に思えたのでした。

◉『索引の歴史』未読了(デニス・ダンカン/小野木明恵訳、光文社、2023)
 ある程度アカデミックな本には索引というものが付いている。この索引がいつどこでなぜ始まったのかについて書かれている。もともとはある単語や語句が聖書のどこにどのように書かれているかを示すためだったという。また、索引を専門に扱うインデクサーという職業もあるのだという。知らなかったなあ。膨大な量の見慣れない固有名詞に、読書というよりも資料を相手にしている感じになって、断念。久代さんは読み切って「面白かった」と申し述べたのでしたが。

◉『古書街を歩く』(紀田順一郎、徳間文庫、1992)
 読んでいると、モノとしての本が古書として流通していた時代が懐かしく感じられる。紙からデジタル化という流れの中で本を取り巻く状況は大きく変わってきているけどこれからどうなっていくんだろうか。

◉『実験音楽』*(マイケル・ナイマン/椎名亮輔訳、水声社、1992)
 ミニマル・ミュージックの代表のようなテリー・ライリー、ラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒなど、アメリカの実験音楽を推進した作曲家たちが実はインド音楽をはじめとした非西洋音楽に影響を受けていたというようなテーマで開いたCAPの講座で、対談相手の下田展久氏が持ってきていたのを借りて読んだのでした。訳者は知り合いの音楽学者、椎名亮輔氏。和声を基本としたいわゆる西洋古典音楽が行き詰まりそれに代わる方法を模索した音楽家たちの作品について語られる。音楽家やその作品が数多く登場し、読み物としてよりもある種のデータを眺めるような感じでした。

◉『海の都の物語』*1、2、3(塩野七生、新潮文庫、1980)
 ローマ帝国ものなど多くの作品が出ていて人気がありそうなのでこれまで避けてきた塩野七生の本を初めて読んだのでした。先日我が家を訪ねてきた学生時代からの友人の小出重幸氏の話がきっかけでした。ベネツィアに関するドキュメントのような物語で、この都市国家の成立からその社会的仕組みや興亡は知らないことが実に多い、というかほとんど知らなかったことに気が付く。また同時に、作者がこの都市国家のあり方を好意的に描写していることに、歴史というのは史実の積み重ねというよりも書いた人間の物語的想像力によるものだとつくづく思うのでした。

◉映画「沖縄狂想曲」(監督・構成/太田隆文、2024)
 2時間弱の映画で、数多くの関係者へのインタビュー証言によって、沖縄を巡る様々な矛盾、問題、日米政府によるインチキなどが見えてくる。

2023年

2023年11月29日(水)

◉『アトラスの使徒』*上下(サム・ボーン/加賀山卓朗訳、ヴィレッジブックス、2008)
 なりたてのニューヨーク・タイムズ記者の妻の誘拐が発端になり、世界各地で不可思議な殺人事件が起きる。それがユダヤ教の古代説話を現代に蘇らせようとする極端なキリスト教教団の盲信によるものであることが次第に明らかになっていく。まあまあ面白いけど、似たような作品のあるダン・ブラウンと比べると小説世界の規模がひと回り小さい。

◉『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』*(湯澤規子、ちくま新書、2020)
 副題は「人糞地理学ことはじめ」となっている。本文でも触れられている、お尻を何で拭くのかの地域調査とか、世界各地の糞尿排泄事情とかはなかなかに面白い。地理学とも結びつくとのことだが、人糞地理学という用語はちょっとピンとこない。ともあれ、近年までつまり第二次大戦までは日本では肥料としての認識でもあったウンコが、生野菜をサラダで食べるアメリカ占領軍の習慣が入ったことで処理すべき汚物となった。今や現代の我々には、ウンコが生産循環の一部を担うことはなくなった。なのでウンコは水洗便所と屎尿処理施設の整備で臭く無用な物質に成り下がってしまったという。統計データを多用し学術論文的表現なのでタイトルに期待したものとはちょっと違っていたが、知る価値のある話題だと思ったのでした。

◉『チョムスキーが語る戦争のからくり』*(ノーム・チョムスキー+アンドレ・ヴルチェク/本橋哲也訳、平凡社、2015)
  欧米支配層による世界支配、搾取、強奪、不正などを鋭く批判してきたチョムスキーと、彼の指摘するひどい現実の場所に住んだり歩いたりしてドキュメントや文章を発表してきたジャーナリスとの対談。彼らが指摘する救いがたいありようにはある種の爽快感すら覚えるけど、こんなふうに世界をひとまとめに解釈できてしまえるものなのか、ちょっと疑問も湧いてしまう。チョムスキーが本文の最後の方に引用していたエマ・ゴールドマン(ほぼ100年前にアナキストとして活動した女性で、自伝がなかなかに面白かった)の言葉が気になったので書いておきます。「もし選挙が何かを変えるとすれば支配者たちは選挙を違法とするだろう」。

◉『超圧縮地球生物全史』*(ヘンリー・ジー/竹内薫訳、ダイヤモンド社、2022))
 40億年前の発生から今日まで、まさに超圧縮の生物史。それぞれの時代の生物が擬人化して説明され、恐ろしいスピードで進化の歴史が進む。訳がよくこなれていて読みやすいものの、人間が出てくる前が当然ながらとても長く、しかも見慣れぬ名前だらけの生物が次々に登場しあっという間に去っていくので読み物としてよりも大雑把な資料として眺めるのがいいかもしれない。

◉『クロード・モネ』**(ロス・キング/長井那智子訳、亜紀書房、2018)
 印象派の巨匠、代表作の睡蓮、くらいしか知らなかった画家の比較的晩年の様子が描かれている。若い頃から光の移ろいの全てを描きこもうと試みたが、うまくいかなければカンバスを打ち壊すほど怒り狂い、後年、失明寸前になって手術や高価なメガネレンズなどでなんとか視力を回復しようとするもかなわず、フランス第一の画家と称されるようになった晩年には大規模絵画の展示場建設のために政府や建築家と交渉してもときに約束を裏切り、最終的にそれらがオランジュリー美術館に納められたのが死後であった、などなど、モネとその周辺の人間模様が描かれている。モネと交流のあった政治家クレマンソーが歌麿や北斎などの浮世絵の大コレクターであったとか、モネ家の食堂には浮世絵が並び、睡蓮のある池には日本庭園風の橋がかかっていたとか、モネの作品に高額の小切手を躊躇なく切った松方幸次郎とかのエピソードも興味深い。

◉『大国の興亡』**再読(ポール・ケネディ/鈴木主悦訳、草思社、1988)
 これを読むと、近代のヨーロッパが、富や民族構成や宗教のほんのちょっとしたバランスの崩れで、第二次大戦まで休むことなく戦争をし続けてきたこと、そして現在のウクライナ戦争、ガザの悲劇のように同じことが形を変えていまだに続いていることに驚いてしまう。結局、人類は何も学んでいない。印象に残った文を引用しておく。「相対的に衰退している大国はおのずと『防衛』費を増やして抵抗しようとする。その結果、潜在的な資源を『投資』には向けず、長期にわたるジレンマをいっそう大きくするのだ」。なんか、今の日本政府の進めようとする方向そのままのような気がしてくる。

◉『アポロ18号の殺人』上下(クリス・ハドフイールド/中原尚哉訳、ハヤカワ文庫SF、2022))
 実際には存在しなかったアポロ18号が打ち上げられる。米ソ対立下でその目標が国家的威信から軍事的なものに変わり、双方の軍人である宇宙飛行士が交錯する。ま、国際軍事謀略小説ともいえますが、作者が実際に宇宙飛行士だったことから、打ち上げから帰還までの詳細や心理がリアルに感じられる。箸休めの読書としてはなかなかでした。

◉『Nの回廊』***(保坂正康、講談社、2023)
 Nというのは2018年に79歳で自殺した元東大教授西部邁のこと。著者は昭和史を中心に多くの著作のあるノンフィクション作家。この本を読むまで全く知らなかったけど、二人は札幌の中学に同じ汽車で通学し密度の濃い交わりがあった。西部邁については、唯一読んだ彼の最後の著作『保守の遺言』にあった「マス(大衆)は現在の一瞬あるいはごく短期の近未来にしか関心を持たぬまま生き延びて、気が付いたら死んでいる人々」であり「おのれらの生息する社会が公共基準を必要としているということに対する配慮、それがマスにあってはきわめて少ない」といった本質をついた痛烈な言葉や「自裁死」が印象に残っている。こうした言動の背景に何があったのかを、人付き合いが苦手で読書少年であった著者は、中学通学途上や、それぞれが後に有名になってからの交流の断片を通して浮かび上がらせる。主な交流の場が札幌であることや、名前だけは知っていた唐牛健太郎(元北大教養部学生自治会委員長、後に全学連委員長)のこと、学生運動など、一世代遅れとはいえワダスには馴染みの風景や人物が登場するので読んでいて懐かしさを覚える。ワダスの学生時代と比べても、中学や高校時代にこんな密度の濃い交流があり、一定の距離を取りつつ最後まで友人同士という関係が羨ましく、それを綴る著者の誠実さや共有していた孤独感がじわじわ伝わってくる。

◉『ル・コルビュジエ モダンを背負った男』**(アンソニー・フリント/渡邉泰彦訳、鹿島出版会、2023)
 近代建築のアイコン、ル・コルビュジエの生涯と作品を辿った本。有名な作品の解説とともに、彼の考える建築物や都市計画を実現しようとする意志、あるいは多数の「いいね」を求めるために、時にはナチスの傀儡政権であったヴィシー政権にも近づいていったことなども紹介されている。印象に残ったのは、代表作とされるサヴォア邸や集合住宅がその「美しさ」とは裏腹に実際は欠陥だらけでものすごく住みにくい建物であったこと、自身の建築思想のためには依頼主の意見すら聞き入れず傲慢に進めたこと、アメリカではほとんど評価されなかったので傷ついていたこと、賛否あるものの彼の進めた近代都市建築の発想が現代にも生かされていてその先見性がいまだに生きていること、ロマ出身の妻があったにもかかわらず、長期の海外出張の度に別の女性と関係を持ち、セックス依存症とも思える私生活などなど。
 ワダスらがインドで生活していた頃、アフマダーバードにある彼の設計した建物を見に行ったことがあったけど、都市をまるごと設計したチャンディーガルにも行けば良かったとちと残念。著者の彼の評価の例えが何となくわかりやすい。「仮にフランク・ロイド・ライトをビル・ゲイツだとするなら、ル・コルビュジエはスティーヴ・ジョブズ、サヴォワ邸はさしずめiPhoneだ」

◉『将棋の日本史』*(永井晋、山川出版社、2023)
 将棋の八冠を達成した天才、藤井聡太さんが騒がれているのでふと手にとった一冊。古文書の解説が主の歴史書なので面白い読み物とは言えないが、将棋というゲームがインドや中国を経てどんな風に日本に定着したのかがわかる。平安時代の文献にも現れているが、将棋は当初はゲームというより兵法の学習用であったらしい。駒数も時代によって変化した。少年時代にはちょっと遊んだけど、あまりに弱いのですっかり遠のいてしまったゲームですが、その歴史はなかなかに奥深いものであることがわかる。

◉『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』*(小野寺拓也+田野大輔、岩波ブックレット、2023)
 ワダスは見たことはないけど「ナチスは良いこともした」という言説がネットで飛び交っているという。自然保護、動物保護、アウトバーン、タバコやアルコールの消費抑制をはじめとした健康増進、健全な家族の育成、労働政策、多産の母親の顕彰などなど、当時のナチスの個々の政策を表面的に見ればいっけん「良いこと」のように見えるかもしれないが、その人種主義的背景や全てが戦争準備のためであったことを検証し、指摘し、否定する、というものでした。

◉『人間晩年図巻 1990-94年』(関川夏央、岩波書店、2016)

◉『人間晩年図巻 1995-99年』(関川夏央、岩波書店、2016)
 箸休めに借りた軽めの読み物でした。有名人、たまにワダスの知らない人、たまに外国人の略歴、晩年、死去年、死因などが短い文で紹介されている。掲載された多くの人々の享年が今のワダスの年齢よりも若いのを知ると、いつこの世から消滅してもおかしくない年齢になっていることを改めて思い知るのでした。

◉『ダーウィン・ヤング 悪の起源』**(パク・チリ/コン・テユ訳、幻冬舎、2023))
  居住区が階級ごとに異なる土地の最上級区に住み、高級官僚の父をもつ少年が主人公。その父親や祖父の忌まわしい過去に触れたことで揺れ動く少年の思考や行動が描かれる。世界のどこでもないまったくの架空の社会を舞台に、30歳で亡くなったという作者がこれだけ綿密で想像力溢れる小説を書いたことに驚く。
 この作品は著者の最後の作品で、後に韓国でミュージカルになり日本版もあるらしい。知らなかったなあ。文中に「植物が太陽の光を受けて成長するように、人間は他人の視線を受けて成長する」というような表現がちょっと印象に残ったのでした。

◉『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』**(伊地知英信、草思社、2023)
『ファーブル昆虫記』は有名な本なので学校の図書室にあり、子供向けの要約みたいなものを眺めたかもしれないが、実際に読んだという記憶はない。海野和男氏の写真が半分入った重い上質紙のこの本でようやくファーブルがどんなことを書いていたのかを知った。今から二百年前に生まれたファーブルの生い立ちや家族(すごい子沢山だった)、生活、環境などが要約されている。また全10巻になるオリジナル『昆虫記』の興味深い抜粋が紹介されている。 「(狩バチが)獲物に針を刺す一点はハチの刺しやすさではなく麻酔がよく効く一点である。そこは獲物の神経節が集まった狭い一点なのだ」 「では、(セミの)雄が鳴く理由は何か。メスを呼ぶためとよく言われるが本当か。鳴くセミの近くで大砲を撃つ。しかしセミは知らん顔で泣いていた。セミは生きる喜びのために鳴いているのではないか」 「星はとてつもない距離や質量の大きさで我々を驚嘆させるが、小さな生きた虫は、興味深さの点でそれを遥かに凌駕している」

◉『漢字と日本人』***(高島俊男、文春新書、2001))
 中国語が専門の著者による、日本語の奇妙さについて書かれた本。著者は、日本語は混乱と矛盾を抱えつつそのまま安定して今日の形になったという。つまり、まずは、大和ことばという文字を持たない言語に文字一つ一つに特有の発音と意味のある中国文字が持ち込まれる。その後、時代や場所によって発音が変化した漢字(漢音と呉音)が仏教を通じてさらに流入する。しかし、漢字だけでは具合が悪いので表音文字としたカナを作り、漢字と混ぜて文章を綴るようになる。明治になるとさらなる大変化が起き、欧米人になるのよねと欧米語を学んだインテリが欧米の概念を普及させるために新しい漢字を大量に作りだす。敗戦後は、間違いだらけだった過去は捨てるのよねと漢字の数を大幅に減らそうとし、またしても矛盾や混乱が拡大した。こうした時々に生じた混乱と矛盾が整理されることなく今日まできてしまい、日本語の奇妙な側面はもはや後戻りのできない状況になっている。日本語がどれほど奇妙かは本書を読んでいただくしかないが、英語の表現や漢字の使い方の例を出してわかりやすく解説されていて、実に面白く納得できた。印象に残った文章を紹介しておきます。)
「西洋人はたしかに、体力も地力も強く、芸術的感性にもすぐれ、なにごとにも積極的な性質を持った優秀な人種である。しかしまた彼らは、自分たちが石の家に住んでいるから泥の家や木の家より石の家のほうが『進んでいる』と思い、自分たちが教会と集会所を持っているから教会と集会所を持つ者が『進んでいる』と思い、自分たちがキリスト教を信じているからキリスト教を信じる者が『進んでいる』と考える、いたって簡単な精神の持主なのである。だから、人類の歴史を一本道のようにしかとらえられないのである」)
 明治時代に文部大臣だった森有礼は、日本語は捨てて日本の国語を英語にしようと唱えた。さらには「森はまた、言語だけでなく人種も変えるべきであるととなえ、日本の優秀な青年たちはアメリカへ行って、アメリカ女性と結婚してつれ帰り、体質・頭脳共に優秀な後代を生ませよ、とすすめた」。おいおい、まじかよ、と言いたくなる。

◉『ビジュアル 日本音楽の歴史 近代-現代』(塚原康子、ゆまに書房、2023)
 明治から今日までの日本の音楽の歴史がコンパクトに解説されているが、いかにも教科書的。上質紙の写真付きということもあり、薄いわりに重く、寝っ転がって読むにはちとしんどかった。

2023年8月29日(月)

◉『保守の遺言』*(西部邁、平凡社新書、2018)


 2018年1月に79歳で自殺した著者の、オレ以外の日本人はバカだ、というようなことを全編言い続けた最後の著作。外国語まじりの難解な言葉と文脈に、下賤な罵り言葉が混入した不思議な文章が延々と続く。「巷間に溢れているのはカネやモノやクスリに関する言葉だけ」とか、首相であったアベを実際主義者と呼びその特徴を「現在に関する視界が狭い」「未来に関する視野が短い」とバッサリと言い切り、マス(大衆)は「現在の一瞬あるいはごく短期の近未来にしか関心を持たぬまま生き延びて、気が付いたら死んでいる人々」であり「おのれらの生息する社会が公共基準を必要としているということに対する配慮、それがマスにあってはきわめて少ない」といった言葉にスッキリするが、こんな断定できるほど自分自身がマスの一部ではなかったと言えるのだろうか。

◉『四角形の歴史』(赤瀬川原平、ちくま文庫、2022)
 薄く軽く文章が少なく絵入りなので10分で読了。1冊を読み切った最短時間。とはいえ、それぞれの文章や絵は味わい深い。

◉『インタビューズ』**(クリストファー・シルヴェスター編/新庄哲夫ほか訳、文藝春秋、1998)
 分厚く重い(800g)。スターリン、フィッツジェラルド、ツヴァイク、ピカソ、ガーンディー、フルシチョフ、ヒッチコック、ヘミングウェイ、ケネディ、マリリン・モンロー、ナボコフ、ジョン・レノン、サッチャー、毛沢東など、歴史上よく知られた人物38名へのインタビューはなかなかに面白かった。インタビューを受ける人々の口から話されると、書かれたものとは違ったビビッドな人物像が浮かび上がる。しかし何よりも読み応えがあり印象に残ったことは、聞き手の想像力と表現力の豊さでした。

◉『ぼくらはそれでも肉を食う』**(ハロルド・ハーツォグ/山形浩生+守岡桜+森本正史訳、柏書房、2011)
 人間と動物の関係を考える人間動物学という学問分野があることを初めて知りました。世の中には、特にアメリカに多いらしいけど、動物にも人間と同等の権利があり、その権利を犯すような接し方、つまり実験に使ったり、残酷な殺し方をしたりすることに反対する人々がいる。極端な例では、動物実験を行っている研究者を襲うなどとテロリストのようになる人もいるらしい。そこまで過激ではないが周りにもビーガン、つまり純粋菜食主義者が何人かいる。我々はこれまでずっと肉食主義できて、そのことになんの問題も感じてこなかったし、そもそも人間は古来肉でも魚でもなんでも食べ、それらの動物の骨やら筋肉やら羽やら毛皮やら内臓やらを加工して衣類や生活道具を作り利用してきて今日まで生き延びてきた。
 しかし、鴨南蛮そばを食いながら、矢が刺さった鴨のニュースに「なんてひどいことを」とか思ってしまう。台所に現れるゴキブリやネズミと、飼い犬や猫、知的とされるイルカやチンパンジーのように、殺していい動物とそうではない動物の境界線はどこにあるのか、なんてことを真剣に考える始めると、人間がとても偽善的な生き物であることが浮かび上がってくるという。というわけで、今までほとんど考えたことがなかっただけに新鮮な読書でした。

◉『人口で語る世界史』**(ポール・モーランド/渡会圭子訳、文藝春秋、2019)
 自然な状態では、生活資源は算術級数的に増加し、人口は幾何級数的に増加する。なので、人口制限をしなければいずれ生活資源は枯渇し貧困化は免れない、と18世紀後半にマルサスが述べたとされる。しかし、19世紀に入り、まずイギリスで人口が大幅に増え、それが次々と他の世界に広がり、その結果、その後の歴史は重大な影響を受けた、という著者の見方に納得した。歴史はもちろん人口動態だけで変化するわけではないが、人口動態は戦争など国際関係にも大きな影響を及ぼしていると。人口増加の原動力は、乳幼児死亡率の低下、出生率、移民だという。産業革命、植民地によって富が増大したイギリスは、北米などに大量に人が移動してもなお本国の人口は増加し、それが大英帝国の繁栄に寄与したと。しかし、近代化、都市化が進むと、女性の教育、雇用、避妊具の発達などによって一人が産む子供の数は減っていき、やがて人口は減少へ向かう。極端な人口抑制政策をとった中国やインドの例もあるが、近代化によって減少し、政治による人口動態のコントロールはあまり成功しない。アメリカ、ヨーロッパはそうした減少を他の地域からの流入によってある程度の均衡を保っているが、流入が極端に少なく、婚外子への嫌悪、女性の教育水準の高さと自立、結婚やセックスに興味のない草食系男子の増加などによって日本では人口減少は止まらないだろうと著者は予測する。「異次元の少子高齢化対策」に実効性があるとはとても思えないなあ、と思ってしまうのでした。ともあれ、現在の世界を理解するにはこうした視点は欠かせないと思う。

◉『コロナ後の世界』**(大野和基編、文春新書、2020)
 ジャレド・ダイヤモンド、ポール・クルーグマン、リンダ・グラットンなど、「世界の知性」のインタビューをまとめたもの。なんだか、こうすれば売れそう、という感じで出されたようにも見えます。それぞれの「知性」にはそれぞれ深い洞察と思考があるけど、新書なのでどうしても通りいっぺんの記事になってしまった点が残念。印象に残ったのは、スティーブン・ピンカーのポジティブな指摘。「多くのジャーナリストは現状に満足することを防ぐために、ネガティブな内容を報道して、人々に行動を起こさせることが義務だと思っています」というのはとてもうなづけるのでした。

◉『偉い人ほどすぐ逃げる』*(武田砂鉄、文藝春秋、2021)
 著者の、社会の観察者としての感覚はまっとうとも思えるが、「偉い人」たちの矛盾に満ちたおかしさと人々の忘れやすさを利用した責任逃れの醜さを延々と綴られても、どうしてそうなるのかとか、こうすればいいんじゃね、というようなことをもっともっと深く掘り下げていけば、単なる軽い読み物以上になったものをと残念に思うのでした。それにしても、日本の「偉い」人たちの、町内会的ノリで物事を決めていくあり方には、それがあまりに広範囲に浸透しているので絶望的な気分になる。

◉『帝国の落日』上下***(ジャン・モリス/椋田直子訳、講談社、2010)
 いろんな本は読んで、ああこの本に出会えて幸福だった、という感覚になることは滅多にないけど、このそこそこに厚い上下本には久々に幸福感を味わうことができたのでした。内容は1897年のビクトリア女王即位60周年記念式典から1965年のチャーチルの死去までの大英帝国盛衰記です。とにかく面白い。どんな本かは、上巻冒頭の序文でうまくまとめられているので引用します。「帝国という理念が輝きを失い、国民の関心が薄れるとともに、帝国の美も色褪せたのは否定できない。さわやかな美しさばかりだったとはいえないが、壮麗さと生命力に溢れていたのは事実である。そして、大英帝国が傲慢なまでの確信と、神意による徳行の意識を失ったとき、帝国の形は見事さを減じ、輪郭は明確さを減じた。したがって本書が綴るのは、惜しがる気持ちを伴わない哀しさである」。先の『人口で語る世界史』に続けて読み、現在翻訳しているインド音楽の歴史とも関係しているせいか、壮大でその没落が物悲しいイギリスという島国になんとなくシンパシーを感じ、わが日本も似たような道を辿っているのかと思えてくる。

◉『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』(山岸俊男、集英社インターナショナル、2008)
「社会心理学から見た現代日本の問題点」(副題)を指摘しようとした本ということになっている。「横並び意識」「集団主義的」などなど、これまでよく世間で言われてきた「日本人性」は、基本的に他者を信じることができないということから来ているという。日本人が利己主義的であるということは我が身を振り返れば納得できるが、議論がちと大雑把に感じられる。著者は、人間には心の道具箱があり、一つは「信頼性検知能力」であり、もう一つが「関係性検知能力」なのだという。他者を信じられないので「信頼性検知能力」は育まれず、いわゆる空気を読む、つまり「関係性検知能力」にたけていると。なるほどと思いますが、ワダスにどうしろというのか。

◉『面白くて眠れなくなる数学』(桜井進、PHP文庫、2017)
 タイトルに惹かれて読んでみたが、あまりにつまらなくて眠くなったのでした。数学周辺の話は面白くて、これまでもいろんな本を読みましたが、面白いかどうかは著者の想像力の幅によることが、この本を読んで諒解したのでした。同じシリーズの『面白くて眠れなくなる進化論』(長谷川英佑、PHP研究所、2015)はとても面白かったのに、残念。

◉『隠れナチを探し出せ』***(アンドリュー・ナゴルスキ/島村浩子訳、亜紀書房、2018)
 ちょっと時代遅れで、もういいんじゃないのという気分もなくはない気が滅入る話題だが、あまりに面白くて一気に読んでしまったのでした。本書の「はじめに」に「ナチ戦犯のほとんどはヒトラーの後を追う気などなかった。低い位の者は隠れようとすらせず、新生ヨーロッパで人生を立て直そうとする何百万もの人々の中に素早く紛れ込んだ。もう少し危機感の強い者は大陸を離れた。どちらもカメラーデンと呼ばれるナチ残党のネットワークや忠実な家族の助けを借りて、長いあいだ戦犯としての責任を逃れることに成功した」とある。本書は、こうした隠れナチを誰がどのようにして探し出したのか、狩る側と狩られる側双方の背景、その結果と社会的意味などを、客観的、普遍的視線で描いていく。狩る側の執念が復讐から社会教育へと変化し、それが現在のドイツ人たちの贖罪心理へと導いたというあたりは、日本が同じようなプロセスを経ずに今日まで至っていることと比べると考えてしまう。

◉『2052 今後40年のグローバル予測』*(ヨルゲン・ランダース/野中香方子訳、日経BP社、2013)
 2052年に世界はどうなっているのかを予測したとても分厚い本。数字を中心にしているので現実感は薄い。人間は、長期的視点に立って未来に予想される危機に一丸となって対処するという思考をとることがなく、各地域で対策はそれなりに取られ改善される物事はあるにせよ短期的・利己的にしか動かないという前提が著者の予測の視点で、今から30年後、つまり我々がこの世にはいない2052年はあまり明るいとは言えなさそうです。

◉『世界を救う100歳老人』**(ヨナス・ヨナソン/中村久里子訳、西村書店、2019)
 能天気で超楽天的な101歳のスエーデン老人の主人公のその場限りの思惑や行動が、実名で登場する金正恩、プーチン、トランプ、メルケルやらの「国際政治」的判断を混乱させ困惑させ、最後はほっこりさせるドタバタ活劇。『窓から逃げた100歳の老人』の続編です。『国を救った数学少女』『天国に行きたかったヒットマン』『窓から逃げた100歳の老人』とこの著者のものは以前に読んでゲラゲラ笑ったものでしたが、今回もなかなかに楽しめたのでした。

◉『空白を満たしなさい』(平野敬一郎、講談社、2012)
 自殺したとされる男が生き返り「実は殺されたのだ」と主張し殺した犯人を探し出す、というなんとも不可思議なお話ですが、途中で挫折しました。

◉『コルシア書店の仲間たち』***(須賀敦子、Kindle版)
 温泉の湯船に浸かって読み、幸せな気分になりました。何度読み直しても須賀敦子の文章は素晴らしい。

2023年5月29日(月)

◉DVD『大震災・町の変貌全記録』**(喜多章)
 古くからの知人の写真家、喜多さんから「震災の時の写真を整理してDVDを作ってみたんやけど、HIROSさんのバーンスリーの音がぴったりだったので使うてもええ?」という電話をもらって快諾すると送られてきたのでした。阪神淡路大震災の当日から1年間撮り続けたスチール写真がワダスの演奏を背景に次々と現れ、あの時の記憶が鮮明に蘇ってきました。で、このDVDは「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」(〒651-0073 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5−2 東館)に寄贈されたとのことです。興味のある方は見てみてください。後日、喜多さんからはさらに『大爆発 日本の祭り』『Water 水 H2O』『村野藤吾×仕事痕跡』のDVDもいただきました。どれも皆貴重で素晴らしい写真です。ものすごい数の写真を取捨選択して音楽つきでこういうものを作るのは大変だろうなあ。これって販売しているんですかねえ。

◉『骨董病は治りません』*(武田良彦、神戸新聞総合出版センター、2022)
ある日この本が送られてきたのでした。著者が思い出せなく誰だろうと思って開いてみると、表紙の裏に「めんこい通信いつもありがとうございます」という紙片がパラリと落ちてきてきました。とりあえず前書きを読んでみると、著者は山形出身であることが判明し、思い出しました。神戸新聞社に勤めていた山形出身の方でした。お会いしたのは2度ほどしかなく、ほんの短い会話をしただけなのでお顔のイメージも浮かばない。ともあれありがたくいただき読んでみました。新聞に連載されていたエッセイをまとめたもので、読みやすい。骨董に特に興味はないのですが、骨董品にまつわる歴史や失敗談が面白く、あっという間に読んでしまったのでした。

◉『「社会」のない国、日本』**(菊谷和宏、講談社選書メチエ、2015)
 フランスと日本で起きた免罪事件に対するそれぞれの社会の対応の仕方を考察したもの。軍事スパイの疑いがかけられ、軍のトップがでっち上げた証拠や証言に基づいて有罪となったユダヤ系青年将校ドレフュスの事件、これも証言や証拠をほとんど無視し天皇暗殺計画という理由で幸徳秋水はじめ12人が処刑された大逆事件。この二つの事件に対する二人の文学者、エミール・ゾラと永井荷風の対応の比較から、日本には社会=コンヴィヴィアリテがないと著者は主張し、国家と社会の関係を考察していく。
「国家は社会ではない。人が駒ないし部品として扱われる国家とは、いわば一つの機械、正確に言えば一つの制度、道具である。国家とは公の権威をまとうことで社会のふりをした制度に過ぎない」「国家権力にとって人間社会は必要ではない」「その維持のために社会という人間の共生を犠牲にするのは本末転倒」などなど、著者の主張には頷くことが多いが、読みにくい引用の多さにはちと辟易したのでした。

◉『カメのきた道』(平山廉、NHKBOOKS、2007)
 これまでほとんど考えたことはなかったカメという動物についての話。骨格と一体になった甲羅を含めた体の構造、歯はなくその代わりに角質を進化させてきたとか、引っ込める首の骨の構造とか、カメはなかなかに面白い不思議な動物であることはなんとなく分かったのですが、文章があまりに学者的というか、我々の生活に引きつけた表現が不在なので読書の喜びを感じることができなかったのでした。パラパラと飛ばし読みをしたので読了までの所要時間は2時間ほどでした。

◉『プルーストとイカ』***(メアリアン・ウルフ/小松淳子訳、インターシフト、2008)
 読書という行為が実に精妙な脳の働きによって成り立っていることが、脳科学、認知科学、心理学などを駆使して解説されている。人類が記憶の補助として使い始めた記号は初めは数字や象形などの単純なものであったが、その記号を音声と対応させることで記録量が飛躍的に増加する。音声記号の発見は人類にとってその後のとてつもない発展に繋がり、今ではAIにまで至る。
   読書というのは、目から入力された記号をまず視覚情報として視領域で感知し、その組み合わせが指しているパターンをそれまでの時間や空間、様々な経験などの記憶と照合して意味を汲み取り総合する行為です。これは考えてみればとんでもなくすごいことです。この本には脳の中のいろんな複雑な神経回路の接続で初めて成立することが書かれている。
 全体としてもとても刺激的な本ですが、印象に残ったのは、ソクラテスとディスレクシアの話。ソクラテスは考えを文字で表すことを拒んだらしい。なぜか。一旦文字にすればそれ以上考えなくなる、書かれたものには面と向かって反論できないという理由だったとか。そこから著者は2000年以上たった今日のインターネット経由の文字だらけの状況に、ソクラテスの危惧が現実化していることを指摘する。文字は記憶を外部化してしまうので脳の負担は軽くなるが思考するという意味では逆効果になる。今やあらゆる情報であふれるインターネットの存在によって、人は記憶すべきことを外部化しアルファベットを作り出したような古代人の想像力と創造力が損なわれつつあるのではないか。  読字障害というディスクレシアの話も面白い。音声と記号を対応させることができないという病気が実際にあり、アインシュタイン、エジソン、ダヴィンチ、ミケランジェロ、ロダン、ピカソ、ガウディ、トム・クルーズ、キアヌ・リーヴス、スピルバーグといった有名人がディスレクシアだとは驚きです。
 それにしてもこのタイトルはどうなんだろう。

◉『レジリエンス人類史』*未読了(稲村哲也+山際寿一+清水展+阿部健一他、京都大学出版会、2022)
 最近目にするレジリエンスという言葉は「危機を生き抜く知」という意味だと紹介されている。紙質の関係か、とても重く(650g)、人類学をはじめとした多くの学者の専門的論考が集められた、寝っ転がって読むにはややくたびれる専門書。写真や図版が多いので全体をパラパラと眺め、まともに読んだのは山際さんの部分のみでした。読書用としてよりも資料として手元にあればいいかもしれない。

◉『ペストの夜』***上下(オルハン・パムク/宮下遼訳、早川書房、2022)
トルコ人ノーベル賞作家の最新作。この人の作品はこれまで6冊読んでいますが、本作を含めどれも読みやすいというわけではない。しかし、その独特の雰囲気に浸り切った後の読後感はなかなかに良く、長編映画をたっぷり見たような気分になったのでした。おすすめです。
 19世紀後半、東地中海にあるオスマントルコ領の架空の島で発生したペストの蔓延の様子、西洋で訓練された医師が皇帝から派遣され防疫対策を取ろうとするが、イスラーム地域とギリシャ正教地域に分かれる島民の対立や行政府の対応などでうまくいかないことなど、時代設定、舞台となった場所の違いはあるものの現在のコロナ禍の状況とも共通する。また強大な版図と力を誇ったオスマン帝国が崩壊していくプロセスもなんとなく想像できる。オルハン・パムクは、カズオ・イシグロや村上春樹のように、今やボーン・トランスレイト、つまり発表されたると直ちに各国語に翻訳される作家の一人らしい。

◉『黒いアテナ』上下/未読了(マーティン・バナール/金井和子訳、藤原書店、2004)
 全体にパラパラと眺めてみたけど、結局読みきれず諦めたのでした。それに寝転んで読むには分厚くて重い。550ページ、850gもある。
 古代ギリシアの文明を築いた人々は「黒いアテナ」であったというのが全体の主旨。古代ギリシアが作り上げたとされる民主主義、科学、哲学の延長上にヨーロッパ文明があるみたいな、なんとなくの理解が覆され、欧米人にもショックを与えた本らしい。こうしたイメージは18世紀の主にドイツで捏造されたイメージだったと。大理石のギリシア彫刻のイメージからすると、古代ギリシア人は今の欧米白人のようだったように思い込んでいたけど、どうもそうではないらしい。
 まともに読んだのは上巻の序前の小田実の「『黒いアテナ』のすすめ」でした。小田の文章はとても分かりやすい。

◉『お金とアート』(山本豊津+田中靖浩、KADOKAWA、2020)
 タイトルにちょっと惹かれて読んでみたけど、画廊経営者と会計士の対談で、ほとんど学習できる内容ではなかった。

◉『ものがたり西洋音楽史』**(近藤譲、岩波ジュニア新書、2019)
 中世から現代までの西洋音楽の流れがよくわかる。著者が冒頭で述べているように、これは一つの物語である。全体の流れは一般的に受け入れられているものに近いが、様々な資料の解釈によって異なった歴史の物語もありうると思う。ともあれ、いわゆる西洋クラシック音楽をざっと見渡すにはいい入門書だと思います。

◉『現代音楽史』**(沼野雄司、中公新書、2021)
 西洋古典音楽の調性のくびきからの解放を目指した音楽家たちの試みをたどる現代音楽史の概観。12音技法、セリー、トーンクラスター、非楽音の使用、メタ音楽、偶然性の音楽などなど、創造性に掻き立てられて試みられた芸術「音楽」が次第に聴衆からどんどん離れていった様子がよくわかる。『ものがたり西洋音楽史』と合わせて読んでみると、いわゆる西洋クラシックの大まかな流れが俯瞰できる。非予定調和的音楽のジャンルが広がり、それがクラシックの延長なのかフリージャズなのかポップスなのかの区別がつきにくくなっている感じですが、楽譜があるかないかで区別されるという指摘で納得。

◉『彼は早稲田で死んだ』(樋田毅、文藝春秋、2021)
 早大生、川口大三郎が革マル派によって殺された1972年当時の早稲田大学内で起きていた状況を、反暴力を掲げた学生自治会委員長だった著者が克明に描写した記録。全く同じ時期に山形の田舎から学生として札幌にやってきていきなり学生運動のうねりに巻き込まれることになったワダスの体験とオーバーラップするので今日深く読みました。今から考えると、当時は本当に何もわからないのに全てがわかったような全能感で突き動かされていたことを思い出した。

◉『隠し剣秋風抄』*(藤沢周平、文春文庫、2004)
 箸休めの短編集。高級な和食コースに出てくる小鉢を続けて食べているような感じです。

◉『トルコから世界を見る』**(内藤正典、筑摩書房、2022)
 新書版であっという間に読めますが、内容はきちんとしていて参考になります。ヨーロッパとアジアの結節点にあるトルコから見ると世界はかなり違って見える。日本にいるとトルコの情報は(世界情勢全般についても言えますが)、欧米バイアスがかかっているのです。

◉『気流のなる音』*(真木悠介、ちくま文庫、1986)
 ワダスと配偶者がインドに関心を持っていた頃にちょっと流行ったカルロス・カスタネダの名前を久しぶりに思い出した。メキシコ北部に住むインディオの呪術師ドン・ファンとカスタネダの対話を通して、西洋哲学や近代合理主義の枠を超えた自然や自分を取り巻く世界の新しい解釈を試み、人間解放の拠点を探る、というような内容が主になっている。本自体は古いが、いよいよ混沌状態になりつつある現在の世界の状況を見ると、きちんと読んでみても良い本だと思える。「自分がもうすぐ死ぬということではなくて、私たちすべて、やがて死すべき者として、ここに今出会っているということのふしぎさ、いとおしさ」という文章に、確かにそうだなあと頷いてしまうのでした。

◉『創造とアナーキー』(ジョルジュ・アガンベン/岡田温子+中村魁訳、月曜社、2022)
 著者はイタリアの哲学者。哲学書の場合、訳あるいは訳語の選択のせいなのか、読み進めてもまったく理解できない場合が多いけど、この本もその一つでした。「こうして西洋の哲学が観想的生と無為に割り当てていた本質的な役割が了解される。つまり、真に人間的な実践とは、人間という生きものに固有のものである諸々の働きや機能を働かなくさせることによって、それらをいわば空転させ、可能性へと開いてやることなのだ」なんていう部分は、何となくわかるような、それでいてまったくスッと頭に入ってこない。年齢のせいですかね。

◉『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』*(オードリー・タン、プレジデント社、2020)
 近年話題の台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンの、日本の編集者との長時間インタビュー記録。コンピュータ・プログラムを8歳の時から始めたとか、10代でシリコンバレーで起業したとか、祖父母や両親の話とか・・。トランスジェンダーとかの個人的なことはそれほど触れられていないが、彼の「少数の人が高度な科学的知識を持っているよりも、大多数の人が基本的な知識を持っている方が重要である」というデジタル社会に対する基本姿勢から発想される政策調整の考え方は日本も学ぶべきだなあと思うのでありました。

◉『働かないアリに意義がある』***(長谷川英佑、PHP研究所、2015)
 冒頭にも書きましたが、本当に面白い内容なのでおすすめです。

◉『面白くて眠れなくなる進化論』***(長谷川英佑、メディアファクトリー新書、2010)
 『働かないアリに意義がある』に続いて読んだ長谷川英佑氏の本。進化論の大まかな流れや、これまでの理論では説明できない例が見つかっているというようなことが実に読みやすく書かれていて、タイトル通り「面白くて眠れなくなる」本でした。ワダスも進化論や生物学に関連した本は、ドーキンスや福岡伸一など、結構読んできているのですが、多分、最もわかりやすく気軽に読める本だと思います。

◉『科学の罠』***(長谷川英佑、青志社、2014)
 長谷川英佑氏著作の連続です。科学という「思想」について実にわかりやすく解説しています。つまり、(解釈の幅が広い人文科学以外の)科学というのは、この事象はこう仮定すればうまく説明できるのではないかという仮説を立て、その仮説に基づいて事象を観測し、誰が見てもそうだと納得せざるを得ない結果を得て、その仮説が成立していることを表明すると。
 とはいえ、いかに厳密に観測しても必ず誤差は生じるので科学に絶対はない。原発事故で明らかになったように「絶対安全」という学者は科学の信頼性を大きく損なってしまったことなども述べられています。またどんな結果であれそこには人間の価値観は入り込まない。その発見の過程はアートのような喜びを得る行為であると。途中の「分類」については少し冗長な文章が続きますが、これも生物分類学を科学と取り違えている人がいることをはじめ、科学という思想をきちんと理解していない「科学者」が多いことを指摘したいためかもしれません。というわけでこの本もおすすめですが、以前に読んだファインマンの『科学は不確かだ!』(岩波書店、1998)と合わせて読むとより理解が深まると思うのでした。

2023年2月28日(火)

◉『神話と日本人』*(河合隼雄、岩波書店、2003)
『古事記』や『日本書紀』をまともに読んだ人がどれほどいるのかと思いますが、アマテラスやらスサノオやらオオクニヌシやらといった神話に登場する神々やストーリーの一部はなんとなく覚えている。この本はそうした日本神話に出てくる登場人物の行動などを通して、古代から一貫して流れている「かもしれない」「日本人」の世界観を、精神分析的手法を使って読み解いていこうというもの。神話の内容については、へえーっ、そうだったのかという発見がかなりあった。古代の権力者がこの土地の統一性を筋道の通ったストーリーに仕立て、彼らの権力の根拠を記録するという作業が神話だったとすれば、少し疑問に思うのは、地球市民的意識のある現代の我々にも、当時と共通した「日本的心」が果たして流れているものなのかということ。

◉『平成日本の音楽の教科書』**(大谷能生、新曜社、2019)
小学校から高校までの音楽の教科書の中身を紹介した本書を読み、教育にとって音楽がどんな意味があるのか考えさせられた。ワダスも大学でいわゆる民族音楽っぽい講義をしていたが、それにどんな意味があったんだろうかと考えてしまった。
 音楽教育の目的の一つは<我が国と郷土を愛し、個性豊かな文化の創造を図る>(文科省)ということらしいが、教科書に掲載される日本の音楽のほとんどは「グローバル化を終えた音楽だけが残され」、また、いまだに「<豊かな情操を養う>ための最大の題材がベートーベンの交響曲」であり、「義務教育によって勉強することができるのは、商品として売り買いすることができない価値について、なのです」という矛盾。そして音楽を楽しむための基礎的な知識や技術は現在の教科書からでも十分に得ることはできるはずだが、どこかつまらないと思ってしまうのは「学校で教えられている音楽が現実の社会とは切り離された、ある種の<どこでもない場所=ユートピア>で鳴らされているものだ、と、中学生の頃には感じていたからなのだと思います」などなど、著者の指摘には頷くことが多い。

◉『「死」とは何か』*(シェリー・ケーガン/柴田裕之訳、文響社、2018)
「イェール大学で23年連続の人気講座」という惹句に惹かれ読んだ。内容も重量も結構重い(700g)のでベッドで寝っ転がって読むのにはしんどい。とはいえ「死」というものをまともに考える上でなかなか読み応えがある。生が善で死は悪なのか。悪だとしたら死なないことが善になる。しかし、永遠の不死は良いことなのか。高齢の死と若年の死は何が違うのか。よく、若くして亡くなった人に「残念だ。生きていればもっと良いことがあったのに」と言われるが、本当にそう言えるのかどうか。亡くならずに生きていたらもっと苦しかったということもありうる。自殺が正当化される場合だってあるのではないか。などなど、死に関する考察や疑問が延々と展開され、重いはずのテーマがなんだか頭の体操のようにも思えた読書体験だった。

◉『ある男』**(平野啓一郎、文春文庫、2021)
 事故死した結婚相手が戸籍上の名前とは異なる別人だったという、あり得そうでなさそうなストーリーが面白く、一気に読んでしまった。弔いに訪れ、仏壇の遺影を見た夫の兄から「これは弟ではない」と聞いたとき、愛する夫を亡くした妻はその事態をどう受け止めるのか。相談を受けた弁護士は、自身の在日という出自や現在の結婚生活の危うさへの自覚から真相解明を引き受ける。そして最終的に、夫であった別人が実は凶悪殺人犯で死刑になった男の息子であったことが明かされる。戸籍を交換し別人になるという設定が意表をついている。

◉『世界はなぜ「ある」のか』**(ジム・ホルト/寺町朋子訳、ハヤカワ文庫、2016)
 ハイデッガーの『形而上学入門』(ワダスは未読)にある「なぜまったく何もないのではなく、何かがあるのか?」という言葉をきっかけに、古今の哲学書や科学哲学書を渉猟し、存命の著名な哲学者、物理学者、神学者に聞いて回る旅という仕立てで、一般の哲学書にはない気軽さと読みやすさがあった。この問いは「非常に深遠なので形而上学者の頭にしか浮かばないが、それでいて非常に単純なので子どもの頭にしか浮かばない」。たしかにワダスも子どもの時に、なぜ宇宙はあるのか、みたいなことを思ったことがあったけど、いつしか日常にかまけてすぐにやめてしまった。ともあれ、こうした問いにまともに取り組もうとした著者の知的探究心の維持とエネルギーはすごい。もっとも、著者が尋ね歩いた学者がすべて欧米人であることには何かしらアンフェアな感じがする。
 最後の方の15章の頭に引用されたショーペンハウアーの言葉が印象的なので書いておきます。 「人は何千年もの存在していなかった期間を経て、自分が突然存在していることに、大いなる驚きをもって気づく。そして束の間生きたのち、ふたたび、同じくらい長い、もはや自分が存在しない期間に至る。心はそれに反抗し、それは真実であるはずがないと思う」(「存在の虚無性について」)。

◉『資本主義と戦った男 宇沢弘文と経済学の世界』**Kindle版(佐々木実、講談社、2019)
 2014年に86歳で亡くなった経済学者、宇沢弘文の生き方を通して、彼が接したその時々の経済学の考え(まま理解できない部分がありましたが)と彼自身の取り組みがコンパクトにまとめられている。  シカゴ大学教授として宇沢が活躍していたのは、アメリカでミルトン・フリードマンに代表される新自由主義経済学が台頭しつつある時代だった。数学を使うことで「科学的に」見えるものの、非人間的な志向をもち、そうした経済学が国の政策決定に大きな影響を与える状況にあった。そんな経済学に批判的だった宇沢が帰国後、水俣病などの公害や成田空港反対運動などに関わり、より視野の広い社会的共通資本という「思想」に至った過程がよくわかる。
 社会的共通資本(彼によれば、水、空気、エネルギーといった地球環境だけでなく、教育や文化なども含む)を、金銭で取引可能な経済活動とみる考え方に疑問を呈した宇沢弘文の生き方はもっと知られていいように思う。ノーベル経済学賞に最も近かった人、とあったが、ミルトン・フリードマンとかポール・サミュエルソンとか、これまでの受賞者のラインナップを見ていると、賞の評価基準というのはどうなっているのかと考えてしまう。ともあれ、今の状況を見ると、宇沢が批判してきたあらゆるものを金銭で取引可能な対象とみる思想に最も毒されている国が日本ではないかと思えてくる。政府が「少子化対策」というとき、労働力、生産手段としての人間の数が減るから困る、というような発想にしか思えない。

◉『「安全な食事」の教科書』**(ジル・エリック・セラリーニ+ジェローム・ドゥーズレ/田中裕子訳、ユサブル、2021)
 分子生物学者と料理人の対話という形で、現代の我々の食生活に混入される有害物質やGM作物(遺伝子を操作した作物)の問題を語り合う本。単なる消費者である我々には現実に確認することはできないが、モンサントなど、遺伝子操作による種子や特定の害虫を殺す肥料(ラウンドアップなど)の製造販売会社と、彼らから研究費を得て企業に都合の良い「研究」を行いデータを改竄する「科学者」が存在し、そうした「科学者」が客観的であるべき科学雑誌にまで影響を与え、告発する科学者へ陰湿な攻撃を加える、といった状況が世界中で起きていることを知るとなかなかに恐ろしいものがある。ともあれ、食べるという行為、料理するという行為、摂取する我々の味覚や大脳の反応、食べた後どうなるのか、などなどが生物学的視点で述べられ、普段何も考えず行っている食ということについて改めて考えさせられる。と同時に、本当にピュアな自然食品なんてよほどのエネルギーとコストを費やさないと入手できないし、添加物だらけの食品を日常的に摂取していながら特に大きな不具合の自覚もないし、かつこれから何十年も生きるわけでもないので、著者たちのいう状況をほんのわずか自覚することしかできないなあ、と思うのでした。

◉『サピエンスの未来』**(立花隆、講談社現代新書、2021)
「伝説の東大講義」というサブタイトルにあるように、1996年に著者が行った講義を拡張した内容。  古代ギリシアから始まる西洋哲学、キリスト教、宇宙論、量子物理学、文学、脳科学、サル学、進化論などなど、広い範囲にわたってサピエンスの過去と未来が語られる。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』はサピエンスが登場してから今日までの歴史だったが、本書はそれを宇宙にまで拡大し、さらにはるか未来まで考えてみようという壮大な内容で頭がくらくらしてくる。
 立花隆の本は結構読んできたけど、彼の世界観の根っこがこういうことにあったのかと考えると、また別な読み方ができるかもしれない。
 キリスト教イエズス会神父であり古生物学者であったティヤール・ド・シャルダン(1881-1955)の思想についての解説が後半のほとんどを占める。「すべてを進化の相の下に見る」という視点に拠り、進化という考え方は生物に特化したものではなく、全ての物質、つまり宇宙そのものにも当てはまると彼は考えた。放散(ダイヴァージェンス)と収斂(コンヴァージェンス)の交互作用(=進化の弁証法)で一定の方向性を持つ、つまり複雑化から意識の獲得、精神圏(ヌースフィア)、超人間、超進化、究極のポイントであるオメガ点へと到達するのだと。明日何を食べるか、なんてことで我々は毎日を過ごしているけど、たまにこんな途方もなく壮大なことを考えてみるのも悪くないなあと読後に思うのでした。

◉『空の拳』**上下(角田光代、文春文庫、2015)
 女性作家によるボクシングにまつわる小説。寝るのを惜しむほどの面白さではないが、箸休め的にそれなりに楽しめた。彼女自身も輪島功一ジムでボクシングを習っていることを巻末の沢木耕太郎との対談で知った。

◉『実力も運のうち-能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル/鬼澤忍訳、早川書房、2021)
 これまで深く考えることも、そんなに疑うこともなかった「能力主義」。それがいつどのようにはびこり始めたのかを知り、能力主義がいかに新たな不平等を生み出すか考えさせられた。以下は印象に残った箇所。
「アメリカは神に授けられた使命を世界の中で持っている、大陸を征服する、あるいは世界を民主主義にとって安全な場所にするという自明の運命を持っているという信念だ。だが、神の命令という感覚が薄らいでいるにもかかわらず、政治家は、われわれの偉大さは善良さに由来するという主張を繰り返し口にする」(例えば、イラク戦争を擁護し空母艦上で行ったチェイニーの演説の一部「われわれの大義は必要であり、われわれの大義は正義である。そしてわれわれは歴史の正しい側にいるのだ」)
「個人の責任を拡張する考え方は、能力主義的な想定が働いているという手がかりになる。自分の運命への自己責任が徹底されればされるほど、自分の人生の成り行きに関して称賛されたり非難されたりするのがますます当然のこととなる」
「(オバマとクリントンは)援助を受ける資格のある貧困者とそうでない貧困者を暗黙のうちに区別した」 「学歴偏重主義の台頭に伴い、労働者階級出身の議員は急減した」
「事実をよりよく理解している者が仲間の市民に代わって決定を下したり、あるいは、少なくとも彼らを啓発すべく、市民自身が賢明な決定を下すために知るべきことを教えてやったりすればいいのだ」(オバマの統治ビジョン)
「エリートに対する怒りは、出世できない人びとが能力主義のせいで抱える自己不信のためにさらに大きくなった」 「私たちの社会がもし存続できるなら、いずれ、清掃作業員に敬意を払うようになるでしょう。考えてみれば、私たちが出すゴミを集める人は、医者と同じくらい大切です。なぜなら、彼が仕事をしなければ、病気が蔓延するからです。どんな労働にも尊厳があります」(マーティン・ルーサー・キング)
 こうした能力主義を克服する提案が巻末でなされていて、こういう本を政治家たちに読んでほしい、というのがワダスの願望です。

◉『読書脳』(立花隆、文藝春秋、2013)
 この本が出たのが今から10年前なので情報としてはちょっと古いけど、著者の読書範囲の広さ、深さに改めて感心。とはいえ本の紹介だけなので立花隆の本としてはかなり軽い感じだ。読んで見たい本が何冊かあったのでメモした。図書館で借りよう。

2022年

2022年11月26日(土)

◉『カレーの歴史』(コリーン・テイラー・セン/竹田円訳、原書房、2013)
 写真入りの薄い本です。今や世界中で食べられているカレーの歴史がなんとなく分かります。とはいえ、それを知ったからといって何かの役に立つともいえない。巻末のレシピはいいかも。

◉『ちいさい言語学者の冒険』**(広瀬友紀、岩波科学ライブラリー、2017)
 子供たちがいかにして日本語を獲得していくかを考えさせられる。子供は日本語を文法から学んでいくわけではなく、母親や大人の会話から言葉の使い方を類推している。大人から見ておかしな表現にも類推の根拠があると。
 連続する単語で、2つ目の語にすでに濁音が含まれる場合は連濁は起こらない、という「ライマンの法則」なんていうのも知らなかったなあ。例として紹介されていたのが「おんなことば」。これは「おんな」と「ことば」の連結です。2つ目の語に「ば」という濁音があるので「おんなこどば」とか「おんなごとば」にはならない。もっとも山形語はちと違うけど。

◉『ヒトの目、驚異の進化』*(マーク・チャンギージー/柴田裕之訳、ハヤカワノンフィクション、2020)
 進化から見た目と脳の関係を、なぜそうなっているか、から考えた本。我々の目は透視のために前を向いている、両目の間隔は葉っぱの大きさと関係する、色覚はもともと肌色を判定するため、とか、これまで考えたことがなかった視点で目の機能に焦点が当てられていて興味深い。

◉『世界でもっとも美しい量子物理の物語』再読(ロバート・P・クリース+アルフレッド・シャーフ・ゴールドハーバー/吉田三知世訳、日経BP社、2017)
 2度目だが、やはり量子物理の世界はすっと頭に入ってこない。量子重ね合わせを活用した量子コンピュータの原理が理解できないのも無理ないか。

◉『ビギナーズ』*(レイモンド・カーヴァー/村上春樹訳、中央公論社、2010)
 カーヴァーの曰く付き短編集。どこにでもいるようなアメリカ白人の悲しくも情けない生活の断片が綴られる。読後に希望が湧いてくるような作品ではないが、人間の本質的な情けなさがじんわりと浮かび上がってくる。

◉『送別の餃子』***(井口淳子、灯光舎、2021)
 80年代から中国の田舎でフィールドワークをしてきた音楽学者の著者が、関わりあった人たちとの触れ合いを綴ったエッセイ。どういう経緯でどんな関わりがあったか、一人一人過不足なく描かれてる。堅苦しくなく、的確で柔らかい文章がいい。14章それぞれが珠玉の体験談で、どれも印象的。
 中でも強く印象に残ったのが、第1章の「老師的恋」。初めての調査で農村に入った著者は、上からの命令で「お世話係」を押し付けられた中年男性作家の高老師の世話になる。そこらの農民よりも農民らしい外見の老師だが、著者の妥協しない「気の強い女性」ぶりに弱かったのか、わずかな嫌味を含みつつ、しかしあくまでも律儀で、その応対に著者は感心する。そして何年かして老師が亡くなった後、著者は彼の短編小説を読む。小説には的確な観察力と筆力で調査中の著者自身のことが描かれていて「作家には金輪際、近づきたくない」とまで落ち込んでしまう。このくだりにも著者の豊かな感受性が窺えた。
 95年にワダスも広州と桂林に旅し、著者の語る雰囲気の片鱗を味わったが、その後猛烈なスピードで「発展」した現在の中国では著者の語るような体験はもう難しくなったに違いない。その意味で本書は、なんとなく懐かしい時代の懐かしい物語を読んだような気分にさせてくれる。

◉『記者襲撃』(樋田毅、岩波書店、2018)
 時効になってもいまだに真犯人がわからない1987年に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件の解明に30年費やした記者の記録。関係ありそうな右翼、旧統一教会などに地道に取材を進めるものの、結局真実を突き止めることができなかった無念さが読後の印象として残る。

◉『ワクチンの噂』**(ハイジ・J・ラーソン/小田島由美子訳、みすず書房、2021)
「破傷風ワクチン接種で不妊になる」「麻疹ワクチン接種によって自閉症の子が生まれる」「子宮頸がんワクチンによって被害を受けた」などなどの「噂」が一部でささやかれ、科学的根拠に乏しいそうした「噂」に信憑性を与えるごく一部の専門家の一押しで噂が膨大なデジタル空間で山火事のように広がる、といった現象が世界で頻繁に起きているという。かなりの高率で有効とされるワクチンは、メーカーの研究開発、膨大な数の治験、国家の保健機関の厳密な審査を経て初めて実際の接種に至るわけで、その間には副反応に関しても徹底的に検査される。接種による予防効果の方が圧倒的に大きいのに、なぜそのような噂が広がるのか。またなぜ人々はそうした噂を信じ込んでしまうのか。こうした噂の発生、拡散の過程や原因を追求すると、現代社会の持つ問題点が浮かび上がってくると著者はいう。根拠に乏しい噂、フェイクニュースはワクチンに限らず、世界的に問題になっている。なかなかに考えさせられる本でした。

◉『ドーナツ経済』***(K・ラワース/黒輪篤嗣訳、河出文庫、2021)
 読み終えるのにすごく時間がかかってしまったが、いろんなことを考えさせられたのでした。
 政治家や経済人の多くが口を揃えて訴える「成長」の行き着く先がどうなるのか、経済活動の国単位の指標としてのGDPの根拠になる定義が単純すぎるのではないか、モノの価格は需要と供給の交差するポイントであるというような図式が経済学の基本のように教えられてきたのはおかしいのではないか(実際には価格を決められない人間の交流の方が膨大なのに)、経済学にも倫理が必要ではないか、不平等の程度が大きい国では環境破壊が進みやすいのではないか、などなど、これまであまり深く考えたことがなかった話題が続く。著者は「社会的な不平等はステータスの競争や見せびらかしの消費に人々を駆り立てる」「一方の端から食べ物を摂取し、消化し、最後にもう一方から排泄するという現在の産業モデルは、完全な循環によって成り立つ生命の世界と対立する」といい、貨幣のあり方に疑義を呈し、成長にこだわらない経済を考えることが必要だと訴える。著者の提案する様々な方法がすぐに実現するかはなんともいえないが、描きにくいというか、かなり絶望的にしか見えない未来の想像図になんとなくぼんやりと光を当ててくれるような希望も見えるのでした。政治家や目先の利益だけに狂奔する人々にはこういう本を読むべきだと言いたい。

◉『フェルマーの最終定理』***再再読(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社電子版、2016)
 タイトルになっている定理の具体的証明はおそらく一生かかっても理解できないだろうけど、純粋な好奇心だけが進歩のエンジンである数学に関わる人々の世界は何度読んでも面白い。また何よりも、文字を大きくできる電子本はありがたい。続けて『ポアンカレ予想』も読み始めたけど、電子本でないので字が小さい。

◉『世界収集家』(イリヤ・トロヤノフ/浅井晶子訳、早川書房、2015)
『カーマスートラ』や『千夜一夜物語』の翻訳者として有名なリチャード・フランシス・バートン(1821-1880)を主人公とした分厚い小説。『カーマスートラ』訳者として名前は知っていたものの、その個性や人生についてはまったく知りませんでした。彼は、方言をふくめると40ヶ国語を話せ、現地の人間に完璧に化けることができたという。最初に赴任したインドでサンスクリット語のグルにつき、またヒンディー語、グジャラート語などを習得し、イギリスのインド支配を揶揄し、アラビアではイスラム神学者の前で教義についての厳しい考査に合格したなどいう物語が、本人や関係した様々な人物の目を通して語られる。作者の筋書きに委ねて読み進めることができる類の小説ではないが、なんとなく止められなくなる文体が魅力でした。ブルガリア生まれでドイツ語で小説を発表し続けるトロヤノフという作家を知ったのも初めてでした。まったく、知れば知るほど世界は知らないことだらけだということを知るのでした。

2022年8月27日(土)
◉『見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ』』*((パット・センソン/田村源二訳、飛鳥新社、2011)
いろいろな生き物の生き延びる方法としてとられる生態は人間から見ればかなりへんちくりんだが、少なくともこれまで生き延びてきたということはそれが合理的だったということかな。ま、生物学というよりトリビアに近い読み物でした。

◉『ニッポンの音楽批評150年・100冊』』*(大谷能生+栗原裕一郎、立春舎、2021)
 音楽雑誌や書籍を通して明治から今日までの音楽事情を概観し、音楽における批評の役割とは何か、日本で音楽批評はどう生まれどう死んでいったかを軽い文体で綴った本。最後の第5章は共通に語られることがないほど拡散してしまった今日の音楽状況についての焦点が定まらないままの対談で締め括られている。

◉『歌うカタツムリ』*(千葉聡、岩波書店、2017)
 環境適応による自然選択なのか、突発的な遺伝子の変異なのか。カタツムリの進化に関する議論の流れが面白い。同じ種がいつどのように何故分化していくのかを調べるのに適したカタツムリは世界中どこにでもいて、捕まえやすいし、実験対象として実に都合の良い生物のようだ。

◉『夢を見ているとき脳は』*(アントニオ・ザドラ+ロバート・スティックゴールド/藤井留美訳、紀伊国屋書店、2021)
 夢の科学的研究は進んでいるという。誰でも夢を見るが主観的なので、できることは周辺情報と類推だけのようだ。この本で夢は「睡眠に依存する記憶処理の一形式」というモデルを紹介している。夢を見ていることを意識する夢は明晰夢というらしいが、では意識している主体はいったい誰なんだろう。夢の中では本人が奇妙な体験をするけど、ではその本人を意識する本人というのは? 訓練すれば明晰夢を見れるようになるらしい。まあまあ面白い本でした。

◉『ラマヌジャン探検』(黒川信重、岩波書店、2017)
 ラマヌジャンの名前に惹かれて借りてきたのでした。全編、全く理解不能のほぼ数式のみの薄い本でした。「数式」と名付け「数式」を挿入します。その上で「数式」が「数式」というオイラー積表示を「数式」と「数式」とし、2次式「数式」の判別式は「数式」です。よって「数式」・・・・という感じで、ページのほとんどが数式でその合間に接続詞が入る。というわけで一応最後まで眺めて読了。これって読了と言えるのか。

『ウサギ狩り人』**上下(ラーシュ・ケプレル/古賀紅美訳、扶桑社ミステリー、2021)
 故スティーグ・ラーソン『ミレニアム』に次ぐなかなかに面白いスエーデン犯罪ミステリー。読むのが止められず半徹夜で読了。

◉『動物になって生きてみた』***(チャールズ・フォスター/西田美緒子訳、河出書房新社、2017)
 アナグマのように森の穴倉にもぐり、カワウソのように川に身を沈め、狐のように都市のゴミ箱を漁り、アカシカのように狩猟犬に追われ、アマツバメの飛翔と一生に思いを寄せる著者の、一般的な動物生態学の本とは違う、ユニークな体験と深い思索が印象的でした。

◉『オクトーバー・リスト』*(ジェフリー・ディーヴァー/土屋晃訳、文春文庫、2021)
「逆向きに語られる長編小説」ということだが、物語を追うのがちと面倒。

◉『自白』**上下*(ジョン・グリシャム/白石朗訳、新潮文庫、2010)
 アメリカの小さな街で起きた黒人青年の冤罪事件をめぐるサスペンス。グリシャムらしいなかなかの語り口で一気に読んでしまった。

◉『サピエンス異変』**(ヴァイヴァー・クリガン=リード/水谷淳+鍛原多恵子訳、飛鳥新社、2018)
 人新世に始まった人類の身体の変化に警鐘を鳴らす。学校教育は子供たちを長時間座らせる訓練だとか、元々動き回るようにできている我々の身体は、座ったきりで動かなくなることで様々な異変と障害が発生する。世界の医療費の85パーセントは「世界中の政府が運動不足と肥満に取り組む」ことで節約できるという著者の提言は説得力がある。

◉『狙われた楽園』**(ジョン・グリシャム/星野真里訳、中央公論社、2021)
グリシャムの法廷ものとは異なるミステリー。面白い。一気に読んでしまった。この本の前編もあるそうで、なんと村上春樹の翻訳だと。ぜひ読まなきゃ。

◉『性食考』(赤坂憲雄、岩波書店、2017)
  生殖と食、生と死などを民俗学的アプローチで考察したもの。生命誌、進化論、人類学、哲学などからの引用も多数あるが、全体にまとまりがない印象。印象に残ったのは、中村桂子の『生命誌とは何か』にある「生あるところに必ず死があるという常識は、私たちが二倍体細胞からできた多細胞だからです。本来、生には死は伴っていなかった。性との組み合わせで登場したのが死なのです」。

◉『騎士団長殺し』1、2**(村上春樹、2017、新潮社)
 最後まで一気に読ませるが、すごい文学作品を読んだという気分にはならなかった。人物であれなんであれ、絵を描くときの画家の観察や思考の流れの描写は素晴らしい。2部の中盤あたり、現実にはあり得ない漆黒の地下世界に降り入り口とは異なる地上の穴に戻るあたりから全体の構成が緩んでしまったような読後感でした。村上春樹の小説には音楽や料理などがよく出てくるけど、そのどれも日本ではなく欧米のもの。これって欧米の読者を意識しているのか、日本の伝統音楽、世俗音楽も、肉じゃがも寿司も嫌いなのだろうか。インド音楽をはじめとしたいわゆるワールド・ミュージックも一度も出てこない。彼の頭はオーベイ一辺倒なのか。

◉『半沢直樹 アルルカンと道化師』**(池井戸潤、講談社、2020)
 いわゆる半沢直樹シリーズ。私利私欲を優先する銀行員のせめぎ合いの末、まっとうで正しい銀行員である半沢直樹が最終的に彼らをやり込める。頭を休めるのにちょうど良い、軽く読める小説だが、それだけにストーリーはすぐに忘れそうだ。

◉『地球に住めなくなる日』**(デイビッド・ウォレス・ウェルズ/藤井留美訳、NHK出版、2020)
 なかなかに気が滅入る内容でした。今世界で起きている様々な現象や、科学者たちが集めた情報を総合すると、どうやら我々の環境は後戻りできないほどひどいことになっているらしい。科学者がどれだけ警告しようが、個人も社会も危機の迫っていることを知りつつもこれまでの日常を変えられない。資本主義の限界が見えているのに、いまだに「成長」を唱える政府や大企業の姿勢は変わらない。
  ま、72歳の我々にはせいぜい30年間の生存環境が持続すれば生涯を全うできるわけで、後は知ったこっちゃないと思わないわけではないが、これから生きていく若い人々を思うと気が気でない。本書末尾の「完全なる脱炭素化までに残された猶予は30年。それにまにあわないと、恐怖の気候崩壊が始まる。だが、これほど大規模な危機に対して、解決策はまだ道なかばですらない」が単なる警告に終わらないことを願うばかり。

◉『まなざしの地獄』(見田宗介、河出書房新社、2008)
 連続射殺事件で死刑になった永山則夫の社会的、個人的背景の分析から戦後日本社会の構造的な変化を読み解いていく。著者の短い論文「新しい望郷の歌」が併載された新書並みの本ですが、読み応えがあった。当時、田舎から上京する中卒の青年たちは「金の卵」と呼ばれていた。この言葉は、卵である青年たちに輝かしい金の未来があるという意味ではなく、卵の雇用主にとって金であっただけだという記述が印象的。

◉『不祥事』*(池井戸潤、実業之日本社、2014)
 箸休めの軽い小説でした。

◉『アキラとあきら』*(池井戸潤、徳間文庫、2017)
 箸休めにしては1000枚の小説は長いけど、一気に読んでしまった。とはいえ、こうした箸休め小説はやはり箸休めの役割でしかなく、読むことで何か新しい発見があるというよりも、ただただ時間を潰すことのような気がする。

◉『グレート・ギャツビーを追え』**(ジョン・グリシャム/村上春樹訳、中央公論社、2020)
 前掲のグリシャムの『狙われた楽園』の前編です。村上春樹の訳でとても読みやすい。箸休めの中編小説でした。
 厳重に保管された図書館からフィッツジェラルドの手書き原稿が盗まれる。犯人の一部はすぐに捕まるが、原稿そのものの行方が分からない。保険会社の依頼で、ある作家がそこにあるかもしれないと思われる書店のオーナーに近づき探っていく。手書き原稿、初版本などの稀覯本のマーケット、小説家が世に出るまでのプロセスといった話題が興味深い。

2022年5月23日(月)号

◉『群れのルール』**(ピーター・ミラー/土方奈美訳、東洋経済新報社、2010)
 一つ一つの個体はほとんど何も考えない(と思う)のに集団で見事な建築物を作ったり修復したりするシロアリや蜂、ニシンやムクドリの、まるで単体の生き物のような群れ、共食いの恐怖から逃れようと大集団になって移動するバッタなど、群れを作る動物の行動原理はどうなっているのか。ムクドリの個体は自分に近い左右の6羽から7羽しか見ずに自然に一塊の群れを作っているらしい。そうした群れの原理からアルゴリズムを導き人間社会やインターネットによる情報管理に応用しようとする様々な試みや、人間が群れになりコントロール不能になった場合の危険性など、群れにまつわる考察は実に興味深いのでした。

◉『一万年の進化爆発』再読(グレゴリー・コクラン、 ヘンリー・ハーペンディング/ 古川奈々子訳、日経BP社電子版、2010)

◉『ノーサイド・ゲーム』*(池井戸潤、ダイヤモンド社、2019)
 ほとんど興味がなかったラグビーにちょっと魅力を感じました。それにしても池井戸潤は話を作るのがうまい。重い本の読書の箸休めにちょうど良い。

◉『生物学的文明論』**(本川達雄、新潮新書、2011)
『ゾウの時間ネズミの時間』の著者による文明論。近代文明を謳歌しているように見える我々人間は、当たり前だけど細菌やネズミと同じ生物であること、そして地球の生物は環境と微妙にバランスをとって成り立っていることを思い知らされる。

◉『過去への旅 チェス奇譚』***(シュテファン・ツヴァイク/松山有紀子訳、幻戯書房、2021)
 2本の短編小説だけの小さな本。2編とも登場人物は少なく、微細な心理描写がしつこく最後まで展開されるが、読み始めると止まらなくなってしまった。特に著者の自殺後に出版された最後の作品「チェス奇譚」は、突然現れて世界を驚かせたチェスの天才少年と偶然乗り合わせた船上で対戦することになった名家の紳士の話。その紳士は実は実際の駒を使ったチェスを一度もさした事がなかった。ナチスのゲシュタポによって完全な孤独と狂気の空間に追いやられて見つけた唯一の想像の逃避先が、一人の脳内で白黒二手に分かれて対戦するチェスであったと。著者の目指した「内的自由」について考えさせられる。80年ほど前に書かれたとは思えないほど新鮮な読書体験でした。ツヴァイク恐るべし。

◉『マチネの終わりに』**(平野啓一郎、毎日新聞出版、2016)
 なかなかに読ませる恋愛小説。日本人天才ギタリストと危険と隣り合わせのイラクを取材する美貌の知的ジャーナリストという、二人とも知性的であまりにも格好よく出来過ぎ感のある組み合わせなだけに、読み始めた当初は通俗的な恋愛小説のような趣でした。とはいえ、演奏家としての音楽に対する考え方や演奏の描写、著名なクロアチア人映画監督と長崎被爆者の日本人女性を両親に持つ多言語で活躍するジャーナリストの自己アイデンティティーの不安定さなどを、社会情勢の背景と絡ませて丁寧に描写されていて読後感は悪くない。それにしてもつくづく日本人は「気分は西洋人」なんだなあと思うのでした。この小説を読んだついでにアマゾンで同名の映画を見ましたが、最後までとても見れない最悪の出来でした。

◉『サル化する世界』*(内田樹、文芸春秋社、2020)
 現代社会、特に日本の社会や政治状況についての鋭い指摘はあるものの、この人の著作にはどこかふわふわした雰囲気がある。

◉『デッド・ゼロ』**上下(スティーヴン・ハンター/公手成幸訳、扶桑社ミステリー、2011)
◉『狩のとき』**上下(スティーヴン・ハンター/公手成幸訳、扶桑社ミステリー、1999)
◉『数学をつくった天才たち』(立田奨、辰巳出版、2018)

◉『ふしぎな君が代』*(辻田真佐憲、幻冬舎新書、2015)
「君が代」という歌がいつどのようにできたのか、それがいつ国歌と見做されるようになったのか、「君が代」が法律の上で正式な国歌になったのは1999年。それなのにいまだに「面倒臭い歌」なのはなぜか、などなど一つの曲から国家観を考えさせられる。

◉『アナキズムを読む』(田中ひかる編、皓星社、2021)
 一般に無政府主義と訳されるアナキズムの厳密な定義は確立されていないので、国家や行政府、つまり個人の外側にある管理システムと関わりのない社会的活動は何でもかんでもアナキズムの例として取り上げられてしまうのだなとこの本を読んで思ったのでした。国民国家という概念があやしくなってきた今日、人間の幸福とは何かを考える意味でアナキズムは今後重要な考え方になると思ってはいるのですが。この本で紹介されていた『エマ・ゴールドマン自伝』が大ヒットでした。

◉『京大というジャングルでゴリラ学者が考えたこと』**(山際寿一、朝日新書、2021)
 いつの間にか祭り上げられ、選ばれないようにと書いた文がどういうわけか評価されて総長になってしまったゴリラ学者の大学、教育、今日の社会を、霊長類の観察を通した人類的視点で考えた、とても読みやすく、示唆に富む内容の新書でした。ワダスは著者の奥様を昔から知っていることもあり、ちょっと贔屓目に評価してしまいますが、語られている内容は実にまともで雄大で面白い。著者の見た目も背中に銀色の毛のはえたでかいボスゴリラを思い起こさせる風貌と貫禄です。

◉『うんちの行方』(神舘和典+西川清史、新潮社選書、2021)

◉『エマ・ゴールドマン自伝』***上下(エマ・ゴールドマン/小田光雄+小田透訳、ぱる出版、2005)
 読破するのに2週間かかった上下巻3500枚の大著。厚くて重い。寝っ転がって読むと腕が疲れる。
 アナキズム(無政府主義)運動に生涯をかけたユダヤ系アメリカ人女性アナキスト、エマ・ゴールドマン(1869 -1940)は、まさに波乱万丈の人生だった。100年くらい前に繰り広げられた社会運動や、そうした活動に対する当時のアメリカや革命ロシアの徹底した弾圧を受けながらの彼女の生涯、人間関係、思想が詳細に語られる。関わりのあったものすごい数の人名、出来事がとても具体的に描かれ、100年も前のことなのに全く古さを感じさせない。
 ほとんど無学なユダヤ移民の女性がふとしたことでアナキズム運動にのめり込み、講演と執筆、反政府組織や雑誌の立ち上げ、投獄といったことが繰り返され、後にFBI長官となるフーヴァーをして「アメリカで最も危険な女」と言わしめた。特に印象的なのは、アメリカ国外退去の後に訪れた革命ロシアの惨状。プロレタリアート革命維持の名の下に独裁へ向かうボルシェビキのレーニン、トロツキーらの、革命に協力したアナキストへの裏切りと過酷な弾圧、殺戮のありようが凄まじい。ウクライナのユダヤ人虐殺などということもあったらしい。学生時代にロシア革命についての本はずいぶん読んだけど、知らないことだらけだった。
 なんとなくニュースで眺めている現在の戦争の原因もどうも単純に理解できないのかもしれないとこの本を読んでみて思う。幸徳秋水、菅野スガ夫妻を初め12名が政府のでっち上げによって刑死させられた大逆事件についてもちょっと触れられている。他にいくつもありますが、印象に残った言葉が以下。
「太古から、賢者や現実主義者はあらゆる英雄的精神を非難してきました。しかし私たちの人生に影響を与えたのは彼らではなかった。理想主義者や空想家たち、そして大胆な行動を取り、何かしらの崇高な行為に対して熱意と信頼を表明するほど愚かだった人々が人類を前進させ、世界を豊かにしてきたのです」。
 アメリカでもソビエトでも、ま、世界のどこでもいつでも、権力の魔力が人を狂わせるように思える。人間社会が多くの権力を集中させる人物をどうしても必要とするのならば、今後も狂った状況が続くということなのか。
 この本を読んでそれほど興味のなかったアナキズムに興味が湧いた。と同時に、純粋な読書体験の喜びに浸ることができた。読書は、現実との距離が離れた広い世界へ我々を連れて行ってくれる素晴らしい体験であることを改めて教えてくれた1冊でした。

◉『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』(イアン・スチュアート/水谷淳訳、ダイヤモンド社、2019)
 歴史上の天才数学者について書かれている。取り上げられて人たちはちょっとは名前も業績も知っていてそれぞれに魅力的だが、著者のピントのぼやけた解説によって没入できず。単純に取り上げた人たちの評伝だけに徹した方が良かった。

◉『象の消滅』**(村上春樹、新潮社、2005)
 表紙に「ニューヨークが選んだ初期短編集17編」とある。とても読みやすい文章で、どこにでもいそうな主人公たちの奇妙キテレツな物語が綴られている。印象に残ったのは「眠り」「パン屋襲撃」「沈黙」。特に「沈黙」は妙に強く残った。ニューヨーカーはこの種のショートストーリーを好むのかもしれない。

◉『梨の形をした30の言葉』**(椎名亮輔、アルテスパブリッシング、2022)
「サティのうた」というNHKのアンコール放送を見た数日後、著者の椎名さんからこの本が届き、あまりのタイミングの良さに嬉しい驚きだった。作曲家エリック・サティ(1866-1925)の30の不思議な箴言の解説を通して、人物や当時のフランス音楽界、ひいてはいわゆる現代音楽にも通じる彼のアイデアなどを浮かび上がらせるという趣向はなかなかに鮮やかで、数多くの未知の人物の登場にもかかわらず一気に読むことができた。印象に残った言葉が以下。「エリック・サティ、この世紀に迷い込んだ、心優しい中世の音楽家」(ドビュッシー)、「『家具の音楽』は本質的に工業的なものだ。私たちは『有用な』必要を満たすために作られた音楽を作り出したいと思う。<芸術>はその必要には入らない。『家具の音楽』は空気の振動を生み出す。それ以外の目的はない」(サティ)、「芸術家の夢は、平たくいえば美術館にたどり着くことであるが、デザイナーの夢は市内のスーパーにたどり着くことである」(ブルーノ・ムナーリ)
 ちょっと前に読んだエマ・ゴールドマンの生きた時代と重ったせいもあり、19世紀後半から20世紀前半にかけての欧米の雰囲気がなんとなく想像できる1冊でした。

◉『定本 見田宗介著作集Ⅱ』*(見田宗介、岩波書店、2011)
 今年4月1日に亡くなった社会学者、見田宗介の著作集を久代さんが図書館から大量に借りて来たのでその1冊を読みました。
 小阪修平との対談がほとんどを占めています。対談は普通読みやすいものですが、二人の話す単語のいちいちの定義をこちらが分かっていないので、ほとんど頭に入らなかったのでした。

2022年2月23日(水)号

◉『スリーピング・ドール』**上下(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文春文庫、2011)
◉『バーニング・ワイヤー』**(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2012)
◉『シャドウ・ストーカー』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2013)
◉『ゴースト・スナイパー』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2014)
◉『限界点』*(ジェフリー・ディーヴァー/土谷晃訳、文藝春秋、2015)
◉『扇動者』*(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2016)
◉『テスィール・キス』**(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2017)
◉『ブラック・スクリーム』(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2018)
◉『ミッドナイト・ライン』上下(リー・チャイルド/青木創訳、講談社文庫、2019)
---ジェフリー・ディーヴァーをなんと11冊も続けて読んでしまった。それぞれはなかなかに面白く読み応えがありましたが、流石にこれだけ続けて読むとちょっと飽きが来てしまう。ワダスには微細証拠分析で犯人を特定していくリンカーン・ライムよりも、体や表情の動きから嘘を見破っていくキネシクスの達人キャサリン・ダンスのシリーズが好ましく感じられます。関係ないけど、けっこうな面白い小説を書き続けるジェフリー・ディーヴァーはワダスと同い年だったのね。

◉『おひとりさまの最後』**(上野千鶴子、朝日新聞出版、2015)
---70歳を超えてくると、あまり考えたことがなかった問題が現実的になりつつあることを感じるようになります。つまりどういう形で死ぬのか。しぶとく生き抜いて二人とも90代なんてことになった場合はどうなるのか。ゼニはどうなるのか。一人が認知症になる、または両方ともなったらどうなるのか。我々には子供はいないので、当然、老老介護になるのであろう。断片的なテレビの映像を見ると、どう考えても老人施設に入っている自分は想像できないが、そういうケースもありうるのか。施設や病院ではなく今の住まいで死ぬとしたらどういうことを準備しておくべきか。自分が先に死ぬ場合はいいけど、配偶者が先になった場合はどうなるのか。などなど起こりうるケースが多いので、結局はその時にならないとわからないと思考停止状態になるわけですが、ちょっとは考えておかないとも思うケーススタディとして参考になる本でした。

◉『須賀敦子の本棚』**(池澤夏樹他、河出書房新社、2018)
---須賀敦子の文や生き方についてのエッセイなどがまとめられたムック。彼女の未発表の短文や翻訳も掲載されている。彼女の作品とキリスト教信仰と関係についての興味深い評論もあった。須賀敦子ファンへのプレゼントとしては秀逸でした。

◉『ネット階級社会』**(アンドリュー・キーン/中島由華訳、早川書房、2019)
---「既存産業の破壊、個人情報流出、格差拡大といった問題が多発している。ユーザーはサービスの代価として問題を受け入れるしかないのか。一握りの企業が主導する流れは不可避なのか。これからのインターネットと社会のあり方を探る、メディアとIT業界で議論を呼んだ警告の書」(「BOOK」データベースより)
 インターネットがなかなかに悩ましい問題を抱えていることを思い知らされます。

◉『日本列島の下では何が起きているのか』(中島淳一、講談社ブルーバックス、2018)
---気象庁の最新報告によると、南海トラフ沿いの大規模地震は今後30年以内に発生する確率が70〜80%あるとのこと。人工島に住む我々にはけっこう怖い話です。この本では、日本列島の地下で起きていることを科学的に解説しているけど、話題があまりに集中しすぎて読み物としての喜びに乏しいものでした。

◉『左足をとりもどすまで』***(オリバー・サックス/金沢泰子訳、晶文社、1994)
---これまで著者の書いた『レナードの朝』『妻を帽子とまちがえた男』『色のない島へ』『音楽嗜好症』なんかをとても面白く読みました。この本は神経科医である著者が、ノルウェーの山中での大怪我から左足のイメージ喪失、回復するまでの患者として考えたことを書いています。医療現場での患者に対する医師は絶対権力者であり、患者は聞き分けの良い幼児のような態度を強いられるといった感想など、医師と患者のあり方の考察が興味深い。

◉『評決の代償』(グレアム・ムーア/吉野弘人訳、早川書房、2021)
◉『職業政治家小沢一郎』未読了(佐藤章、朝日新聞出版、2020)

◉『ノルウェイの森』**上下(村上春樹、講談社、1987)
---NHKBSの「アナザーストーリーズ『ノルウェイの森』 “世界のハルキ”はこうして生まれた」と言う番組を見て、言わずと知れた大ベストセラー小説を初めて読みました。ワダスはベストセラーと騒がれている時の本は読まないことにしていますが、番組を見て、へええと思ったことと、もう35年も経ったからいいかと図書館から借りて読んだのでした。
 ワダスと著者は全く同じ年(1968年)に大学に入り、似たような状況を共有していたはずですが、ワダスと彼の学生生活はものすごく違っていたように思えます。似たような音楽を聞いたり小説を読んだり映画を見たけど、小説の主人公ワタナベ君のようにやたら女にもてることもなく、社会や世界について何もわかっていないにもかかわらず「帝大解体、安保粉砕」などと叫んでいた無知で幼稚な一介の学生でしかなかったことを思い出します。小説に出てくる音楽や文学などが欧米のものだけというのは当時のワダスの気分と似ていました。こういう「気分は西洋人」的気分というのは同世代の大学生の特徴なのかもしれない。ワダスが意識的に日本やアジアの文化を「発見」しようとしたのはかなり後のことなのです。
 小説は最後まで一気に読ませる力がありました。しかし番組に登場した女性編集者の「原稿を読み終えたとき涙が出た」ほどの感動はワダスには感じられませんでした。

◉『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』**(ジーナ・キィーティング/牧野洋訳、新潮社、2019)
--原著は2012年に出版された本なので現在のNETFLIXをめぐる状況とはかなり違っていると思います。創業から動画配信の覇者になるまでの過程の詳細が語られ、凄まじい競争の中でのアメリカの起業のあり方が想像できる本。これを読むと、デジタル技術やその考え方に関して、いかに日本が周回遅れなのかを思い知らされます。ま、デジタル化に限らず、もはや時代に適合しなくなった既得権益の利害調整にしか思考が向かわない今日の日本のダメ状況もつくづく考えさせられます。ちなみに我が家では、登録すればテレビ漬けになることは間違い無いと思われるのでNETFLIXには加入していません。

◉『耳と音から考える』未読了(細川周平編、アルテスパブリッシング、2021)

2021年11月23日(火)号
◉『インドを旅する55章』***(宮本久義・小西公大編著、明石書店、2021)
--インド遊学時代からの友人、宮本さんが編集と執筆に関わった本。読書とは物理的異動を伴わない旅行であると実感させられる。有名な都市や地域、世界遺産などの紹介も、一般の旅行案内書と異なり、単なる物見遊山的情報より深掘りされていて興味深い。様々な乗り物、ホテル、食、生活習慣、伝統、娯楽などの他に土産物まで掲載されている。またヒンドゥー教だけでなく多様な宗教の解説もありがたい。読書の旅を楽しくする情報満載である。一つの国を網羅的に紹介し、そこへ行ってみたくなるような項目を設定し、それに見合った筆者と掲載順序を選び、インド特有の多言語の用語を整理しつつ読みやすいように全体を整える作業は大変だったに違いないが、楽しい作業でもあったであろう。インドに関心のある人だけではなく、読書で旅をしたい人にもおすすめです。

◉『ある家族の会話』***(ナタリア・ギンズブルグ/須賀敦子訳、白水社、1992)
--須賀敦子の文体というか語り口に大きな影響を与えたといわれる不思議な小説。翻訳した彼女は次のようにこの小説について書いている。「家族の人たちが様々な機会に取り交わした言葉の歴史をたどることによって構築された家族の肖像画のギャラリー」。「会話」とあるように、情景描写はほとんどないのに、登場人物の語りによって、ファシズム、第二次大戦と徐々に変化する社会の中での一人一人の人物像がくっきり浮かび上がってくる。

◉『モンテ・フェルモの丘の家』***(ナタリア・ギンズブルグ/須賀敦子訳、筑摩書房、1991)
--物語としての大きなうねりやドラマチックな展開があるわけでなく、最初から最後まで手紙のやり取りだけで綴られている。背景の説明もないままにアメリカとイタリアの送信人と受信人が数人登場し、それぞれの関係性を気にせずに読み進めているうちにじわじわといろいろな感情が文面から表出してきて、かなり充実した読後感だった。

◉『寝室の文化史』(パスカル・ディビ/松波三知世訳、青土社、1990)
--個人あるいは夫婦の寝室というものが出現したのは歴史的に比較的新しく、例えばヨーッロパ中世の領主の館では個人の寝室は特になく雑魚寝だったらしい。などという事はわかったが、翻訳のせいかとても読みにくかった。

◉『徒然草』(吉田兼好、電子版)
--教科書に必ず出てくるのでほとんどの日本人は知っている本だが、ワダスは今までまともに読んだことがなかった。Kindle版で無料と出ていたので早速読んでみると、今から800年前頃に生きた著者の、現代にも通じる世の中のあれこれを脱力して観察する文章がなかなか良い。若い人には退屈かもしれないが、我々くらいの年齢になってみると共感できる部分が多いことに気がつく。著者の最晩年は山の中に3m四方くらいの(つまり方丈の)家に住んだということだが、これはほぼ200年前に書かれた『方丈記』を彷彿とさせる。80過ぎても油ぎったアソーとかニカイなどに読んで欲しいものです。彼が強調していることは、人間はいつか必ず死ぬということ。重要ですね。

◉『名もなき受刑者たち』**(本間龍、宝島社、2010)
--我々はyoutubeの「一月万冊」をよく見るというか夜寝るときに聞くのだが、それに登場するレギュラーコメンテーターの一人、本間龍さんの刑務所体験記。出所しても受け入れる場所のない精神障害者や介護の必要な老齢服役者をどうするかといった問題があるにもかかわらず、行政はもとより社会全体がそうした実態に目をつぶり無視しているなど、これまで考えたことがない実態に驚いた。

◉『転落の記』**(本間龍、飛鳥新社、2012)
--友人知人から多額のお金を騙し取ったと訴えられた著者が刑務所で服役することになった顛末記。得意先の売掛金の回収が期日までにできず自腹で支払うことにして始まった友人知人への裏切りと、強欲なサラ金からの取り立てにあくせくする様は、根っからの悪人ではないだけに、痛々しい。

◉『地球が燃えている』***(ナオミ・クライン/中野真紀子+関房枝訳、大月書店、2020)
--ぶ厚く重いので読み通すまでにかなりの日数を費やした。以前にも同じ著者による『ショック・ドクトリン』や気候変動と資本主義の問題について書かれた『これがすべてを変える』を読み、うーむ、世界はいよいよひどいことになっておるなあと思ったが、現在進行中の気候変動が人類の生存にとってさらに深刻になりつつある感を深くした。気候変動問題の解決の方向や既存の利害に執着する勢力との確執といった問題が炙り出されていて、考えさせられる。どうやら人類は茹でガエルのようにじわじわと絶滅へ向かっていくのではないかと絶望的になる。現生からの離脱に近づいている我々が絶滅を目撃するようなことはないだろうが、若者たちには深刻な話である。

◉『獄窓記』**(山本譲司、ポプラ社、2003)
◉『続獄窓記』**(山本譲司、ポプラ社、2008)
--『名もなき受刑者たち』では刑務所の精神障害服役者の存在とその対応について驚かされたが、この2冊の本でより詳しく知ることができる。刑務所の機能は懲罰と社会復帰である。なので、監視したり教育したりする刑務官は当然いるものの、要介護高齢者や精神障害者を専門にケアする職員はいない。しかし誰かがそうしたことをやらないと問題が起きる。で、どうやって刑務所は対応しているかというと、同じ受刑者にやらせるのだという。かつて国会議員だった著者は架空の秘書の給与を事務所経費に流用した(実は当時は誰でもやっていたらしい)として有罪になり刑務所に服役することでそうした実態に触れ、出所後もその改善のために活動しているという。

◉『ブルシットジョブ クソどうでもいい仕事の理論』***(デヴィッド・グレーバー/酒井隆史+芳賀達彦+森田和樹、岩波書店、2020)
--この本も分厚く重くかつ読みにくかったため読了するのに時間がかかったが、現代資本主義社会や労働の意味について考えさせられた。世界中で話題になった本らしく、今話題の斉藤幸平の『人新生の資本論』でも取り上げられている。そういう人たちがいなくなれば都市機能がたちどころに麻痺してしまうようなエッセンシャル・ワーカー、つまり街の清掃人や介護士、水道、電気などの現場作業員などよりも、企業弁護士や会計士の給料がずっと良いのはなぜか、教育と研究が主な目的であるはずの大学で事務職員が増加しているのはなぜか、などなど。自分のやっている仕事が他の人間にも置き換えられる無益なものなのではないかと思っている人がいかに多いか。考えてみれば、ワダスがガッコでやっていた授業もクソどうでもいい仕事だっのではなかったかと思ってしまうのでした。

◉『コロナ時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介訳、早川書房、2020)

◉『地磁気の逆転』***(アランナ・ミッチェル/熊谷玲美訳、光文社、2019)
--地球は大きな磁石である。地球上どこにいようが磁石の針がNを指す方向が北である。で、なんとなくN極は北極点に、S極が南極点にあると思いがちだが、そうではない。地球は北極点と南極点を貫く軸に沿って自転しているが、磁石としての軸は微妙にずれていて、日々刻々その場所は変化しているらしい。そしてそのNとSは地球史上これまで何度も逆転してきたということが、地層に残された岩石の分析によってわかったという。さらには現在の地球は磁極逆転の途上にあるらしい。逆転する途中では、太陽などからやってくる有害な紫外線や放射線を守っている地球磁場が今よりもずっと薄くなるため、人工の電磁力ネットワークが壊滅的打撃を受けるかもしれない、とはかなり恐ろしい話。とはいえ、そういう事態に遭遇したいという気分がないではない。

◉『なぜあの人のジョークは面白いのか?』(ジョナサン・シルバータウン/水谷淳訳、東洋経済新報社、2021)

◉『竹内薫の「科学の名著」』*(竹内薫、徳間書店、2020)
--ワダスの好きな科学の本が数多く紹介されている。紹介された本の3割ほどは既に読んだことがある。未読の(キガスル?)ものはこれから図書館で借りて読もうと思います。

◉『マヤの古代都市を探せ』**上下(クライブ・カッスラー/棚橋志行訳、扶桑社ミステリー、2015)

◉『世界を変えた50人の女性科学者たち』**(レイチェル・イグノトフスキー/野中モモ訳、創元社、2018)
--前述の『竹内薫の「科学の名著」』で紹介されていた1冊。50人の女性科学者が、一人見開き2ページのイラスト付きで簡単に紹介されている。登場する科学者たちは皆すごい仕事をした人であるが、知らない名前も多かった。小中高生向けにはいい本だと思います。

◉『ヘンデルが駆け抜けた時代』*(三ヶ尻正、春秋社、2018)
--音楽の母と呼ばれる作曲家ヘンデルの活躍していた17世紀のヨーロッパやイギリスの社会情勢を取り上げつつ、偉大な芸術家とされる作曲家たちが必ずしも純粋な音楽芸術だけを作曲していたのではなく、したたかなビジネスマインドも持ち合わせていた、という話。

◉『西洋音楽の正体』(伊藤友計、講談社選書メチエ、2021)
◉『徒然草』(吉田兼好/佐藤春夫訳、響林社文庫Kindle版、2015)

◉『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』**(小林朋道、築地書館、2007)
◉『先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!』**(小林朋道、築地書館、2008)
◉『先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!』**(小林朋道、築地書館、2009)
◉『先生、頭突き中のヤギが笑っています!』**(小林朋道、築地書館、2021)
--これらも『竹内薫の「科学の名著」』で紹介されていたもの。この『先生、〇〇!』というのはシリーズになっていて現在まで15冊出ているとのこと。軽いタッチのユーモアあふれる文章でとても読みやすい。中身は著者の務める鳥取環境大学周辺に生息する大小の身近な動物を中心に、それに触れたり観察したりする本人や学生たちも含めた行動を進化論的アプローチで書かれていて、とても好感のもてるシリーズです。おすすめです。

◉『素数に憑かれた人たち』**(ジョン・ダービーシャー/松浦俊輔訳、日経BP社、2004)
 数学の難問「リーマン予想」をめぐる数学者たちの取り組み。偶数章の数学者たちのプロフィールや生活などについては面白く読めたが、ゼータ関数についての奇数章は、微積分、対数、行列など、今となってはてんで訳がわからない数式が多くほとんど読み飛ばしてしまった。ちなみに、リーマン予想とは「ゼータ関数の自明でない零点の実数部はすべて1/2である」だ。この予想が証明されれば、与えられた数よりも小さな素数の個数を数える場合の法則が明らかになる、らしい。
 ワダスは実は数学は高校までは得意な科目だった。ところが、大学に入っていきなり訳のわからない授業を受けて以来無縁なものになってしまった。とはいえ、生活向上にはほとんど寄与しない数学に生涯を費やした人々には興味があるので、これまで『数学をつくった人びと』(E.T.ベル)、『数学者たちの楽園』『フェルマーの最終定理』(ともにサイモン・シン)『天才の栄光と挫折』(藤原正彦)なんかはとても面白く読んだのでした。

2021年8月24日(火)号

『第三帝国』**(ウルリヒ・ヘルベルト/小野寺拓也訳、角川新書、2021)
 東欧は単に収奪する土地とみなしたナチスの統治がどんなものだったのか、読むほどに身の毛がよだつ。

『What Is Life?生命とは何か』***(ポール・ナース/竹内薫訳、ダイヤモンド社、2021)
 生命は考えれば考えるほど不思議だ。著者は、次の3点の原理を満たすものが生命の定義になるという。1.自然淘汰を通じて進化する能力を持つ。2.「境界」を持つ物理的な存在である。3.化学的、物理的、情報的な機械である。
 大きな視点で科学を論じ読み応えがあるのは、欧米系の学者のものが多いなあ。

『源氏物語』(与謝野晶子訳、角川文庫電子版、1971)
 Kindle版が無料だったのでついダウンロードしてしまった。ずっと昔に読んではいたが、話の中身はほとんど忘れていたことに気がついた。それにしても、平安貴族の社会はほとんど近親相姦社会ですね。

『源氏物語を知っていますか』**(阿刀田高、新潮社、2013)
『源氏物語』は登場人物がとんでもなく多く、途中で昇進したりして名前も変わっていくのでこんがらがってしまうのですが、その辺を整理されているのでようやく全容が把握できました。

『ゲンロン11』*(東浩紀他、株式会社ゲンロン、2020)
 なかなかに硬派な内容のオンパレードでしたが、ヒカシューの巻上公一さんのロシアツアーの話がなかなかでした。

『イラン伝統音楽の即興演奏 〜 声・楽器・身体・旋法体系をめぐる相互作用』*(谷正人、株式会社スタイルノート、2021)
 アート林間学校でサントゥール演奏やイラン音楽について話していただいた谷さんの最新作。かなり専門的な内容で、イラン音楽についてはほとんど無知なワダスにはとっつきにくかった。とはいえ、楽器と身体についての考察などはこれまで考えたことがなかった視点で新鮮でした。

『菅義偉 不都合な官邸会見録』(望月衣塑子+特別取材班、宝島新社、2021)
『兵士たちの連合赤軍』***(植垣康博、彩流社、1984)
 かねがね読んでみたいと思っていた本です。ドキュメントとしても個人記録としても出色の傑作でした。実はワダスは著者と同じ留置所の同じ房でしばらく一緒に寝起きしたことがあり、当時のこともチラッと触れられていたのでした。50年も前の話です。それにしても、毎日の細かな出来事や考えたことをあれだけ正確に書ける力には尊敬すら覚えます。彼は今静岡でスナックを経営しているということですが、機会があれば行って会ってみたいと思っています。

『山形県の歴史』(横山昭男他、山川出版社、1998)
『ロケット科学者の思考法』(オザン・ヴァロル/安藤貴子訳、サンマーク出版、2021)
『民族という虚構』**(小坂井敏晶、ちくま学芸文庫、2011)
 民族とは創り出された虚構だが、その虚構なしに社会は成り立たない。いろいろな虚構を哲学的、社会学的にはぎ取っていくプロセスはスリリングで面白い。とはいえ、さっと読めるような気軽な本ではありません。

『絶滅の人類史』*(更科功、NHK出版新書、2017)
 およそ200万年前に類人猿から枝分かれし現在のホモ・サピエンスに至るまでには様々な原人が出現して絶滅していった、という遠大な人類史。

『食料と人類』*(ルース・ドフリース/小川敏子訳、日本経済新聞社、2016)
『三国志』***全10巻(吉川英治、講談社、1940)
 吉川英治のほぼ全てがKindle版で99円! というのに惹かれてダウンロードし、その中で最も長い『三国志』を読み始めたらやめられなくなりました。Kindleには「読み終わるまであと○時間」という表示が出るのですが、何日か読んでも「あと180時間」とか出てきます。劉備元徳、関羽、曹操、諸葛孔明なんていう名前はなんとなく知っていましたが、それぞれの関係は初めて分かったのでした。漢王朝が衰退し、魏、蜀、呉の三国に分かれ覇を競ったあたりの物語が人気なのは、夥しい登場人物の関係性ばかりではなく、そのダイナミックな語り口にあるんでしょうね。中国では魏を建てた曹操の方が、蜀の劉備よりも人気があるらしい。

『日本人とリズム感』*(樋口圭子、青土社、2017)
 田植えや稲刈りなどの共同で大地に向かう姿勢、子音と母音がセットになった日本語の発音、「物悲しい」というときの物とは隠れた空間にあるモノであること、日本人の中心が空洞であること、などなどがリズム感と関係しているという。音楽のリズム感について内容かなと思って購入したのですが、ほとんど言語学的な日本語論に近い本でした。

『宗教と科学の接点』**(河合隼雄、岩波現代文庫、2021)
『それをお金で買いますか』**(マイケル・サンデル/鬼沢忍訳、ハヤカワ文庫、2014)


2021年5月23日(日)号

『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』**(パット・シップマン/河合信和監訳+柴田譲治訳、原書房、2015)
『図解インド経済大全 』*(佐藤 隆広, 上野 正樹編集、白桃書房、2021)
『ダリウスは今日も生きづらい』*(アディーブ・コラーム/三辺律子訳、集英社、2020)
『ゲンロン10』*(東浩紀他、株式会社ゲンロン、2019)
『ブラッド・ランド』上下**(ティモシー・スナイダー/布施由紀子訳、2015)
『南アジア史』*(辛島昇編、山川出版社、2004)
『重力波は歌う』**再読(ジャンナ・レヴィン/田沢恭子+松井信彦訳、早川書房電子版、2016)
『ビートルズと旅する芸能と神秘の世界』**(井上貴子、拓殖書房新社、2007)
『命がけで南極に住んでみた』***(ゲイブリエル・ウォーカー/仙名紀訳、柏書房、2013)
『サブカルズ』*(松岡正剛、角川ソフィア文庫、2021)
『ナバホへの旅たましいの風景』(河合隼雄、朝日新聞社、2002)
『現代俳句の世界9 西東三鬼集』**(西東三鬼、朝日文庫、1984)
『孤独の科学』**(J.T.カシオポ+W.パトリック/柴田裕之訳、河出書房新社、2018)
『大航海時代』*(ボイス・ペンローズ/荒尾克己訳、ちくま学芸文庫、2020) 
『竹の文化誌』(スザンヌ・ルーカス/山田美明訳、原書房、2021)
『責任という虚構』***(小坂井敏晶、ちくま学芸文庫、2020)
『進化は万能である』***(マット・リドレー/大田直子・鍛原多恵子・柴田裕之・吉田三知世訳/ハヤカワ文庫、2018)

2021年2月27日(土)号

◉『海坂藩大全』上下*(藤沢周平、文藝春秋、2007)
『半分のぼった黄色い太陽』***(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳、河出書房新社、2010)
◉『須賀敦子』再読***(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集、河出書房新社、2016)
◉『なぜ世界は存在しないのか』再読**(マルクス・ガブリエル/清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018)
◉『人新世の「資本論」』***(斎藤幸平、集英社新書、2020)
 30代著者による話題の本。こういう若者が出てきたことに少し希望が湧いてきます。読みながらかつてトロツキストであった学生時代を思い出すのでした。
◉『ウダイ・プラカーシ選集』*(ウダイ・プラカーシ/石田英明編訳、大同生命国際文化基金、2011)
◉『疾病と世界史』上下***(ウィリアム・H・マクニール/佐々木昭夫訳、中公文庫、2007)
◉『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』***(ミチオ・カク/斎藤隆央訳、NHK出版、2015)
◉『破壊する創造者 ウィルスがヒトを進化させた』再読**(フランク・ライアン/夏目大訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2014)2014
◉『未来への大分岐』**(マルクス・ガブリエル+マイケル・ハート+ポール・メイソン 斎藤幸平編、集英社新書、2019)
◉『地球を「売り物」にする人たち』**(マッケンジー・ファンク/柴田裕之訳、ダイヤモンド社、2016)
◉『新しい腸の教科書』(江田証、池田書店、2020)
◉『句会入門』*(長谷川櫂、講談社現代新書、2020)
◉『気候変動クライシス』*(ゲルノット・ワグナー+マーティン・ワイツマン/山形浩生訳、東洋経済新報社、2016)
◉『ナニカアル』**(桐野夏生、新潮社、2010)
◉『猿の見る夢』*(桐野夏生、講談社、2016)
◉『ウイルスの意味論』**(山内一也、みすず書房、2018)
◉『なぜペニスはそんな形なのか』***(ジェシー・ベリング/鈴木光太郎訳、化学同人、2017)
◉『バラカ』**(桐野夏生、集英社、2016)
◉『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』(菅野恵理子、アルテスパブリッシング、2015)
◉『ダーウィンが愛した犬たち』**(エマ・タウンゼント/渡辺政隆訳、勁草書房、2020)
◉『長いお別れ』*(中島京子、文藝春秋、2015)

2020年

11月16日(月)号

◉『誰が音楽をタダにした?』***(スティーヴン・ウィット/関美和訳、ハヤカワ文庫、2018)
--音楽がデジタル情報として流通するきっかけになったMP3の開発、規格の乱立と当時の音楽流通業界との確執などなど、結果的に現在のような音楽流通のあり方に至った物語。一気に読めました。 

◉『滅亡へのカウントダウン』上下***(アラン・ワイズマン/鬼澤忍訳、ハヤカワ文庫、2017)
--これを読むと人類の未来に対して相当絶望的になります。気候変動だけではなく、水や農水産資源、エネルギー資源などなど、どの要素をとっても我々は滅亡へ向かってひた走っているように思えてきます。いつまでも成長だ成長だと叫び続ける人に特に読んで欲しい。

◉『サピエンス異変』**(ヴァイバー・クリガン=リード/水谷淳・鍛原多恵子訳、飛鳥新社、2018)
--私たちが生きるこの地球の「地質年代」は、1万年以上続いた「完新世」に次いで、「人新世」という新たな段階に突入している。そして文明が生み出したこの「人新世」によって、いまや私たち自身がつくり変えられようとしている―。欧米の歴史教科書に追加されつつある「人新世問題」をめぐる衝撃の書!--Amazonの書籍紹介より

◉『芭蕉』(田中善信、創元社、2013)

◉『奇想、宇宙をゆく』**(マーカス・チャウン/長尾力訳、春秋社、2004)
--難解すぎて普通の頭ではとてもついていけない奇想天外な物理学者たちの発想に驚かされます。

◉『13億人のトイレ』***(佐藤大介、KADOKAWA、2020)
--インド全土にトイレを普及させるという「スワッチ・バーラト」を提唱し、昨年2019年に「成功した」と高らかに宣言し、その功績でビル・ゲイツ財団から表彰されたモディ首相だが、宣言とは裏腹な実態が特派員記者の取材で明らかにされる。今や世界一かもと言われる人口を持つインドの底知れない混沌とした社会状況には、ずっと縁があったワダスとしても人ごとではない気がします。

◉『音楽が聴けなくなる日』*(宮台真司+永田夏来+かがりはるき、集英社新書、2020)
--電気グルーヴのピエール瀧の麻薬取締法違反容疑逮捕に伴ってなされたレコード会社の音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止のおかしさを様々な視点から抉り出している。読めば読むほど、日本の会社の思考停止と右へ習えの度が酷くなりつつあることを痛感する。

◉『狙撃者のゲーム』*上下(スティーヴン・ハンター/公手成幸訳、扶桑社ミステリー、2019)

◉『憂鬱と官能を教えた学校』**再読(菊池成孔、河出書房新社、2004)

◉『レヒーナ』上下**(アントニオ・ベラスコ・ピーニャ/竹西知惠子訳、ナチュラルスピリット、2002)
--読み物としてなかなかでした。とはいえチベット僧によってスピリチュアルな訓練を受けたドイツとメキシコ原住民の混血女性が、メキシコを覚醒させるという話は実話というにはかなり怪しい。メキシコ・オリンピックの年に起きたトラテロルコ事件の描写が印象的でした。トラテロルコ事件については、去年のキュアロン監督によるアカデミー賞受賞作品「ローマ」でも静かに不気味に描かれています。

◉『デンジャラス』*(桐野夏生、中央公論社、2017)
--「谷崎潤一郎」を題材に、桐野夏生が織りなす物語世界から炙り出される人間たちの「業」と「欲」。実際の話だったのかもしれないと思わせる。

◉『嫉妬の時代』再読(岸田秀、飛鳥新社、1987)
◉『俳句脳』(茂木健一郎+黛まどか、角川書店、2008)

◉『<雅楽>の誕生』**(鈴木聖子、春秋社、2019)
--昨年2019年のサントリー学芸賞〔芸術・文学部門〕受賞作品。〈雅楽〉とはなにか――近代日本において「科学」を通して日本音楽の研究に終生取り組み、現代われわれが知る〈雅楽〉の概念を作り上げた人物・田辺尚雄。田辺は当時最先端の音響学や進化論などの知見にもとづいて日本の音楽を研究、「日本音階」の探究から出発し、〈雅楽〉を核とする「日本音楽史」を編み上げ、さらには遠くシルクロードのむこうに〈雅楽〉の悠久の響きを追い求めた。つくられた〈雅楽〉の真相に迫る画期的論考。-Amazon書籍紹介より 

◉『ユングのサウンドトラック』*(菊地成孔、河出文庫、2015)
◉『インド人の「力」』**(山下博司、講談社現代新書、2016)
◉『京都ぎらい官能篇』*(井上章一、朝日新書、2017)
◉『レッド・メタル作戦発動』**上下(マーク・グリーニー/伏見威蕃訳、ハヤカワ文庫、2020)

◉『アメリカーナ』***(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ/くぼたのぞみ訳、河出書房新社、2016)
--久々に小説の世界にはまりました。作者はナイジェリアからアメリカに留学した女性です。大きな事件が起きるわけではないが、短い描写によって登場人物の的確な表情を描き出した「恋愛小説」。我々がアメリカに対して思っている黒人と白人といった図式とは違った視点での人種差別の実態が浮かび上がる。

◉『ミレニアム6』*上下(ダヴィド・ラーゲルクランツ/ヘレンハルメ美穂+久山葉子訳、早川書房、2019)
◉『緊急提言 パンデミック』***(ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳、河出書房新社、2020)
◉『しのびよる破局』*(辺見庸、大月書店、2009)

◉『わたしはナチスに盗まれた子ども』**(イングリット・フォン・エールハーフェン&ティム・テイト/黒木章人訳、原書房、2020)
--両親と思い込んでいた夫婦からなぜか愛されなかった著者が、実はナチスが純潔アーリア人の子供を生産するべく作った組織<レーベンスボルン>からもらわれてきた子供だったことがわかってくる。優生思想と千年王国を夢見たナチスのおぞましい歴史が明らかになる。


8月16日号

◉『RĀGA & RĀGINĪS』(O.C. Gangly, Munshiram Manoharlal Publishers,1935)
『Chasing the Rag Dream』**(Aneesh Pradhan,HarperCollins Publishers, 2019)
『ミラーニューロンの発見』再読**(マルコ・イアコボーニ/塩原通緒訳、ハヤカワ文庫、2011)
『脳のなかの幽霊』再読(***V.S.ラマチャンドラン+サンドラ・ブレイクスリー/山下篤子訳、角川文庫、2011)
『脳のなかの幽霊、ふたたび』***再読(V.S.ラマチャンドラン/山下篤子訳、角川文庫、2011)
脳のなかの天使』***再読(V.S.ラマチャンドラン/山下篤子訳、角川書店、2013)
第6の絶滅は起こるのか』***(ピーター・ブラネン/西田美緒子訳、築地書館、2019)
『からだの中の下界 腸の不思議』**(上野川修一、講談社、2013)
津軽三味線の誕生』**再再読(大條和雄、新曜社、1995)
『サルは大西洋を渡った』***(アラン・デケイロス/柴田裕之・林美佐子訳、みすず書房、2017)
『津軽三味線ひとり旅』**再読(高橋竹山、新書館、1997)
『音楽家の食卓』(野田浩資、誠文堂新光社、2020)
すごい物理学講義』*(C・ロヴェッリ/栗原俊秀訳、河出文庫、2019)
ホット・ゾーン』**(リチャード・プレストン/高見浩訳、早川書房、2020)
『低地』**(ジュンパ・ラヒリ/小川高義訳、新潮社、2014)
『うほほいシネマクラブ』(内田樹、文春新書、2011)
『極楽の日本語』(足立紀尚、河出書房新社、2007)
『ウイルス大感染時代』(NHKスペシャル取材班、KADOKAWA、2017)
『4%の宇宙』**(リチャード・パネク/谷口義明訳、ソフトバンククリエイティブ、2011)

5月2日(土)号

◉『ジョン万次郎』(マーギー・プロイス/金原瑞人訳、集英社文庫、2018)
『おっぱいマンション改修争議』(原田ひ香、新潮社、2019)
ヒトラーと物理学者たち』**(フィリップ・ボール/池内了・小池史哉訳、岩波書店、2016)
交雑する人類』**(デイヴッィド・ライク/日向やよい訳、NHK出版、2018)
老子・荘子』*再読(森三樹三郎、講談社学術文庫、1994)
『不祥事』(池井戸潤、実業之日本社、2004)
『古代文明と気候変動』**(ブライアン・フェイガン/東郷えりか訳、河出書房新社、2005)
『昭和の落語名人列伝』(今岡謙太郎・中川桂他、淡交社、2019)
イスラム最終戦争』**1~4(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2019)
『大格差』**(タイラー・コーエン/池村千秋訳、NTT出版、2014)
『大阪的』*(井上章一、幻冬舎新書、2018)
ハーバードの人生が変わる東洋哲学』*(マイケル・ピュエット+クリステーン・グロス=ロー/熊谷淳子訳、早川書房、2016)
『フェルマーの最終定理』***再読(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社電子版、2016)
『暗号解読』**(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社、2001)
『ビックバン宇宙論』***上下/再読(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社、2006)
『銃・病原菌・鉄』上下/***再読(ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳、草思社、2000)

1月16日号

**『オリジン』上中下(ダン・ブラウン/越前敏弥訳、角川文庫、2019)
**『十二の遍歴の物語』(G・ガルシア=マルケス/旦啓介訳、新潮社、1994)
**『魂に息づく科学』(リチャード・ドーキンス/大田直子訳、早川書房、2018)
***『コレラの時代の愛』(G・ガルシア=マルケス/木村榮一、新潮社、2006)
*『わが悲しき娼婦たちの思い出』(G・ガルシア=マルケス/木村榮一、新潮社、2006)
***『ペドロ・パラモ』(フアン・ルルフォ/杉山晃・増田義郎訳、岩波文庫、1992)
*『火山の下』(マルカム・ラウリー/斎藤兆史監訳、白水社、2010)
**『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』(G・ガルシア=マルケス/木村榮一、新潮社、2018)
*『燃える平原』(フアン・ルルフォ/杉山晃訳、岩波文庫、2018)
『孤独な崇拝者』(J・D・ロブ/中谷ハルナ訳、ヴィレッジブックス、2017)
『不倫』(パウロ・コエーリョ/木下眞穂訳、角川書店、2016)
『あの季この季』(岸田今日子、朝日新聞社、1998)
***『百年の孤独』再読(G・ガルシア=マルケス/鼓直訳、新潮社、2006)
**『無限に魅入られた天才数学者たち』(アミール・D・アクゼル/青木薫訳、早川書房、2002)
**『神は妄想である』再読(リチャード・ドーキンス/垂水雄一訳、早川書房、2007)
***『危機と人類』(上下合本版)(ジャレド・ダイアモンド/小川敏子+川上純子訳、 日本経済新聞出版社、2019)
**『4分33秒論』(佐々木敦、株式会社Pヴァイン、2014)
『僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない』(ジョージ・チャム+ダニエル・ホワイトソン/水谷淳訳、ダイヤモンド社、2018)
***『21Lessons』(ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之、河出書房新社、2019)
『シュレディンガーの猫』(アダム・ハート=デイヴィス/山崎正浩訳、創元社、2017)
*『都会と犬ども』(マリオ・バルガス=リョサ/杉山晃訳、新潮社、2010)

2019年

3月31日号

『抵抗の拠点から』(青木理、講談社、2014)
『アーサー・C・クラーク自伝』**(アーサー・C・クラーク/山高昭訳、早川書房、1990)
『金子みすゞ み仏への祈り』*(詩と詩論研究会編、勉誠出版、2011)
*1『土と内臓』**(デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー/片岡夏実訳、築地書館、2016)
『神道と神社の秘密』(神道と神社の歴史研究会編、彩図社、2017)
『寺田寅彦全集』(290作品、Kindle版)
『人工知能VS人間は、将棋でも日常生活でも?AIが問い直す、人間が生きる意味』(羽生善治+酒井邦嘉、Kindle版、中央公論社、2017)
『堕落論』(坂口安吾、Kindle版)
『続堕落論』(坂口安吾、Kindle版)
『病床六尺』(正岡子規、Kindle版)
『科学者とあたま』(寺田寅彦、Kindle版)
『数学と語学』(寺田寅彦、Kindle版)
『コーヒー哲学序説』(寺田寅彦、Kindle版)
『人柱の話』(南方熊楠、Kindle版)
『芸術を創る脳』(酒井邦嘉編、東京大学出版会、2013)
『脳を創る読書』(酒井邦嘉、実業之日本社、2017)
『言語の脳科学』**(酒井邦嘉、中公新書、2002)
『神は数学者か?』**(マリオ・リヴィオ/千葉敏生訳、ハヤカワ文庫、2017)
『AI VS. 教科書が読めない子供たち』**(新井紀子、東洋経済新報社、2018)
『暴力の人類史』上(スティーブン・ピンカー/幾島幸子+塩原通緒訳、青土社、2015)/未読了
『錯覚の科学』**(クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ/木村博江訳、文藝春秋、2011)
『ミレニアム5-復讐の炎を吐く女』***上下(ダヴィド・ラーゲルクランツ/ヘレンハルメ美穂+久山葉子訳、ハヤカワ文庫、2018)
『ラテンアメリカ文化史 : 二つの世界の融合』未読了(マリアーノ・ピコン=サラス/村江四郎訳、サイマル出版会、1991)
『ホーネット、飛翔せよ』**上下(ケン・フォレット/戸田裕之訳、ヴィレッジブックス、2004)
*2『なぜ世界は存在しないのか』***(マルクス・ガブリエル/清水一浩訳、講談社選書メチエ、2018)
『スプーンと元素周期表』**(サム・キーン/松井信彦訳、ハヤカワ文庫、2015)

*1・・・この本は、土の中に住む生物の驚くべく多様性と、彼らが相互にバランスを取れながら我々よりもずっとずっと長い間生き延びてきた絶妙な相互関係について仔細に描かれ、生物とは何か、進化とは何かについて再考させられます。

*2・・・久しぶりの哲学書。世界は存在せず、存在するのはそれ以外の全てのものであり、存在とは意味の場に現象することだ。などなど、新存在論と言われる著者の論考はなかなかに刺激的でした。

2018年

12月25日号
『新・平家物語』全16巻合本版読了(吉川英治、電子版)
*1『ホモ・デウス』下***(ユヴァル・ノア・ハラリ、柴田裕之訳、河出書房新社、2018)
『怨霊と鎮魂の日本芸能史』(井沢元彦、檜書店、2008)
*2『60歳からの外国語修行 メキシコに学ぶ』***(青山南、岩波新書、2017)
『翻訳家という楽天家たち』**(青山南、ちくま文庫、1998)
『世界を変えた6つの飲み物』*(トム・スタンデージ/新井崇嗣訳、インターシフト、2007)
『銀翼のイカロス』*(池井戸潤、ダイヤモンド社、2014)
*3『収奪された大地』**(エドゥアルド・ガレアーノ/大久保光夫訳、新評論、1986)
*4『孤独の迷宮』**(オクタビオ・パス/高山智博・熊谷明子訳、法政大学出版局、1982)
*5『ディエゴとフリーダ』***(ル・クレジオ/望月芳郎訳、新潮社、1997)
『ザ・サークル』上(デイヴ・エガーズ/吉田恭子訳、ハヤカワ文庫、2017)
『ザ・サークル』下(デイヴ・エガーズ/吉田恭子訳、ハヤカワ文庫、2017)
『植物はそこまで知っている』*(ダニエル・チャモヴィッツ/矢野真千子訳、河出文庫、2017)
『最澄と空海』再再読(梅原猛、小学館文庫、2005)
『西洋住居史』(後藤久、彰国社、2005)
『そば学大全』(俣野敏子、平凡社新書、2002)
『「戦後」の墓碑銘』*(白井聡、角川ソフィア文庫、2018)

*1...著者の前作『サピエンス全史』も相当すごい本でしたが、この『ホモ・デウス』ではこの先人類はどうなるのか、どこへ向かうのかを考えさせられます。脳科学やAIといった最先端科学の進歩によって歴史、文化、生物学、社会学などが生化学的アルゴリズムで説明される日が来るのか、来ないのか。明日のおかずを何にするか、どこへ旅行に行くか、4Kテレビを買うべきかとかの超短期的思考に忙しい我々も、ときにはこうしたぐっと長いスパンで物事を考えてみる必要があるのではないかと思います。
*2...現代アメリカ文学の紹介者、翻訳者として知られる著者が、60歳を過ぎてからスペイン語を習うためにメキシコへ行き、各地のスペイン語学校で短期入学した経験を面白く綴った本。メキシコの大抵のスペイン語学校は入学期間の滞在先までケアしてくれるとのことで、8月の旅行でぐっと親近感の湧いたメキシコへスペイン語を習いに行くのも悪くないと思うようになりました。
*3...大地の豊かさゆえに貧しくなったラテンアメリカの欧米からの搾取の構造をうんざりするほど多くの情報で解き明かした本で、読了するのにかなり時間がかかりました。
*4...1990年にノーベル文学賞を受賞したメキシコ人作家オクタビオ・パスの代表作。アステカ、マヤといった先スペイン期に対する憧憬と疚しさ、スペイン人による植民地化とキリスト教布教、メキシコ生まれのスペイン人たちを中心とした独立運動、混血したメスティーソの台頭などの歴史的考察から「メキシコ人性とは何か」を探った本ですが、読んでいるうちに「日本人性とは何か」を考えさせられるのでした。彼は駐インドメキシコ大使で、『インドの薄明』という著作もあるとのこと。読むべき本がまた増えました。
*5...天才画家ディエゴ・リヴェラのパリ修行時代、帰国後の壁画制作や天才性と共産主義運動、ひどい交通事故によって一生痛みと付き合いつつシュルレアリスム的自画像などを描き続けたフリーダとの出会いと結婚、結婚後も終わらない女漁りの果てにフリーダの妹とまで関係してしまうディエゴの性的無軌道ぶりなどなど逸話が二人への愛情をもって語られています。現在は美術館になっているフリーダのかつての家「カサ・アスール(青の家)」を8月に見てきたワダスには、フリーダの生活がぐっと身近に感じられました。
 作者のル・クレジオはまだ存命のノーベル賞作家。8月に訪れたパツクアロに家をもっていると書いてありました。

9月20日号
『仇敵』(池井戸潤、講談社文庫、2006)
『日本戦後史論』**(内田樹+白井聡、徳間書店、2015)
『欧州開戦』1(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2018)
『欧州開戦』2(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2018)
『欧州開戦』3(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2018)
『欧州開戦』4(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2018)
『米露開戦』1(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2015)
『米露開戦』2マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2015)
『米露開戦』3(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2015)
『米露開戦』4(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2015)
『メディア買収の野望』上(ジェフリー・アーチャー/永井淳訳、1996)
『メディア買収の野望』下(ジェフリー・アーチャー/永井淳訳、1996)
『七つの会議』(池井戸潤、集英社文庫、2016)
『ヒトラーと物理学者たち』***(フィリップ・ボール/池内了・小畑史哉訳、岩波書店、2016)
『一万年の進化爆発』(グレゴリー・コクラン、 ヘンリー・ハーペンディング/ 古川奈々子訳、日経BP社電子版、2010)
『物語 メキシコの歴史』(大垣貴志郎、中公新書電子版、2008)
『剣より強し』上(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2016)
『剣より強し』下(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2016)
『現代メキシコを知るための60章』(国本伊代編著、明石書店、2011)
『めきめきメキシコ』(Kuma*Kuma、スリーエーネットワーク、2003)
『北斎を愛したメキシコ詩人』(田辺厚子、PMC出版、1990)
『片腕をなくした男』上(ブライアナ・フリーマントル/戸田裕之訳、新潮文庫、2009)
『片腕をなくした男』下(ブライアナ・フリーマントル/戸田裕之訳、新潮文庫、2009)
『メキシコ歴史教科書』(ホセ=デ=ヘスス ニェト=ロペス、 リゴベルト ニェト=ロドリゲス/(国本伊代監訳、明石書店、2009)
『天国に行きたかったヒットマン』(ヨナス・ヨナソン/中村久里子訳、西村書店、2016)
『科学はなぜわかりにくいのか』(吉田伸夫、技術評論社、2018)
『メキシコの輝き-コヨアカンに暮らして』(黒沼ユリ子、岩波新書、1989)
『ホモ・デウス』上***(ユヴァル・ノア・ハラリ、柴田裕之訳、河出書房新社、2018)

5月30日号

*1『米朝開戦』**1~4(マーク・グリーニー/田村源二訳、新潮文庫、2016)
『米中開戦』**1~4(トム・クランシー/田村源二訳、新潮文庫、2012)
『教皇暗殺』*1~4(トム・クランシー/田村源二訳、新潮文庫、2004)
『聖戦の獅子』上下(トム・クランシー/伏見威蕃訳、新潮文庫、2006)
『ライアンの代価』*1~4(トム・クランシー/田村源二訳、新潮文庫、2013)
『細菌テロを討て』上下(トム・クランシー+マーティン・グリーンバーグ/棚橋志行訳、二見書房、2001)
*2『人体六百万年史』**上下(ダニエル・E・リーバーマン/塩原通緒訳、2017)
『貝のうた』**(沢村貞子、新潮文庫、1983)
*3『大量殺人のダークヒーロー』**(フランコ・ベラルディ/杉村昌昭訳、作品社、2017)
*4『日本沈没』***(小松左京、【文春e-Books】、2017)
*5『感染症の世界史』(石弘之、角川文庫、2018)
*6『チューリングの大聖堂』**上下(ジョージ・ダイソン/吉田三知世訳、ハヤカワ文書、2017)

『オレたちバブル入行組』**(池井戸潤、文春文庫、2004)

*1... Netoffというウェブサイトに古い本が格安で売られていることに気がつき、冊数によって送料が無料になるというので、試しに1冊108円のトム・クランシーものを22冊購入し、2週間ほど国際謀略戦争シュミレーションの世界に浸りました。アメリカの国家幻想に満ちた大味の物語ですが、ストーリー展開が巧みなので時間つぶしには最適なのです。特にトランプ・金正恩会談が話題になったせいか、『米朝開戦』はなかなかに面白く読みました。
*2...人体の各パーツや病気と進化の関係を著した読み応えのある本。皆さんにもお勧めしたい。山極寿一さんの巻末の解説もなかなかです。
*3...アメリカでときどき発生する銃乱射事件などを解説しつつ、現代文明の病理を考えさせるいい本です。これもお勧め。
*4...ワダスが学生の頃に出た小松左京のベストセラー小説。電子出版で安く売られていたので思わず購入しました。初版の時にもすぐに買って読んだ記憶がありますが、50年も前に書かれたとは思えないほど、時代を超えた普遍性があり、今読んでも新鮮で、いろんなことを考えさせらる小説です。
*5...タイトル通りの、感染症と人間の関係を歴史的に著した好著でした。コレラ、ペスト、梅毒、インフルエンザ、エイズ、サーズ、エボラ熱、結核などなど、細菌やウイルスが原因の感染症が歴史に大きな影響を与えたことは、ジャレド・ダイヤモンドの『鉄・銃・病原菌』などでも論じられていますが、原因がわからずなすすべもなくバタバタと人が死んでいく時代に生まれなくてよかったとつくづく思います。最近ではかなりの感染症が克服されて来ていますが、微生物たちも自らを変えてまだまだしぶとく生き続けているので気をつけることに越したことはありませんね。微生物が原因ではない病気については、『人体六百万年史』で進化のミスマッチという発想で書かれていて、合わせて読むとなかなかに興味深いものがあります。
*6...戦中戦後にかけてアラン・チューリング、ジョン・フォン・ノイマン、ゲーデルなどなど、プリンストン高等研究所を中心に進められたコンピュータ開発にまつわる話。アラン・チューリング、フォン・ノイマンという天才的数学者がどのようにしてコンピュータを発想し作り上げていったのかが、フリーマン・ダイソンの息子としてオンタイムで目撃していたジョージ・ダイソンが書いたノンフィクションです。ワダスとしては好きなジャンルでかなり面白く読みましたが、配偶者はチンプカンプンだと言っていたのでした。

2月27日号

#1『新・平家物語 全16巻合本版』未読了(吉川英治、電子版)
『空飛ぶタイヤ』(池井戸潤、実業之日本社文庫、2016)
#2『これがすべてを変える』***上下(ナオミ・クライン/幾島幸子+荒井雅子訳、岩波書店、2017)
『心はすべて数学である』(津田一郎、文藝春秋、2015)
#3『須賀敦子 』***(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集、河出書房新社、2016)
#4『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』***上下(ダヴィド・ラーゲルクランツ/ヘレンハルメ美穂+羽根由訳、ハヤカワ文庫、2017)
#5『サピエンス全史』***上下再読(ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳、河出書房新社、2016)

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#1.Kindleストアでふと「新・平家物語 全16巻合本版99円」というのを目にしました。考えてみれば平家物語などというのをまともに読んだことがなかったなあ、徹底気にヒマな時期だから読んでみようか、全16巻で99円というのはいかにも安い、ま、試しに読んでみっかと思いふとクリックしてしまいました。で、読み始めたのですが、これが長い。まだ半分も終わっていません。別の本も読みたいけど途中で止めると話が分からなくなる。いくら安いからといってあまりに長い読み物に没頭するほどヒマではないわけで、ちと後悔しています。とはいえ買ったからには最後まで読むつもりではありますが。平安後期の平家の隆盛と源氏の台頭の話は、知っているようで知らないことが多く、なかなかに面白いものです。お忙しいみなさんにはオススメはしませんが。それにしても吉川英治という作家は途方もなくたくさん書いた人なんですね。
#2.目先の利益につながらない地球温暖化抑止に抵抗し続け、無限の成長と利益を目指す資本主義がこのまま続けばどうなるのか。資本主義に代わる別の考え方を模索しなければ、たぶん、人類滅亡へつながるだろうという警告の書。
#3.須賀敦子さんの文章は、やはり何度読んでもグッときます。
#4.「ミレニアム3」まで書いて50歳で亡くなってしまったスティーグ・ラーソンをダヴィド・ラーゲルクランツが引き継いで書いた続編です。前作の登場人物やエピソードもしっかり盛り込んで書かれていて、スティーグ・ラーソンが書き続けていたらこうであったかもしれないと思わせる面白い小説。
#5.ほぼ一年前に読んだものの再読でした。細部はすっかり忘れていたので、ほとんど初めて読む感じでした。著者のユヴァル・ノア・ハラリの名前はダボス会議での基調講演とかTEDなどで目にすることがあり、おそらく世界で最も注目される歴史学者ではないかと思われます。続編の『HOMO DEUS』英語版をKindleで読み始めましたが、これはかなり不気味な予言の書といってもいい。今年出るはずの翻訳版も楽しみです。

2017年
11月30日号


『文明は<見えない世界>がつくる』(松井孝典、岩波新書、2017)
『邪馬台国と初期ヤマト政権の謎を探る』(塚口義信、原書房、2016)
『鉄の骨』(池井戸潤、講談社文庫、2011)
#1『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』***(ルイス・ダートネル/東郷えりか訳、河出書房新社、2015)
『大学とは何か』**(吉見俊哉、岩波新書、2011)
#2『世界の測量 ガウスとフンボルトの物語』***(ダニエル・ケールマン/瀬川裕司訳、三修社、2008)
#3『ラデツキー行進曲』***(ヨーゼフ・ロート/平田達治訳、鳥影社、2007)
『街場の読書論』*(内田樹、太田出版、2012)
『名声』(ダニエル・ケールマン/瀬川裕司訳、三修社、2010)
『フェルマーの最終定理』***再読(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社電子版、2016)
『学校では学べない世界近現代史』*(文藝春秋編、電子版、2017)
『啓蒙とは何か』**他3編(カント/中山元訳、光文社古典新訳文庫電子版、2013)
『世界で最も美しい量子物理の物語』*(ロバート・P・クリース+アルフレッド・シャーフ・ゴールドハーバー/吉田三知世訳、日経BP社、2017)
『大予言』(吉見俊哉、集英社新書、2017)
『別冊NHK100分de名著 大乗仏教』**(佐々木閑、NHK出版電子版、2017)
『「文系学部廃止」の衝撃』*(吉見俊哉、集英社新書、2016)
『クラウド・テロリスト』上下(フリーマントル/松本剛史訳、新潮文庫、2017)
#4『セカンドハンドの時代』***(スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ/松本妙子訳、岩波書店、2016)
『別冊NHK100分de名著 維摩経』**(釈徹宗、NHK出版電子版、2017)
『人類の星の時間』**(シュテファン・ツヴァイク/片山敏彦訳、グーテンベルク21電子版、2017)
『重力波は歌う』**(ジャンナ・レヴィン/田沢恭子+松井信彦訳、早川書房電子版、2016)
『茶箱広重』(一ノ関圭、小学館、2000)
『鼻紙写楽』(一ノ関圭、小学館、2015)

#1・・・ネパールへ持って行った唯一の本。ネパールでは毎日が忙しかったので帰国前日に読了。核戦争や大気候変動などで人類が破局を迎えたとき、生き残った人間はどうやって科学文明を再興するかというのがテーマです。実際は、いまわれわれが使っているモノがいかに多くの専門化した多くの人間の手によって成り立つのかを思い知らされる本でした。例えば包丁やハサミといったわれわれが当たり前に使っている鉄製品が、もともとの岩石からどのようにして選り分けられ集められて鉄という材料になるのかなんて普通の人は知りません。あるいは刈り取った羊の毛を持たされて、今着ている濃紺の毛糸のセーターを作れと言われてもできません。生の毛からセーターまでは無数の加工プロセスが必要だからです。文明度が高いほどモノの構成要素の集積度が高いということは、破局が仮に起こった場合、最も生き延びにくい。というようなことを色々と考えさせられる本です。おすすめです。
#2・・・頭脳の中で数の世界を旅する数学の天才ガウスと、実際にいたるところを旅して世界を把握しようとしたフンボルトの話。ガウスの、自分よりも頭の悪い人間を見下すいやらしさとか、フンボルトの世界を知りたいという意思の強さと絶対になんとかなるという思い込みの楽天性、最初はそれぞれの人生に焦点を当てて物語が進行しますが、次第に二人の人生が交差してきます。簡潔でテンポの早い描写が現代的と言えるかもしれません。ネパールで会ったオーストリア人女性エヴァのおすすめ本でした。大当たりの本です。
#3・・・やはりエヴァのおすすめ。ヨーロッパの一大勢力だったハプスブルグ家のオーストリア・ハンガリー帝国が次第に力を弱め、第一次大戦の敗戦で完全に崩壊してしまうわけですが、その崩壊の過程をある一族の3代にわたる男たちの生き方を通して描いた物語。ディテールのレトリックが濃密なので物語の進行スピードは遅いが、その描写力で物語世界に引きずり込んでしまう。久しぶりに、読み終わって「ふう」と一息ついたのでした。それほど充実した読書でした。
#4・・・600ページ近い分厚い本ですが、楽に読めました。村上春樹の『アンダーグラウンド』と同じような全編インタビューの記録。ソ連時代のかつての英雄たち、ささいな理由で死刑になったり拷問を受けりした人やその家族、極寒の収容所から帰還した人たち、ソ連時代に共産主義教育を受けた人たちの、ソ連崩壊後の社会の激変に戸惑う人たちの言葉が延々と続く。政治体制の激変がいかに人々の生き方に影響を与えるか考えさせられます。敗戦によって鬼畜米英からアメリカ的民主主義に変化した日本でも似たようなことが多くあったはずで、人ごとではない。

8月18日号

#1『音楽を考える人のための基本文献34』**(椎名亮輔編著、アルテスパブリッシンク、2017)
『一茶』**(藤沢周平、文春文庫、2009)
『たとえ世界が終わっても』(橋本治、集英社新書、2017)
『ファインマンさんの流儀』再再読***(ローレンス・M・クラウス/吉田三千世訳、ハヤカワ文庫NF、2015)
『コンヴィヴィアリティのための道具』*(イヴァン・イリイチ/渡辺京二+渡辺梨佐訳、ちくま学芸文庫、2015)
『日本の犬猫は幸せか』(エリザベス・オリバー、集英社新書、2015)
『生物はなぜ誕生したのか』**(ピーター・ウォード+ジョセフ・カーシュヴィンク/梶山あゆみ訳、河出書房新社、2016)
『数学者たちの楽園』**(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社、2016)
『科学の終焉』再読*(ジョン・ホーガン/竹内薫訳/徳間文庫、2000)
『バーニング・ワイヤー』**(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2014)
『限界点』**(ジェフリー・ディーヴァー/土屋晃訳、文藝春秋、2015)
『一緒にいてもスマホ』未読了(シェリー・タークル/日暮雅通訳、青土社、2017)
『ヌメロ・ゼロ』**(ウンベルト・エーコ/中山エツコ訳、河出書房新社、2016)
#2『武満徹・音楽創造への旅』***(立花隆、文藝春秋、2016)
『哲学的な何か、あと科学とか』(飲茶、二見文庫、2017)
『科学は未来をひらく』(光学園+ちくまプリマー新書編集部編、ちくまマプリマー新書、2015)
#3『PC遠隔操作事件』***(神保哲生、光文社、2017)
『実録「実録映画」大全』(映画秘宝編集部編、洋泉社、2016)
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#1.古代ギリシアから現代までのさまざまに音楽に関する言説が時系列に沿って紹介されているので参照には便利な本。もっとも、出版社の販売戦略だろうが、取り上げられているのが主に西洋の「芸術」音楽に限定しているので、「音楽を考える・・・」というタイトルや、帯の「全音楽人必携!」は誤解を招きやすい。今日のように多様な音楽ジャンルが並存している状況で、読者対象として意識しているのが未だに「気分は西洋人」的日本人であることに驚いてしまう。
 通読した全体の印象は、音楽という不思議な体験を言語化しようとした人たちの言明が色々あるということが分かるが、そうした記述を通した編者の音楽観が書かれていればより充実した読書体験になったはずなので残念。

#2.上下二段組約800ページのヘビー級大著。まるで夏休みの課題のように読みました。武満さんの名前は当然知ってはいましたが、生い立ちから作曲家として独り立ちするまでのプロセス、西洋音楽と日本音楽、音楽的アイデンティティ、音楽とは何か、などなど考えさせられることの多い本でした。文中に出てくる武満作品他いろんな現代音楽をその都度YouTubeで聞きながらの読書はなかなかに楽しい。

#3.力作です。事件を通して見えてくる日本の司法制度、相変わらずの推定無罪の原則の無視、無責任に捜査当局のリーク情報を垂れ流す記者クラブメディア、インターネット犯罪の立証の難しさ、デジタル技術に追いつかないのに判断を迫られる裁判官、自白を偏重しいったん思い込んだら何が何でも犯人に仕立てようとする捜査当局などなど、今の制度のままで「共謀罪」の捜査が行われれば、とんでもない悲劇と茶番が生まれる予感がしてきました。

5月25日号

『聖地巡礼』(内田樹+釈徹宗、東京書籍、2016)
『正義から享楽へ』(宮台真司、blueprint、2017)
『インド鍵盤楽器考』*(岡田恵美、渓水社、2016)
『仏教思想のゼロポイント』**(魚川祐司、新潮社、2015)
『ゲンロン2』(株式会社ゲンロン、2016)
『哲学で何をするのか』(貫成人、筑摩書房、2012)
『読書の愉しみ』(中村稔、青土社、2016)
『打ちのめされるようなすごい本』***(米原万里、文藝春秋、2006)
『フォン・ノイマンの生涯』***(ノーマン・マクレイ/渡辺正+芦田みどり訳、朝日選書、1998)
『オトコの進化論』***(山極寿一、ちくま新書、2003)
『麻雀の誕生』(大谷通順、大修館書店、2016)
『雨の自然誌』*(シンシア・バーネット/東郷えりか訳、河出書房新社、2016)
『イモータル』(萩耿介、中公文庫、2014)
『世界の名作を読む』*(工藤庸子・池内紀・柴田元幸・沼野充義、角川文庫、2016)
『戦争の世界史』**上下(ウィリアム・H・マクニール/高橋均訳、中公新書、2014)
『サピエンス全史』***上下(ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳、河出書房新社、2016)
『シンメトリーの地図帳』**(マーカス・デュ・ソートイ/冨永星訳、新潮文庫、2014)
『響きの科学』**(ジョン・パウエル/小野木明恵訳、ハヤカワ文庫NF、2016)

2月24日号
 『アップルVSグーグル』*(フレッド・ボーゲルスタイン/依田卓巳訳、新潮文庫、2016)
『熊と踊れ』**上下(アンデシュ・ルースルンド+ステファン・トゥンベリ/ヘレンハルメ美穂+羽根由訳、早川書房、2016)
『果つる底なき』*(池井戸潤、講談社、1998)
『東京島』*(桐野夏生、新潮社、2008)
『われらが背きし者』*(ジョン・ル・カレ/上岡伸雄+上杉隼人訳、岩波現代文庫、2016)
『グーグル的思考』*(ジェフ・ジャービス/早野依子訳、PHP研究所、2009)
『残虐記』*(桐野夏生、新潮社、2004)
『ポリティコン』上下**(桐野夏生、文藝春秋、2011)
『陸王』(池井戸潤、集英社、2016)
『熱狂の王 ドナルド・トランプ』*(マイレル・ダントニオ/高取芳彦+吉川南訳、クロスメディア・パブリッシング、2016)
『東京奇譚集』**(村上春樹、新潮社、2005)
『メディア・コントロール』**(ノーム・チョムスキー/鈴木主税訳、集英社新書、2003)
『社会という荒野を生きる』(宮台真司、KKベストセラーズ、2015)
『マクニール世界史講義』**(ウィリアム・H・マクニール/北川知子訳、ちくま学芸文庫)
『フラジャイル』*未読了(松岡正剛、筑摩書房、1995)
『がん-4000年の歴史』***上下(シッダールタ・ムカジー/田中文訳、ハヤカワノンフィクション文庫、2016)
『ビューティフル・マインド』***(シルヴィア・ナサー/塩川優訳、新潮文庫、2013)

2016年


11月25日号

『稲垣足穂さん』(松岡正剛、立東舎文庫、2016)
『永遠の不服従のために』**再読(辺見庸、毎日新聞社、2002)
『死と滅亡のパンセ』**(辺見庸、毎日新聞社、2012)
『戦争と一人の作家』未読了(佐々木中、河出書房新社、2016)
『変形する身体』(アルフォンソ・リンギス/小林徹訳、水声社、2015)
『ミヒァエル・ハネケの映画術』*(ミシェル・スィユタ+フィリップ・ルイエ/福島勲訳、水声社、2015)
『「人文学」という思考法』*(真野俊和、社会評論社、2015)
『ビックバン宇宙論/上』***(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社、2006)
『ビックバン宇宙論/下』***(サイモン・シン/青木薫訳、新潮社、2006)
『永遠の始まり1』*(ケン・フォレット/戸田裕之訳、SB文庫、2016)
『永遠の始まり2』*(ケン・フォレット/戸田裕之訳、SB文庫、2016)
『永遠の始まり3』*(ケン・フォレット/戸田裕之訳、SB文庫、2016)
『下流志向』*(内田樹、講談社、2007)
『国を救った数学少女』***(ヨナス・ヨナソン/中村久里子訳、西村書店、2015)
『音楽論』*(白石美雪編、武蔵野美術大学出版局、2016)
『コード トゥ ゼロ』**(ケン・フォレット/戸田裕之訳、小学館、2002)
『窓から逃げた100歳の老人』***(ヨナス・ヨナソン/柳瀬尚紀訳、西村書店、2014)
『体感する宇宙』(竹内薫、KADOKAWA、2014)
『べつの言葉で』**(ジュンパ・ラヒリ/中嶋浩郎訳、新潮社、2015)
『ピュタゴラスの復讐』*(アルトゥーロ・サンガッリ/冨永星訳、日本評論社、2010)
『アオキ』(神尾和寿、編集工房ノア、2016)
『鉄の骨』(池井戸潤、講談社、2009)
『雪』***(オルハン・パムク/和久井路子訳、藤原書店、2006)
『時のかけらたち』***(須賀敦子、青土社、1998)
『天使』**(佐藤亜紀、文藝春秋、2002)
『トルコ音楽の700年』(関口義人、ディスクユニオン、2016)
『図書館の殺人』未読了(青崎有吾、東京創元社、2016)
『わたしの名は紅』***(オルハン・パムク/和久井路子訳、藤原書店、2004)

8月23日号

『反社会学講座』(パオロ・マッツァリーノ、イースト・プレス、2004)
『太った男を殺しますか?』*(デイヴィッド・エドモンズ/鬼澤忍訳、太田出版、2015)
『證券詐欺師』(ゲーリー・ワイス/青木純子訳、集英社、2007)
『刑務所図書館の人びと』**(アヴィ・スタインバーグ/金原瑞人+野沢佳織訳、柏書房、2011)
『古代文明と気候大変動』**(ブライアン・フェイガン/東郷えりか訳、河出書房新社、2005)
『粋酒酔音』**再読(星川京児、音楽之友社、2004)
『職業としての小説家』***(村上春樹、スイッチ・パブリッシング、2015)
『ユーミン・陽水からみゆきまで』(富澤一誠、廣済堂新書、2015)
『セロニアス・モンクのいた風景』***(村上春樹編・訳、新潮社、2014)
『カイコの紡ぐ嘘』*上下(ロバート・ガルブレイス/池田真紀子訳、講談社、2015)
『音楽からインド社会を知る』*(寺田吉孝、フィールドワーク選書、2016)
『レム・コールハース 驚異の構築』未読了(ロベルト・ガルジャーニ/難波和彦監訳/岩元真明訳、鹿島出版会、2015)
『意識はいつ生まれるのか』*(マルチェッロ・マッスィミーニ+ジュリオ・トノーニ/花本知子訳、亜紀書房、2015)
『ワインの歴史』(マルク・ミロン/竹田円訳、原書房、2015)
『アフリカ音楽の正体』***(塚田健一、音楽之友社、2016)
『北極大異変』(エドワード・シュトルジック/園部哲訳、集英社インターナショナル、2016)
『よくわかる音楽理論』(秋山公良、ヤマハミュージックメディア、2014)
『食料と人類』**(ルース・ドフリース/小川敏子訳、日本経済新聞社、2016)
『天才が語るサヴァン、アスペルガー、共感覚の世界』**(ダニエル・タメット/古屋美登里訳、講談社、2011)
『意識をめぐる冒険』***(クリストフ・コッホ/土谷尚嗣+小畑史哉訳、岩波書店、2014)
『夏のものがたり』(クドウエツコ、自費出版、2011)

5月27日号  

『証言拒否』*上下(マイクル・コナリー/古沢嘉通訳、講談社文庫、2016)
『DNAは知っていた』*(サマンサ・ワインバーグ/戸根由紀恵訳、文春文庫、2004)
『インフェルノ』*上中下(ダン・ブラウン/越前敏弥訳、角川文庫、2016)
『脳ミソを哲学する』(筒井康隆、講談社、1995)
『正義の見方』(宮崎哲弥、洋泉社、1996)
『社会脳からみた認知症』(伊古田俊夫、講談社ブルーバックス、2014)
『遠方では時計が遅れる』再読(稲垣足穂、潮出版社、1975)
『やわらかな遺伝子』*(マット・リドレー/中村桂子・斉藤隆央訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2014)
『破壊する創造者 ウィルスがヒトを進化させた』*(フランク・ライアン/夏目大訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2014)
『印刷という革命』*(アンドルー・ペティグリー/桑木野幸司訳、白水社、2015)
『群れのルール』(ピター・ミラー/土方奈美訳、東洋経済新報社、2010)
『チェルノブイリの祈り』**(スベトラーナ・アレクシェービッチ/松本妙子訳、岩波現代文庫、2011)
『ハウス・オブ・デット』(アティフ・ミアン+アミール・サフィ/岩本千晴訳、東洋経済新報社、2015)
『創られた「日本の心」神話』**再再読(輪島裕介、光文社新書、2010)
『「演歌」のススメ』*(藍川由美、文春新書、2002)
『科学の本100冊』**(村上陽一郎、河出書房新社、2015)
『赤い楯』上下未読了(広瀬隆、集英社、1991)
『フランク・ゲーリー 建築の話をしよう』**(バーバラ・アイゼンバーグ/岡本由香子訳、エクスナレッジ、2015)
『天皇家の経済学』(吉田佑二、洋泉社、2016)
『考えない人』*(宮沢章夫、新潮文庫、2012) 
『聖人・托鉢修道士・吟遊詩人』(永井彰子、海鳥社、2015)

2月29日号
『お坊さんのための「仏教入門」』(正木晃、春秋社、2013)
『トイレの話をしよう』*(ローズ・ジョージ/大沢章子訳、NHK出版、2009)
『あなたの人生の科学』*上下(デイヴィッド・ブルックス/夏目大訳/ハヤカワ文庫、2015)
『男色の日本史』*(ゲイリー・P・リュープ/藤田真利子訳、作品社、2014)
『バウドリーノ』*上下(ウンベルト・エーコ/堤保徳訳、岩波書店、2010)
『レコードは風景をだいなしにする』**(デイヴィッド・グラブス/若尾裕+柳沢英輔訳、フィルムアート社、2015)
『史的幻想論で読む世界史』*(岸田秀、講談社学術文庫、2016)
『入門 哲学としての仏教』*(竹村牧男、講談社現代新書、2009)
『宇宙が始まる前には何があったのか』**再読(ローレンス・クラウス/青木薫訳、文芸春秋、2013)
『京都ぎらい』***(井上章一、朝日新書、2015)
『炭水化物が人類を滅ぼす』(夏井睦、光文社新書、2013)
『レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集』*(菊地成孔、亜紀書房、2015)
『ぼくの血となり肉となった五○○冊そして血にも肉にもならなかった一○○冊』**(立花隆、文芸春秋、2007)
『若い読者のための 第三のチンパンジー』***(ジャレド・ダイアモンド+レベッカ・ステフオフ編著/秋山勝訳、草思社、2015)
『カレル橋の1ユーロ』(広瀬隆、恒文社21、2001)

2015年

11月27日号

『ドーン』(平野啓一郎、講談社、2009)
『小沢征爾さんと、音楽について話をする』***(小沢征爾+村上春樹、新潮社、2011)
『藤沢周平と庄内』(山形新聞社編、ダイヤモンド社、1997)
『流れとかたち』*(エイドリアン・ベジャン+J・ペダー・ゼイン/柴田裕之訳、紀ノ国屋書店、2013)
『ノイマン・ゲーデル・チューリング』**(高橋昌一郎、筑摩書房、2014)
『書くことについて』**(スティーヴン・キング/田村義進訳、小学館文庫、2013)
『傷ついた日本人へ』*(ダライ・ラマ14世、新潮新書、2012)
『インドクリスタル』*(篠田節子、角川書店、2014)
『意味がなければスイングはない』**(村上春樹、文藝春秋、2005)
『食の終焉』**(ポール・ロバーツ/神保哲生訳、ダイヤモンド社、2012)
『抑圧された記憶の神話』(E.F.ロフタス+K.ケッチャム/仲真紀子訳、誠信書房、2000)
『スティーブ・ジョブズ』1、2***(ウォルター・アイザックソン/井口耕二訳、講談社+α文庫、2015)
『果てしなき渇き』(深町秋生、宝島社文庫、2007)
『ダブル』(深町秋生、幻冬舎文庫、2012)
『動的平衡ダイアローグ』(福岡伸一、木楽舎、2014)
『ローマ帝国の崩壊 文明が終わるということ』(ブライアン・ウォード・パーキンズ/南雲泰輔訳、白水社、2014)
『超麺通団2 ゲリラうどん通ごっこ軍団始まりの書』(田尾和俊、西日本出版社、2012)
『明治の音楽教育とその背景』*(前田紘二、竹林館、2010)
『津軽三味線ひとり旅』**再再読(高橋竹山、新書館、1997)
『ファインマンさんの流儀』***再読(ローレンス・M・クラウス/吉田三千世訳、ハヤカワ文庫NF、2015)

8月11日号

『追風に帆をあげよ』上下**(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2015)
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』*(伊藤亜紗、光文社新書、2015)
『父という病』**(岡田尊司、ポプラ新書、2015)
『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』**(ニール・シュービン/垂水雄二訳、ハヤカワ文庫NF、2013)
『ファインマンさんの流儀』***(ローレンス・M・クラウス/吉田三千世訳、ハヤカワ文庫NF、2015)
『東アジアの音楽文化』(原豊二・劉曉峰編、勉誠出版、2014)
『物理学者はマルがお好き』**(ローレンス・M・クラウス/青木薫訳、ハヤカワ文庫NF、2014)
『近代インドにおける古典音楽の社会的世界とその変容』**(田森雅一、三元社、2015)
『工作舎物語』*(臼田捷治、左右社、2014)
『越境する対話と学び』(香川秀太+青山征彦編、新曜社、2015)
『「礼楽」文化』未読了(小島康敬、ぺりかん社、2013)
『人類暗号』上下(フレデリック・T・オルソン/熊谷千寿訳、ハヤカワ文庫、2015)
『繁栄』(マット・リドレー/太田直子+鍛原多恵子+柴田裕之訳、ハヤカワ文庫NF、2013)
『物理と数学の不思議な関係』あまりに難解で未読了(マルコム・E・ラインズ/青木薫訳、ハヤカワ文庫NF、2004)
『断片的なものの社会学』**(岸政彦、朝日出版社、2015)
『4%の宇宙』*(リチャード・パネク/谷口義明訳、ソフトバンククリエイティブ、2011)
『6度目の大絶滅』*(エリザベス・コルバート/鍛原多恵子訳、NHK出版、2015)

5月23日号

『神と黄金』上下(ウォルター・ラッセル・ミード/寺下滝郎訳、青灯社、2014)
『運命の日』上下*(デニス・ルヘイン/加賀山卓朗訳、早川書房、2008)
『ルーズヴェルト・ゲーム』*(池井戸潤、講談社文庫、2014)
『宇宙はなぜこのような形なのか』(「NHKコズミックフロント」制作班、角川Epub選書、2014)
『民王』*(池井戸潤、ポプラ社、2010)
『タマリンドの木』*(池澤夏樹、文藝春秋、1991)
『火を熾す』*(ジャック・ロンドン/柴田元幸訳、スイッチ・ハプリッシング、2008)
『宇宙を測る』**(キティー・ファーガソン/加藤賢一+吉本敬子訳、講談社ブルーバックス、2001)
『日本音楽との出会い』再読(月渓恒子、東京堂出版、2010)
『せいめいのはなし』*(福岡伸一、新潮社、2012)
『死と神秘と夢のボーダーランド』(ケヴィン・ネルソン/小松淳子訳、インターシフト、2013)
『我が父サリンジャー』未読了(マーガレット・A・サリンジャー/亀井よし子訳、新潮社、2003)
『中国の音楽論と平均律』(田中有紀、風響社、2014)
『イスラーム 生と死と聖戦』*(中田孝、集英社新書、2015)
『スナイパーの誇り』上下**(スティーヴン・ハンター/公手成幸訳、扶桑社、2015)
『独学でよかった』**(佐藤忠男、中日映画社、2014)
『母という病』**(岡田尊司、ポプラ新書、2014)
『納豆の起源』*(横山智、NHK出版、2014)
『闇の貴族』(新堂冬樹、幻冬舎文庫、2008)
『宇宙が始まる前には何があったのか』**(ローレンス・クラウス/青木薫訳、文芸春秋、2013)
『河合隼雄の読書人生』*(河合隼雄、岩波現代文庫、2015)
『三匹のおっさん ふたたび』(有川浩、文芸春秋、2012)
『色のない島へ』***(オリヴァー・サックス/春日井晶子訳、ハヤカワ文庫、2015)

1月29日号

『響の考古学』再読**(藤枝守、音楽之友社、1998)
『音律と音階の科学』再読*(小方厚、講談社ブルーバックス、2007)
『誰よりも狙われた男』*(ジョン・ル・カレ/加賀山卓朗訳、ハヤカワ文庫、2014)
『原発文化人50人斬り』(佐高信、毎日新聞社、2011)
『天地明察』**(冲方丁、角川書店、2009)
『スパイスの歴史』(フレッド・ツァラ/竹田円訳、原書房、2014)
『僕らは星のかけら』**(マーカス・チャウン/糸川洋、無名舎、2000)
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』***(矢部宏治、集英社インターナショナル、2014)
『死もまた我等なり』上下*(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2012)
『永続敗戦論』***(白井聡、太田出版、2013)
『声明は音楽のふるさと』*(岩田宗一、法蔵館、2003)
『ヒッグス粒子の発見』*(イアン・サンプル/上原昌子訳、講談社、2013)
『経済学は人びとを幸福にできるか』**(宇沢弘文、東洋経済新報社、2013)
『見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ』**(パット・センソン/田村源二訳、飛鳥新社、2011)
『遥かなるセントラルパーク』上下**(トム・マクナブ/飯島宏訳、文春文庫、2014)
『(株)貧困大国アメリカ』*(堤未果、岩波新書、2013)
『宇宙誕生』**(マーカス・チャウン/水谷淳訳、筑摩選書、2011)
『キリスト教の歴史3 東方正教会・東方諸教会』*(廣岡正久、山川出版社、2013)
『ニッポンの音楽』*(佐々木敦、講談社現代新書、2014)
『進化の運命』*(サイモン・コンウェイ=モリス/遠藤一佳+更科功訳、講談社、2010)

2014年

10月30日号

『旅する遺伝子』再読**(スペンサー・ウェルズ/上原直子、英治出版、2008)
『量子革命』**(マンジット・クマール/青木薫訳、新潮社、2013)
『ヒトはいつから人間になったか』再読*(リチャード・リーキー/馬場悠男訳、草思社、1996)
『途上国の人々との話し方』再読***(和田信明+中川豊一、みずのわ出版、2010)
『インドの正体』(藤本欣也、産經新聞社、2006)
『最後の審判』(リチャード・ノース・パタースン/東江一紀訳、新潮社、2002)
『芸術・メディアのカルチュラル・スタディーズ』(佐々木英昭+松居竜五編著、ミネルヴァ書房、2009)
『100年予測』*(ジョージ・フリードマン/櫻井祐子訳、ハヤカワ文庫、2014)
『異端の数0』再読*(チャールズ・サイフェ/林大訳、ハヤカワ文庫、2009)
『科学と幸福』**(佐藤文隆、岩波書店、1995)
『くねくね日記』(田口ランディ、筑摩書房、2002)
『これが物理学だ!』*(ウォルター・ルーウィン/東江一紀訳、文藝春秋、2012)
『モルジブが沈む日』*(ボブ・リース/東江一紀訳、NHK出版、2002)
『生命の逆襲』(福岡伸一、朝日新聞出版、2013)
『すごいインド』(サンジーヴ・スィンハ、新潮新書、2014)
『歌うネアンデルタール』**(スティーヴン・ミズン/熊谷淳子訳、早川書房、2006)
『腸が元気になる本』(松生恒夫、健康人新書、2009)
『ハンナ・アレント』*(川崎修、講談社学術文庫、2014)
『一神教と国家』*(内田樹+中田考、集英社新書、2014)
『日本の軍歌』(辻田真佐憲、幻冬舎新書、2014)
『モラル・アニマル』上下*(ロバート・ライト/竹内久美子監訳/小川敏子訳、講談社、1994)
『本能はどこまで本能か』**(マーク・S・ブランバーグ/塩原道緒訳、早川書房、2006)

7月20日号

『第三の銃弾』上下*(スティーヴン・ハンター/公手成幸訳、扶桑社ミステリー、2013)
『6人の容疑者』上下**(ヴィカース・スワループ/子安亜弥訳、ランダムハウスジャパン、2010)
『美空ひばりと日本人』再読*(山折哲雄、現代書館、2001)
『ソウル・コレクター』(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2009)
『FBI秘録』上下**(ティム・ワイナー/山田侑平訳、文藝春秋、2014)
『創られた「日本の心」神話』再読**(輪島裕介、光文社新書、2010)
『津軽三味線の誕生』再読***(大條和雄、新曜社、1995)
『里山資本主義』**藻谷浩介+NHK広島取材班、角川oneテーマ21、2013)
『芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか』(市川真人、幻冬舎新書、2010)
『大宇宙七つの不思議』(佐藤勝彦監修、PHP文庫、2005)
『世界を救う処方箋』*(ジェフリー・サックス/野中邦子+高橋早苗訳、早川書房、2012)
『神聖喜劇1』*途中で挫折/読了ならず(大西巨人、文春文庫、1982)
『日本音楽との出会い』**(月渓恒子、東京堂出版、2010)
『音楽文化学のすすめ』(小西潤子、仲万美子、志村哲編、ナカニシ出版、2007)

4月30日号
『マリス博士の奇想天外な人生』**(キャリー・マリス/福岡伸一訳、ハヤカワ文庫、2004)
『音楽起源論』(黒沢隆朝、音楽之友社、1978)
『「標準模型」の宇宙』*(ブルース・シューム/森弘之訳、日経BP社、2009)
『がんばれカミナリ竜』上下**(スティーヴン・ジェイ・グールド/廣野喜幸+石橋百枝+松本文雄訳、早川書房、1995)
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』上下*(アンドリュー・ロス・ソーキン/加賀山卓朗訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2014)
『小暮写真館』(宮部みゆき、講談社、2010)
『ダイイング・アイ』(東野圭吾、光文社、2007)
『途上国の人々との話し方』**(和田信明+中川豊一、みずのわ出版、2010)
『ノモンハンの夏』*(半藤一利、文春文庫、2001)
『007白紙委任状』(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳、文藝春秋、2011)
『ハンナ・アーレント』**(矢野久美子、中公新書、2014)
『ブコウスキーの3ダース』(チャールズ・ブコウスキー/山西治男訳、1998、新宿書房)
『イタリアの幸せなキッチン』(宮本美智子、草思社、1995)
『江戸の食生活』(原田信男、岩波現代文庫、2009)
『凍てつく世界』1~3**(ケン・フォレット/戸田裕之訳、SB文庫、2014)
『もの食う人びと』**再読(辺見庸、角川文庫、1994)
『音楽への憎しみ』再読(パスカル・キニャール/高橋啓訳、青土社、1997)

1月29日号
『素数の音楽』***(マーカス・デュ・ソートイ/冨永星訳、新潮文庫、2013)
『日本奥地紀行』***(イザベラ・バード/高梨健吉訳、平凡社ライブラリー、2000)
『ビューティフル・マインド』***(シルヴィア・ナサー/塩川優訳、新潮文庫、2013)
『E=mc2』(デイヴィッド・ボダニス/伊藤文英+高橋和子+吉田三千世訳、ハヤカワ文庫、2010)
『ケンブリッジ・サーカス』**(柴田元幸、スイッチ・パブリッシング、2010)
『ミラーニューロンの発見』**(マルコ・イアコボーニ/塩原通緒訳、ハヤカワ文庫、2011)
『ドレミを選んだ日本人』*(千葉優子、音楽之友社、2007)
『ポアンカレ予想』**(ジョージ・G・スピーロ/永瀬輝男・志摩亜希子監修、ハヤカワ文庫、2011)
『時のみぞ知る』上下*(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2013)
『大便通』(辨野義己、幻冬社文庫、2012)
『数学をつくった人びと』1~3**(E.T.ベル/田中勇+銀林浩訳、ハヤカワ文庫、2003)
『博士と狂人』(サイモン・ウィンチェスター/鈴木主税訳、ハヤカワ文庫、2006)
『レーニンの墓』上下*(デイヴィッド・レムニック/三浦元博訳、白水社、2011)
『FBI美術捜査官』*(ロバート・K・ウィットマン+ジョン・シフマン/土屋晃+匝瑳玲子訳、柏書房、2011)

2013年

10月30日号
『昨日までの世界』上下***(ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳、日本経済新聞社、2013)
『修行論』(内田樹、光文社新書、2013)
『日本音楽の性格』(吉川英史、音楽之友社、1979)
『ミレニアム1』『ミレニアム2』『ミレニアム3』各上下全6冊/再読***(スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂+岩澤雅利、ハヤカワ文庫、2011)
『脳のなかの天使』***(V.S.ラマチャンドラン/山下篤子訳、角川書店、2013)
『アフリカ 苦悩する大陸』(ロバート・ゲスト/伊藤真訳、東洋経済新聞社、2008)
『カウントダウン・メルトダウン』上下*(船橋洋一、文藝春秋、2012)
『神の起源』上下(J.T.ブラナン/棚橋志行訳、ソフトバンク文庫、2013)
『代替医療解剖』***(サイモン・シン+エツァート・エルンスト/青木薫訳、新潮文庫、2013)
『永遠の〇』(百田尚樹、講談社文庫、2009)
『やわらかな生命』(福岡伸一、文藝春秋、2013)
『小さなおうち』**(中島京子、文藝春秋、2010)
『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』*(村上春樹、文芸春秋、2013)
『(株)貧困大国アメリカ』*(堤未果、岩波新書、2013)
『明治の音』(内藤高、中公新書、2005)
『下町ロケット』**(池井戸潤、小学館、2010)

7月19日号

『銃・病原菌・鉄』上下、再読***(ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳、草思社、2000)
『セックスはなぜ楽しいか』***(ジャレド・ダイアモンド/長谷川寿一訳、草思社、1999)
『グリーン革命』上下**(トマス・フリードマン/伏見威蕃訳、日本経済新聞新聞出版社、2009)
『狂食の時代』*(ジョン・ハンフリーズ/永井喜久子+西尾ゆう子訳、講談社、2002)
『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子、朝日出版社、2009)
『祖先の物語』上下**(リチャード・ドーキンス/垂水雄二訳、小学館、2006)
『日本音楽の再発見』再読**(小泉文夫・團伊玖磨、平凡社、2001)
『音楽からみた日本人』再読**(小島美子、NHK出版、1997)
『最澄と空海』再読*(梅原猛、小学館文庫、2005)
『ダーウィン以来』***(スティーヴン・ジェイ・グールド/浦本昌紀+寺田鴻訳、ハヤカワ文庫、1995)
『原発危機と東大話法』**(安富歩、明石書店、2012)
『バイオコスム』難解なため未読了(ジェイムズ・ガードナー/佐々木光俊訳、白揚社、2008)
『対称性』**(レオン・レーダーマン+クリストファー・ヒル/小林茂樹訳、白揚社、2008)

 4月26日号
『プロメテウスの罠2』(朝日新聞特別報道部、学研マーケティング、2012)
『免疫学の巨人』**(ゾルタン・オヴァリー/多田富雄訳、集英社、2010)
『ぐずぐずの理由』(鷲田清一、角川選書、2011)
『加藤周一 戦後を語る』**(加藤周一、かもがわ出版、2009)
『ユダヤ人の起源』完読挫折*(シュロモー・サンド/高橋武智監訳/佐々木康之・木村高子訳、浩気社、2010)
『音楽の聴き方』再読**(岡田暁生、中公新書、2009)
『サウンド・エシックス』再読(小沼純一、平凡社新書、2000)
『音楽文化学のすすめ』(小西潤子・仲万美子・志村哲編、ナカニシヤ出版、2007)
『音楽的時間の変容』完読挫折(椎名亮輔、現代思潮新社、2005)
『リュック・フェラーリ』(ジャクリーヌ・コー/椎名亮輔訳、現代思潮新社、2006)
『マリーゴールドホテルで会いましょう』**(デボラ・モガー/最所篤子訳、ハヤカワ文庫、2013)
『インド 厄介な経済大国』(エドワード・ルース/田中未和訳、日経BP社、2008)
『テブの帝国』(グレッグ・クライツァー/竹迫仁子訳、バジリコ、2003)
『村上春樹にご用心』(内田樹、アルテスパブリッシング、2007)
『知の逆転』(吉成真由美インタビュー・編、NHK出版新書、2012)
『文明崩壊』上下再読***(ジャレド・ダイアモンド/楡井浩一訳、草思社文庫、2012)
『わが朝鮮総連の罪と罰』(韓光煕、文藝春秋、2002)
『生き延びるためのラカン』(斎藤環、バジリコ、2006)

 1月26日号

『二つの文化と科学革命』**(C.P.スノー/松井巻之助訳、みすず書房、2011)
『考えてみれば不思議なこと』(池内了、晶文社、2004)
『スターリンと原爆』上下**(デーヴィド・ホロウェイ/川上洸・松本幸重訳、大月書店、1997)
『暴雪圏』(佐々木譲、新潮社、2009)
『テレビは原発事故をどう伝えたか』(伊藤守、平凡社新書、2012)
『世界を騙しつづける科学者たち』上下*(ナオミ・オレスケス+エリック・M・コンウェイ/福岡洋一訳、楽工社、2011)
『ガンジー自叙伝』**(池田運訳、講談社出版サービスセンター、1998)
『地図を作った人びと』*(ジョン・ノーブル・ウィルフォード/鈴木主悦訳、河出書房新社、2001)
『たまたま』(レナード・ムロディナウ/田中三彦訳、ダイヤモンド社、2009)
『文明崩壊』上下***(ジャレド・ダイアモンド/楡井浩一訳、草思社文庫、2012)
『魚は痛みを感じるか?』*(ヴィマトリア・ブレイスウェイト/高橋洋訳、紀伊国屋書店、2012)
『平気でうそをつく人たち』**(M・スコット・ペック/森英明訳、草思社文庫、2011)
『パラサイト日本人論』(竹内久美子、文藝春秋、1995)
『複雑な世界、単純な法則』(マーク・ブキャナン/阪本芳久訳、草思社、2005)
『国家は「有罪」をこうして創る』*(副島隆彦、植草一秀、高橋博彦/祥伝社、2012)

2012年

 10月23日号

『街場の教育論』*(内田樹、ミシマ社、2008)
『子供の眼』再読(リチャード・ノース・パターソン、新潮社、2000)
『いじわるな遺伝子』*(テリー・バーナム+ジェイ・フェラン、NHK出版、2002)
『旅する遺伝子』**(スペンサー・ウェルズ、英治出版、2008)
『印象派を巡る旅ガイド』(メディア・ファクトリー編/中川久代他訳、2012)
『宇宙を織りなすもの』上下***(ブライアン・グリーン、草思社、2009)
『ブラックアウト』上下(マルク・エルスベルグ、角川文庫、2012)
『地球46億年全史』***(リチャード・フォーティ、草思社、2009)
『ヒトはいつから人間になったか』**(リチャード・リーキー、草思社、1996)
『なぜオスとメスがあるのか』(リチャード・ミコッド、新潮選書、1997)
『民主主義のあとに生き残るものは』**(アルンダティ・ロイ、岩波書店、2012)
『僧兵=祈りと暴力の力』**(衣川仁、講談社選書メチエ、2010)
『戦後史の正体』*(孫崎享、創元社、2012)
『ボーン・レガシー』上中下**(ロバート・ラドラム、ゴマ文庫、2009)
『ロスト・シンボル』上中下**(ダン・ブラウン、角川文庫、2012)
『踊る物理学者たち』(ゲーリー・ズーカフ、青土社、1992)
『インドの僧院生活』*(グレゴリー・ショペン、春秋社、2000)
『無縁社会』*(NHK「無縁社会プロジェクト」取材班、文芸春秋、2010)
『鳥の仏教』(中沢新一、新潮文庫、2011)
『「おじさん」的思考』再読(内田樹、角川文庫、2011)
『古希の雑考』再再読(岸田秀、文春文庫、2007)

 7月26日号

『ぼくには数字が風景に見える』**(ダニエル・タメット/古屋美登里訳、講談社、2007)
『アシモフの原子宇宙の旅』**(アイザック・アシモフ/野本陽代訳、二見書房、1992)
『天災と国防』再読*(寺田寅彦、講談社学術文庫、2011)
『文明としての江戸システム』(鬼頭宏、講談社学術文庫、2010)
『成熟する江戸』(吉田伸之、講談社学術文庫、2009)
『放浪の天災数学者エルデシュ』**(ポール・ホフマン/平石律子訳、草思社文庫、2011)
『ファインマンさん最後の冒険』再読**(ラルフ・レイトン/大貫昌子訳、岩波書店、1991)
『龍を見た男』(藤沢周平、青樹社、1983)
『「当事者」の時代』*(佐々木俊尚、光文社新書、2012)
『アインシュタインの部屋』上下*(エド・レジス/大貫昌子訳、工作舎、1990)
『ショック・ドクトリン』上下**(ナオミ・クライン/幾島幸子+村上由見子訳、岩波書店、2011)
『シャンタラム』上中下(グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ/田口俊樹訳、新潮文庫、2011)
『続・悩む力』(姜尚中、集英社新書、2012)

 4月26日号

『父のトランク』*(オルハン・パムク/和久井路子訳、藤原書店、2007)
『無垢の博物館』上下**(オルハン・パムク/宮下遼訳、早川書房、2010)
『新しい人生』*(オルハン・パムク/安達智英子訳、藤原書店、2010)
『動的平衡2』(福岡伸一、木楽舎、2011)
『πの歴史』(ペートル・ベックマン/田尾陽一訳、ちくま学芸文庫、2006)
『超越意識の探求』(コリン・ウィルソン/松田和也訳、学習研究社、2007)
『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』各上下全6冊***(スティーグ・ラーソン、ハヤカワ文庫、2011)
『ファインマンさんの愉快な人生』***上下(ジェームズ・グリック/大貫昌子訳、岩波書店、1995)
『ジェノサイド』(高野和明、角川書店、2011)
『宇宙をかき乱すべきか』上下***/再再読(フリーマン・ダイソン/鎮目恭夫訳、ちくま学芸文庫、2006)
『福島第一原発-真相と展望』*(アーニー・ガンダーセン/岡崎玲子訳、集英社新書、2012)
『<物質>という神話』**(ポール・デイビス+ジョン・グリビン/松浦俊輔訳、青土社、1993)
『神が作った究極の素粒子』上下**(レオン・レーダーマン/高橋健次訳、草思社、1997)
『天才の栄光と挫折』***(藤原正彦、新潮選書、2002)

 2月9日号

『エッジエフェクト 福岡伸一対談集』(福岡伸一、朝日新聞出版、2010)
『脳のなかの幽霊、ふたたび』***(V.S.ラマチャンドラン/山下篤子訳、角川文庫、2011)
『アダムの呪い』***(ブライアン・サイクス/大野晶子訳、ソニー・マガジンズ、2004)
『生命の意味論』*(多田富雄、新潮社、1997)
『トルコで私も考えた』(高橋由佳利、集英社、1996)
『音楽嗜好 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』***(オリヴァー・サックス/大田直子訳、早川書房、2010)
『イヴと七人の娘たち』***(ブライアン・サイクス/大野晶子訳、ヴィレッジブックス、2006)
『妻を帽子とまちがえた男』***(オリヴァー・サックス/高見幸郎+金沢泰子訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2009)
『日本の原発、どこで間違えたのか』(内橋克人、朝日新聞出版、2011)
『信仰の視座』(星宮智光、澪標、2011)
『恐怖の存在』上下*(マイクル・クライトン/酒井昭伸訳、ハヤカワ・ノヴェルズ、2005)
『イスタンブール』**(オルハン・パムク/和久井路子訳、藤原書店、2007)
『「歌」を語る』*(ダニエル・J・レヴィティン/山形浩生訳、P-Vine Books、2010)
『黄金比はすべてを美しくするか』(マリオ・リヴィオ/斎藤隆央訳、早川書房、2012)
『科学と人間の不協和音』(池内了、角川oneテーマ21、2012)
『原発を終わらせる』(石橋克彦編、岩波新書、2011)

2011年

 11月17日号

『ゴールド 金と人間の文明史』*(ピーター・バーンスタイン/鈴木主税訳、日本経済新聞社、2001)
『「おじさん」的思考』(内田樹、角川文庫、2011)
『決定版 原発大論争』(宝島編集部編、宝島SUGOI文庫、1999)
『隠される原子力・核の真実』(小出浩章、創史社、2010)
『帝国の落日・下』(ジャン・モリス/池央耿+椋田直子訳、2010)
『放射能汚染の現実を超えて』*(小出浩章、河出書房新社、2011)
『音楽史を変えた五つの発明』*(ハワード・グッドール/松村哲哉訳、白水社、2011)
『官僚の責任』(古賀茂明、PHP新書、2011)
『生命の秘密』(柳澤桂子、岩波書店、2003)
『われわれはなぜ死ぬのか』(柳澤桂子、草思社、1997)
『響きの科楽』**(ジョン・パウエル/小野木明恵訳、早川書房、2011)
『音楽の話をしよう』(寺内大輔、ふくろう出版、2011)
『100年の難問はなぜ解けたのか』(春日真人、新潮文庫、2011)
『宇宙は何でできているのか』(村山斉、幻冬社新書、2010)
『脳のなかの幽霊』***(V.S.ラマチャンドラン+サンドラ・ブレイクスリー/山下篤子訳、角川文庫、2011)
『慈しみの女神たち』上下***(ジョナサン・リテル/菅野昭正、星埜守之, 篠田勝英, 有田英也訳、綜合社、2011)
『大国の興亡』上下(ポール・ケネディ/鈴木主悦訳、草思社、1988)
 8月11日号

『最終謀略』上下(トム・クランシー+スティーヴ・ピチェニック/伏見威蕃訳、新潮文庫、2009)
『時間の発見』*(コリン・ウィルソン編著/竹内均訳、三笠書房、1990)
『街場の中国論』(内田樹、ミシマ社、2011)
『アジャストメント』(フィリップ・K・ディック/大森望編、ハヤカワ文庫、2011)
『封印された系譜』上下(ロバート・ゴダード/北田絵里子訳、講談社文庫、2011)
『核燃料サイクルの闇』(秋元健治、現代書館、2006)
『日本の国境問題』(孫崎亨、ちくま新書、2011)
『マネジメント』*(P.F.ドラッカー/上田惇生編訳、ダイヤモンド社、2001)
『傍観者の時代』(P.F.ドラッカー/風間?三郎訳、ダイヤモンド社、1979)
『TPP亡国論』(中野剛志、集英社新書、2011)
『滅びゆく国家』(立花隆、日経BP社、2006)
『日本人が誤解する英語』(マーク・ピーターセン、光文社知恵の森文庫、2010)
『紛争屋の外交論』(伊勢崎賢治、NHK出版新書、2011)
『苦界浄土』(石牟礼道子、講談社、1969)
『マイトレイ』**(ミルチャ・エリアーデ/住谷春也訳、河出書房新社、2009)
『軽蔑』(アルベルト・モラヴィア/大久保昭男訳、河出書房新社、2009)
『日本辺境論』再読**(内田樹、新潮新書、2009)
『虐殺器官』*(伊藤計劃、早川文庫、2010)
『異端の数ゼロ』*(チャールズ・サイフェ/林大訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2009)
『ハーモニー』**(伊藤計劃、早川文庫、2010)
『空気と戦争』(猪瀬直樹、文春選書、2007)
『インド夜想曲』*(アントニオ・タブッキ/須賀敦子訳、白水Uブックス、1993)
『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』(大沢在昌他、集英社、2007)
『9.11の標的をつくった男』(飯塚真紀子、講談社、2010)
『夜想曲集』(カズオ・イシグロ/土屋政雄訳、ハヤカワepi文庫、2011)
『ホルモー六景』(万城目学、角川書店、2007)
『ピュタゴラスの復讐』*(アルトゥーロ・サンガッリ/冨永星訳、日本評論社、2010)

 5月4日号

『神は妄想である』**(リチャード・ドーキンス/垂水雄一訳、早川書房、2007)
『思想としての音楽』(片山杜秀責任編集/講談社、2010)
『アラブの音文化』(西尾哲夫・堀内正樹・水野信男編/スタイルノート、2010)
『ピアニストは指先で考える』(青柳いづみこ/中央公論新社、2010)
『後藤正治ノンフィクション集第7巻』(後藤正治/ブレーンセンター、2011)
『延長された表現型』**(リチャード・ドーキンス/日高敏隆・遠藤彰・遠藤知二:訳、紀伊国屋書店、1987)再読
『巨人たちの落日』上中下*(ケン・フォレット/戸田裕之訳、ソフトバンク文庫、2011)
『パチンコ裏物語』(阪井すみお/彩国社、2010)
『SWITCH STORIES』(新井敏記/新潮文庫、2011)
『鏡の荒野』(新井敏記/スイッチ・パブリッシング、2011)
『他人を見下す若者たち』(速水敏彦/講談社現代新書、2006)
『虹の解体』**(リチャード・ドーキンス/福岡伸一訳、早川書房、2001)再読
『ドイツの森番たち』*(広瀬隆/集英社、1994)
 1月18日号

『必生 闘う仏教』*(佐々井秀嶺、集英社新書、2010)
『ネクタイと江戸前』(日本エッセイスト・クラブ編、文春文庫、2010)
『あのころの未来』(最相葉月、新潮社、2003)
『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル/鬼澤忍訳、早川書房、2010)
『甘い薬害』上下(ジョン・グリシャム/天馬龍行訳、アカデミー出版、2008)
『法然の涙』(町田宗鳳、講談社、2010)
『宇宙に隣人はいるのか』*(ポール・デイヴィス/青木薫訳、草思社、1997)
『タイムマシンをつくろう!』*(ポール・デイヴィス/林一訳、草思社、2003)
『宇宙 最後の3分間』*(ポール・デイヴィス/出口修至訳、草思社、1995)
『宇宙を支配する6つの数』*(マーティン・リース/林一訳、草思社、2001)
『梅原猛の授業 仏教』(梅原猛、朝日新聞社、2002)
『アジアのポピュラー音楽』**(井上貴子編著、勁草書房、2010)
『困ります、ファインマンさん』***再読(R.P.ファインマン/大貫昌子訳、岩波現代文庫、2001)
『聞かせてよ、ファインマンさん』***再読(R.P.ファインマン/大貫昌子・江沢洋訳、岩波現代文庫、2009)
『海馬』(池谷裕二・糸井重里、新潮文庫、2002)
『拡散する音楽文化をどうとらえるか』(東谷護編著、勁草書房、2008)
『CIA秘録』上下**(ティム・ワイナー/藤田博司・山田侑平・佐藤信行訳、文芸春秋、2008)
『地球生命は自滅するのか?』(ピーター・D・ウォード/長野敬+赤松眞紀訳、青土社、2010)
『遥かなる未踏峰』上下*(ジェフリー・アーチャー/戸田裕之訳、新潮文庫、2011)

2010年

 11月6日

『はやぶさの大冒険』(山根一眞/マガジンハウス、2010)
『死刑全書』(マルタン・モネスティエ/吉田春美・大塚宏子訳、原書房、1996)
『街場のメディア論』(内田樹/光文社新書、2010)
『音楽の聴き方』(岡田暁生、中公新書、2009)
『ドローンとメロディー』(再読/ホセ・マセダ/高橋悠治編・訳、新宿書房、1989)
『歌う国民』(渡辺裕/中公新書、2010)
『食べる人類誌』(フェリペ・フェルナンデス=アルメスト/小田切勝子訳、早川書房、2010)
『アソシエイト』上下(ジョン・グリシャム/白石朗訳、新潮文庫、2010)
『幸運な宇宙』(ポール・デイヴィス/吉田三知世訳、日経BP社、2008)
『蜜のあわれ われはうたえどもやぶれかぶれ』(室生犀星、講談社文芸文庫、1993)
『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』(輪島裕介、光文社新書、2010)
  9月15日号

『エレファントム』(ライアル・ワトソン/福岡伸一・高橋紀子訳、木楽舎、2009)
『ルリボシカミキリの青』(福岡伸一、文芸春秋、2010)
『生命と食』(福岡伸一、岩波ブックレット、2010)
『宗教で読む戦国時代』(神田千里、講談社選書メチエ、2010)
『これからを生き抜くために大学時代にすべきこと』(許光俊、ポプラ社、2010)
『地図のない道』(再読/須賀敦子、新潮文庫、2009)
『後藤正治ノンフィクション集第4巻』(後藤正治、ブレーンセンター、2010)
『多読術』(松岡正剛、ちくまプリマー新書、2009)
『悲しき南回帰線』(再読/レヴィ=ストロース/室淳介訳、講談社学術文庫、1985)
『モリー先生との火曜日』(ミッチ・アルボム/別宮貞徳訳、NHK出版、2004)
『加藤周一戦後を語る』(加藤周一、かもがわ出版、2009)
『カムイ伝講義』(田中優子、小学館、2008)
『ためらいの倫理学』(内田樹著、角川文庫、2001)
『新宿鮫』(大沢在昌、光文社文庫、1997)
『ヴェルサイユの密謀』(C・ケルデラン+F・メイエール/平岡敦訳、新潮文庫、2010)
『銃・病原菌・鉄』上下(ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰訳、草思社、2000)
 7月5日号

『密閉都市のトリニティ』(鳥羽森、講談社、2010)
『ブラックホールを見つけた男』(アーサー・I・ミラー/阪本芳久訳、草思社、2009)
『宇宙から恐怖がやってくる!』(フィリップ・プレイト/斉藤隆央訳、NHK出版、2010)
『ガラスの家』(プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、2007)
『1Q84』(全3巻/村上春樹、新潮社、2010)
『天皇とアメリカ』(吉見俊哉+テッサ・モーリス・スズキ、集英社新書、2010)
『宗教としてのバブル』(島田裕巳/ソフトバンク新書、2006)
『20歳のときに知っておきたかったこと』(ティナ・シーリグ/高遠裕子訳、阪急コミュニケーションズ、2010)
『動的平衡』(福岡伸一、木楽舎、2009)
 5月3日号

『はるかな記憶』(下/カール・セーガン+アン・ドルーヤン/柏原精一+佐々木敏裕+三浦賢一訳、朝日新聞社、1994)
『マジック・サークル』(上下/キャサリン・ネヴィル/大瀧啓裕訳、学習研究社、1998)
『お坊さんが隠すお寺の話』(村井幸三、新潮新書、2010)
『母親幻想』(岸田秀、新書館、1995)
『サイバービア』(ジェイムス・ハーキン/吉田晋治訳、NHK出版、2009)
『葬式は要らない』(島田裕巳、幻冬社新書、2010)
『貧困大国アメリカⅡ』(堤未果、岩波新書、2010)
『また会う日まで』(上下/ジョン・アーヴィング/小川高義訳、新潮社、2007)
『冬の兵士』(アーロン・グランツ/TUP訳、岩波書店、2009)
 3月25日号

『寺社勢力の中世』(伊藤正敏/ちくま新書、2008)
『第三帝国のオーケストラ ベルリン・フィルとナチスの影』(ミーシャ・アスター/松永美穂・佐藤英訳/早川書房、2009)
『藤沢周平 父の周辺』(遠藤展子/文春文庫、2010)
『隣人祭り』(アタナーズ・ペリファン 南谷桂子/ソトコト新書、2008)
『後藤正治ノンフィクション集第5巻 スカウト 奪われぬもの』(後藤正治/ブレーンセンター、2010)
『法然と秦氏』(山田繁夫/学研、2009)
『ならずもの国家 アメリカ』(クライド・プレストウィッツ/村上博美監訳/鈴木主税訳/講談社、2003)
『科学の終焉』(ジョン・ホーガン/竹内薫訳/徳間文庫、2000)
『すべての民族の子(下)』(プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1988)
『足跡』(プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1988)
『インドの時代』(中島岳志/新潮社、2006)
性的なことば』(井上章一他編/講談社現代新書、2010)
『ユング心理学と仏教』(河合隼雄/岩波書店、1995)
『おへそはなぜ一生消えないか』(武村政春/新潮新書、2010)
『NAD Understanding Raga Music』(Sandeep Bagchee/eESHWAR, 1998)
『はるかな記憶』(上下/カール・セーガン+アン・ドルーヤン/柏原精一+佐々木敏裕+三浦賢一訳、朝日新聞社、1994)

2009年

 12月27日号

『ユルスナールの靴』(須賀敦子/河出書房新社、2003)
『時のかけらたち』(須賀敦子/青土社、1998)
『遠い朝の本たち』(須賀敦子/筑摩書房、1998)
『地図のない道』(須賀敦子/新潮社、1999)
『こころの旅』(須賀敦子/角川春樹事務所、2002)
『かもめ食堂』(群ようこ/幻冬社、2006)
『機会仕掛けの神 ヘリコプター全史』(ジェイムズ・R・チャイルズ/伏見威蕃訳、早川書房、2009)
『記憶と沈黙』(辺見庸/毎日新聞社)
『永遠の不服従のために』(辺見庸/毎日新聞社、2002)
『児玉清の「あの作家に会いたい』(児玉清/PHP研究所、2009)
『法然を語る(下)』(町田宗鳳/NHK出版、2009)。
『ル・コルビュジエ 近代建築を広報した男』(暮沢剛巳/朝日新聞出版、2009)
『数学があるいてきた道』(志賀浩二/PHPサイエンス・ワールド新書、2009)
『「週刊新潮」が報じたスキャンダル戦後史』(新潮文庫、2008)
『童貞放浪記』(小谷野敦/幻冬社文庫、2009)。
『日本の書物への感謝』(四方田犬彦/岩波書店、2008)
『進化の存在証明』(リチャード・ドーキンス/垂水雄二訳、早川書房、2009)
『ケンカの作法』(辛淑玉+佐高信/角川oneテーマ21、2006)。
『日本辺境論』(内田樹/新潮新書、2009)
『アインシュタインの望遠鏡』(エヴァリン・ゲイツ/野中香方子訳/早川書房、2009)
『「渋滞」の先頭は何をしているのか?』(西成活裕/宝島社新書、2009)
 10月16日号

『コード・トゥ・ゼロ』(ケン・フォレット/戸田裕之訳、小学館、2002) 
『第三双生児』(上下、ケン・フォレット/佐々田雅子訳、新潮文庫、1997) 
『差別と日本人』(野中広務、辛淑玉/角川oneテーマ21、2009) 
『ジョン・ケージ著作選』(小沼純一篇/ちくま学芸文庫、2009) 
『ガンジーの危険な平和憲法案』(C・ダグラス・ラミス/集英社新書、2009) 
『数学的にありえない』(上下、アダム・ファウラー/矢口誠訳、文春文庫、2009) 
『謀略法廷』(上下、J・グリシャム/白石朗訳/新潮文庫、2009) 
『ユダヤ警官同盟』(上下、マイケル・シェイボン/黒原敏行訳/新潮文庫、2009) 
『天才の栄光と挫折』(藤原正彦/文春文庫、2008) 
『グーグル革命の衝撃』(NHKスペシャル取材班/新潮文庫、2009)   
『世界は分けてもわからない』(福岡伸一/講談社現代新書、2009) 
『コルシア書店の仲間たち』(須賀敦子/文芸春秋、1992) 
『トリエステの坂道』(須賀敦子/みすず書房、1995) 
『霧のむこうに住みたい』(須賀敦子/河出書房新社、2003) 
『グラーグ57』(上下、トム・ロブ・スミス/新潮文庫、2009) 
『岐路』(上下、加賀乙彦/新潮社、1988) 
『おひとりさまの老後』(上野千鶴子/法研、2007) 
『世界の歴史27 自立へ向かうアジア』(狭間直樹+長崎暢子/中公文庫、2009)
 7月12日号

『人間の大地』(上下、プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1986) 
『すべての民族の子』(プラムディア・アナンタ・トゥール/押川典昭訳、めこん、1988)
『誇りと復讐』(上下、シェフリー・アーチャー/永井淳訳/新潮文庫、2009)
『ぼくと1ルピーの神様』(ヴィカス・スワラップ/子安亜弥訳/ランダムハウス講談社、2009)
『大聖堂 果てしなき世界』(上中下、ケン・フォレット/戸田裕之訳/ソフトバンク文庫、2009)
『寺よ、変われ』(高橋卓志/岩波新書、2009)
『生きる意味』(上田紀行/岩波新書、2005)
『ロハスの思考』(福岡伸一/ソトコト新書、2006)
『異文化理解』(青木保/岩波新書、2001)
『悪について』(中島義道/岩波新書、2005)
『南極料理人』(西村淳/新潮文庫、2001)、『後藤正治ノンフィクション集第1巻』(後藤正治/ブレーンセンター、2009)
 5月21日号

『本能はどこまで本能か ヒトと動物の行動の起源』(マーク・S・ブランバーグ/塩原通緒訳、早川書房)
『今世紀で人類は終わる?』(マーティン・リース/堀千恵子訳、草思社)
『荒野へ』(ジョン・クラカワー/佐宗鈴夫訳、集英社文庫/途中リタイヤ)
『聞かせてよ、ファインマンさん』(R.P.ファインマン/大貫昌子・江沢洋訳、岩波現代文庫)
『物理法則はいかにして発券されたか』(R.P.ファインマン/江沢洋訳、岩波現代文庫)
『科学は不確かだ』(R.P.ファインマン/大貫昌子訳、岩波書店)
『東京大学のアルバート・アイラー キーワード編』(菊池成孔+大谷能生/文春文庫)
『東京大学のアルバート・アイラー 歴史編』(菊池成孔+大谷能生/メディア総合研究所)
『納棺夫日記』(青木新門/文春文庫)
『パスル・バレス』(ダン・ブラウン/越前敏弥・熊谷千寿訳/角川文庫)
『人物ノンフィクション 1960年代の肖像』(後藤正治/岩波現代文庫)
『自然界の非対称生』(フランク・クロース/はやしまさる訳/紀伊国屋書店)
『知っておきたい日本の仏教』(武光誠/角川ソフィア文庫)
『シャドウ・ワーク』(I.イリイチ/玉野井芳郎/栗原彬訳、岩波同時代ライブラリー)
『法然を語る』(町田宗鳳/NHK出版)
『文化と抵抗』エドワード・サイード/大橋洋一・大貫隆史・河野真太郎訳、ちくま学芸文庫)
『サイード自身が語るサイード』(エドワード・サイード/大橋洋一訳、紀伊国屋書店)
『裁判長!これで執行猶予は甘くないすか』(北尾トロ/文春文庫)
『健腸生活のススメ』(辨野義己、日経新聞)
 3月21日号

『サーカスの息子/上・下』(ジョン・アーヴィング)
『クラッシュ』(佐野眞一)
『できそこないの男たち』(福岡伸一)
『時間はどこで生まれるのか』(橋本淳一郎)
『宇宙創成/上・下』(サイモン・シン)
『密謀/上・下』(藤沢周平)
『ボーン・レガシー/上・中・下』(ロバート・ラドラム)
『ボーン・ビトレイヤル/上・中・下』(ロバート・ラドラム)
『ボーン・サンクション/上・中・下』(ロバート・ラドラム)
『神仏のすみか』(梅原猛)
『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)
『凍』(沢木耕太郎)
『夜と女と毛沢東』(吉本隆明、辺見庸)
『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』
『一神教VS多神教』(岸田秀)
『靖国問題の精神分析』(岸田秀)
『官僚病の起源』(岸田秀)
『シズコさん』(佐野洋子)

 2007年8月23日号

『母親と日本人』(佐々木孝次)
『母親・父親・掟』(佐々木孝次)
『快の打ち出の小槌』(佐々木孝次)
『愛することと愛させること』(佐々木孝次)
『エディプス・コンプレクスから模倣の欲望へ』(佐々木孝次)
『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)
『コトの本質』(松井孝典)
『われわれはどこへ行くのか?』(松井孝典)
『宇宙で地球はたった一つの存在か』(松井孝典)
『憂鬱と官能を教えた学校』(菊池成孔)
『東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編』(菊池成孔)
『ターニングポイント』(フリッチョフ・カプラ)
『マンウォッチング』(デズモンド・モリス)